日本の伝統野菜-35.山口県

目次

1.地域の特性

【地理】

山口県は本州西部の山陰地方の西端に位置しています。総面積は6,112km2で全国23位です(国土地理院 面積調 2023年10月1日現在)。山口県に隣接しているのは島根県、広島県の2県です。県の北東は島根県に接し、西は広島県に隣接しています。北は日本海、南は瀬戸内海に面しており、関門海峡に架かる関門橋では山口県(下関市(しものせきし))と福岡県(北九州市(きたきゅうしゅうし)門司区(もじく))が結ばれています。

瀬戸内海にある「甲島(かぶとじま)」は、山口県岩国市(いわくにし)と広島県大竹市(おおたけし)に属し、島に県境があります。

山口県域の森林面積は436,654haで約72%を占めています。可住面積は1,707㎢で全国28位で、総面積に対し28%の割合です。人口は1,298,572人(2023年8月1日時点推計人口)で全国27位です。

山口県の地形の最大の特徴は、県の東側以外は、三方を日本海の響灘(ひびきなだ)および瀬戸内海の広島湾(ひろしまわん)・伊予灘(いよなだ)・周防灘(すおうなだ)の海に囲まれていることです。県域の東西の距離は約158.㎞、南北は120.7㎞で、全体的な地形は三角形のような形をしています。

山口県の中央部を東西に中国山地が横たわっていますが、西部の標高は低くなっており、山口県と島根県との境界にある標高1,337mの寂地山(じゃくちさん)が最高峰です。他は、標高1,000mを超える山は、小五郎山(こごろうさん:1,162m)、羅漢山(らかんざん:1,109m)、平家ヶ岳(へいけがたけ:1,006m)、莇ヶ岳(あざみがたけ:1,004m)の4山で丘陵性の山地または台地が展開し、山陽と山陰とに分けています。また、県の西南にある下関市の北には狗留孫山(くるそんざん)があり、その東には日本最大のカルスト台地である秋吉台(あきよしだい)が広がっています。

山口県内には中国山地に水源をもつ河川がいくつか存在し、その河口付近では平地がみられますが、河口付近以外での海沿いに平地は少なく、内陸部では川沿いを中心に盆地が点在しています。一級水系は県央部に佐波川(さばがわ) 、広島県境に小瀬川(おぜがわ)の2水系があり、いずれも瀬戸内海に注いでいます。 長い川(河川延長)、大きい川(流域面積)のベスト1はともに 錦川(にしきがわ)で周南市から岩国市におよび、延長331.9km、面積884.9km2です。錦川水系には、宇佐盆地(うさぼんち)・広瀬盆地(ひろせぼんち)・鹿野盆地(かのぼんち)があります。山口市を流れる椹野川(ふしのがわ)の中流部には山口市の主要部がある山口盆地(やまぐちぼんち)が開けています。その他に島田川(しまたがわ)、大井川(おおいがわ)、阿武川(あぶがわ)、厚東川(こうとうがわ)、厚狭川(あさがわ)などがあり、それぞれの河川の周辺に盆地がいくつか点在しています。

山口県は、平野部が小さく、瀬戸内側の一部(主要河川の河口部並びに周南(しゅうなん)地区)を除けば山に囲まれた谷底平野が多く存在します。

【地域区分】

山口県は、かつての律令制に基づいて設置された律令国(りつれいこく)における長門国(ながとのくに)と周防国(すおうのくに)に相当し、その別名であった防長(ぼうちょう)という呼び方が残っています。

現在は、19市町で市は13市、町は6町の自治体があり、大きく東部地域、中部地域、北部地域、西部地域の4地域に分けられます。(県域は行政機関によって変わります。)
東部地域:岩国市(いわくにし)、和木町(わきちょう)、柳井市(やないし)、周防大島町(すおうおおしまちょう)、田布施町(たぶせちょう)、光市(ひかりし)、上関町(かみのせきちょう)、平生町(ひらおちょう)
中部地域は:周南市(しゅうなんし)、下松市(くだまつし)、山口市(やまぐちし)、防府市(ほうふし)
北部地域は:萩市(はぎし)、阿武町(あぶちょう)、長門市(ながとし)、美祢市(みねし)
西部地域:宇部市(うべし)、山陽小野田市(さんようおのだし)、下関市(しものせきし)

【気候】

山口県は、大部分が瀬戸内海式気候に属しており、一年を通じて雨量が少なく、年平均気温も15℃前後と比較的温暖な気候です。しかし、北部の日本海側から内陸部にかけての一部の地域では、日本海側気候が混じります。冬季には曇りの日が多くなります。積雪は、湿気を含むための海上区間が朝鮮半島によって狭くなっているため、大雪になることは少ないですが降雪日数がやや多くなります。年平均気温も13℃前後と寒冷な気候です。また、西部は太平洋側気候のうちの九州型とされていますが、山陰地方と同様の傾向を示し、冬の降水日数がやや多くなります。

【農業の特徴】

農業面では、地域の特色を活かし、 水稲・野菜・花き・果樹・酪農・肉用牛・養鶏・養豚など多彩な経営が行われています。特に、冬季に温暖な沿岸部では、野菜・花きなどの施設園芸やミカン類の栽培、夏季に冷涼な山間部では、夏秋トマトやワサビ、りんごが栽培されるなど、多品目の生産が行われています。米は、県内全域で栽培されています。

野菜の品種は、キャベツ、だいこん、たまねぎをはじめとする露地(ろじ)野菜や、いちご、トマトなどの施設野菜の生産が盛んです。瀬戸内側では 温州 うんしゅう みかんの栽培が特に盛んです。中山間地域では、日本なし、ぶどう、もも、くり、りんごなどが栽培されています。夏みかん、長門ゆずきち、岸根栗 がんね栗は山口県が原産地です。県オリジナル野菜の「はなっこりー」も需要が高まっています。果樹は、瀬戸内側を中心に温州みかんの栽培が盛んです。

山口県では、地域農業の持続的な発展を図るために集落営農法人化(しゅうらくえいのうほうじんか)を推進するとともに、高齢化や担い手不足の課題解決のため集落営農法人連合体の設立を支援し、更なる規模拡大や複合化・多角化などによる雇用の創出と所得の拡大を推進しています。

また、県産農林水産物の消費拡大につなげるため、農林水産物及び主な原料が県産100%の加工品の中から厳選した商品を「やまぐちブランド」として、県内はもとより県外にも幅広く情報発信をしています。

2.山口の伝統野菜

山口県には、伝統野菜としての明確な基準はありません。全国の伝統野菜が注目されてきたことで、山口県も復活に向けた取り組みを開始し、農業試験場での伝統野菜のリストアップと種の収集を実施し、種を守ってきた生産者からの聞き取り調査を行いました。その結果、来歴が不明なものや昭和以降に確認された品目が多いことから「伝統野菜」として括ることが難しいということで、定義づけは行われていません。

しかし、古くから地域の人々に親しまれてきた野菜が数多く残っています。そこで、ここでは、すでに流通しなくなった品種や、伝統野菜復活プロジェクトなどの品種も含め、なんらかの形で伝統野菜として名前が上がった品種を載せています。

萩市の地域再生計画には、伝統野菜復活プロジェクトに取り組む旨の記載があり、そこにリストアップされたのは、萩ごぼう、萩ころげ蕪、大島そば、あざみな(むつみ在来種)、かきちしゃ(大島在来種)、萩にんにく、萩わけぎ、畑わさび、徳佐うり、白おくら、こんにゃく、田屋なすの12種品種があげられています。地域再生計画

JAグループ山口で紹介されている「山口県に伝わる野菜」には、岩国赤大根、武久蕪、とっくり大根、徳佐うり、あざみな、彦島春菜、白おくら、わさび、萩たまげなす(田屋なす)、萩ごぼう、つくねいも11品種があげられています。

山口県生活情報サイト山口県ライフプラスでは、2006年に開催された国民文化祭(食の文化祭)で紹介された山口県の伝統野菜・果樹のリストを載せています。

これらを参考に、現在、流通している品種だけでなく、文化財や天然記念物に指定された品種もご紹介します。また、山口県は果樹の生産量も多い地域で、伝統果樹も合わせて、野菜27品種、果樹10品種をご紹介します。

秋穂ごま(あいおごま)

【生産地】山口市秋穂二島(あいおふたじま)

【特徴】秋穂在来系の胡麻(ごま)

【食味】

【料理】

【来歴】道の駅あいおでは生胡麻が購入できる。秋穂のゴマ部会は、現在(2023年)8名の生産者。

【時期】9月~10月・販売11月~2月

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹

赤郷ごぼう/美東ごぼう(あかさとごぼう/みとうごぼう)

【生産地】美祢市美東町(みとうちょう)赤郷(あかさと)地区

【特徴】柔らかいのに歯ごたえがあり、風味と香りが良い。アクが少なく時間をかけた下ごしらえなしで使えるというのも大きな特徴。

【食味】肉質の柔らかさと風味の良さ

【料理】きんぴら、煮物、揚げ物など

【来歴】美東町の赤郷地区でのみ栽培されている。歴史は古く、江戸時代には藩主へ献上していた記録も残っている。同市に広がるカルスト台地の赤土は、石灰岩が長い年月をかけて溶け出し酸化したもので、炭酸カルシウムを多く含む粘土質。一般的なゴボウが砂地などの水はけの良い、柔らかな土壌で栽培されることが多いのに対し、赤郷地区の土はそれとは正反対の粘土質で堅い土。2017年9月にGI(地理的表示保護制度)登録。

【時期】10月~12月

JAグループ山口
美祢市認定ブランド「ミネコレクション」カタログ
ぶちうま!!やまぐち.net

あざみ菜(あざみな)

【生産地】岩国市美和町(みわちょう)、山口市徳地町(とくぢちょう)、萩市むつみ村 他県全般

【特徴】むつみ在来種。現在、県内30以上の市町村で栽培されている。寒さに大変強く、厳寒期でも収穫できる葉物野菜。葉に切れ込みがあり、あざみのように尖った葉が多いのが特徴。

【食味】カラシナの一種で、葉にピリッとした辛みがある。

【料理】サラダなどに利用

【来歴】伝統野菜のあざみ菜は、萩市むつみ村の在来種。「あざみ菜」と言う名称では、宮崎県東臼杵郡美郷町で栽培されるカブの一種「イラカブ」の別称で、兵庫県丹波市でも生産されている。宮崎県、兵庫県でも伝統野菜とされる。

【時期】10月上旬~3月

JAグループ山口

鮎蓼(あゆたで)

【生産地】下関市

【特徴】蓼(たで)はタデ科タデ属に分類される草本の総称で、狭義には柳蓼(やなぎたで)を指す。鮎料理に欠かせない蓼酢の材料でもある。柳蓼は草全体が辛く、特有のにおいを持つ。辛味強く、香り高い。

【食味】他の蓼は辛味を感じないので、噛んで辛いのが柳蓼。

【料理】鮎との相性が抜群によい。蓼酢、田楽みその添え物、大根サラダ、つまものなど

【来歴】川辺や湿地帯に生える。鮎釣りをするような川の岸には、この柳蓼や他にもよく似た蓼の仲間が生えているが、見分け方は葉を少し噛んでみるとよい。

【時期】4月~8月

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹

岩国赤大根(いわくにあかだいこん)

【生産地】岩国市錦見(にしみ)地区

【特徴】表皮が鮮明な赤色で、中が純白の丸ダイコン。最大根径は12cm、根長15cmが一番良いとされ、重さは1.5kgから2.5kgが良いとされる。大根の形は短円筒形で、京やさいの固定種である大丸聖護院大根(だいまるしょうごいんだいこん)によく似ているとされる。

【食味】肉質の締りが良い。部位によって味が異なる。葉に近いほど甘味が強く、下に行くほ辛味が強くなる。冬の寒さにあうと、甘みが増し、まろやかな味になる。

【料理】昔から酢の物など正月の縁起物として利用。煮物、漬物、大根おろし、サラダなど

【来歴】岩国市錦見地区を中心に古くから栽培されており、地元の方達から大切に守られ、食べ続けられている大根。市場やスーパー等には出回っておらず、地元の道の駅や野菜直売所にて販売されていることが多い。学校給食用に出荷される。

【時期】12月~2月

JAグループ山口
お役立ち!季節の耳より情報局 岩国赤大根の特徴・旬の時期は?山口県の伝統品種

岩国れんこん(いわくにれんこん)

【生産地】岩国市

【特徴】花の色は白く、葉が大きい。表皮は白く、斑点も少なく、肌はきれい。丸みも大きく、肉厚。折ると長く糸を引くのが特徴。

【食味】肉厚、粉質で柔らかい特長を生かし、伝統料理からハンバーグまで幅広い料理に向く。歯切れも良い。

【料理】岩国寿司、天ぷら、煮物、きんぴら、ハンバーグなど

【来歴】旧:岩国市にはすが植えられるようになったのは、今から200年以上前である。江戸時代中期の寛政年間(1789~1800年)に、村本三五郎(むらもとさんごろう)という篤農家(とくのうか)が、種れんこん(今の岡山県の備中種とも、大分県の豊後の種れんこんとも言われている)を持ち帰り、旧:岩国市門前(もんぜん)の百姓である源次郎(げんじろう)に植えさせたのが始まりとされる。

一般的な蓮根(れんこん)の穴の数は中央に1つと周りに8〜10個だが、岩国れんこんの穴は中央に1つ周りに8つで、9つのものが多い。これが、当時の岩国藩主・吉川家(きっかわけ)の家紋「蛇の目九曜紋(じゃのめくようもん)」と同じ数だったことから藩主を喜ばせたとのこと。

干拓された土地は、海が近く、塩害のために米作に向かなかったが、蓮(はす)が立派に育ったので、以来、改良を重ねながら現在に至っている。現在の「岩国れんこん」は、1917(大正6)年に導入された中国種の白花(しろばな)を地域で選抜したもので、温暖な気候や日照時間が長いことなど、レンコン栽培に適した自然条件と、よりおいしくなるよう改良を重ねている。

【時期】8月~1月

ぶちうま!やまぐち.net
地方特産食材図鑑
JA山口県 山口県の農業「特産 岩国れんこん一筋」
やまぐち総合教育支援センター 岩国れんこん

大葉しゅんぎく(おおばしゅんぎく)

【生産地】下関市

【特徴】山口県下関市で「ローマ」の名で親しまれる春菊(しゅんぎく)。しゃもじ型で丸みを帯びた葉を持つ。

【食味】えぐみが少なく、やわらかいのが特徴。

【料理】汁物の具、おひたし、刺し身のつまなど

【来歴】地中海沿岸を原産地とし、イタリアのローマが名前の由来と伝えられる。長年、下関市で栽培されてきた伝統野菜。部会員の減少で、8年前より出荷量は7割減少したが需要は多い。

【時期】10月~2月下旬

JA山口 「伝統のシュンギク、旬の味わい」

かきちしゃ(かきちしゃ)

【生産地】下関市

【特徴】大島在来種(おおしまざいらいしゅ)。キク科でレタスの仲間。「ちしゃ」とは、茎や葉を切ると乳のような液を出す草木である乳草(ちぐさ/ちちぐさ)の意味。「かきちしゃ」は、掻(か)きちぎったときに乳状の液が出てくることから、そう呼ばれる。葉色が赤紫色の系統と緑色の系統がある。系統によって葉の縮みの程度は異なる。

【食味】一般のリーフレタスより、やや硬く、しゃきっとした歯ごたえがあり、ほろ苦い。サニーレタスに比べ、カルシウムが35倍、鉄分が2倍、マグシシウムが3倍とミネラルが豊富とされる。

【料理】チシャなます、サラダなど

【来歴】大島在来種は、古くから栽培されてきた。原産は中国と推測され、日本へは奈良時代に伝わったとされている。古くから山口県では馴染み深い野菜であった。品種としては、古くからのものと明治時代に導入されたものが混在している可能性が高い。しかし、1980年代後半にサニーレタスの出現によって栽培が激減し、入手困難となった。近年、下関市で栽培と出荷が再開された。

【時期】10月~6月

地方特産食材図鑑 かきちしゃ

蒟蒻(こんにゃく)

【生産地】岩国市

【特徴】「こんにゃく」は、蒟蒻芋(こんにゃくいも)を原料として作られる加工品の一つ。

【食味】錦川の清らかな水で作られている。包丁に吸い付いて、切りにくいくらいの粘り気が特徴。

【料理】刺身、煮しめ、田楽、おでん、天ぷら等

【来歴】蒟蒻芋の栽培が始まった正確な時期は不明だが、江戸時代後期には錦町(にしきまち)で栽培されていたことが記録に残っている。だが、錦町の各村で蒟蒻芋の栽培が盛んになったのは明治時代になってからである。同地は、傾斜地が多く、水はけの良い土地と気候が栽培に適していたため、優良品種を導入し、大量に植え込んでいった。

その後、次第に加工品としての「こんにゃく」製造が始まり、広がっていく。初めは、そば殻から灰汁(あく)をとって、こんにゃくを固めていたが、大量の生産には間に合わず、試行錯誤の末、炭酸ナトリウムを使う現在の製法にたどり着いた。

【時期】通年

いわくにmade こんにゃく

笹川錦帯白菜(ささがわきんたいはくさい)

【生産地】岩国市錦見(にしみ)地区

【特徴】一般的な白菜の葉には産毛があるが、笹川錦帯白菜には無い。

【食味】甘みのある白菜

【料理】クリーム煮、水炊き、サラダ、漬物

【来歴】笹川錦帯白菜は、『野崎白菜』から改良され昭和27年にできた白菜。生産量も少なく、市場に出回ることはほとんどない。地元の市場や漬物加工、学校給食用に出荷される。

【時期】12月

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹
地方特産食材図鑑

ささげ豆(ささげまめ)

【生産地】山口市(旧:秋穂町)

【特徴】小型のそら豆で、さやは緑色だが、中の豆は赤紫色。

【食味】味は粘り少なく、さっぱりとした味わい。

【料理】煮物、赤飯、さだげご飯など

【来歴】中世に長門国(ながとのくに)守護を務めた厚東氏(こうとうし)の時代の食文化が想定される農産物。武士は小豆を煮て皮が割れることを「切腹(せっぷく)」と結びつけ、赤飯には必ずささげ豆を使っていた。生産量が少ないので市場に流通せず、朝市や農産物直売所でのみで販売される。

【時期】5月~6月初旬

市内で見られる山口県の伝統野菜

白おくら(しろおくら)

【生産地】長門市三隅地区(ながとしみすみちく)

【特徴】淡緑色で、肥大してもあまり硬くならず、粘りも強い。

【食味】おくら独特のアクも強くないため、生食に向く。

【料理】生食、サラダ、天ぷら、和え物、汁物など

【来歴】長門市三隅地区で60年ほど前から自家消費用として栽培されている。長門市の伝統野菜で、山口県内に7系統ある在来のオクラのうち、三隅系の白オクラは、優良な系統として高く評価されている。第二次世界大戦後にサイパンに出征していた帰還兵が種を持ち帰り栽培を始めたとされる。

【時期】7月上旬~10月頃

長門市「長門市伝統野菜「白オクラ」の目合わせ会~出荷は7月12日を予定~」

地這いきゅうり(じばいきゅうり)

【生産地】岩国市錦町、三和町、美川町、本郷村

【特徴】通常のきゅうりと異なり、スイカのように地べたで大きくなる。地を這うきゅうりのため、「地這きゅうり」と呼ばれる。太らせ大きくして収穫する。直径約5cm 長さ30cmで大きいものは1kg近いものもある。

【食味】

【料理】

【来歴】胡瓜(きゅうり)はヒマラヤ山麓が原産で、日本には6世紀頃に中国から伝播したとされる。

【時期】

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹
JA山口県 きゅうり 

武久蕪(たけひさかぶ)

【生産地】下関市武久地区(しものせきしたけひさちく)

【特徴】小型のカブで、色は純白。

【食味】肉質が緻密で甘みが強い。

【料理】漬物や煮食のほか、サラダなどの生食でも利用できる。

【来歴】1968(明治元)年から同地区で天王寺かぶを栽培し、これを改良したことに始まる。1934(昭和9)年には、武久かぶ採種組合が設立され、輸出もされた。1945(昭和20)年の太平洋戦争末期から栽培面積が減り、1989年頃には市場に出回らなくなった。2002年頃から、内日地区で、栽培や加工の取組みが始まった。

【時期】11月下旬~12月上旬

JA山口県 『下関 伝統野菜「武久カブ」を育てます!』
レファレンス共同データベース

つくねいも/仏掌芋(つくねいも/ぶっしょういも)

【生産地】山口市徳地(とくぢ)、阿東町

【特徴】いちょう芋に属する掌状の薯(いも)。調理などに利用しやすいように、切れ目を浅く改良されてきた。掌(てのひら)を広げたような独特の形から、別名、仏掌薯(ぶっしょういも)ともいわれる。

【食味】一般のヤマノイモに比べて粘りが強い。肉質は緻密で、すり下ろしたときの粘りが強く、調理後の光沢も優れ、香気に富み、良食味。

【料理】生のまま食べても消化が良い。とろろ、三杯酢、磯辺揚げから菓子用途まで幅広い。

【来歴】江戸時代から栽培記録があり、地域の特産物として大切に育てられてきた。ウイルス病などによる生産性の低下に対応するため、品種の改良や弱毒ウイルスの活用に努めている。

【時期】11月~12月

地方特産食材図鑑 つくねいも
山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹
JAグループ山口

徳佐うり(とくさうり)

【生産地】山口市阿東徳佐(あとうとくさ)(旧:徳佐村)

【特徴】白瓜(しろうり)。短円筒の俵型で、やや小型。果皮は淡い緑色の地に十本の濃緑の縦縞模様が入っている。果重1.0~1.5kg。

【食味】果肉が厚く、歯ごたえが良い。

【料理】主に粕漬けに利用。うりもみ(なます)、奈良漬など。

【来歴】山口県の徳佐地区で栽培されていた漬物用の瓜。現在は、宇部市東岐波(ひがしきわ)地域で栽培している。同地域は昔からスイカや瓜の栽培が盛んで、徳佐うりも少量ながら市場流通している。近年、奈良漬を作る家庭が減り、生産量は徐々に減少している。種や苗は宇部市(うべし)東岐波(ひがしきわ)の東部営農センターで扱っている。

【時期】6月~8月

地方特産食材図鑑 徳佐うり

とっくり大根(とっくりだいこん)

【生産地】周南市

【特徴】根形がとっくりの形をした小型の大根。首部の直径が1.5~2.0cm程度と細いが、尻太で、最大部の根径は6~8cm、根長は13~17cm、根重400~500g前後が一般的な大きさ。他の地区で栽培すると、なかなかとっくり型にならないといわれている。

【食味】辛みがやや強い

【料理】主に沢庵漬けに利用。

【来歴】山口県の瀬戸内沿岸にある徳山・新南陽地域で漬物用として栽培されてきた。栽培の始まりは定かではないが、100年以上の歴史が確認されており、明治時代から昭和の初期にかけて、この大根を漬物にした「徳山沢庵粕漬」が京阪神や関東をはじめ、全国各地に広く出荷されていた。現在では、周南市福川の羽島・かせ河原町・中綴(なかなわて)町の数戸の農家が段々畑で生産を続けている。収穫後の乾燥は、柿の木に吊して乾かす方法が今も続いており、この風景はこの地域の風物詩。

【時期】12月上旬~中旬

地方特産食材図鑑 とっくり大根
みんなの農業広場 とっくり大根

仁保きゅうり(にほきゅうり)

【生産地】山口市仁保地区

【特徴】長さは、30㎝程度で、重さは400g~500g程度のものが普通。

【食味】香りがよく、歯切れが良い。

【料理】生食、塩もみ、酢の物、辛し漬けなど

【来歴】在来品種の突然変異か、交雑によってできたものだと言われている。明治末期に仁保上郷(にほかみごう)の金坪(かなつぼ)集落で栽培。1929年には仁保キュウリの出荷組合も結成された。戦後になって生産は一時休止されたが、1978年に仁保農協によって復活。2022年現在、農家5軒で栽培されている。

【時期】7月~8月

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹

萩ごぼう(はぎごぼう)

【生産地】萩市

【特徴】短いゴボウで、葉ゴボウとして、葉柄と根の両方を食べることができる。

【食味】柔らかく、アクが少ない

【料理】ごぼう巻き、サラダなどにも使える。

【来歴】

【時期】

JAグループ山口
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萩ころげ蕪(はぎころげかぶ)

【生産地】萩市

【特徴】成長した大きな葉が横倒しになる様子が、転んでいるように見えるところから、名付けられたとされる。

【食味】肉質やわらかく、茎葉と共に利用できる。

【料理】かぶ雑煮(かぶぞうに)、煮物、炒め物、サラダ、漬物

【来歴】

【時期】10月下旬~12月

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹

萩たまげなす/田屋なす(はぎたまげなす/たやなす)

【生産地】長門市仙崎田屋(せんざきたや)地区、萩市霧口(きりぐち)

【特徴】一般種に比べて、実がとても大きく、重さが1kgにもなることがある。大きくなってもツヤがあり、種子はほとんど入っていない。

【食味】長大であるが果肉はきめ細かで、とても柔らかな肉質。果皮も柔らかく、むきやすい。糖類の量が多いため甘みが強い。加熱により果肉のトロリ感が増す。

【料理】焼きなす、田楽からイタリア料理まで幅広く利用できる。

【来歴】昭和初期から山口県長門市田屋地区で栽培されていた特産野菜。1975(昭和50)年代に廃れて隣接の萩市に種が渡り、農家数戸で栽培されていたものを「萩たまげなす」として復興した。評判が徐々に広まって、栽培が今日まで続けられてきた。

品種名は「田屋なす」だが、重さ500g以上の品質の良い果実を「萩たまげなす」として販売している。その大きさと味にたまげる(おどろく)ことから「萩たまげなす」と名づけられており、1株から3本~5本しか採れない貴重なナス。

【時期】5月下旬〜7月中旬

地方特産食材図鑑 田屋なす
萩市総合政策部産業戦略室

萩にんにく(はぎにんにく)

【生産地】萩市大島(おおしま)

【特徴】萩在来系。一般種に比べ、りん片が多く、外皮が薄紫色

【食味】にんにく特有の香りが強く、濃厚な味わいと風味が抜群。

【料理】鰹のたたき、馬刺し、ガーリック油、ガーリックバター、肉料理、中華料理など

【来歴】萩沖の大島に昔から伝わっている。島では「臭いにんにく」と呼ばれている。農家が自分で食べるために栽培する自家消費用のわずかな栽培のみ。

【時期】5月末~6月中旬

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萩わけぎ(はぎわけぎ)

【生産地】萩市大島(おおしま)

【特徴】萩在来系。球根は「萩にんにく」と同じく、薄紫をしている。

【食味】ねぎと比べて、刺激も少なく風味がよいのが特徴。

【料理】薬味、和え物など。山口県の郷土料理の一つである「ぬた」にも使われる。

【来歴】わけぎは、平安時代から、日本で食べられていた。現在、在来種は激減している。2006年に山口市(旧:秋穂二島(あいおふたじまそん))で復活した。

【時期】11月~3月

JAグループ山口
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彦島夏播甘藍(ひこしまなつまきかんらん)

【生産地】下関市彦島地区(ひこしまちく)

【特徴】キャベツ。葉は薄く、柔らかい。2kg程度の重さで球のしまりが良く、形ができてから中が充実する。そのため、収穫時期が早いと球が軽い。寒さに弱く、凍傷害で葉が紫色になる。

【食味】葉が柔らかく、甘味が強い。

【料理】千切りなど生食、サラダなど

【来歴】1953(昭和28)年下関市彦島の植田省己氏らによって「野崎甘藍(のざきかんらん)」と「黄葉サクセッション(きばさくせっしょん)」の交雑によって育成された。凍傷害を受けやすかったことで一時期栽培は減少したが、近年、産地復活が進められている。

【時期】11月下旬~1月

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彦島春菜(ひこしまはるな)

【生産地】下関市彦島地区(ひこしまちく)、内日地区(うついちく)

【特徴】葉は、濃い緑色で、独特の縮れが入った縮緬が多い。葉柄は白く幅が広い。半結球。葉色の濃い系統(晩生)と淡い系統(早生)がある。

【食味】白菜(はくさい)より硬く、高菜(たかな)より柔らかく、歯切れがよい。

【料理】漬物に用いられるが、油との相性が良く炒め物にも適する。炒め物、混ぜご飯の具、中華風あんかけ、漬物など

【来歴】「下関の彦島で農家が代々栽培してきた」という説と「長崎白菜から改良された」という説がある。明治時代末期から昭和30年代まで彦島地区で盛んに栽培されていた。栽培は一旦、途絶えたものの、近年、内日地区で復活している。

【時期】12月上旬~中旬

地方特産食材図鑑

山口甲高玉葱(やまぐちこうだかたまねぎ)

【生産地】山口市秋穂二島(あいおふたじま)

【特徴】小玉、貯蔵性が高い。西日本の玉葱の元祖と言える品種。

【食味】水にさらせば辛味がやわらぎ、シャキシャキとした食感になる。空気にさらせば栄養分が抜けすぎず、辛味成分だけを蒸発させることが出きる。加熱すると甘味が増す。

【料理】生食、サラダ、薬味、ドレッシング、炒め物、揚げ物、煮物など

【来歴】1920年頃に秋穂二島村(あいおふたじまそん)の中村亀吉氏が山口の気候に適する品種の育成に着手した。当初、北海道の中村磯吉氏より「札幌黄」という品種を譲り受け、栽培を始めたが、緯度を下げた西日本では、なかなか、うまく行かなかった。15年間もの試行錯誤の末、1935年に栽培に成功し、山口甲高玉葱「山口丸」と名付けられ、市場に出回るようになった。1961年には山口甲高玉葱生産協議会が結成され、小玉で貯蔵性に優れていた山口甲高玉葱は、山口県での玉ねぎ栽培の主力品種となった。しかし、1971年頃になると収量性の高い後発品種に主力が移り、1980年頃には、山口甲高玉葱の栽培は途絶え、種の保存のみとなった。

2005年になると、復活の動きが出てきて、県農林総合技術センターが、種苗会社が30年近く保管していた種を譲り受け、試験場での採取栽培を開始した。2006年からは、山口市で学校給食向けの栽培が開始された。

山口甲高玉葱(山口丸)は、近年出回っている品種の源流といわれており、多くの貯蔵用品種がこの品種の系統を引き継いでいる。現在、生産されている山口甲高は生産者にとって、より栽培しやすい品種へと改良され、在来品種は栽培されていない。

【時期】5月~6月頃

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹

わさび(わさび)

【生産地】岩国市錦町(にしきまち)、周南市鹿野(かの)地区

【特徴】鹿野で確認された在来系は、わさびの新芽である「がに芽」が多いのが特徴。

【食味】甘み、辛み、香りが優れている。

【料理】薬味

【来歴】150年以上前から岩国市錦町などで盛んに栽培されている。同地は、中国山地を源流とする錦川の清らかな水と、夏でも涼しい気候風土によって、良質なわさびが育つからで、標高が高い山中で、水が豊富に出ている場所で栽培されている。

【時期】6月中旬~9月中旬

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹
JAグループ山口 

 

その他、山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹には、以下の品種名がありますが、詳細は不明でした。

  • 横野ねぎ 下関市
  • いんげんまめ(田万川在来系)
  • いんげんまめ(阿東町在来系)
  • せり(在来系)下関市
  • 湧田わけぎ

 

3.山口の伝統果樹

伊予柑(いよかん)

【生産地】周防大島町(すおうおおしまちょう)

【特徴】糖度12度以上にもなる甘い柑橘

【食味】果肉は柔らかく果汁が多く、甘みと酸味ともバランスがよい濃厚な味わいが特徴

【料理】生食、カットフルーツ、缶詰など

【来歴】「伊予柑」は、全国生産量の約9割が愛媛県で生産されているが、元々は山口県で発見された。1886(明治19)年に山口県阿武郡東分村(現:萩市)の中村正路氏の園で発見された偶発実生。「オレンジ」と「ミカン」が掛け合わさったものとされるが、親品種は明らかでない。当初は、穴門柑(あなどかん)や、穴門みかん(あなどみかん)とも呼ばれていたが、1889(明治22)年に、愛媛県松山市の三好保徳氏が原木を購入して愛媛県に導入し、苗木を育成して近隣の農家に配り栽培を奨励した。山口県では、周防大島町で1975(昭和50)年頃から本格的な栽培が行われている。島で生産している伊予柑のうち、糖度12度以上などの条件を満たしたものは、特選品として「島そだち」というブランド名で出荷している。

【時期】12月頃

愛媛のま果樹園
ぶちうま!やまぐちnet.

角太郎ゆず(かくたろうゆず)

【生産地】山口市

【特徴】無核ユズ、阿東の文化財に指定されていた。

【食味】-

【料理】-

【来歴】1900(明治33)年に、椿角太郎氏が島根県鹿足郡木部村吹野の正法寺にあった核無し柚子(たねなしゆず)の穂木を乞うて数本持ち帰り、枳殻(からたち)の台木に接木(つぎき)したところ、1907(明治40年)ごろから実をつけるようになった。正法寺の原木はすでに枯死しているという。果実はひらたい球形で、きわめて小型であるが、食酸量はふつうの柚子と変わらない。1957(昭和32)年10月19日に山口県文化財「無核ユズ」として指定されていたが1963(昭和38)年の豪雪により惜しくも枯死し、県の指定を解除された。現在2世も枯死寸前で3、4世が成木となっている。

地元の人は角太郎の名に因んで「角太郎ユズ」とよんでおり、核無しの特性を備えているため、穂木を乞う人が多く近隣に広まっている。伝来のはっきりした地方的品種の原木として貴重なものである。

【時期】

山口県河東総合情報サイト

岸根栗(がんねぐり)

【生産地】岩国市美和町河平(こうひら)地区、岸根(がんね)地区ほか

【特徴】大粒。果実は30g以上あり、栗の中では最大級の大きさ。つやのある美しい実。

【食味】甘みが多い。

【料理】貯蔵性があり、料理用にも適している。

【来歴】時は遡り、1180年の源頼朝の挙兵に始まった源平の戦い後、屋島(やしま)で敗れた平家の落ち武者が、宮島(みやじま)から広島県と山口県の県境付近を流れる小瀬川(おぜがわ)の上流の山口県坂上村(現、岩国市美和町坂上地区)に逃れ、大字岸根(おおあざがんね)の白滝山(しらたきやま)に城を築き暮らすようになった。その一族の中に接木(つぎき)の名手がおり、地元の坂上村と広島県栗谷村(くりたにむら 現:大竹市)の在来種の栗に接木し、その方法を近くの農民に伝授したのが、がんね栗の原点となったとされる。

1913(大正2)年「全国栗品種名称調査会」で510種の中から、「他に類のない優秀品種」として評価され、農水省の優良品種となった。その際、審査員から名称を聴かれ、とっさに採種した集落名・岸根(がんね)と答えたために、この栗の品種は「岸根栗(がんねぐり)」になったと言われる。

2010(平成22)年に「がんね栗」の現状を憂慮して有志5名で設立した「がんね栗の里を復活させる会」を設立し、企業組合を経て株式会社がんね栗の里を設立した。現在、JA「やまぐちブラント」に登録されるなど県を上げてPRしている。

【時期】晩生種で例年10月5~10日頃を目安に収穫

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹
株式会社がんね栗の里HP 

こっこう(こっこう)

【生産地】上関町祝島(かみのせきちょういわいしま)

【特徴】果樹。シマサルナシ(=ナシカズラ)の仲間で、キウイによく似て小型にしたような形状だが、果実の周りに毛は生えていない。

【食味】サルナシには、第三の医学といわれている、ゲルマニウムが含まれているらしい。

【料理】生食、ジャム、酢や焼酎などにつけて飲む

【来歴】古来「こっこう」という果樹があり、その実は長寿の仙果といわれた。鹿児島県種子島(かごしまけんたねがしま)や紀伊半島(きいはんとう)南端の和歌山県(わかやまけん)東牟婁郡(ひがしむろぐん)串本町(くしもとちょう)大島(おおしま)でもシマサルナシを「こっこう」と呼んでいる。「こっこう」は、島から持ち出しても実がならないと言われている。また日持ちがしないことや市場に多く出回らない、まさに幻の果樹である。

山口県の祝島には、不老長寿を求めた中国・秦(しん)の始皇帝(しこうてい)が、紀元前257年に日本に除福(じょふく)を遣(つか)わし、不老不死の果樹を探したという伝説も残っている。また、和歌山県の串本(くしもと)のすぐ近くにも同じく徐福の伝承を濃厚にもつ熊野新宮(くまのしんぐう)がある。

【時期】8月下旬~9月上旬

山口県不老長寿伝承「仙果を食す」

西条柿(さいじょうがき)

【生産地】萩市、美祢市(みねし、旧:美東町(みとうちょう))など

【特徴】実の形は縦長で、4本の溝がある独特な形をしている。渋柿のため渋抜きをして食す。脱渋することで甘くなる。実に4つの溝があるため、干し柿を作る際にも機械ではなく、ひとつひとつ手作業で皮むきをする。

【食味】柿は大きいほうが甘いとされていて、西条柿も大きいほうが甘い。渋が抜けた西条柿は甘くとろける食感。

【料理】干し柿など

【来歴】西条柿の歴史は古く、西暦1000年頃から広島県を中心に栽培が始まったとされる。干し柿は16世紀頃の戦国時代には保存食として珍重されていた。島根県には毛利氏と尼子氏の覇権争いの際に毛利方から伝わったとされ、戦場跡には今でも樹齢500年を超える西条柿の木が存在する。山口県では県内のほぼ全域で栽培され、200年以上の古木が多く見られる。萩市では殿様にも献上されたとされていることから、江戸時代には既に県内で栽培が行われていたと考えられる。美祢市美東町には、水田の減反転作作物として導入された。石灰岩質の肥沃な土壌と、盆地ならではの日中と夜間の寒暖差により、甘くて色づきの良い高品質な柿ができる。

【時期】10月

ぶちうま!やまぐち.net

酢橙(すだいだい)

【生産地】周南市(しゅうなんし)大津島(おおづしま)

【特徴】初夏に白い花を咲かせ、冬に果実が実るが、冬が過ぎても実は木から落ちずに2~3年程度は枝に付いている変わった柑橘類。果実の色は、冬に橙色(だいだいいろ)になるが、春になると再び緑色になる。果実が熟しても木から落ちず、新しい果実と古い果実が同時に実ることから「代を重ねる」事に通じるとして、お正月の縁起物とされている。

【食味】香りが良く、酸味と苦みがある。

【料理】焼き魚、鍋用の柑橘酢、マーマレード等加工品

【来歴】酢橙(すだいだい)は島の農家なら必ず1本は栽培しているとされる。

【時期】9月~12月頃

山口県生活情報 山口県の伝統野菜・伝統果樹

長門ゆずきち(ながとゆずきち)

【生産地】萩市、長門市、下関市

【特徴】香酸柑橘類の一種。一つの果実の大きさはゴルフボールやや大きく、平均重は約50gと小玉で収穫に労力を要する。

【食味】まろやかな酸味で果汁が多く

【料理】さまざまな料理と相性がよい。酢の物、醤油とあわせて刺身や焼き魚、唐揚げ、豆腐、肉料理など。 加工品は果実酢、ポン酢、ジュース、リキュール、ドレッシング、ゆず胡椒、酢味噌、ジャム、ようかん、ういろう等。

【来歴】詳しい来歴は不明。山口県萩市田万川地域(現:萩市)で古くから庭先果樹として栽培されてきたとされ、同地が原産地とされる。本格的に栽培され始めたのは1965(昭和40)年頃。同一品種であると考えられていた「柚吉(宇樹橘・ゆずきち)」との違いが鑑定で明らかになり、「長門ゆずきち」と名付けられた。1998(平成10)年頃から栽培が拡大。2007(平成19)年に産地の長門大津農業協同組合、下関農業協同組合、あぶらんど萩農業協同組合の3農協で地域団体商標を取得。2013(平成25)年9月に、やまぐちブランドに登録。出荷量の約3分の1は生果として山口県内の量販店等や地元の道の駅等で販売し、残りは全農やまぐちを通して加工業者へ出荷している。

【時期】露地栽培で8月中旬から10月上旬

ぶちうま!やまぐち.net
みんなの農業広場「長門ゆずきち」

なつみかん/夏橙(なつみかん/なつだいだい)

【生産地】長門市(ながとし)

【特徴】天然記念物

【食味】-

【料理】-

【来歴】夏みかんの原樹は、江戸中期に萩市隣の長門市仙崎(せんざき)の青海島(おおみじま)大日比(おおひび)で発見され、1927年(昭和2年)に国の天然記念物に指定されている。この樹の沿革ははっきりとしていないが、南方産(なんぽうさん)の文旦系(ぶんたんけい)の柑橘果実(かんきつかじつ)が黒潮(くろしお)にのり、この付近の海岸に漂着し、その果実を拾い、種子をまいたものが生えたのではなかろうかといわれている。

【時期】

長門市ホームページ 大日比ナツミカン原樹

横野柿(よこのがき)

【生産地】下関市安岡町横野(やすおかよこの)

【特徴】富有柿(ふゆうがき)より一回り大きく、やや腰高でヘタの部分が少しくぼんでいる。縦半分に切った断面が台形に近い形をしていて、全体的に独特の丸みがある。果皮は比較的明るいオレンジ色で艶(つや)がある。

【食味】果肉は緻密でしっかりとしているが、食すと柔らかくとろける感じ。糖度は20度前後あり、非常に甘い。

【料理】生食、なます、ピューレ、ジャム、サラダ、きんとん等

【来歴】もともとは、山口県下関市安岡町横野の竹林に自生していた渋柿。今から280年程前に発見された。現在、その原木とされる柿木は天然記念物に指定されている。生産量が少なく希少な柿の1つ。渋抜きが難しい品種とされ、生産者も減りつつあったが、近年、個包装による脱渋方法の研究が進みかなり安定した状態のものが流通するようになってきた。現在は、愛媛県と高知県が多く生産している。

【時期】11月中旬ごろから12月中旬

旬の食材百科「横野柿(よこのがき):特徴や旬の時期と主な産地」

吉浦ポンカン(よしうらぽんかん)

【生産地】岩国市

【特徴】

【食味】

【料理】

【来歴】山口県原産の柑橘。山口県オリジナル品種「せとみ」「南津海(なつみ)」「ゆめほっぺ」の親となる交配育種である。JA呉管内では生産されている。

【時期】1月~2月

JA山口県 柑橘
JAグループ広島
山口県オリジナルかんきつの品種特性表

 

【参考資料】

山口県内の各地域における農林水産物
山口県生活研究所
JA山口 やまぐちの農産物 – 山口県に伝わる野菜
市内でみられる山口県の伝統野菜
山口県の伝統野菜・伝統果樹 一覧 
広かんらん栽培の歴史
山口地域地物普及推進協議会「農家の台所レシピ」

 

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