知ってる人は、これを選ぶ!ビタミン類がインゲンの2倍 ~愛知・岐阜の伝統野菜「十六ささげ」のすごい栄養価~

「あいちの伝統野菜」と「飛騨・美濃伝統野菜」に認定されている「十六ささげ(じゅうろくささげ)」という野菜があります。高温に強い野菜で、真夏に実を結ぶので7月中旬から9月中旬頃までが旬の時期です。この時期になると、「さやえんどう」や「さやいんげん」など、同じ旬の野菜と一緒にスーパーや販売所の店頭に並びます。

「十六ささげ」の種まき時期は5月上旬なので、栽培される方は、そろそる圃場の土作りなどの準備が始まりますね。
今回は、これを知ったら、思わず作りたくなる、買いたくなる「十六ささげ」の栄養価についてご紹介します。

十六ささげの特徴

「十六ささげ」は、緑色の長い紐(ひも)のような外見で、40㎝から長いものだと50㎝以上あります。それを10本ほどで束にして端をゴムまたは糸で縛った状態や、縛らずに野菜袋に入れて販売されています。

「十六ささげ」は、莢(さや)の中に、豆が16粒できることから「十六ささげ」と名づけられたといわれています。実際にはもっと多くの豆ができる長い莢で、その長さは40㎝ほど、長いものだと50㎝以上になるものもあります。

十六ささげ

莢が若いうちに食べます。形はいんげんに似ていますが、いんげんより柔らかく、あっさりしていて食味が良いのが特徴です。縛ったままの状態で、サッと茹でて、サラダ、ゴマ和え、卵とじ、パスタ、豚肉巻き、煮物など、さまざまな料理に合い、バリエーション豊かに食せます。

「十六ささげのゴマ味噌和え」は愛知の郷土料理として、農水産省「うちの郷土料理」にも紹介されています。

栽培が始まったのは大正時代(1912~1926年)からとされますが、本格的に普及したのは1945(昭和20)年以降です。現在の栽培地域は、愛知県北西部(愛西市・稲沢市)や岐阜県南西部(羽島市・本巣市)が中心ですが福島県や沖縄県などでも栽培されています。

十六ささげのスゴイ栄養価

さて、今回、ご紹介したいのは、栄養価です。
伝統野菜には栄養価や機能性1)の高い食材が多くありますが、「十六ささげ」も栄養価の高い食品と言われています。

どの栄養成分を、どれぐらい含んでいるのか、旬が同じ時期の「さやいんげん」と「さやえんどう」、「十六ささげ」の3つで比較してみたいと思います。

さやいんげん

さやえんどう

野菜の栄養成分は、今回は比較のために3品種とも日本食品標準成分表による数値を使いました。実際の成分は土壌・栽培技術・時期等によって変動することがあります。

必須ミネラル

まず、16種類の必須ミネラル類のうち7種類の多量ミネラルについては以下の表の通りで、突出して多く含まれているものはありませんでした。「さやいんげん」のカリウム、カルシウム、「さやえんどう」のリン、「十六ささげ」はマグネシウムが多く含まれています。

可食部100g当たりに含まれる多量ミネラルの比較

さやいんげん さやえんどう 十六ささげ
ナトリウム 1mg 1mg 1mg
カリウム 260mg 200mg 200mg
カルシウム 50mg 35mg 31mg
マグネシウム 23mg 24mg 36mg
リン 41mg 63mg 54mg

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より作成

次に、9種類の微量ミネラルについては鉄以外は「十六ささげ」が最も多く含有しています。特にモリブデンは多く含まれています。必ずしも含有量が多ければ良いというわけではないですが、モリブデンは、体内に存在するいくつかの酵素2)を活性化させるために必要な構成成分です。推奨量は成人男性30µg/日・女性25µg/日です。上限量は男性600µg/日・女性500µg/日で、過剰摂取してもすぐに尿から排泄されるため、健康な人であれば過剰症になる心配はありません。

可食部100g当たりに含まれる多量ミネラルの比較

さやいんげん さやえんどう 十六ささげ
0.7mg 0.9mg 0.5mg
亜鉛 0.3mg 0.6mg 0.7mg
0.06mg 0.10mg 0.12mg
マンガン 0.33mg 0.40mg 0.66mg
ヨウ素 Tr Tr 1µg
セレン 0µg 0µg 1µg
クロム 0µg 0µg Tr
モリブデン 18µg 24µg 74µg

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より作成

ビタミン類

特筆すべきなのはビタミン類の含有量です。3つの野菜のうち、比較対象となる12項目の内、7項目において「十六ささげ」に最も多く含まれていました。なかでも、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、ビオチンは、ほかの2品種の2倍以上の栄養価でした。

可食部100g当たりに含まれるビタミン類の比較

さやいんげん さやえんどう 十六ささげ
ビタ

ミン

3)

レチノール (0)µg (0)µg (0)µg
α-カロテン 140µg 0µg 40µg
β-カロテン 520µg 560µg 1100µg
β-クリプトキサンチン 0µg 4µg 0µg
β-カロテン当量 49µg 47µg 96µg
レチノール活性当量 520µg 560µg 1200µg
ビタミンD (0)µg (0)µg (0)µg
ビタ

ミン

α-トコフェロール 0.2mg 0.7mg 0.5mg
β-トコフェロール 0mg 0mg 0mg
γ-トコフェロール 0.4mg 0.2mg 1.8mg
δ-トコフェロール 0mg 0mg 0.3mg
ビタミンK 60mg 47mg 120mg
ビタミンB­1 0.06mg 0.15mg 0.06mg
ビタミンB2 0.11mg 0.11mg 0.09mg
ナイアシン 0.6mg 0.8mg 1.0mg
ナイアシン当量 0.9mg 1.2mg (1.5)mg
ビタミンB 0.07mg 0.08mg 0.11mg
ビタミンB12 (0)µg (0)µg (0)µg
葉酸 50µg 73µg 150µg
パントテン酸 0.17mg 0.56mg 0.43mg
ビオチン 4.5mg 5.1mg 9.7mg
ビタミンC 8mg 60mg 25mg

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より作成

食物繊維

もちろん、食物繊維も豊富です。水溶性食物繊維は「さやいんげん」と「さやえんどう」と同じですが、不溶性食物繊維は、ほかのものより1.5~2倍多く含んでいます。不溶性食物繊維は水分を含んで膨らみ、便のかさを増やすことで腸壁を刺激するので便秘解消につながります。 ただし、不溶性食物繊維ばかり摂り過ぎると、便が硬く大きくなって便秘の症状を招くことがありますが、「十六ささげ」を普通に食べていて、そこまでなることはありません。

可食部100g当たりに含まれる食物繊維の比較

さやいんげん さやえんどう 十六ささげ
水溶性食物繊維 0.3g 0.3g 0.3g
不溶性食物繊維 2.1g 2.7g 3.9g
食物繊維総量 2.4g 3.0g 4.2g

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より作成

抗酸化作用

抗酸化作用については、某青果市場の方から頂いデータが手元にあるのですが、愛知県東三河地区の「十六ささげ」と「さやいんげん」を比較した場合、約8倍の抗酸化作用4)があることが示されています。

コレステロール代謝改善

ほかにも、コレステロール代謝について、コレステロール代謝改善作用があることを突き止められています。

一般社団法人ぎふクリーン農業研究センターと岐阜大学との共同研究「飛騨・美濃伝統野菜におけるコレステロール代謝改善作用のin vivo評価」および「十六ささげといんげんのコレステロール代謝に対する影響の比較研究」より

この夏は「十六ささげ」を楽しもう

ということで、伝統野菜「十六ささげ」の栄養価は高い!機能性は高い!ということがおわかりいただけたと思います。
「さやいんげん」や「さやえんどう」も美味しいですが、「さやえんどう(絹さや)」はハウス栽培で年中食べられるし、「さやいんげん」は半分の長さしかありません⁉

伝統野菜の「十六ささげ」の旬は6月~9月で暑さど真ん中ですが、あっさりした味で食べやすく、なおかつ栄養たっぷり。夏バテ防止にも最適です!

なので、この夏は、ぜひ、伝統野菜「十六ささげ」を味わってみてください。スーパーなどに置いていなかったら「十六ささげないの~?」と言ってください。買ってくれる人が多いほど、在来種の種子も存続されます。

また、家庭菜園などで「十六ささげ」を栽培する際の種まき時期は、遅霜がなくなった5月上旬(地域によって多少前後します)が適期です。種を購入する場合には、愛知在来は「黒種十六ささげ」、岐阜在来は「十六ささげ」、大阪在来は「十八ささげ」、京都在来は「黒三尺」と言われることが多いです。いずれも、つるありインゲン豆の固定種です。個人販売よりは、出自のはっきりした種苗会社から購入することをお勧めします。

十六ささげの栽培を考えている人は、そろそろ準備する頃ですよー!

 

 

1)食品の機能性について

食品の機能性には、基本機能として、①栄養機能(一次機能)、②感覚・嗜好機能(二次機能)、生体調節機能(三次機能)の三つに分類されます。
第一次機能の栄養的機能は、食品の栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど)において、ヒトの健康の維持・増進、成長発育に係わるものです。
第二次機能の嗜好的機能は、食品の味や匂い、見た目、歯ごたえといった、ヒトの感覚に対する機能です。食品は薬とは異なり、いくら有効な栄養があっても、味や匂いなどが悪ければ(まずい)受け入れにくいものです。また、「変な味がする」とか「色が変わっている」というように、食品の腐敗や異物の有無などを見分ける上でも、この機能が重要な役割を果たしています。
第三次機能の生体調節機能は、体のいろいろな機能を調節する機能で、大きく6つに整理されています。それは、循環系調節(血圧をコントロールする)、神経系調節(ストレスをやわらげる)、細胞分化調節(成長を促進させる)、免疫・生体防御(免疫細胞を増やしたり、ガン細胞の発現を抑える)、内分泌調節(ホルモンの分泌を助ける)、外分泌調節(消化酵素の分泌調節)というものです。これらは、生活習慣病の予防や回復など、幅広く作用します。例を挙げると、最初に述べた温州ミカン、リンゴやお茶に含まれるポリフェノール類の抗酸化作用(生体防御)などがあります。しかし、あくまでも食品ですので、食べてすぐ効くとか、食べたから必ず治るというものではありません。
神奈川県「農産物・食品の機能性とは」より

2)アルデヒドオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼなどの酵素

3)ビタミンAは、レチノール活性当量で表されます。これは、動物性食品に含まれるレチノールの量と、主に植物性食品から摂取されるβ-カロテンなどのカロテノイドなどのプロビタミンAが、体内でビタミンAとして作用をする場合の換算量を合計がレチノール活性当量です。 栄養表示基準では、ビタミンAはレチノールとカロテン(食品によってはβ-クリプトキサンチンも考慮)から計算されます。

レチノール活性当量の計算式

レチノール活性当量(㎍RAE)=レチノール(㎍)+β-カロテン(㎍)×1/12+α-カロテン(㎍)×1/24+β-クリプトキサンチン(㎍)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(㎍)×1/24

 

4)抗酸化作用はスーパーオキシド消去活性、一重項酸素消去活性、ヒドロキシルラジカル消去活性について。

 

【参考資料】

岐阜県農政部農産物流通課「岐阜の極み 十六ささげ」
愛知県「つくっちゃおう【十六ささげ】」
(社)ぎふクリーン農業センター

 

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