野菜のタネはココをチェック!! ~家庭菜園用のタネを買う時に見るべき6つのポイント~

気候も良くなり、外で活動したくなる季節になってきましたね。そろそろ夏野菜の種まきの準備を始める方もいらっしゃるのではないでしょうか。

春(4月頃)に種を蒔く野菜の品種には、トマト、ナス、キュウリ、かぼちゃ、どうがらし、ししとう、オクラ、ゴーヤ、まくわうり、芽キャベツ、はくさい、ちんげん菜、小松菜、ねぎ、水菜などがあります。

そこで、今回は家庭で栽培する野菜のタネを、スーパーやホームセンターなどで購入する際のチェックポイントをご紹介します。事例には、特別なものではなく全国的に展開している大手スーパーと100均で購入したものを使用しました。

指定種苗には表示が義務付けられている

農作物のタネは、見た目からは品質や生産地がわからないため、種苗法に基づいた制度では、指定野菜のタネを販売する際には一定の事項を表示することが義務付けられています。

指定種苗には、穀類、豆類、いも類、野菜などの食用となる作物と飼料作物の全て、花き、果樹、芝草などの一部の植物の種苗があります。

野菜の場合は、アスパラガス、いちご、いんげんまめ、えだまめ、えんどう、おくら、かぶ、かぼちゃ、からしな、カリフラワー、キャベツ、きゅうり、ごぼう、在来なたね、しゅんぎく、すいか、セロリー、そらまめ、だいこん、たまねぎ、とうがらし、とうもろこし、トマト、なす、にら、にんじん、ねぎ、はくさい、パセリ、ブロッコリー、ほうれんそう、みつば、メキャベツ、メロン、ゆがおう、レタスなどが該当します。※いちご、メロンなどは草本性なので野菜に分類されています。

育ててみたい野菜の多くは指定種苗に当てはまるのではないでしょうか。これらの野菜のタネを購入する場合には、ぜひ、裏面の表示を確認して購入の参考にしていただきたいと思います。

チェックポイントは6つ

市販されている指定野菜のタネは、パッケージに以下の内容の記載が義務付けられています。

①表示をした種苗業者の氏名(法人は名称)及び住所

②種類及び品種(接ぎ木した苗木(果樹)は、穂木及び台木の種類と品種)

③生産地(国内産は都道府県名、外国産は国名)

④種子については、採取の年月日(又は有効期限)及び発芽率

⑤数量(重量、体積、本数、個数等)

⑥農薬の使用履歴(使用した農薬に含有する有効成分の種類及び使用回数)

これらの情報は、以下のような形で記されています。

ネット販売の場合でも以下のスクショように、同様の情報が記載されているはずです。
このサイトでは、有効期限・発芽率については、欄外で「※有効期限・発芽率につきましては在庫・時期等により変動いたしますので、お手数ですが、都度お問い合わせください。」としており、販売者名も欄外にあり、必要事項はすべて記載されています。

タネの種類の区別

まず、タネの種類には、固定種、在来種、F1種(交配種)があります。遺伝子組み換え品種は日本国内では流通販売されていません。すべて従来の育種方法で作られたタネだけです。

見分け方としては「社名+交配」や「一代交配」「F1」の表記があるかどうかです。このような表記があるものは種苗会社が育成したタネで、雑種第一代(F1)の品種です。育てやすい品種が豊富にあります。

 

一方、固定種の野菜の種は、どこにも〇〇交配といった記載はありません。ただし、〇〇育成という表記がある場合は固定種の場合もあります。固定種・在来種・伝統野菜に何も書かれていないのは、もともとは、それが一般的だったからです。最近はPRのために「伝統野菜シリーズ」や「固定種」といった表記をして判りやすくしているものもあります。特に伝統野菜を育ててみたいと思われる方は、パッケージに書かれた名前だけでなく、表示をていねいに確認してみてください。

下の写真は「作りやすい極早生枝豆」と書かれていますが、これは特徴であり品種名ではありません。品種名は裏面に書かれた「ふさみどり」です。このタネのパッケージには、交配やF1種とは書かれておらず、純系(固定)種です。

 

タネの生産地は国外が9割

野菜のタネの生産地は約90%が海外です。その理由はいくつかありますが、それについてはまた別の機会に記事にしたいと思います。

タネの生産地で多いのは、チリ、アメリカ、イタリア、中国、デンマーク、南アフリカ共和国、タイ、ニュージーランド、韓国、オーストラリア(豪州)です。これらは、種苗会社が日本の農作物の種子を持っていって栽培・採種しているもので、遺伝子的には日本の農作物の固定種や交配種です。

伝統野菜は国内で採種している品種もあるので、国内産が良い方は「生産地」を頼りにネット専門店などを探してみてください。先の枝豆「ふさみどり」の生産地は北海道です。

 

タネにも有効期限がある

タネにも有効期限があり、時間経過とともに劣化していきます。市販のタネは、自然な休眠状態にあるか、乾燥によって強制的に休眠状態に置かれています。いずれの場合も、採種後から時間が経つにつれ、タネ自身の呼吸によって養分を消費していくため、一定期間を過ぎると発芽能力が低下してしまいます。

保存する場合は、密封性のある袋や容器等にタネと一緒に乾燥剤を入れ、それを冷蔵庫で保管することをお勧めします。タネにも短命種と長命種があり、トマトやナスなどの長寿命の種の場合、一般家庭でも上手に保管すれば7年後でも発芽させることが出来るそうです。

ちなみに室温-1°C、湿度30%の貯蔵庫で保存されたキュウリの推定寿命は127年だそうです。

発芽率はあくまで目安

発芽率は、撒いたタネの粒数に対して、どれぐらい発芽するかの割合です。実際の発芽率を知るためには、撒くときに粒の数を数えておいて、発芽した数を計算しないとわかりません。10粒撒いて7粒発芽すれば発芽率70%という計算です。

タネの発芽は、温度や土などの環境等さまざまな条件に左右されます。また、発芽しても、その後、順調に育つかどうかは天候、土壌、栽培技術なども関係します。あくまでも目安として考えておきましょう。

種子処理は必要か?

タネの中には、種子処理を施してあるものがあります。種子処理とは、種子に付加価値をつけたもので、おおまかに種子消毒、コーティング処理、発芽促進処理の3つに大別されます。

種子消毒

種子消毒は、カビや細菌による病気の発生を防ぎ、畑に病害を持ち込まないように薬剤で処理したものです。種子消毒をしてある場合には記載が義務付けられているのでパッケージを確認すればわかります。

消毒されている場合には「チウラム 紛衣処理済1回」のように、使用した薬剤名や方法・回数が記載されています。下記のサンライト法蓮草の表記には「チウラム・キャプタン剤各1回処理済」と記載されているので、これらの薬剤を使用した種子消毒が行われているということです。薬剤処理されたタネを扱う時は、必ず手袋などで手を防護しておきましょう。素手で触るとかぶれることがあります。

 

無記載や「種子消毒なし」とあれば、消毒されていないタネです。「薬剤処理:薬剤処理なし 乾燥処理済」とあれば、薬剤は使用せず、乾燥殺菌をしているということです。下記のふさみどりの表記には「この種子は農薬を使用していません」と記載されているので、種子消毒は行われていないということです。

 

下の写真の「赤丸はつか大根」は無記載なので、種子処理はされていません。種子消毒していないなら、そう書いてくれた方がわかりやすいですよね。

 

コーティング処理

コーティング処理は、薬剤を粉衣(ふんい)したり、タネを撒く時の作業性を高めるために天然素材の粘土(ねんど)をコーティングしてサイズを均一化させたり、何粒どんな間隔でまいてたか判別しやすいように着色したりするものです。コーティング処理されたタネは、土の色に映えるピンクやオレンジ、黄、緑等の色がつけられているので一目でわかります。下記の写真は、「サンライト法蓮草」という品種のタネで、緑色の粉衣が施されています。

コーティング処理されたタネ

発芽促進処理

発芽促進処理は、プライミング処理とも言い、タネに物理的または生理的変化を加えることで種子の発芽を促進させる処理です。野菜種子の多くは、プライミング処理によって発芽にかかる時間が短縮し、発芽の揃いも驚くほど改善します。

このように、種子にはいくつかの処理が施され、付加価値が高められています。価格も手がかかっている分、やや高くなります。種子処理には、それなりのメリット・デメリットがありますので、調べてから利用するのが良いでしょう。

また、これらの種子処理が気になる方も少なくないと思います。その場合は、無記載や「種子消毒なし」「この種子は農薬を使用していません」と記載されているものを選ぶと良いでしょう。農薬を使用した場合は必ず記載しなければならないので、種子消毒されたタネの袋には薬剤名と回数が記載されています。

農薬を使わない消毒方法もある

薬剤を使用しない熱を使う消毒方法もあります。「乾燥処理済」というのは熱による種子処理です。この方法は古くからあるもので、なおかつ効果の高い方法です。温湯浸法(おんとうしんぽう)と乾熱法(かんねつほう)と両者の中間的な空気混合蒸気(くうきこんごうじょうき)による方法の三つがあります。例えば、水稲種子を60°Cの温湯中に10分間浸漬(しんし/しんせき)する温湯処理は、化学合成農薬を用いる必要がなく、減農薬栽培に対応できるため、近年利用が拡大しています。

ただし、種子の加熱処理は品種によって温度と時間が異なり、間違えると発芽しなくなるので、自分で行う場合はよく研究してからにした方が良いです。市販されているタネの多くは、特に手を加えなくても通常の方法で栽培することができます。

また、苗土の消毒方法としても、熱や火を使用したものは害が少なく、薬剤を使用せずに行えます。最も簡単な方法は、苗土に熱湯をかけるものです。また、夏の暑い時期に1か月ほど畑をビニールで覆う太陽消毒は、プロ農家も行っています。病気や虫によっては、枯枝や土の表面を焼き払うことで防げるものもあります。

種まきの時期や方法も確認しよう

野菜のタネはネットでも購入でき、その場合も品種ごとに記載されています。タネを購入する際には表記内容をよく確認してから購入しましょう。表記がわからない場合は、種子消毒の有無や有効期限、生産地など、自分が知りたい情報を販売元に確認した方が良いでしょう。自分の価値観にマッチしたタネを選んだ方が気持ちよく栽培できます。有機農法にこだわる方は「有機種子」として、有機栽培や自然農法で栽培した作物から採種したタネも販売されています。

また、種まきの時期や方法も記載されていることがほとんどです。そちらも確認しておくと、発芽率も上がり、育ちもよくなります。

伝統野菜も栽培してみよう!!

伝統野菜や固定種・在来種のタネは海外で生産されているものもありますが、国内で生産され、種子処理せずに自然のままで販売しているものも少なくありません。最初はうまく育たないかもしれませんが、育てた作物からは採種することもでき、そのタネを適切に保管しておいて、翌年に撒くという楽しみもあります。また、地域によっては、伝統野菜のタネを配布しているところもあります。ちなみに伝統野菜は、それぞれの地域の気候風土に適応した品種なので、栽培する地域近辺の伝統野菜がおすすめです。

この春は、ぜひ、伝統野菜の栽培にもチャレンジしてみてください!!

 

【参考資料】

農林水産省「指定種苗」
一般社団法人日本種苗協会
タキイ種苗「種子消毒」
宇津弘晃「種子処理技術の紹介」植物の生長調節 54 (2), 163-166, 2019一般社団法人 植物化学調節学会
農研機構「温湯処理による水稲種子の発芽促進効果」
農研機構「室温-1°C、湿度30%の貯蔵庫で保存された作物50種の種子寿命の推定」
日本伝統野菜推進協会「育ててみよう地域の野菜 ~伝統野菜のタネの配布情報~」

Follow me!