日本の伝統野菜-36.徳島県

1.地域の特性

【地理】

徳島県は日本の主要四島の一つである四国の東部に位置しています。総面積は4,146.80km2で全国36位です。徳島県に隣接しているのは3県で、北は香川県、南は高知県、西は愛媛県に隣接しています。東は太平洋に面し、紀伊水道(きいすいどう)を挟んで、その先に和歌山県があります。また、徳島県と兵庫県の間には、世界最長のつり橋である「明石海峡大橋(あかしかいきょうおおはし)」で淡路島を経て、鳴門海峡(なるとかいきょう)に架かる大鳴門橋(おおなるときょう)で徳島県鳴門市と兵庫県の南あわじ市を結んでいます。

徳島県域の森林面積は3,120㎢で県土の約75%を占めています。可住面積は1,010㎢で県土の約24%を占め、全国43位。人口は695,450人(2023年9月1日時点推計人口)で全国44位です。

県域の東西の距離は約107.37㎞、南北は79.03㎞で、全体的な地形は北辺が長い台形のような形をしています。

徳島県は県域の約8割が山地で占められています。 県の中央部には四国の脊梁(せきりょう)をなす四国山地(しこくさんち)の東部を占める標高1955mの剣山(つるぎさん)を中心とした剣山地(つるぎさんち)が東西に約60㎞連なっています。その北部には香川県との県境をなす標高800mほどの山々が連なる讃岐山脈(さぬきさんみゃく)が東西に延びています。この両山地に挟まれる谷間の部分が徳島平野(とくしまへいや)です。

剣山地は徳島県を南北に分ける分水嶺で、その北方を流れる吉野川(よしのがわ)は、日本三大暴れ川(あばれがわ)の一つで、利根川(とねがわ)の坂東太郎(ばんどうたろう)、筑後川(ちくごがわ)の筑紫次郎(つくしじろう)と並び、四国三郎(しこくさぶろう)と呼ばれています。水源は遠く高知県から発しています。吉野川の激流は、2億年の時をかけて約8kmにわたる大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)の深い峡谷を作っています。流れは、高知県から徳島県に入ると北流(ほくりゅう)し、三好市(みよしし)付近で東流(とうりゅう)に転じ、東の紀伊水道に向かうにしたがって川幅は広くなり、くさび形の徳島平野をつくっています。

吉野川の北側の讃岐山脈の標高は全般に低く、山麓(さんろく)には扇状地(せんじょうち)が発達しています。吉野川下流の低地は、勝浦川(かつうらがわ)および那賀川(なかがわ)下流の低地とともに阿南平野(あなんへいや)を作り、豊かな水資源に恵まれた水田地帯となっています。

分水嶺の南側斜面の山地は豊富な森林地帯となっており、広い平地は少なく、阿南市(あなんし)より南では山地が直接、海にせまった岩石海岸(がんせきかいがん)で、東北の砂浜海岸(すなはまかいがん)とは著しい対照をなしており、海は深く、港湾として適当な地形をもっています。

【地域区分】

徳島県北部は、古代、忌部氏が、吉野川流域を開拓したとき、粟がよく実ったので、この地域を「粟国」(あわのくに)といい、県南部の勝浦、那賀、海部三郡のあたりを「長国」(ながのくに)というようになったと言い伝えられています。後に統合され、令制国では阿波国(あわのくに)と呼ばれていました。

現在、行政組織の執行上では県内を大きく南部(なんぶ)・西部(せいぶ)、東部(とうぶ)の3圏域に分けています。市町村は8市、8郡です。
南部は、阿南市(あなんし)、那賀郡(なかぐん/ながのごおり)、海部郡(かいふぐん)
西部は、美馬市(みまし)、三好市(みよしし)、美馬郡(みまぐん)、三好郡(みよしぐん)
東部は、徳島市(とくしまし)、鳴門市(なるとし)、小松島市(こまつしまし)、吉野川市(よしのがわし)、阿波市(あわし)、勝浦郡(かつうらぐん)、名東郡(みょうどうぐん)、名西郡(みょうざいぐん)、板野郡(いたのぐん)があります。
ただし、各部局の個別計画等において県内を区分しているものもあり、たとえば、「徳島県保健医療計画」では「小松島市」は、南部圏域とされています。

徳島県HP

徳島県2023年4月調査 市町村別 人口・世帯数(日本人住民+外国人住民)

【気候】

徳島県の気候は、四国山地の北側と南側で大きく2つの気候区に大別されます。北部は典型的な瀬戸内気候に属し、温暖で全国的に見て少雨地域です。南部は典型的な太平洋気候に属し、四国山地の南東斜面を中心とした山地は、日本でも有数の多雨地域で台風や梅雨、秋雨の季節には記録的な降水量になることがあります。

県西部の山間部では沿岸部に比べ気温の変動が大きく、冬場には大雪による雪害が発生することもあります。

県内各地の年平均降水量で、木頭(きとう)観測所・海陽(かいよう)観測所・福原旭(ふくはらあさひ)観測所で3000mm以上となっています。一方、最も少ないのは剣山(つるぎさん)の北側の穴吹(あなぶき)および池田(いけだ)観測所で約1500mmとなっています。剣山系を境として、県北部の降水量は県南部の多いところのおよそ半分です。雨の多い年には剣山系南側では、4000mm以上に達することもあります。また、雨の少ない年には剣山系北側では、1000mm以下のこともあります。

各地の年平均気温は、県東部の海岸地方では約17℃で、県西部の山沿い地方に向かうに従い、次第に低くなる傾向にあります。 県内の山間部(剣山山頂は除く)の年平均気温は低いところで約12℃で、沿岸部と比べ5℃の差があります。 月平均気温の差は、夏は小さく、冬は大きくなり、ときには7℃にも達することもあります。

徳島地方気象台HPより

【農業の特徴】

徳島県の農業は、春夏にんじんをはじめ吉野川流域を中心にした野菜作や那賀川等の下流域での土地利用型農業が盛んです。全国上位の収穫量をさい誇る野菜も多く栽培しています。

にんじんは、収穫量全国3位で、トンネル栽培で、徳島の春夏にんじんとして、板野郡藍住町(あいずみちょう)、板野郡板野町、阿南市、吉野川市、板野郡上板町(かみいたちょう)を中心に生産しています。カリフラワーは、収穫量全国4位で、露地栽培で、徳島市、板野郡藍住町、板野郡上板町を中心に生産しています。甘藷(かんしょ)は、収穫量全国5位で、露地栽培で、鳴門市、板野郡松茂町(まつしげちょう)、徳島市を中心に生産し、商標「なると金時(きんとき)」としてブランド化しています。蓮根(れんこん)は、収穫量全国3位で、露地、ハウス・トンネル栽培により、鳴門市、板野郡松茂町、徳島市 を中心に生産されています。酢橘(すだち)は、全国の収穫量の98%を占め全国1位で、露地、ハウス栽培で、名西郡神山町(かみやまちょう)、名東郡佐那河内村(さなごうちそん)、徳島市を中心に生産しています。柚子(ゆず)は、収穫量全国2位で、那賀郡那賀町(なかちょう)、美馬市、美馬郡つるぎ町などの中山間地域を中心に生産しています。「木頭(きとう) ゆず」 はGI登録しています。

徳島県の農業において特筆すべきなのは、2018(平成30)年に、「にし阿波の傾斜地農業」が世界農業遺産に認定されたことです。その前年の2017(平成29)年には、日本農業遺産にも認定されており、日本の原風景とも言える山村景観や食文化、農耕にまつわる伝統行事など、地元の人々の手で守られてきた暮らしの在り方が評価されています。

県西部の「にし阿波」地域(美馬市・三好市・つるぎ町・東みよし町)では、400年以上にわたって急峻な傾斜地を利用した農業が続けられてきました。ここでは、棚田のような水平面をつくらずに傾斜地のまま農耕し、カヤなどの敷き草によって土壌流出(どじょうりゅうしゅつ)を防ぐのが特徴です。場所によっては斜度40度にもなる畑で農業を行うため、サラエやテンガ、フタツバなどと呼ばれる独自の農具を使用。ソバやアワなど在来品種の雑穀をはじめ、伝統野菜や山菜などを少量多品目で栽培しています。

徳島県の農林水産業の概要
農業の世界遺産
農林水産省HP 農林水産業システムの名称 「にし阿波の傾斜地農耕システム」

2.徳島の伝統野菜

徳島県には、伝統野菜としての明確な基準はありませんが、古くから地域の人々に親しまれてきた在来種の野菜や果樹があります。在来作物という形で、特定の地域で栽培され、農家が自家採種によって種苗の保存を続けながら栽培し続けた品種も少なくありません。

2010(平成22)年に設立された「阿波(あわ)伝統野菜研究会」や県立城西高校などが在来種の復活研究行い、美馬地区で昔から自家採取で. 細々と栽培していた「美馬太きゅうり」が掘り起こされるなどの成果があります。自然豊かな徳島の地には、まだまだ多くの品種が眠っているかもしれません。ここでは、徳島県の在来種として情報が取得できたものを掲載しました。今後も新たに発見される可能性があります。

阿波みどり(あわみどり)

【生産地】名西郡石井町((みょうさいぐんいしいちょう)、板野郡(いたのぐん)藍住町(あいずみちょう)・板野町(いたのちょう)

【特徴】白瓜(しろうり)、直径約8cm、長さは約30cm。果皮は鮮やかな淡緑色。

【食味】厚い果肉を持ち、歯切れがよい。

【料理】主に奈良漬

【来歴】徳島県では、昭和初期から白瓜を栽培していたが、1959(昭和34)年に在来種から優良系統を選んで固定し、阿波みどりと名づけた。

【時期】6月~9月

地方特産食材図鑑「あわみどり」
ルーラル電子図書館

 

阿波晩生大根(あわばんせいだいこん)

【生産地】吉野川下流域の平野部

【特徴】やや細身で、長さは50cmほど。表面は純白色で美しい外観。

【食味】歯切れよく、甘みに富んでいて、表面は純白色

【料理】沢庵(たくあん)用

【来歴】大正から昭和初期にかけて、全国一の生産量を誇った徳島県の沢庵(たくあん)は、「阿波沢庵」と呼ばれていた。「阿波晩生」は、昭和の初めに徳島県の農業試験場で、「宮重長太」と「堀江尻細」の交配固定種を選抜し、昭和7年から種子を一般配布して栽培が始まった。当時は、「たくあんに最適の大根」として高い評価を受け、地方品種として広く知られていた。しかし、昭和25年に大根のウイルス病が発生し、阿波晩生に大きな被害が出たため、病気に強い品種として「阿波新晩生(あわしんばんせい)」を育成したものの、徳島県の沢庵の生産は減少の一途をたどっており、明治から昭和初期にかけて全国の人々が支持した「阿波たくあん」の名声は時代や食生活の変化とともに忘れ去られようとしている。県内の一部の漬物メーカーがなんとか地元の味を守り生産している状況。今後も「阿波晩生」を漬けた沢庵を残していきたいものである。

【時期】12月中旬

農林水産省品種登録ホームページ「ダイコン」
漬物案内所

 

菊芋(きくいも)

【生産地】美馬市脇町(みましわきちょう)

【特徴】キク科ヒマワリ属の多年草。水溶性食物繊維イヌリンを豊富に含んでおり、スーパーフードとして注目されている。イヌリンは「天然のインスリン」とも言われ、糖質の吸収を抑えるとともに腸を整え、便通を良くする効果がある。

【食味】レンコンやリンゴのようにシャキッとした食感に、ゴボウのような味とほんのりとした甘みがある。

【料理】煮物にしても煮崩れせず、使い勝手が良い。サラダ・フライドポテト・パスタ・漬物・和え物など。

【来歴】菊芋という名は「花が菊、根が芋」に似ていることが由来となっている。ヒマワリのような鮮やかな黄色の花が咲く。

菊芋が日本に伝わったのは江戸末期あたりだと言われている。にし阿波(あわ)地域の菊芋は、もともと同地域で自生していたものを発見し、2013年頃から栽培が始まった。発見者は、現:キクイモ栽培加工消費研究会の会長・三笠桂司氏の妻とのこと。近所に自生しているのを見つけ育て始めたことが契機。近隣の農家20人ほどで栽培加工消費研究会を立ち上げ、休耕地などを耕し、栽培を増やしてきた。研究会では、菊芋を地元産直市で販売するほか、乾燥させたチップスや粉末にした商品など加工品も販売している。

【時期】11月下旬頃、茎が枯れたら収穫

 

北川小判いも(きたがわこばんいも)

【生産地】那賀町(ながちょう)

【特徴】果皮は赤、果肉は白

【食味】肉質が堅いのでおでんにしても煮崩れない

【料理】煮物、おでん等

【来歴】那賀町は徳島県の中央部やや東寄りに位置する標高500mの山間部である。これまで地場消費のみで外に出て行ったことがない非常に稀少な芋とされる。

【時期】9月~

 

久尾のチョロギ (くおのちょろぎ)自家採種

【生産地】海部郡海陽町(かいふぐんかいようちょう)(旧:宍喰町ししくいちょう)久尾(くお)地区

【特徴】中国から渡来したシソ科の多年草。地下茎の先端に1~3㎝くらいの巻貝状(まきがいじょう)の根塊(こんかい)ができる。この部分がチョロギとして食べられている。久尾のチョロギは大型で形がよく揃う。

【食味】味と食感はカリカリした梅に似ている。

【料理】漬物、天ぷら、梅酢で赤く漬けたものを、長寿を願う縁起物として、おせち料理や祝い事で食す。

【来歴】中国が原産で、日本には江戸時代に伝わった。黒川道祐(くろかわどうゆう)の『遠碧軒記(えんへきけんき)』(1675年)が初出(しょしゅつ)で、次いで、現在の広島県である安芸国(あきのくに)の農学者・宮崎安貞(みやざきやすさだ)の農書『農業全書』(1697年)と貝原益軒(かいばらえきけん)『菜譜(さいふ)』(1704年)に記載されている。さらに江戸中期の1735(享保(きょうほ)20)年の各藩の作物調査書には、備前(びぜん)・和泉(いずみ)・紀州(きしゅう)・加賀(かが)・越中(えっちゅう)・米沢(よねざわ)で「テウロギ」の名で記されている。明治期になると根菜として栽培法が紹介され、栽培が容易な上、珍妙な形であることから全国各地でわずかずつながら栽培されるようになり、1949(昭和24)年の調査書では全国23府県で栽培されていた記録がある。現在も産地は、東北をはじめ大分県や広島県などに点在している。これを町の特産野菜としたのが旧:宍喰町である。
チョロギは、「長老喜」「長老木」「千代呂木」とも書き、長寿を願う縁起物として食される。実際、チョロギには衰えた脳細胞を活発にする成分が含まれていることが、京都薬科大の山原助教授等の研究により明らかにされ、長寿につながる効能が期待されている。

【時期】11月~12月 初冬に土の中で育った白い塊茎を収穫する。

地方特産食材図鑑 久尾のチョロギ

宮瀬敏男, 上野明, 木谷哲也, 小林弘美, 河原有三, 山原條二「チョロギに関する研究(第1報)新規配糖体の単離と構造」YAKUGAKU ZASSHI/110 巻 (1990) 9 号p. 652-657

山原條二, 木谷哲也, 小林弘美, 河原有三「チョロギに関する研究(第2報)抗Anoxia作用と作用成分」YAKUGAKU ZASSHI/110 巻 (1990) 12 号p. 932-935

 

源平いも(げんぺいいも)

【生産地】三好市東祖谷(ひがしいや)、西祖谷山村(にしいややまむら)地域、つるぎ町(旧:一宇村(いちゆむら))

【特徴】小さなじゃがいも。品種の特性上、大きくは育たず、平均して卵大である。

【食味】味は濃く、煮くずれしない。

【料理】おでん・カレー等の煮物に最適。“でこまわし”と呼ばれる田楽(じゃがいも・石豆腐・こんにゃくを串に刺し、ゆずみそを付けて火であぶったもの)に使われる。

【来歴】地元では「ごうしゅいも」「ごうしも」「おくいも」「ほどいも」などと呼ぶ。

東祖谷村史によると1860(万延元)年頃に栽培が始められたとされる。原種に近いじゃがいもであり、先祖代々受け継がれ、現在も昔ながらの方法で栽培している。日本に初めてじゃがいもが伝来されたのは、1598(慶長3)年とされるから、そこから200年以上経って栽培されたことになる。
東祖谷は、昔、平家の落人が逃げのび住み着いたとされる地である。ほとんどが自家消費されていたが、1990年頃から地域活性化のための商品化が検討されはじめ、1997(平成9)年度から「地域特産作物発掘導入促進事業」において、東祖谷山村、西祖谷山村、一宇村で商品化への取り組みを開始した。「ごうしゅいも」は、大きく「赤いも」と「白いも」に分かれ、さらにいくつかの系統が混在している。1999(平成11)年、JA阿波みよしは、この地にだけ生育する地域限定作物「ごうしゅいも」の商品化にあたり商品名を検討する際、「赤いも」と「白いも」があることから、都を追われ祖谷地方に落ち延びた平家の一族に重ね合わせ、赤芋を平家(へいけ)、白芋を源氏(げんじ)にみたて、「源平いも」と命名し販売を開始した。

【時期】9月~3月

徳島県在来バレイショの系統分類と種苗生産
日本食糧新聞

 

鳴門れんこん(なるとれんこん)

【生産地】鳴門市大津町(なるとしおおつちょう)

【特徴】色の白さが大きな特徴。京都の料亭でも珍重されるほどの白さ。旧:吉野川(よしのがわ)の土壌によるとされる。

【食味】シャキシャキと歯切れが良く、柔らかい口触り。

【料理】辛子れんこん、れんこん御飯、きんぴらをはじめさまざまな料理に使える。

【来歴】大正8年(1919)に板野郡松茂村(現松茂町)の佐藤竹太郎氏ほか2人が、 岡山県から種蓮根を持ち帰って栽培したのが始まり。ただし、歴史が浅いため、自称創始者が大勢いる。当時は採算がとれず、あまり普及しなかったようである。
本格的に作付されるようになったのは、1946(昭和21)年の南海地震(なんかいじしん)によって大津町の東部地域が塩害の被害にあい、稲が大幅に減収したことなどから、塩害にあった水田を利用して蓮根を栽培する農家が増えたからだとされる。

【時期】旬は晩秋から冬にかけて。細くて白長い「新れんこん」は、6~7月が収穫期。

鳴門れんこん | 鳴との門(NARUTO-MON)

 

翡翠茄子(ひすいなす)

【生産地】阿波市

【特徴】一般的な青ナスや、白ナスとは別の品種。表皮の色が美しい薄緑色。

【食味】アクや苦味が少なく、トロっとした食感とあっさりした甘味が特徴。

【料理】油との相性が抜群で天ぷらや揚げ浸し、肉と一緒に焼いても美味しい。他の食材に色移りしない。

【来歴】数少ない日本の在来種なす。現在、阿波市の若手農家でつくるグループ「GOTTSO阿波(ごっつぉあわ)」が、地域をPRしようと生産に取り組み、商品名「美~ナス」として生産販売している。徳島県内の特定の農家で採種しており、吉野川の豊富な水と徳島のブランド鶏『阿波尾鶏』からでた有機肥料を使って栽培している。販路は、卸売市場を通さず、独自に開拓した産直市場や高級スーパーなどの売り先に販売している。県の「とくしま特選ブランド」にも認証されている。

【時期】7月中旬

GOTTSO阿波

 

美馬太きゅうり(みまふときゅうり)

【生産地】美馬市脇町(みましわきちょう)

【特徴】一般的なきゅうりに比べ、丸くて太い。重さは500~800gにもなる。皮は固いため、剥いて使う。種があるため、2つに縦割りして種を取り除いてから調理に用いる。形が崩れにくい。

【食味】一般的なきゅうりと比べ、歯ごたえのあるしっかりした食感とほんのりとした甘味。

【料理】生食、煮物、炒め物、特に冷や汁や漬物など地域の伝統料理に使われてきた。

【来歴】美馬市の在来きゅうりとして作り継がれてきた。何本かは収穫せず実をならしたまま黄色になるまで置き、種とりを行い、次作に取っておく。自家採種で大量生産ができないことや、食生活の変化等により、年々栽培面積が減少していたが、2007(平成19)年度に徳島県内の農業高校生の研究で取り上げられたことで、地元の生産者たちが貴重な伝統野菜として見直すきっかけとなった。美馬市の産直市運営団体では地元小学校で美馬太きゅうりの栽培・収穫・調理と、産直市での販売体験までを行う食育活動を開始し、次世代への伝承や、消費者への認知度向上に貢献している。
生産者の高齢化や気象条件の悪化等で、依然として産地の維持が困難な状況ではあるが、近年では徳島県立農業大学校で生産・商品開発が行われたり、新規生産者の掘り起こしや培に取り組みたいという若手生産者も現れ、伝統野菜を次代へ繋げる動きも出始めている。

【時期】7月上旬~11月

みんなの農業広場
伝統野菜を守り継ぐ「美馬太きゅうり」【テレビトクシマ】

 

山蕗池田ウマバ(やまふきいけだうまば)

【生産地】三好市池田町

【特徴】蕗(ふき)キク科フキ属の多年草。蕗は日本原産で近縁種の少ない独特の野菜。

春に地下茎から出てきた花の蕾(つぼみ)が蕗の薹(ふきのとう)で、葉の柄の部分が蕗(ふき)である。

【食味】山蕗は、一般の蕗と比較して、小ぶりで独特の強い香りと歯触りがあるとされる。

【料理】蕗の薹の天ぷら、蕗の煮びたし、佃煮、きゃらぶき等

【来歴】池田ウマバは徳島県の在来品種の蕗。現在は徳島県自生野生種由来の系統の中から選抜して育成された蕗である商品名「みさと」や蕗の薹専用品種の商品名「あわ春香」などが生産されている。これらの種子は、徳島県外への持ち出し不可となっている。

【時期】天然の蕗は3月~初夏

地方特産食材図鑑「みさと」
山ぶき新品種‘みさと’の育成
高品質早生系のフキ新品種「フキ徳島1号」(商品名みさと)
登録品種データベース
徳島県農業研究所ニュースP23

 

3.徳島の伝統果樹

酢橘(すだち)

【生産地】徳島市(とくしまし)、神山町(かみやまちょう)、佐那河内村(さなごうちそん)、阿南市(あなんし)など

【特徴】徳島の代表的な柑橘系果実。大きさはゴルフボールほど。酢橘といえば徳島というほど圧倒的なシェアを持つ。

【食味】皮がうすく、みずみずしく清々しい香り。

【料理】魚類、豆腐、麺類、肉類、吸い物などを彩るフレーバーや果皮の擦りおろし、薄くスライスしたものを添えるなど、さまざまな使い方が可能。産地では酢橘を半分に割り水に入れて飲用する。

【来歴】徳島では、江戸時代には酢橘を食用の果実として栽培していた。 戦後、1960年代に商業生産が本格化し、さらに1980年代にはみかんの転換作物として生産が拡大した。これによって、酢橘は徳島県を代表する特産物となった。現在、酢橘の全国シェア№1は徳島産で98%を占めている。1974(昭和49)年に酢橘の花が徳島県の県花に指定された。毎年、5月頃に可憐で愛らしい白い小花を咲かせる。

【時期】7月~8月

JAアグリあなん農業紹介

 

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