日本の伝統野菜-34.広島県

1.地域の特性

【地理】

広島県は、日本の本州の南西部にある中国地方の中央付近に位置しています。面積は、8,478.94 ㎢で、全国11位の大きさです(国土地理院全国都道府県市区町村別面積調2023年7月1日現在)。東西131.62km、南北118.79kmと、東西にわずかに長い長方形のような形の県です。広島県の大部分(72%)は森林に覆われ、平野部は河川流域と河口付近のみに限られています。可住地面積は2,311㎢です。人口は2,740,437人(2023(令和5)年9月1日推計人口)です。 広島県統計課「推計人口の推移」(令和5年8月)

隣接県は5県で、東は岡山県、北に鳥取県と島根県、西は山口県に接しています。南は瀬戸内海に面しており、「鳶ノ子島(とびのこじま)」と「瓢箪島(ひょうたんじま)」に広島県と愛媛県の県境があります。

北の鳥取県と島根県の県境には中国山地が連なり、東の岡山県との県境には吉備高原(きびこうげん)、その手前には世羅台地(せらだいち)が広がっています。南は瀬戸内海に面し、約140もの島々を有します。

広島県には、日本の地形には、山、海、谷、川、盆地、平野など全てが一県に揃っており、「日本の縮図」とも言われます。また、地形的な特徴は、北東から南西方向に延びる中国山地と平行に形成された階段状地形(かいだんじょうちけい)です。

「高位面(こういめん)」は、標高1000-1300mの道後山(どうごさん)・恐羅漢山(おそらかんざん)・冠山(かんむりやま)などの山頂脊梁部(さんちょうせきりょうぶ)。「中位面」は、世羅台地を含む小起伏、緩斜面の吉備高原面(高度400-600m)。「低位面」として、山麓平坦部の瀬戸内面(高度200m以下)の3つに大別されます。
これらの面は、いずれも地殻運動によって隆起した準平原の様相を見せています。

平野部は河川流域と河口付近のみに限られています。県西部の広島平野(ひろしまへいや)と県東部の福山平野(ふくやまへいや)が、それぞれ西東の中心となり、市街地を構成しています。県庁所在地の広島市は中四国最大の都市であり、政令都市に指定されています。

河川は,北西から南東,北東から南西に向う数条の断層谷に沿って流れる大小5,200余の河川があります。江の川(ごうのかわ)水系と太田川(おおたがわ)水系との2大水系のほか、瀬戸内沿岸部に東から高梁川(たかはしがわ)、芦田川(あしだがわ)、沼田川(ぬたがわ)、黒瀬川(くろせがわ)、八幡川(やはたがわ)、小瀬川(おぜがわ)などがあります。
江の川流域は県北東部の備北(びほく)に、太田川流域はほぼ県西部の安芸(あき)に相当します。県東部の備後(びんご)は芦田川、沼田川水系などになっています。江の川水系にあっては日本海に流下し,その他は瀬戸内海に注いでいます。太田川・芦田川・江の川を除いてその多くは比較的小規模なものである。

周囲を陸に囲まれた瀬戸内海は、「閉鎖性海域」と言われ、気候が穏やかで、自然に恵まれており、海域や沿岸には、多くの人が居住しています。山海の豊富な自然に囲まれ、農業・漁業が盛んなだけでなく、工業・商業も盛んです。

【地域区分】

広島県は、かつての備後国(びんごのくに)と安芸国(あきのくに)に相当する圏域で、現在は、都市機能と生活圏などから、大きく北部、東部、西部の3つに分けられることが多くみられます。
北部は、かつての備中国(びっちゅうのくに)および備後国(びんごのくに)の北部一帯に当たり、備北(びほく)圏域ともされ、庄原市(しょうばらし)、三次市(みよしし)があります。
東部は、備後(びんご)圏域ともされ、神石高原町(じんせきこうげんちょう)、府中市(ふちゅうし)、世羅町(せらちょう)、福山市(ふくやまし)、尾道市(おのみちし)、三原市(みはらし)があります。備後圏域の場合、岡山県笠岡市・井原市も含まれることがあります。
西部は、かつての安芸国(あきのくに)の大部分に相当します。現在は広島圏域ともされ、安芸高田市(あきたかたし)、北広島町(きたひろしまちょう)、広島市(ひろしまし)、安芸太田町(あきおおたちょう)、東広島市(ひがしひろしまし)、廿日市市(はつかいちし)、大竹市(おおたけし)、竹原市(たけはらし)、呉市(くれし)、府中町(ふちゅうちょう)、海田町(かいたちょう)、熊野町(くまのちょう)、坂町(さかちょう)、安芸太田町 (あきおおたちょう)、江田島市(えたじまし)、大崎上島町 (おおさきかみじまちょう)があります。

広島県の市町

広島県地域指定等区分図

【気候】

広島県の気候は、全体的に温暖ですが、瀬戸内沿岸と山間地域とで大きな差があります。沿岸地帯は瀬戸内海式気候で、冬でも晴天日数が多く、年平均気温15~16度年平均降水量1,000~1,100mmです。

北部の山間地帯は日本海側気候に分類されます。北部は緯度に比べて、冬は寒冷で、特に中国山地の山沿いの一部は豪雪地帯です。年平均気温は10~11度、年平均降水量2,000~2,400mmで沿岸部の倍の降水量です。山間部を中心に降雪量も多く、北広島町八幡の592cm、庄原市高野の582cmなど日本海側との脊梁部には、降雪量が3mから6m近くに達する豪雪地帯が広がっています。庄原市や三次市などの市街地でも80cm〜120cm程度の降雪量があります。

【農業の特徴】

広島県では、北部高冷地から沿岸島しょ部地域に至る多様な自然状況を生かして、米、野菜、果樹、畜産を基幹とした多様な農業を展開しています。しかし、基幹的農業従事者や総農家数は減少が進んでおり、耕地面積は50年前の約半分にまで減少してしまいました。自治体やJA等が新規就業者や担い手への研修や農地集積を支援することで、担い手の規模拡大が進んでいます。

また、『生産性の高い持続可能な農林水産業の確立』を基本理念とする2025広島県農林水産業アクションプログラムを策定しました。

今後、広島県では人口減少や少子・高齢化が進むことが予測され、特に中山間地域においては、より厳しい環境変化が見込まれます。中山間地域の基幹産業である農林水産業においては、経営力の高い経営体が中心となって、持続可能な生産構造を構築していくことが重要であり、あわせて集落や里山里海などを含めた環境が維持されていくことを想定しています。

平成26年から始まった「広島県産応援登録制度」は、広島県産の農林水産物のブランド化と、生産者の所得向上を図ることを目的としています。

広島県の農林水産業の概要

広島県産応援登録制度「農産物」

2.広島の伝統野菜

広島県は、伝統野菜の継承を積極的に行ってきた県ですが、特に県単位で認定したり、明確な定義を行ったりはしていないようです。基本的には、各地の農家が自ら栽培を続けて在来種を保存しています。2009 年から実施された「広島お宝野菜」プロジェクトでは、広島県農業ジーンバンクから青大きゅうり・観音ねぎ・矢賀ちしゃ・川内ほうれんそう・笹木三月子大根などが県内の農業生産法人等に有望な品種として提供され、地域活性化に繋げられました。

広島県農業ジーンバンクは、1988年12月に設立されました。ジーンバンクの目的は、「失われゆく農産物種子の保存とその再活用」で、1997年からは「地域特産物としての利用法探索」が新たな目的として加わりました。2009~2011年にかけては、県の事業である「広島こだわり野菜創出普及促進事業」を受けて3年間で約1,500点の特性調査と約150点の有望品種選定が行われました。これらの試験データは広島県農林振興センターのホームページで公開されていました。しかし、同センターは民事再生を経て2014年に解散、県営化され、2015年10月に一般財団法人広島県農林振興センターが設立され、農業ジーンバンクの管理運営は、同センターの地域振興部が担ってきました。現在は、一般財団法人広島県森林整備・農業振興財団が運営を担っていますが、ジーンバンク事業の利用低迷や費用がかさむことから、2023年3月31日をもって廃止されることとなってしまいました。当初、広島県農業ジーンバンクに保存している種子1万8,000点の内、6,000点を農研機構へ譲渡、ほかの1万2,000点は廃棄するとのことでした。これに対し、農家等から農業振興のために重要として存続を求める声が上がり、署名活動なども行われました。5月時点では廃棄は停止となり、1万2,000点の種子はジーンバンクの冷蔵庫で保管されており、県が種子の引受先(学術機関など)を探し、利用方法を検討している状態ということです。

広島県農業ジーンバンクは、研究機関にだけでなく、農業者にも無料で種を貸し出すという、全国的にも珍しい存在で、数々の在来種を復活させています。今後も何らかの方法で、必ず種子の保持を存続して欲しいと思います。

広島県農業ジーンバンクを守る会

1988年の『農業技術大系』野菜編第11巻地方品種広島県(執筆者:広島県農業試験場・船越建明氏)によれば、当時の地方品種として、▼シロウリ「矢賀」▼エンドウ「広島赤花」「あきどりきぬさや」「せときぬさや」「立花早生」▼エダマメ「一本草」▼サトイモ「大和」「深芋」「深川早生芋」「白ずいき」▼食用ユリ「広島大葉」▼クワイ「青くわい」「白くわい」▼ダイコン「白茎うぐろ」「笹木三月子」▼カブ「木坂かぶ(太田かぶ)」▼ネギ「観音」 ▼ワケギ「木原早生」「木原晩生1号」「寒しらず」▼アサツキ「吉和在来」▼ツケナ「広島菜」▼キャベツ「広かんらん」▼パセリ「鯉城」▼シソ「赤ちりめんじそ」▼タデ「紅たで」 ▼シュンギク「於多福」▼ホウレンソウ「温品」「川内」▼アスパラガス「セトグリーン」の28品目が挙げられています。

ルーラル電子図書館

その後、伝統野菜として栽培されたものや名称が変更されたもの、消失したものなどがあります。ここでは掲載できなかった品種もあると思われますが、その点はご容赦ください。野菜のほか穀類には、蔭小豆(いんあずき)、葡萄小豆(ぶどうあずき)、御器ねぶり小豆(ごきねぶりあずき)、黄粉大豆(きなこだいず)などがあります。

青くわい(あおくわい)

【生産地】福山市

【特徴】塊茎は球状で外皮は鮮やかな青紫色。草型は埼玉県の系統に比べて立性が強く、抽台しにくい。発芽を安定させるため、芽だしをしてから定植する。

【食味】ほろ苦さのなかに甘味が残る

【料理】煮物、炊き込みご飯など

【来歴】福山市のくわい栽培は、現在の福山市千田町の沼地に自生していたものを、明治35年頃、福山城周辺の肥沃な堀に持ってきたのが始まりとされている。また、江戸時代、福山藩が新田開発をする際に、芦田川の水を送るため網目状の用水路を増設したことから、多量の水を確保することができる環境にあったことも、くわい栽培が盛んになった一因とされる。福山市で栽培されたくわいは、「福山のくわい」として2020年に地理的表示 (GI) 保護制度にも登録されている。現在まで優良系統の選抜がなされ、高品質を維持し、等級・階級・サイズ毎に厳しく選別された「福山のくわい」は、高い評価を受けている。

【時期】11月~12月

広島県総務局広報課ひろしまラボ「広島県が生産量日本一!「慈姑」ってどんな野菜?

地方特産食材図鑑

青大きゅうり(あおだいきゅうり)

【生産地】福山市

【特徴】白いぼ系きゅうり。長さは約30cm、重さは1kg弱と大型。

【食味】果肉は厚く、外側には歯応えがある。内側はやわらかく粘りをもち、ほのかに甘い。

【料理】塩揉み・油炒めや煮物・漬物など

【来歴】大正時代から栽培されているが、晩生種で収穫量が少ないため、生産は減少。近年、自家用栽培が大半を占める。福山市では、どぶうりと呼ばれる。青大きゅうりは原産地の福山でも種子の入手がむずかしくなり、栽培者も消滅しかけていたが、ジーンバンクが種子を提供することで、旧世羅町で栽培が復活した。

【時期】6月~10月

うぐろ大根(うぐろだいこん)

【生産地】広島市

【特徴】葉は薊葉(あざみは)で、葉柄の毛茸(もうじ)は少なく細くて白い。根長は20㎝程度と短い。

【食味】

【料理】果肉が緻密、浅漬けにした場合の品質は抜群である。煮物、漬物

【来歴】浅漬けで抜群の味「うぐろ大根」。「うぐろ」とは,広島の方言で「モグラ」を意味する。大根の形が根元から先まで同一の太さで、長さが短く モグラに似ていることからこの名がついた。この品種は広島の在来である「三月子大根」と「ねじま大根」の自然交雑の後代から選抜されたものといわれている。栽培の歴史は古く、すでに江戸末期から観音地区や三篠地区で栽培されていた。昭和15年頃には早生と晩生の2系統があり、早生は白茎で水入り大根とも白茎うぐろ大根ともいい、晩生は青茎で沢庵用うぐろ大根と呼ばれていた。現在、残っているのは早生のみである。

【時期】10~12月

広島県農業技術センターだより1999年4月広島の在来作物(14)「うぐろ大根」

太田かぶ(おおたかぶ)

【生産地】安芸太田町

【特徴】株は2~3㎏、葉は大きく、幅広。

【食味】太田カブ菜漬は、古漬けタイプの漬物で、わずかな酸味があり歯切れもよい。

【料理】主に漬物、エディブルフラワーとして花を咲かせて出荷するものもある。

【来歴】山県郡安芸太田町(旧:加計町木坂、津浪、戸河内町)など太田川流域の標高200~300mの限られた地域で古くから栽培されてきた無農薬栽培のカブ。 この地方では「カブ菜」というのが一般的で、漬け物にして自家消費してきた。

1945(昭和20)年頃まで麻やキビ、アワの後作として栽培されてきた。カブ菜は冬の雪によって柔らかくなり、独特の味と風味が出る。暖地では良いものは出来ないが、雪が多く根雪になるほどでもいけない。

花軸が10センチくらい伸びた状態で収穫し漬け物にする。つぼみとそのまわりの柔らかい葉だけの収穫なので反収は大変に低く1t前後である。

長年、各農家で採種、栽培してきたことで、本来の太田カブ菜の特徴が薄れてきたため、1982(昭和57)年に県立農業試験場の応援を得て採種圃場を設置するとともに、優良種子の配布など行ってきた。以来、栽培技術の向上による収量の増加と良品生産に力を入れている。

【時期】3月上旬~中旬

ひろしま文化大百科 太田カブ菜漬け(おおたかぶなづけ)

小河原おくら(広島おくら)

【生産地】広島市安佐北区小河原町

【特徴】一般的な5角形のオクラと比べると、小河原おくらの切り口は8~9角形。実は大きく、緑色がやや薄くて肉厚。毛茸(もうじ)が少ないので、塩ずりする必要がない。

【食味】軟らかくて粘りが強いのが特徴

【料理】天ぷら、酢の物、煮物、生食

【来歴】広島伝統野菜の一つであり、安佐北区小河原町の農家が自家採種で守り続けている独自のオクラ

【時期】7月上旬から9月上旬

JA広島 小河原おくら(広島おくら)

於多福春菊(おたふくしゅんぎく)

【生産地】広島市安佐南区・安佐北区

【特徴】葉っぱの形が丸いのが特徴。大葉種で葉幅が広く、葉の切れ込みが浅く、肉厚。

【食味】春菊独特の苦みが少なく香もまろやか。とても軟らかい

【料理】鍋物、サラダ

【来歴】春菊の原産地は地中海沿岸で、日本には17世紀に伝わったとされる。広島市では、1955(昭和30)年代から安佐南区祇園や安古市地区で栽培されていた。1975年頃に病気に強く荷姿がよいものが選抜された。栽培農家は、2023年現在、登録上14軒だが、高齢化などにより9軒で栽培されている。自家採種なので、各農家さんにより丸みの具合が違ったりする。

【時期】10月~3月

八百屋へ行こう

川内ほうれん草(かわうちほうれんそう)

【生産地】広島市安佐南区川内

【特徴】

【食味】 詳細不明

【料理】

【来歴】

【時期】

観音ねぎ(かんおんねぎ)

【生産地】広島市西区観音地区

【特徴】普通の葉ねぎより白色の部分がやや多い。

【食味】特有の香りや風味、そして非常に柔らかいのが特徴。

【料理】すき焼き、鍋物によく合う。お好み焼き、ネギ焼など

【来歴】明治の初めに京都から九条ねぎの種を持ち帰り、その後西区の観音地区で改良が重ねられたのでこの名がついた。観音地区の地質は太田川の砂が蓄積した土地なので、ネギの栽培には好条件。ワラで束ねてあるのが観音ねぎの目印。

【時期】6月~1月。秋~冬が一段とおいしくなる時期

JA広島市 観音ねぎ

祇園パセリ(ぎおんぱせり)

【生産地】広島市安佐南区祇園地区

【特徴】緑の色が鮮やかで、刻みの細かな葉形を持つ全国でも珍しいパセリ。添え物としてだけでなく、さまざまな料理に幅広く使われている。

【食味】肉厚で、柔らかく香り高い。

【料理】添え物、和え物、スムージー、サラダ、煮物、炒め物など

【来歴】1950(昭和22)年に現:安佐南区祇園地区で栽培を始めたのが「祇園パセリ」のはじまり。品種は「パラマウント」から選抜された「鯉城」。「鯉城」は広島城の別称。祇園地区では優良な種を選別して育成。種は各農家が毎年自家採種している。この地区で代々引き継がれる種は一般には販売されず、祇園地区から出ることはない。

【時期】通年栽培しているが、旬は10月~3月

広島のお宝野菜祇園パセリ

絹さやえんどう(きぬさやえんどう)

【生産地】尾道市因島

【特徴】味が良く、姿が美しい目と舌で楽しめる。1989年(平成元年)および2019年(令和元年)に営まれた大嘗祭(だいじょうさい)に広島県の供納品として選出された。

【食味】シャキシャキした食感で

【料理】和え物、みそ汁、ちらし寿司など料理の彩り

【来歴】1975年頃から盛んに栽培されるようになった。「量より質」の産地への転換を打ち出し、因島きぬさやえんどうのブランド化へとつながった。品種は、年内収穫の作型においては美笹豌豆(みささえんどう)、越冬栽培においてはニムラ赤花を栽培している。

【時期】美笹豌豆10月下旬~1月上旬、ニムラ赤花3月下旬~5月上旬

野菜情報35号2020年3月

笹木三月子大根(ささきさんがつこだいこん)

【生産地】広島市安佐南区長楽寺

【特徴】丸くて甘い「聖護院大根」と、春先まで収穫できる「三月子大根」を交配した品種。水分が少ないため割れやすく栽培が難しい。

【食味】水分が少なく、甘い

【料理】天ぷらを含め、余すところなく料理できるとされる。

【来歴】広島市安佐南区長楽寺の故・笹木憲治氏が育種した品種。出荷が減る2、3月においしいダイコンを生産したいとの思いで14年かけて改良し、1980年に種苗登録にこぎつけた。家族で毎年栽培し、種子を守り続けてきた。現在は、孫の笹木功士氏が栽培に力を注いでいる。一時は生産者が減ったものの2000年に地元朝市の目玉商品として取り上げられて以降、近隣の地区で再び栽培が広がった。

【時期】2~3月

広島県農業技術センターだより1999年10月ひろしまの在来作物₍15₎笹木三月子大根

田尻南瓜(たじりなんきん)

【生産地】福山市田尻町

【特徴】田尻なんきんは扁平(へんぺい)で大きく、外皮に「ちりめん」と呼ばれる強いしわがある。

【食味】

【料理】煮物、汁物など

【来歴】1638年、島原の乱に出兵した福山藩主:水野勝成とともに九州に渡った住民が、帰路に寄港した薩摩から日本かぼちゃの種子を持ち帰ったのが始まりとされている。文化・文政の頃に藩主の命により、縮緬(ちりめん)なんきんに改良され、田尻の特産品として昭和30年代ごろまで盛んに栽培された。後継者不足や西洋かぼちゃへ転換が進み栽培が途絶えていが、2011年に田尻なんきん振興会が復活させ、2017年現在まで毎年栽培し,翌年のための種を保存して伝統野菜をつないできた。

【時期】12月頃

田尻の未来を考える会

温品ほうれん草(ぬくしなほうれんそう)

【生産地】広島市東区温品、安佐北区飯室

【特徴】茎がしっかり太く、長さがある。色は淡緑。葉の先端は丸みを帯びていて、一般的なほうれん草よりも葉の切れ込みが鋭いのが特徴。

【食味】硬くて大味な感じを受けるが、茹でると柔らかく甘みが強い。

【料理】和え物、炒め物

【来歴】1956(昭和31)年ホウレンソウ種苗登録第1号となった品種で、育成者は安芸郡温品町(現在の広島市東区温品町)の榎木為一氏である。発表当時は耐暑性の強い早生種として全国的に話題となった品種である。その後、F1種の普及につれて徐々に作られなくなり、姿を消した品種で、原種はもう無くなったと思われていた。1992(平成4)年、ダム工事により湖底に没する三良坂町灰塚の平尾虎雄氏より灰塚在来ホウレンソウとして提供された。その来歴は、当時の営農指導員宮本勝三氏により「温品」であることが明らかとなった。

【時期】11月~1月初旬

旬の野菜 – 温品ほうれん草 – 広印広島青果

農業技術センターだより1997年2月 広島の在来作物(7)「温品ホウレンソウ」

葉牛蒡(はごぼう)

【生産地】広島市安佐北区、安佐南区、廿日市市

【特徴】短い根に長い茎と大きな葉がついており、根ではなく、葉茎、主に葉柄を食用にする。

【食味】独特の香りと柔らかく、シャキシャキ感

【料理】天ぷら、炒め物、胡麻和えなど

【来歴】中国から渡来し、平安時代には薬用として利用されていた。葉牛蒡は、関西地区での需要が中心で、大阪、京都、奈良、和歌山、石川、広島、香川、高知、長崎などで栽培され流通しているが、『地域の伝統野菜「葉ごぼう」の生産地と消費地の地理的構造』によると、広島県産は一定の流通量があり,しかも他県では全く売られていなかった。県内のみの流通とみられる。

【時期】1月下旬〜4月上旬

『地域の伝統野菜「葉ごぼう」の生産地と消費地の地理的構造』P25

広甘藍(ひろかんらん)

【生産地】呉市 広町(ひろまち)、郷原町(ごうはらちょう)

【特徴】

【食味】柔らかい葉と甘味

【料理】

【来歴】広甘藍は明治末期から大正初期にかけて、現在の呉市広の篤農家たちによって育成されたキャベツで、昭和初期には県外にも出荷されるほどであった。広地区を中心に盛んに栽培されていたが、1965(昭和40)年頃にはほとんど栽培されなくなった。 2010(平成22)年、広カンラン生産組合を設立し、産地の復活に取り組んでいる。

【時期】

呉 幻の伝統野菜 かんらん

東広島青なす/下志和地青なす(ひがしひろしまあおなす/しもしわちあおなす)

【生産地】東広島市(ひがしひろしまし)

【特徴】果皮が美しい緑色

【食味】肉質がきめ細かく濃厚な味わい。加熱調理で絶品のトロットロの食感に変わる。

【料理】アクが少ないので、浅漬けやサラダに使える。

【来歴】三次(みよし)の在来品種である「下志和地青なす」の種を東広島市八本松の「ジーンバンク」栽培をスタート。東広島の青なすとして、採種し産地化していく会「あおびー倶楽部」も発足し、7つの農家が、それぞれの想いを持って栽培している。

「東広島青なす」は、東広島市農林水産物販路拡大推進協議会(事務局:東広島市産業部農林水産課)が推進している認証制度「東広島マイスター」に認定されている。

【時期】7月

東広島青なす

広島菜(ひろしまな)

【生産地】広島市安佐北区、安佐南区川内地域

【特徴】高菜、野沢菜とともに日本三大漬菜に数えられる

【食味】ピリっとした風味とシャキっとした歯ごたえ

【料理】広島菜漬、焼きそばの青菜

【来歴】広島菜は,慶長2年(1597)に導入されたとの通説がある。江戸時代に藩主の参勤交代に随行した安芸国観音村(現広島市西区観音)の住人が帰路京都本願寺に参詣し、同所で種子を入手し、帰郷して栽培を始めたといわれている。川内地域での栽培は130年の歴史。有力な説として、川内地区の歴史が記されている『佐東町史』によるものがある。「広島菜は,1892(明治25)年頃川内村の青年木原才次が,京都西本願寺にお参りの帰り,多様性の珍菜(観音寺白菜)の種をもらいうけ,帰郷後,白菜と交配し,新品種を作り出した。それが,広島菜の原点である。」と記されている。

【時期】11月~1月

JA広島市

広島紅蓼(ひろしまべにたで)

【生産地】広島市安佐南区

【特徴】蓼の紅色の葉は見た目の彩りがよく、また香りがよく臭みを消す。

【食味】ピリッとした辛みがある

【料理】刺身のつま、薬味

【来歴】100年以上の歴史があり、先人から引き継いだ技術で緑色ではなく、鮮やかな紅色に育てている。広島紅蓼ブランドを守るために1975(昭和50)年に「広島蓼協同組合」設立。小規模ながら全国シェア2位。しかし、当初10名だった会員も高齢化等による生産者の減少により、現在は6名となり、後継者確保が課題である。

【時期】通年

広島県中小企業団体中央会

深芋早生芋(ふかがわわせいも)

【生産地】広島市安佐北区深川地区

【特徴】小型のさといも。早生種

【食味】肉質はきめ細かく、やわらかい。で、8月下旬から9月下旬にかけて収穫される。

【料理】

【来歴】

【時期】8月下旬~9月下旬

矢賀うり(やがうり)

【生産地】広島市中区矢賀地区

【特徴】肉質が柔らかいのが特徴。鮮やかな緑色に黄色の縦縞を持つ。大きさは、1個が300g~400gの中型。

【食味】耐暑性が強く夏に苦みの出にくい系統の選抜が行われ、現在の品種が完成した。

【料理】浅漬け、中型より大きくなったものは奈良漬け

【来歴】昭和30年代(1955年~1964年)に矢賀で栽培されたのが始まりとされる。その後に種の選抜が行われて現在の品種ができた。広島市東区役所でも栽培し、一般の人も見ることができる。

【時期】7月下旬~8月上旬

ひろしま市民と市政

矢賀ちしゃ(やがちちゃ)

【生産地】広島市東区矢賀(やが)地区

【特徴】ふつうのサニーレタスより葉先が赤く、細かい縮れが多く、ほろ苦いのが特徴。病害にも強い品種である。

【食味】

【料理】

【来歴】大量生産種の影響で昭和末期に栽培されなくなってしまったが、20年ほど経った2000年頃に矢賀の農家飯田森一さんが保管していた種を使って栽培が再開された。です。チシャは茎や葉を折ると乳状の液が出ることから東西共通に乳草と呼ばれ、転じた古名「知佐(チサ)」が訛ってチシャになったのが平安時代末期とのこと。歴史のある野菜として親しまれている。

【時期】

JA広島市 矢賀チシャ

わけぎ 木原早生/木原晩生1号(きはらわせ/きはらばんせいいちごう)

【生産地】尾道市向島町

【特徴】葉の太さは細め、分けつは多い。球の外皮は黄褐色、肉の皮色は白色、葉色は濃緑で、耐寒性が強い。産地では「寒さ知らず」と呼ばれている。

木原晩生は、球は大きくて丸く、外皮は赤褐色。産地では「紫種」と呼んでいる。

【食味】肉質は柔らかく、マイルドな香りと甘みがある。

【料理】ぬた和え、海鮮炒め、オムレツなど和洋中のメニューに合う。

【来歴】明治初期に尾道市向島町に導入されたのが栽培の始まりと言われる。現在では、栽培技術の進歩により産地として周年出荷体系がほぼ構築されている。

瀬戸内海に面する広島県の島しょ部は冬でも枯れない柔らかいわけぎが生産できることから古くから有数の産地で、広島県は全国の収穫量の6割を占めている。

広島県で栽培される品種は、わけぎ農家の自家採種を中心に選抜され継承されてきたものがほとんどであり、門外不出とされていることも多い。

【時期】10月~12月

地方特産野菜図鑑 わけぎ

野菜情報 28号 2018年4月

みんなの農業広場

 

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