2024年の消費者物価指数が公表されました! ニュースではやらない野菜の指数を見てみよう!
物価の動きを測る消費者物価指数
2025(令和7)年1月24日に総務省が2024(令和6)年12月の消費者物価指数を発表しました。
これに合わせて2024年の年間平均の指数も発表されました。
消費者物価指数(CPI)とは、全国の世帯が購入する商品やサービスの価格の変動を指数化した指標です。総務省統計局が毎月公表しており、物価の動きを測る物差しとして利用されています。
消費者物価指数は、物価の状況をより正確に把握するために「生鮮食品」や「エネルギー」を除いた指数が用いられることがあります。「生鮮食品」を除くのは、天候や世界情勢などによって価格が変動するため、物価の変動に大きな影響を与えるからです。また、「エネルギー」(ガソリン、電気代等)も、海外要因で変動する原油価格の影響を直接受けるため、これらの一時的な要因や外部要因を除くことが消費者物価の基調を把握する上で有用とされています。
2024年の消費者物価指数は?
消費者物価指数は、物価を比較する際の基準となる基準年が定められ、その年の物価を100としています。基準年は、消費構造の変化を反映させるために、5年ごとに改定(基準改定)されています。現在の日本の消費者物価指数の基準年は2020年です。
2024年の一年間の平均では、「総合」は108.5で、前年比2.7%でした。「生鮮食品およびエネルギーを除く総合」は107.0で、前年比2.4%でした。3年連続で2%超の水準となるのは1989年〜1992年に4年連続で2%超をつけて以来、約30年ぶりのことです。
「食料」、「生鮮食品」の消費者物価指数は?
では、「食品」の消費者物価指数はどうだったのでしょうか。野菜をテーマにしているサイトなだけに、つい気になってしまいます。ここでは「食料」や野菜など「生鮮食品」の指数をみていきたいと思います。
まず、前述したように2024(令和6)年の消費者物価指数の全国平均では、「総合」は108.5でしたが、「食料」だけだと117.8で前年比4.3%でした。また、「生鮮食品」だけでみると122.6で前年比7.0%と区分の中で最も高い上昇となりました。
2020年基準消費者物価指数 2024年(令和6年)全国平均
生鮮食品の物価上昇の原因
2024(令和6)年に生鮮食品の物価が上昇した原因としては、8~9月の記録手な猛暑による生育不良、10月の天候不順、12月の低温や少雨による水不足などの影響で、キャベツをはじめ白菜やレタスなどの葉物野菜が不作となりました。指定野菜であるキャベツは、2024年1月14日から16日の全国平均で1㎏あたり553円の高値をつけて以降、一年を通して、しばしば高値をつけ最高値を更新しました。2024年のキャベツの指数は128.2でした。同じ葉物の白菜は126.8、レタスは123.6でした。
果物もほとんどの品種で上昇しており、世界的にも価格が高騰したオレンジが139.9、ミカンも130.5、リンゴ132.6、柿134.4という指数で、2020年から3~4割価格が上昇したことになります。
生鮮以外の食品も上昇しており、特にコメ類の上昇が大きく、比較可能な1971年1月以降で最大の上昇幅となりました。また、コメなどの価格上昇に伴い、「おにぎり」や「すし」などの外食も上昇しました。
野菜の品目別の消費者物価指数は?
統計局「消費者物価指数・品目別価格指数・全国・年平均」には品目別の指数も出ているので、主要な生鮮食品や加工品についても見ていきたいと思います。
「生鮮食品」全体の指数は119.4で、消費量が多いまたは野菜や多くなることが見込まれる指定野菜のキャベツ、きゅうり、さといも、大根、たまねぎ、トマト、なす、にんじん、ねぎ、はくさい、ばれいしょ(じゃがいも)、ピーマン、ほうれんそう、レタスも軒並み上昇しました。
指定野菜の中で、指数の上昇が最も小さかったのは、なすの104.3で、最も大きかったのは、たまねぎの149.4でした。たまねぎは、この数年、天候不順による不作が続いており、2024年もたまねぎの主要産地である北海道が猛暑に見舞われ、収穫量が減ったり、小玉傾向になったり、兵庫県・淡路島で収穫時期に雨の日が多くなり腐りやすくなったりしました。また、2026年度から指定野菜に加わる予定のブロッコリーも、天候不順や生産コストの上昇、需要増加などにより、指数は125.9と上昇しました。
以下に、主要な野菜や果物、調味料などを抽出し、消費者物価指数を品目別に一覧にしました。インスタント食品などは除いています。
2020年基準消費者物価指数 2024年(令和6年)全国平均(品目別)
2020年=100
類・品目 | 指数 | 類・品目 | 指数 | |
総合 | 108.5 | 大豆加工品 | 115.6 | |
食料 | 117.8 | 豆腐 | 118.2 | |
穀類 | 121.0 | 油揚げ | 123.9 | |
米類 | 122.8 | 納豆 | 107.1 | |
うるち米A | 121.1 | 他の野菜・海藻加工品 | 112.3 | |
うるち米B | 123.7 | こんにゃく | 106.1 | |
卵 | 126.6 | 梅干し | 105.1 | |
鶏卵 | 126.6 | だいこん漬 | 119.0 | |
野菜・海藻 | 118.2 | はくさい漬 | 109.8 | |
生鮮野菜 | 119.4 | キムチ | 104.4 | |
キャベツ | 128.2 | こんぶつくだ煮 | 120.1 | |
ほうれんそう | 116.0 | 野菜缶詰 | 137.6 | |
はくさい | 126.8 | 果物 | 123.3 | |
ねぎ | 118.3 | 生鮮果物 | 125.6 | |
レタス | 123.6 | りんご | 132.6 | |
ブロッコリー | 125.9 | みかん | 130.5 | |
もやし | 110.6 | オレンジ | 139.9 | |
アスパラガス | 119.9 | しらぬひ | 125.8 | |
さつまいも | 110.4 | 梨 | 113.3 | |
じゃがいも | 118.0 | ぶどうA | 120.4 | |
さといも | 124.6 | ぶどうB | 126.1 | |
だいこん | 132.5 | 柿 | 134.4 | |
にんじん | 119.4 | 桃 | 118.4 | |
ごぼう | 115.2 | すいか | 128.4 | |
たまねぎ | 149.4 | メロン | 129.7 | |
れんこん | 92.7 | いちご | 117.8 | |
ながいも | 114.7 | バナナ | 122.7 | |
しょうが | 96.2 | キウイフルーツ | 122.9 | |
えだまめ | 117.3 | さくらんぼ | 106.8 | |
さやいんげん | 121.5 | アボカド | 131.5 | |
かぼちゃ | 124.6 | 果物加工品 | 99.4 | |
きゅうり | 119.9 | ナッツ | 99.4 | |
なす | 104.3 | 油脂・調味料 | 118.5 | |
トマト | 121.1 | 油脂 | 145.3 | |
ピーマン | 113.0 | 食用油 | 148.6 | |
生しいたけ | 110.8 | マーガリン | 125.0 | |
えのきたけ | 116.2 | 調味料 | 115.3 | |
しめじ | 107.2 | 食塩 | 106.9 | |
カット野菜 | 103.0 | しょう油 | 122.0 | |
乾物・加工品類 | 115.7 | みそ | 113.6 | |
乾物・海藻 | 120.8 | 砂糖 | 135.9 | |
干ししいたけ | 107.4 | 酢 | 109.3 | |
干しのり | 131.6 | ソース | 132.8 | |
わかめ | 113.1 | ケチャップ | 136.4 | |
こんぶ | 108.6 | マヨネーズ | 153.1 | |
ひじき | 115.9 |
統計局「消費者物価指数・品目別価格指数・全国・年平均」より作成
2024年の「生鮮食品」の消費者物価指数は、ほとんどの品目で上昇していました。「果物加工品」と「ナッツ」は100を切りましたが、ナッツの種類によっては2025年は値上げが予定されているものがあります。また、野菜や果物などは価格が激しく変動するため、農林水産省は「食品価格動向調査」として、主要な野菜であるキャベツ、ねぎ、レタス、たまねぎ、トマト、にんじん、はくさい、だいこんの8品目の小売価格について、週1回の定点調査を行っています。随時の動向が知りたい場合は、こちらが参考になるでしょう。農林水産省 食品の価格動向
2025年も物価上昇は続くのか?
物価の先行きについて、日本銀行は、「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024年度に2%台後半、2025 年度に2%台半ばとなったあと、2026年度は概ね2%程度となると予想される。」としていますが、関税の問題などもあるのでどうなるかわかりません。さらなる上昇もあるかもしれません。
生鮮食品についても、ここ数年間、世界的にも天候不順による不作がしばしば起きており、2025年も油断のならない年になりそうです。また、天候不順に加え、2021年頃から肥料や農業資材、動力光熱費、農機具費や人件費の値上がりにより、生産コストが利益を圧迫しています。
2020年からの生鮮食品の消費者物価指数の年次推移を以下のグラフに示します。基準値は2020年=100です。
統計局「消費者物価指数・品目別価格指数・全国・年平均」より作成
農産物の価格が高騰すると海外からの輸入を求める声が上がりますが、安易に輸入に踏み切ると、単年度の契約に留まらず数年の輸入継続に縛られる場合があります。そうなると国内が豊作になっても輸入を続けなければならず、今度は販売価格が下がり過ぎ、国内農家が利益を出せなくなってしまいます。農産物には栽培期間や農地を要するため、都合良く需給に対応できるわけではないのです。
私たち消費者は、天候不順などを踏まえ、都度、農産物の適正な価格を理解し、購入する必要があります。また、安定した価格で購入できるように地域の農業を守り、支えていくことを考える必要があります。
【参考資料】
統計局「消費者物価指数のしくみと見方 -2020年基準消費者物価指数-」
統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6 年)12月分及び2024年(令和6年)平均」
総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)12月分及び2024年(令和6年)平均」
農林水産省 食品の価格動向
統計局「消費者物価指数・品目別価格指数・全国・年平均」
【協会関連記事】
「農」しなくて大丈夫? ~自給的農業のススメ~