ここでしか出会えない伝統果樹!~徳島の自然が育んだ奇跡の柑橘「柚香(ユコウ)」~

徳島のユコウは、ごつい旨いんじょ!

本州から海を渡った四国の東部に位置する徳島県は、県土の8割を山間が占める自然豊かな地域です。かつては阿波国(あわのくに)と呼ばれ、伝統芸能の阿波踊りで有名です。また、鳴門の渦潮(なるとのうずしお)をはじめ、祖谷温泉郷(いやおんせんごう)や、かずら橋などの数々の素晴らしい景勝地があります。近年では世界の名画を陶板で再現して展示した大塚国際美術館も人気です。

写真:鳴門の渦潮

そんな自然豊かな徳島県には、希少な伝統果樹の柑橘があります。その名は、柚香(ユコウ)。その独特の風味の魅力は、地元の人々だけでなく、食通たちの間でも話題となっています。今回は、この「ユコウ」の魅力をご紹介します。

伝統果樹ユコウとは?

ユコウは、ユズとダイダイの自然交配によって江戸時代以前に生まれたと考えられている柑橘類です。徳島県の山間部を中心に栽培されており、地元では古くから親しまれてきました。しかし、その生産量は限られており、県外ではほとんど流通していないため、「幻の柑橘」とも呼ばれています。

ユコウの生産は、ほぼ100%徳島県産で、なかでも葉っぱビジネスやゼロ・ウェイストタウン上勝で知られる上勝町(かみかつちょう)が主要生産地です。

写真:ユコウ

ユコウの魅力は風味と香り

ユコウの魅力は、その味と香りにあります。

地元では「香りユズ、酸味スダチ、味ユコウ」と言われるように、ユコウには奥深い味わいがあります。スダチやユズに比べて、まろやかな酸味とほのかな甘みがあり、糖度が高くフルーティーな味わいです。その複雑で奥深い味は、一度食べたら忘れられないほどです。

また、ユコウは漢字で「柚香」と書きますが、その名の通り、皮にはユズにも似た爽やかな香りが凝縮されています。果汁だけでなく皮も料理や飲み物に使うことで、豊かな風味を楽しむことができます。

ユコウを使ったおすすめレシピ

ユコウは酸味も香りも控えめながら、奥深い味わいがあるため、「ほかの素材の味を活かしつつ酢の爽やかさを感じられる」といわれ、料理の下味やポン酢の隠し味などに料亭や料理店なども活用されています。

ポン酢やだし汁に垂らすだけで、味が格段に変わります。地元では酢の代わりも使われており、魚、肉、豆腐、麺類など、どんな食材にも使えます。

ほかにも、果汁を絞ってドレッシングにしたり、皮を薬味やジャムにしたりと、いろいろな使い方ができます。また、焼酎や炭酸水に加えても美味しくいただけます。

ここでは、今回、取材にご協力いただいた株式会社阿波酢造さんに教えて頂いたレシピをご紹介します。

オリジナルユコウポン酢

ユコウ果汁6:ユズ果汁4に、めんつゆやだし醤油を合わせれば、自家製ポン酢の完成。市販のポン酢とは一味違う、上品な味わいが楽しめます。

ユコウティー

ユコウ果汁を紅茶に加えて混ぜるだけ。それだけでレモンティーに似て風味の異なるユコウティーが味わえます。

ユコウドリンク

炭酸水、お酒、野菜ジュースなどに、ユコウ果汁をお好みの量加えます。いつもとは一味違うドリンクになります。

ユコウドレッシング:

ユコウの果汁とオリーブオイル、塩、胡椒などを混ぜ合わせれば、爽やかなドレッシングに。サラダやカルパッチョによく合います。

ユコウジャム:

ユコウの皮と果肉、砂糖を煮詰めれば、香り高いジャムが作れます。トーストやヨーグルトに添えてどうぞ。

ほかにも、すし酢に使ったり、唐揚げ、焼き肉のたれ、ラーメン、餃子のタレに加えたりしても美味しいそうです。

筆者は、上記の料理はもちろん、大根おろしとポン酢に、ユコウ果汁を加えて、唐揚げと一緒に食べたり、オリジナルカクテルを作ったり、オリーブオイルと合わせてフレーバードレッシングを作ったりしています。

ユコウのすごいパワー

ユコウの魅力は風味と香りだけではありません。ユコウ果汁には、私たちの美容や健康に役立つ成分が多く含まれているのです。

どの柑橘類も美容や健康に良いということはよく知られていますが、有効成分が果皮に含まれていることも少なくありません。ユズなどは果皮を削って使われます。

ところが、ユコウは、果汁の方に有効成分が多く含まれており、ここが他の香酸柑橘とは決定的に違う特徴だそうです。

「ユコウはユズやスダチとフラボノイド組成は類似しているが,ユズと比べるとエリオシトリン,エリオシトリンが含まれる点で異なり,スダチと比べるとノビレチン,タンジェレチンが含まれる点が異なっていた」(三宅,2015)とする研究報告もあり、ユズやスダチにはない機能性成分も有しており、一味違う柑橘といえます。

さらに、ユコウ果汁には、抗菌性・整腸またはや静菌性作用もあるとのことで、徳島県が国際特許を出願しています。

徳島大学大学院の研究者チームが取り組む「徳島クワトロシトラス」プロジェクトのサイトでは、「yukoubon」というユコウの魅力についてさまざまな角度から書かれた本がe-book(全64ページ)として無料でダウンロードすることができます。

柚香Book無料ダウンロード

ユコウを購入する方法は?

味よし、香りよし、成分よしのユコウを、ぜひ、食べてみたい、使ってみたいと思われる方もいらっしゃると思います。

ただ、ユコウは徳島県でしか栽培されておらず、収穫期10月下旬~11月の短期間。そして、収穫量は少なく、年間の収穫量は、100トン~500トン程度で、ユズの100分の1ほどしかありません。しかもユズと同様に隔年結果で、果実がたくさんなる表年(おもてどし)と、少ししかならない裏年(うらどし)があります。

そのため、スーパーなどでは売っておらず、果実を丸ごと手に入れようと思ったら、通販などになります。そんな方にオススメするのが、果実から搾汁した100%ユコウの果実酢です。

今回、取材にご協力いただいた株式会社阿波酢造さんでは、ユコウ果汁100%の果実酢を販売しています。これがあれば、どの季節でも100%のユコウを味わうことができます。

写真:ゆこう果汁

また、スダチ、ユズ、ユコウの味比べができる食卓三昧セットも販売しており、味わいを比べてみるのも楽しいです。

写真:食卓三昧セット

ユコウだけでなく、ほかにも徳島産のスダチ、ユズ、ダイダイにハチミツをブレンドしたドリンクや業務用やギフト用なども揃えています。

写真:徳島産スダチ・ユズ・ダイダイにハチミツをブレンドした無添加飲む酢ドリンクのセット

いずれも徳島勝浦・上勝を中心とした生産農家さんから納品された果実を100%使用しています。これさえ、あれば一年中、果実酢を味わえます。

株式会社阿波酢造

まとめ

ユコウは、その独特の風味と多様な用途で、私たちの食卓を豊かにしてくれます。

江戸時代以前から続いている希少な伝統果樹ユコウを、この先も長く生産・販売し続けて欲しいものです。

皆様も、ぜひ一度、ユコウを味わってみてください。

 

おまけ

関西方面から徳島への旅費が、なんと500円⁉

徳島県は、2025年4月に開幕する大阪・関西万博に訪れた来場者を徳島県内に呼び込むために、大阪などから徳島県に向かう高速バスやフェリーを片道分のみ500円で利用できるキャンペーンを実施するそうです。

対象者は、大阪市の夢洲で開催される大阪・関西万博の「徳島パビリオン」などへの来場者で、徳島県への興味・関心を持った方です。「交通割引クーポン」を手に入れて、割引チケットの予約・購入などすると片道分が500円になります。(残念ながら徳島県民の方は対象外だそうです)

この機会に、ぜひ、徳島にも訪れてみませんか?

徳島県HP「2025年大阪・関西万博を契機とした徳島県への誘客促進業務」

 

【参考資料】

徳島クワトロシトラス「柚香を知る」
徳島クワトロシトラス「柚香Book無料ダウンロード」
徳島クワトロシトラス「幻の果実柚香(ユコウ)の機能性とその応用展開」
三宅義明「国内地域特産の香酸カンキツ果実に含まれるフラボノイドの特徴」日本食生活学会誌  第26巻  第 2 号  71-78(2015)
株式会社阿波酢造

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