拡大するオーガニック(有機栽培)野菜市場-「The World of Organic Agriculture2019」から読み解く世界の動向
世界における有機農業とオーガニック食品の動向
伝統野菜は、農薬や化学肥料のない時代から地域に根づいてきた野菜であるため、有機栽培と相性の良い品種が数多くあります。
そこで、今回は、有機農業の世界的な動向を見てみたいと思います。
世界では有機栽培農作物の需要が増加傾向にあり、市場が急成長しています。
有機農業に関する世界的なデータを保有しているのは、FiBL (Forschungsinstitut für biologischen Landbau;有機農業総合研究所)という研究所です。
FiBLは、1973年にスイスに設立され、現在は、ドイツ、オーストリア、フランスなどヨーロッパ各国に拠点があり、有機農業に関する研究とコンサルティングに取り組んでいる機関です。
毎年、「有機農業の世界(The World of Organic Agriculture)」という市場調査資料を発刊しており、2月13日に最新の2019年版が公開されました。
発表によると、世界の有機食品の市場規模は970億米ドル(約900億ユーロ、日本円では現在のレートで約10.8兆円で年比約12.5%増)、有機圃場は6,980万haで、前年の5780万haから20%増加しています。
有機食品市場で最も大きなシェアを占めるのは米国で400億ユーロ、次いでドイツ100億ユーロ、フランス79億ユーロ、中国76億ユーロと続きます。
2017年は、多くの主要な国の有機市場が引き続き2桁の成長率を示しましたが、なかでもフランスは18%成長しました。一人あたりの有機食品の購買金額が高いのはスイスで288ユーロ。食品市場全体において有機食品比率が高いのはデンマークの13.3%でした。
急拡大するオーガニック野菜の栽培面積
では、野菜についてはどうでしょう?
有機野菜については同書のp125の統計>作物>野菜に示されていますので、そちらの内容を少し紹介したいと思います。
2017年の有機栽培野菜の総面積(676,000haほど)は、世界の野菜栽培の総面積(FAOSTATによると、2016年で6,200万ha)の1.1%である。世界で最も重要な4つの野菜栽培国(中国、インド、ナイジェリア、ベトナム)のうち有機栽培地域に関するデータは中国とナイジェリア、ベトナムについてのみ入手可能であった。有機野菜の栽培面積が最も大きい国は中国、次いでメキシコ、米国、イタリア、エジプト、フランスである。各国の栽培面積に占める有機野菜面積の割合が高い国は、デンマーク33.3%、オーストリア24.2%、スイス16.9%、メキシコ13.2%である。また、メキシコを除き、これらはヨーロッパの国々で、オーガニック食品の最大のシェアを占めている。さらに、スウェーデンとイタリアは、総野菜面積のうち有機の割合が高いと報告している。The World of Organic Agriculture 2019 P125より抜粋・翻訳
※FAOの生産統計は品目構成がヨーロッパ型であることや、統計が未整備の国があるため、正確な生産量の把握は困難。※FAOSTATは、FAO(国連食糧農業機関)が運営する世界最大かつ包括的な食料・農林 水産業関連のオンライン統計データベース。※世界的に共通して生産されている野菜の代表は、トマト、キャベツ(白菜)、たまねぎで、きゅうりやピーマンを含む唐辛子類も多い。
ちなみにアジアの有機栽培面積の割合は、中国は1.1%、台湾は1.8%、日本が0.4%、韓国は0.1%でした。
日本の気候は、温暖で雨も多いため雑草・害虫・病原体の活動が活発になるので、農薬に頼らざるを得ない面があります。このことが有機栽培を難しくしている面があります。
また、消費者の野菜に対する色合いや形状に対しての要求レベルが高いことも有機栽培の野菜を市場から遠ざけている一因です。
日本で有機栽培市場を拡大するには、ヨーロッパ市場のように有機栽培であることを優先し、形の揃いや色合いにはこだわらないという消費者の意識の変化が必要かもしれません。
次に、有機野菜の市場が、どのように推移してきたのか年次推移で見てみたいと思います。
実は、世界的には、オーガニック野菜の市場は驚くほど急激に拡大してきています。
以下は、同資料のp126にある“Vegetable:Development of the global area 2004-2017”のグラフです。
2004年105,253 haであった有機栽培面積は、ほぼ右肩上がりで推移してきましたが、特に2013年に294,317haと一段、増加し、2016年には441,493 haと急増しました。さらに2017年は675,980haと急拡大しています。
世界的にはオーガニック野菜の流れにあることは間違いないと言えます。
日本でも東京オリンピックを控え、外国人からの「食」に対するさまざまなニーズが表面化してきています。ニューヨークやヨーロッパからの渡航者には、ベジタリアンやビーガンも多く、野菜の安全性に対する要求レベルが高いため、今後、オーガニック野菜の市場が刺激されることが予想されます。
【参考資料】
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