成長を続けるオーガニック市場-「The World of Organic Agriculture2020」にみる世界の有機農業

世界の有機野菜市場の動向

今年も2月12日にFiBLとIFOAMから186か国のデータを収集した「The World of Organic Agriculture2020」が発行されましたので、野菜関連について一部内容を抜粋しながら、世界の市場をご紹介したいと思います。

FiBLとIFOAMについては、当協会のブログ記事『拡大するオーガニック(有機栽培)野菜市場-「The World of Organic Agriculture2019」』を参照ください。

拡大続く有機栽培の農地面積

「The World of Organic Agriculture2020」によると世界の有機農業の栽培面積は増加しています。

2018年末の農作物全体の有機栽培面積の合計は7150万haで、前年と比較して200万haとほぼ3%の成長を示しています。そのうち、有機農業の最大地域であるオセアニアの3600万haがほぼ半分を占めています。次いでヨーロッパが1560万haで22%、ラテンアメリカが800万haが11%、アジア650万haで9%、北米330万haで5%、アフリカ200万haで3%となっています。

国別でみると最も大きな栽培面積はオセアニアのオーストラリアで3570万ha、次いでアルゼンチン360万ha、中国310万ha、スペイン、ウルグアイと続きます。

現在、世界の農地のうち有機農地の面積割合は、わずか1.5%ですが、いくつかの国では、それ以上の高い割合の面積で有機農法が行われています。リヒテンシュタインでは全農地の38.5%、サモアは34.5%、オーストリアでは24.7%が有機農地です。これら3ヵ国をはじめヨーロッパのエストニア、スウェーデン、イタリア、ラトビア、スイス、フィンランド、スロバキアなど上位16か国では、全農地の1割以上で有機農業が行われています。(P20)

オーガニック製品に対する消費者の需要も世界中で増加しています。

有機食品および飲料の世界的な小売売上高は、2017年の970億ドルから、2018年に初めて1,000億ドルを超えました。(P138)

世界の有機野菜の栽培面積

次に、有機栽培の作物のうち野菜 (Fresh vegetables and melons) に絞った市場をみていきたいと思います。

2018年の世界の有機野菜の面積(Land use and crop categories in organic agriculture world wide 2018)は、387,352haでした。2017年の375,907haに対して3%増加しました。(同P75、77)

※野菜用に提供された2016年と2017年の合計面積は、これまでの年鑑のものと異なることに注意してください。これは、中国では2017年のデータが、メキシコでは2016年と2017年のデータが完全に改訂されたためです。(同P131)

有機野菜の種類別の耕作面積の内訳(Distribution of the global organic vegetable area by crop)は、果物20.8%、葉野菜17.0%、豆類15.8%、根菜類11.5%、詳細なし9.7%、うり類9.0%、その他8.3%、キャベツ・ブロッコリー等アブラナ類6.2%となっています。(同P128)

有機野菜の栽培面積の大きな国は、アメリカ64,461haで1位。次いでイタリア60,732ha、中国43,602haと続いています。(P129)

日本の有機野菜市場の動向

日本の有機食品市場規模は1,850億円

「The World of Organic Agriculture2020」の統計調査資料の中には、日本のデータはありませんでしたが、2019年3月に農水産省が公的機関としては初めて国内の有機食品市場規模の推計を行いました。

日本の有機野菜に限った市場規模の算出は不明です。

農水産相が行った調査によると日本の有機食品市場は1,850億円(推計)となっています。民間企業が行った2009年度に対し42%の拡大を示し、拡大傾向にあることを示しています。

同省によると調査方法には2009年の調査と同じ推計方法を採用しており、アンケートの有効回答数は4,530人としています。

「有機食品の購入・外食の頻度」で調査しており、結果は「ほぼ毎日」が3.3%、「週に2 ~ 3 日程度」が5.7%、「週に1回程度」が8.5%、「月に1回程度」が6 . 5 % 、「月に1 回未満」が12.1%でした。一方で「ほとんど利用していない」が54.8%と過半数を占める結果となっており、海外の市場拡大のペースに比べると伸びは鈍いものの、今後の潜在市場の可能性が大きいとみることもできます。

約4割が需要拡大を予想

また、農林水産省では、有機農産物を取り扱う流通加工事業者の動向も調査しており、有機農産物の取扱いについては、「現在取り扱っている」が21.2%、「今後取扱いと思う」が42.2%という結果を得ています。有機農産物を取り扱う理由については複数回答で「安全だと思うから」が82.9%、「消費者が求めるものだから」が56.9%、「環境に配慮した農業をしている農業者を応援したいから」が32.7%という結果でした。今後の需要についての質問には、「拡大する」が44.7%、「変わらないと思う」が32.5%、「縮小すると思う」が2.7%となっています。

農林水産省農業環境対策課がまとめた「国内スーパーマーケットにおける各種売り場の設置状況」では、「オーガニック食品のコーナー」の設置割合も増加傾向にあります。今後の設置については、「新たに設置したい」が9.9%、「設置数を増やしたい」が18.6%で、全体の約3 割を占める小売事業者が設置の意向を示しています。

オーガニックレストランの認証制度制定

2019年12月28日には、有機料理を提供する飲食店等の管理方法が告示され、飲食店用のオーガニック認証制度として、通称「オーガニックレストランJAS」制度が制定されました。これは、一定の基準を満たす有機認証レストランには「JAS規格」であることを認証するもので、レストラン分野では初めての制度です。認証の基準は、有機食材を80%以上使用する料理を5品以上提供することなどが条件となっています。

日本でも有機農作物への需要は徐々に増えてきており、消費者ニーズの高まりや東京オリンピックに向けて、ますます活発な動きが見られそうです。

【参考資料】

FiBL「Organic World」

FiBL「The World of Organic Agriculture2020」

農林水産省「有機農業をめぐる我が国の現状について」

農林水産省「有機農産物の出荷経路」

健康産業新聞

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