日本の伝統野菜-38.愛媛県
目次
1.地域の特性
【地理】
愛媛県は日本の主要四島の一つである四国の北西部に位置しています。総面積は5,676km2(2022年10月1日)全国26位す。愛媛県に隣接しているのは広島県、徳島県、香川県、高知県の4県です。東は香川県、徳島県、南は高知県に隣接しています。北は瀬戸内海に面し、小さな島々が浮かび、鳶ノ子島(とびのこじま)、瓢箪島(ひょうたんじま)に愛媛県と広島県の県境があります。また、「しまなみ海道」の西瀬戸自動車道(にしせとじどうしゃどう)多々羅大橋(たたらおおはし)、大崎下島広域農道(おおさきしもじまこういきのうどう)の岡村大橋(おかむらおおはし)の2か所で広島県と結ばれています。西は宇和海(うわかい)を隔てて、山口県、大分県と向かいあっています。海は太平洋と瀬戸内海に面しています。
香川県の森林面積は3,993㎢で県土の約70.3%を占めます。可住面積は1,673㎢で県土の約29.5%を占め、全国30位です。人口は956,787人(2023年1月1日時点推計人口)で全国39位です。県域の東西の距離は155.99 km、南北の距離は157.16kmです。
四国の山は主に東の剣山地(つるぎさんち)と西の石鎚山地(いしづちさんち)に分けられます。愛媛県では高知県の県境に沿って、東西約50kmに広がる石鎚山系が連なっています。石鎚山は標高1,982mの西日本最高峰で、日本百名山の一つに数えられます。標高1,500m以上の山を20座近く擁(よう)するこの山系は、四国山地の脊梁(せきりょう)をなすと同時に、西日本を代表する山々です。
山脈の北側には中央構造線と呼ぶ大断層が、海岸に沿って東西に走り、伊予三島市から西条市にかけて壮大な石鎚断層崖(いしづちだんそうがい)を形成しています。北流する川は、谷を深く刻み急勾配で落下して瀬戸内海に注いでいきます。瀬戸内海側は、海に面して松山市などが所在する道後平野(どうごへいや)や新居浜市、西条市など所在する道前平野(どうぜんへいや)が広がっています。
一方、南側は、重畳(ちょうじょう)とした山並みに、吉野川と仁淀川水(によどがわ)系の谷が複雑に入り組んでいます。吉野川水系は瓶ガ森(かめがもり)、仁淀川水系は石鎚山に源を発し、それぞれ遠く紀伊水道(きいすいどう)や、土佐湾(とさわん)に注ぎます。高知県との県境には、日本三大カルストの四国カルスト高原があります。
県南西部には、日本一細長い佐田岬(さだみさき)半島があり、瀬戸内海と宇和海(うわかい)の二つの海に面しています。宇和海はリアス式海岸が続き、多くの島々とともに大自然が織りなす風光明媚な景色が広がっています。瀬戸内海・宇和海には200余りの島々があり、海岸線の長さは全国5位(約1,700km)、宇和海南部ではサンゴも見られます。
愛媛県の一級河川は吉野川(よしのがわ)、仁淀川(によどがわ)、重信川(しげのぶがわ)、肱川(ひじかわ)及び渡川(わたりがわ)の5水系ありますが、吉野川は徳島県へ、仁淀川と渡川は高知県へ流れ、県内に河口があるのは重信川と肱川の2水系だけです。肱川では、10月頃から翌年の3月頃の期間の晴れた日の朝に「肱川(ひじかわ)あらし」と呼ばれる強風が発生します。これは、上流の大洲盆地(おおずぼんち)で蓄えられた冷気が霧を伴って肱川沿いを一気に流れ河口まで吹き抜ける珍しい現象です。
愛媛県は、律令国の頃の伊予国(いよのくに)に当たります。その名残から地方区分は、大きく、東予(とうよ)、中予(ちゅうよ)、南予(なんよ)の 3 つの地域に分けられます。
東予地方…新居浜市(にいはまし)、四国中央市(しこくちゅうおうし)、西条市(さいじょうし)、今治市(いまばりし)、越智郡(おちぐん):上島町(かみじまちょう)
中予地方…松山市(まつやまし)、伊予市(いよし)、東温市(とうおんし)、上浮穴郡(かみうけなぐん):久万高原町(くまこうげんちょう)、伊予郡(いよぐん):松前町(まさきちょう)・砥部町(とべちょう)
南予地方…宇和島市(うわじまちょう)、八幡浜市(やわたはまし)、大洲市(おおずし)、西予市(せいよし)、喜多郡(きたぐん):内子町(うちこちょう)、西宇和郡(にしうわぐん):伊方町(いかたちょう)、北宇和郡(きたうわぐん):松野町(まつのちょう)・鬼北町(きほくちょう)、南宇和郡(みなみうわぐん):愛南町(あいなんちょう)
県庁の生活経済圏域では、宇摩(うま)、新居浜(にいはま)・西条(さいじょう)、今治(いまばり)、松山(まつやま)、八幡山(やはたやま)・大洲(おおず)、宇和島(うわじま)の6つに分けられています。
【気候】
愛媛県は、瀬戸内海地域の地理的な影響を受けた気候として、降水量は比較的少なく晴天が多く、相対的に乾燥しています。一般的に、冬は北西の季節風、夏は南東の季節風が強いですが、瀬戸内海地域はいずれの季節風に対しても風下側となり、風上側で雨や雪が降ってしまうので比較的穏やかな天気になります。
東予・中予地方の瀬戸内海側と南予地方の宇和海側(豊後水道)では気候が変わります。たとえば、冬の北西の季節風は、中予では中国山地が風をブロックするため弱く、南予では関門海峡(かんもんかいきょう)を吹き抜けてくるため強くなります。1月の強風日数(最大風速10m/s以上)の平年値でくらべると、松山での0.1日に対し、宇和島では10.0日もあります。また、春から梅雨期にかけては瀬戸内海を中心に濃霧(のうむ)が発生するなど、気象現象は複雑で変化に富んでいます。
降水量は、瀬戸内側で少ないのに対し、宇和海側では多く、山地ではさらに多くなります。年間降水量は、瀬戸内海側の今治で約1,300mmとなっており、これは日本でも降水量の少ない地域にあたります。このほか、瀬戸内海側の松山で約1,400mm、宇和海側の宇和島で約1,700mm、石鎚山の7合目にある石鎚神社の中宮(ちゅうぐう)である成就社(じょうじゅしゃ)では、標高1,450mで約2,900mmとなっています。
月別の降水量でみると、県内全般に6月、7月および9月に梅雨や台風、秋雨などの影響で多くなっています。冬期(12月~2月)は年間を通じて最も少なくなりますが、南予及び山地では北西の季節風に伴う降雪や降雨による影響で、200mm~350mmとなり、県内の他の地域に比べて冬期の降水量が多くなっています。
県内の年平均気温は16℃前後で、内陸の山地に入るに従い気温は下がり13~15℃となります。真夏日(最高気温が30℃以上)の年間の日数は、海に近い長浜・瀬戸で30日程度、山地の久万で40日程度ですが、松山・宇和島では60日を超え、盆地にある大洲では75日に達します。大洲では、猛暑日(最高気温が35℃以上)の年間の日数も15日に達します。
一方、冬日(最低気温が0℃未満)の年間の日数は、沿岸部の松山・松山南吉田(松山空港)・四国中央・長浜・瀬戸・宇和島で10日未満と少ないのに対し、南予の宇和・近永では50日程度と多く、山地の久万では90日に達します。
【農業の特徴】
愛媛県の農業は、瀬戸内特有の日照時間に恵まれた温暖な気象条件のもと、果樹・畜産・米を基幹作物として多彩な生産活動が展開されています。農業産出額は 1,244 億円(令和3年)で中国四国地域では第2位です。2021(令和3)年の農業産出額 1,244 億円のうち果実は 553 億円で、44.5%を占めており全国では第6位でした。作物別の構成比をみると、第1位が果実で44.5%、次いで畜産22.3%、野菜15.0%、米11.1%と続きます。
果実の中でも柑橘(かんきつ)類に特化しており、年間を通して旬の柑橘を安定的に出荷する周年供給体制を構築し、全国有数の生産量を誇っています。ただし、柑橘には収量が増える表年(おもてどし)と減収となる裏年(うらどし)があるため、柑橘類の構成比が大きい愛媛県では、農業算出額の年次変動の幅が大きくなりやすい傾向があります。
愛媛県の柑橘栽培は100年以上の歴史があり、そこで培われた技術や研究成果により新しい品種も誕生しています。一般的に「みかん」といえば、「温州(うんしゅう)みかん」のことを指しますが、それ以外に1月~5月頃に収穫される温州みかん以外の「中晩柑(ちゅうばんかん)」の生産も盛んで、40種類以上の日本一の品種数と生産量です。品種は、雲州蜜柑(うんしゅうみかん)をはじめ、紅(べに)まどんな、伊予柑(いよかん)、甘平(かんぺい)、椪柑(ぽんかん)、せとか、紅プリンセス、清見(きよみ)、河内晩柑(かわちばんかん)など、様々な品種が栽培されています。また、温州みかんの県オリジナル品種で果皮が紅色の「小原紅早生(おばらべにわせ)」や「袋がけみかん」などによりブランド化が進められています。
他にもキウイフルーツや栗を中心に、多種多様な果樹が栽培されています。穀類や野菜では、裸麦が全国一、玉葱(たまねぎ)や里芋(さといも)なども有数の産地です。
愛媛県の農業の課題は、他県と同様に農業従事者の高齢化と新規就農者の確保および生産基盤の整備です。愛媛県は耕地面積の7割が営農環境の厳しい中山間部にあるため、圃場(ほじょう)や灌漑排水設備(かんがいはいすいせつび)、農道(のうどう)などの基盤整備が欠かせません。
2.愛媛の伝統野菜
愛媛県では伝統野菜の明確な定義づけは行っていませんが、いくつか地元や農業試験場等で伝統野菜として認められている品種があります。それらの品種は、文献や資料などに記載があり、由来が明らかで100年近くの歴史があるものか、または、地域で古くから当たり前のように栽培されてきた在来品種に分かれています。栽培歴20~30年の固定種は、あまり伝統野菜としては捉えられていないようです。絶滅の危機に瀕した品種も少なくありませんが、地域で復活に取り組んだり、農家が価値を再生したりするなど積極的な取組みがみられます。また、在来種をベースにした育種の研究が今日も進められています。
愛媛県は柑橘類に特化した農業生産を行っているため、野菜の在来種の維持は難しい傾向がありますが、「絹川なす」などは、著名な料理人からも評価され知名度が向上しています。ここでは在来種として足跡をたどることのできた11品種をご紹介します。
伊予緋かぶら(いよひかぶら)
【生産地】松山市石井、高井、堀江、北条など
【特徴】偏球形の蕪(かぶ)。表皮から茎まで濃い紅色(べにいろ)である緋色(ひいろ)をしている。「紅かぶら(べにかぶら)」とも呼ばれる。愛媛では「緋の蕪(ひのかぶ/ひのかぶら)」の呼び方が一般的。
【食味】肉質は緻密で固く甘みに乏しいため、煮物には向かず漬物に適する。
【料理】緋かぶら漬。より赤く漬けるために、橙酢(だいだいす)を用いて、芯まで鮮赤色に染まった緋かぶら漬けがつくられる。赤く発色するのは、蕪に含まれるアントシアニンが酢の成分と反応するため。蕪の緋色が冴えていると「その年は良い年になる」という言い伝えがあり、今も縁起ものとして食されている。
【来歴】愛媛県の民謡伊予節にもでてくる伝統野菜。江戸時代初期の1627(寛永4)年、松山藩二代目当主として松山城主に国替え(転封:てんぽう)された蒲生忠知(がもうただとも)が、先祖の地である近江国(おうみのくに)蒲生藩日野産の「日野菜かぶ(ひのなかぶ)」を取り寄せたのが起源とされる。近江国は現在の滋賀県で、原種の日野菜かぶが滋賀県から愛媛県に持ち込まれ、松山の地に適応して名産品になったということである。
日野菜かぶは、滋賀県蒲生郡日野町鎌掛を原産地として昔から作られてきた伝統野菜で、発祥地付近では「あかな」とも呼ばれている。伊予緋かぶとは、形状や色目が異なり、大根のように細長い形状で、茎や葉脈も鮮やかな赤紫色をしているが、根の上部が「赤紫色」、下が「白」と色分けされている。
【時期】10月下旬~
大洲芋(おおどいも)
【生産地】大洲市
【特徴】里芋の一種。
【食味】里芋のようなぬめりはなく、ホクホクした食感。
【料理】煮物、おでん、芋煮、コロッケ、田楽など
【来歴】南予地方の伝統野菜。長年、地域の農家で自家採取・自家栽培を繰り返された里芋の一種。一般的に、里芋の親芋は、食感が悪いため子芋のみを食すが、大洲芋(おうど芋)は土臭さが少なく親芋も子芋も食べることができる。12月頃に出回る親芋が美味しい。
2009(平成21)年度から愛媛県立大洲農業高校生とJA愛媛たいきが連携し、栽培に取り組んでいる。同プロジェクトは、愛媛県八幡浜支局地域農業室大洲農業指導班、 大洲市、JA愛媛たいきの指導の下、大洲市地域全体が協力して学生を支援した取り組み。大洲農業高校の開発商品である「大洲芋コロッケ」や「大洲パイ」を地域限定で販売したり、農商工連携事業商品として、「おうど芋のOyaki」や「コンフィチュール」が道後大和屋本店からコラボ商品を発売するなどしている。
【時期】12月~
絹皮なす(きぬかわなす)
【生産地】西条市
【特徴】極めて大きな肩の張った卵型。大きさは、長さ15㎝ほど、直径10㎝ほど、重さは300~350gほどある。
【食味】皮が薄く、果肉が柔らかく美味。
【料理】焼きなす、糠床(ぬかどこ)漬け、煮物などさまざまな料理に合う。
【来歴】愛媛原産という説と1949(昭和24)年に西条市州之内(すのうち)の方が香川県三豊から「三豊なす」の苗を譲り受け栽培したのが始まりという説がある。このことから、途中で、純粋な「絹川なす」と「三豊なす」が混同された可能性もあるとされる。伊予地方ではナスの栽培が行われているが、「絹川なす」は、東伊予地方に限定されてきたが、現在は、西条市の特産となっている。「絹かわなす」は西条市農業協同組合の登録商標である。また、えひめ愛フード推進機構の『「愛」あるブランド産品』に認定されている。
【時期】6月~10月
清水一寸(しみずいっすん)
【生産地】松山市清水町
【特徴】そら豆の一品種。一寸系品種群の中では最も大粒で味がよいとされている。(一寸は3.3㎝)
【食味】大粒で食べ応えがある。収穫時期によって風味が変わり、前半はねっとりとして甘みが強く、後半になるとホクホクした食感で香りが強くなっていく。
【料理】塩ゆで、焼そら豆、そら豆ご飯など
【来歴】明治初期に大阪の南河内郡(みなみかわちぐん)で栽培されていた「河内一寸(かわちいっすん)」が清水村(現在の愛媛県松山市清水町)に持ち帰られ、地元で選抜を重ねながら「お多福豆(おたふくまめ)」として定着してきたものとされる。かつては「松山城の見えるところでないと立派なものはできない」と言われ、松山市内だけが特産地であったが、1953(昭和28)年に採種組合が結成され、伊予市や松前町(まさきちょう)、北条市などにも栽培が広がった。しかし、採種農家で大粒種子の選抜が行われてきたため、一つの莢(さや)に2粒しか入っていない2粒莢の割合が高くなり、外観が見劣りすることなどから、3粒莢の他の固定品種「陵西一寸(りょうさいいっすん)」や「打越一寸(うちこしいっすん)」などへ切り替わっている。
【時期】5月上旬~下旬
庄大根(しょうだいこん)
【生産地】松山市
【特徴】首の部分の外皮が赤紫色で、果肉は白い
【食味】きめが細かく、青首種に比べ、甘味が強い。
【料理】サラダ等の生食向き。庄地区では、大根汁である口金汁(くちがねじる)として食される。さくら漬け、はりはり漬け、ドレッシングなど
【来歴】旧:北条市(ほうじょうし)庄(しょう)地区に約150年前から伝わる。長年の多品種との交雑により、品種の形質が消失していたが、1982(昭和57)年に地元農家が愛媛県農業試験場に種子選抜を依頼して復活。1997(平成9)年、地元農家による「庄だいこん研究会」が発足。現在も伝統野菜として守っている。
【時期】12月~3月
みんなの農業広場「庄大根」
地方特産食材図鑑「庄大根」
マルッとまつやま「まつやまさんちの食卓 庄大根生産農家」
テイレギ(ていれぎ)
【生産地】松山市高井町
【特徴】日本各地の低山、原野の水湿地や溝などに生える多年生草。高さ10~20cmぐらい、茎は緑色でやわらかく、基部は地面を這い、やや束生するように見える。全体にほとんど無毛、葉は互生し羽状に分裂して、タネツケバナに酷似していて区別が難しい。
【食味】香りもよく、ピリッとした辛みがある。
【料理】刺身のツマなどに珍重されてきた。
【来歴】「テイレギ」は松山地方の方言名であり、正式な植物名は、和名で「おおばたねつけばな」と言う。古くから松山の民謡に謡われたり、明治時代の文学者・俳人の正岡子規が句に詠んだりしている。1962(昭和37)年には、テイレギ自生地の減少から、南高井(みなみたかい)にある杖の渕(じょうのふち)という湧水量(ゆうすいりょう)豊かな公園に自生するテイレギを松山市天然記念物に指定し、栽培保護してきた。しかし、乱獲によって絶滅の危機に瀕し、2017年頃には、ほぼ全滅したとされた。その後、地元の努力で増殖に成功し、2020年には復活が進んだとされる。
大洲市河辺町では、古くからテイレギが自生しており、河辺の未来を考える会では2017(平成29)年度より育苗施設を整備して育苗に取り組んでいる。育苗したテイレギは町内の栽培希望者に配布される。河辺町では、テイレギを新たな地域農産物として栽培し、一大生産地になるべく振興を図っている。
【時期】通年
錦いんげん(にしきいんげん)
【生産地】伊予市(旧:伊予郡中山町)など
【特徴】1房に2~3莢が着莢(ちゃっきょう)する。葉は大型。収穫適期になると莢(さや)、果実および種子ともに緋紫色(ひしいろ)の美しい斑紋(はんもん)が入る。
【食味】もっちりとした食感。
【料理】煮物など
【来歴】明治時代に北海道のゴールデンカーミン種(大丸うずら菜豆:おおまるうずらさいとう)が愛媛県に導入され、この中で色の良い系統を選んで「錦(にしき)」と呼ぶようになったと言われる。文献や資料はほとんどないが、それでも愛媛県の伝統野菜としてあげられる。自家採種されることが多い。また、自家用として家庭菜園などで栽培されている。地元出荷が主体であるため大きな産地はない。
【時期】6月~9月
松山長なす(まつやまながなす)
【生産地】松山市
【特徴】中晩生種。1955(昭和30)年代の在来種の松山長なすは、実の長さが、現在の松山長なすより短く、およそ27〜28㎝で、果実の先端は多少丸みをおびた先太り果で最大果径6㎝程度だったとされる。
【食味】-
【料理】-
【来歴】昔から栽培されてきた「在来松山長」の由来は定かではない。1955(昭和30年)代は、ほとんどが地元消費であったとされる。全農のホームページによると、品種の変遷は、1953年頃までは「松山長」、「熊本長」、「本長」を栽培していたが、1960年代後半には「千両2号(せんりょうにごう)」、「晩生本黒長(ばんせいほんくろなが)」が大半を占めた。1970年代前半に伊予市南伊予地区で、水稲転換対策として古くから松山市周辺で栽培されていた「晩生本黒長」の栽培に取り組み、産地化が進んだ。現在では「庄屋大長(しょうやおおなが)」が主力となっている。
【時期】
紫長大葉高菜(むらさきながおおばたかな)
【生産地】
【特徴】
【食味】
【料理】
【来歴】愛媛県固有の伝統野菜にも関わらず、県内での知名度は他の品目ほど高くない。
また、文献や資料はほとんどない。しかし、栽培農家の間では、「まんば」とも呼ばれ、根強い人気がある。由来は戦後に九州方面や山口県などから導入された品種を地元で選抜・改良したものとされる。
【時期】11月下旬~3月下旬
久万高原町在来「地芋」(くまこうげんちょうざいらいじいも)
【生産地】久万高原町
【特徴】皮は黄色、果肉も黄色で、花は赤紫の花を咲かせる。小ぶりのじゃがいも
【食味】粘り気が強い。煮崩れしにくいのが特徴。
【料理】皮が薄いので茹でてそのまま食べられる。芋煮、芋もち、肉じゃが、コロッケ、ポテトサラダなど
【来歴】久万高原町の美川(みかわ)地区を中心に二箆山(ふたつのやま)・西谷小村(にしだにこむら地区で栽培。久万高原町は、旧:久万町(くまちょう)・面河村(おもごむら)・美川村(みかわむら)・柳谷村(やなだにむら)の4町村が合併して生まれた高原の町である。平均標高は約800mで、四国の軽井沢と称されるように「じゃがいも」が好む冷涼な気候に恵まれた中山間地域である。在来種の「地芋」は明治以前からこの地域で栽培されてきたとされる。地元では「じゃがたら」と呼ぶ。
【時期】8月~10月
久万高原町の伝統野菜「地きゅうり」
【生産地】久万高原町
【特徴】太くてずんぐりとした形が特徴的。
【食味】
【料理】
【来歴】久万高原町の地域で自家採種によって受け継がれてきた在来種。詳細不明。
【時期】
【参考資料】
「園芸新知識」2000.12.P46地方野菜をたずねて愛媛県①
農文協「ジャガイモ大事典」(2023)P203-210野口健著「ジャガイモの在来種」
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