山桜が美しい里で明治以来100年以上栽培を続ける-長野・北安曇野郡池田町「桜仙峡あずき」

行事食に欠かせないアズキ

皆さんは、小正月に小豆粥(あずきがゆ)を食べましたか?

日本には、昔から1月15日の小正月に一年の健康を願って小豆粥を食べるという風習があるそうです。東北や北陸などでは1月7日に食べる七草粥(ななくさがゆ)の代わりとして食べる地域もあります。

小豆の赤い色は、中国や日本では邪気を払う色の意味があり、昔から祭祀の場で使われてきました。現代でも一年の稲の豊作を占う「小豆粥(がゆ)占い神事」が各地の神社で行われています。

小豆粥の歴史はとても古く、中国では冬至の日に小豆粥が食べられていましたが、この風習が日本に伝わって食べられるようになったといわれています。平安時代に編纂された法令集『延喜式』には「正月十五日の供御の七種の粥料」の記載があり、小正月には宮中では米・小豆・粟(あわ)・胡麻(ごま)・黍(きび)・稗(ひえ)・葟子(むつおれぐさ)の「七種粥」が食べられ、一般官人には米に小豆を入れた小豆粥がふるまわれたことが記されています。

小豆の国内生産量(収穫量)は、農林水産省の作物統計(平成29年度)によると、十勝産で有名な北海道が圧倒的に多く49,800tで93.3%のシェア占め、堂々の1位。次いで兵庫県483tが0.9%の2位、京都府240tで0.4%、滋賀県31tで0.1%と続きます。

100年以上受け継がれる在来種

そんな大規模産地があるかたわら、山桜が広がる隠れ里でひっそりと生産されている在来種の小豆があります。

その名も「桜仙峡(おうせんきょう)あずき」。

北アルプスの山並みが美しく映える長野県北安曇郡池田町陸郷(りくごう)地区で生産されています。陸郷地区には、鳥たちが桜の実をついばみ増やした1万本近くの山桜が自生しており、桃の咲き乱れる仙峡「桃源郷」にちなんで「桜仙峡」と命名されたそう。

「桜仙峡あずき」は、明治以来100年以上も前から、この地区で生産されている在来種の小豆です。各地で在来種が消えていくなか、この貴重で希少な在来種を絶やしてはいけないと「桜仙峡あずき保存会」が立ち上げられました。現在では10名の生産者の方が無農薬で栽培しています。

細々と守り続けるだけでなく多くの人に食べてもらうおうと、2014年からは特産化の取組を始め、2016年からは旅館やホテル、料理店などの業務用の注文販売を開始しました。北アルプスブランドの認定も受けています。

風味の良い「桜仙峡あずき」

小豆の品種としては「大納言」がよく知られていますが、「桜仙峡あずき」は、それよりやや小粒。皮が柔らかいにも関わらず、豆がしっかりしており、風味が良いのが特徴です。

小豆の栽培方法は地域によって大きく異なりますが、桜仙峡では風土にあった栽培方法と厳しい栽培基準を設け生産の拡大に努めています。この地区の最大の強みは、小豆の栽培エリアの近くに他の植物や農作物が少ないため、雑種化を防ぎ、遺伝的な純度の高い桜仙峡あずきを栽培することができる点です。

収穫時期は小豆の品種によりますが、8~11月頃で、この時期に収穫し乾燥させつつ保管します。昨年は、一般向けは9月以降に直売所で販売とのことでした。この時期に手に入れることができれば、小正月の小豆粥には十分間に合いますね。

とても貴重で希少な「桜仙峡あずき」。ぜひ、食べて応援したいですね。

 

【参考資料】
北アルプス山麓農畜産物ブランド運営委員会の公式サイト

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