日本の伝統野菜-46.鹿児島県

1.地域の特性

【地理】

鹿児島県は,日本の主要四島の一つである九州の南端に位置しています。総面積は9,187㎢で全国第10位です。隣接している県は、熊本県、宮崎県の2県で、南部は、太平洋と東シナ海に面しています。

県域の東西の距離は約270km,南北の距離は約600kmに他県に比べ各段に広がっています。薩摩、大隅の二大半島からなる県本土と、甑島(こしきしま)、種子島(たねがしま)、屋久島(やくしま)、トカラ列島(とかられっとう)、奄美群島(あまみぐんとう)など200有余の島々からなっています。 鹿児島県の森林面積は94,022haで、総土地面積に占める森林率は68.6%です。

全国平均の64.3%よりやや高いです。小さな山脈や河川がとても多く、平野部が限られていますが、2,643㎞におよぶ変化に富んだ海岸線があることが大きな特徴です。 県全土が火山灰堆積物に覆われており、約半分は軽くて灰色の火山灰のシラス台地になっています。

鹿児島市の南130㎞にある屋久島は、周囲132㎞、面積505平方㎞の島です。九州の最高峰である標高1,936mの宮之浦岳(みやのうらだけ)と標高1,886mの永田岳(ながただけ)を擁する屋久島は「洋上アルプス」とも呼ばれています。1993年には、わが国で初めての世界遺産に登録されました。

鹿児島県の川は、川内川(せんだいがわ)を除いて規模が小さく、2、3の河川の河口に広がる比較的広い平野部以外では、ほとんど平地はありません。 鹿児島の湖は,ほとんど火口湖です。池田湖(いけだこ)は周囲15㎞,深さ233m,面積11平方㎞で九州最大の湖です。

【地域区分】

鹿児島県は、律令制の時代、薩摩国(さつまのくに)、大隅国(おおすみのくに)、多禰国(たねのくに)の3カ国に分かれていました。薩摩国は、現在の鹿児島県の西部に該当し、大隅国は、現在の鹿児島県の東部に該当します。多禰国は、現在の種子島(たねがしま)・屋久島(やくしま)・口永良部島(くちのえらぶじま)がある大隅諸島(おおすみしょとう)に該当します。 19市8郡20町4村がある。町はすべて「ちょう」、村は鹿児島郡2村が「むら」、大島郡2村が「そん」という読み方である。

<鹿児島(かごしま)地域>
・鹿児島市(かごしまし)
・日置市(ひおきし)、いちき串木野市(いちきくしきのし)、鹿児島郡(かごしまぐん)、三島村(みしまむら)、十島村(としまむら)

<南薩(なんさつ)地域>
・枕崎市(まくらざきし)、指宿市(いぶすきし)
・南さつま市(みなみさつまし)、南九州市(みなみきゅうしゅうし)

<北薩(ほくさつ)地域>
・阿久根市(あくねし)、出水市(いずみし)、薩摩川内市(さつませんだいし)
・薩摩郡(さつまぐん)、さつま町(さつまちょう)、出水郡(いずみぐん)
・長島町(ながしまちょう)

<姶良(あいら)・伊佐(いさ)地域>
・霧島市(きりしまし)、伊佐市(いさし)、姶良市(あいらし)、姶良郡(あいらぐん)、湧水町(ゆうすいちょう)

<大隅(おおすみ)地域>
・鹿屋市(かのやし)、垂水市(たるみずし)、曽於市(そおし)
・志布志市(しぶしし)、曽於郡(そおぐん)、大崎町(おおさきちょう)
・肝属郡(きもつきぐん)、東串良町(ひがしくしらちょう)、錦江町(きんこうちょう)、南大隅町(みなみおおくまちょう)、肝付町(きもつきちょう)

<熊毛(くまげ)地域>
・西之表市(にしのおもてし)、熊毛郡(くまげぐん)中種子町(なかたねちょう)・南種子町(みなみたねちょう)
・屋久島町(やくしまちょう)

<大島(おおしま)地域>
・奄美市(あまみし)、大島郡(おおしまぐん)大和村(やまとそん)
・宇検村(うけんそん)・瀬戸内町(せとうちちょう)・龍郷町(たつごうちょう)・喜界町(きかいちょう)・徳之島町(とくのしまちょう)
・天城町(あまぎちょう)・伊仙町(いせんちょう)・和泊町(わどまりちょう)
・知名町(ちなちょう)・与論町(よろんちょう)

【気候】

鹿児島県は、南北の距離が600kmに及ぶことから、伊佐市などの積雪地域もあれば、奄美群島のような亜熱帯地域もあります。気候区分でも温帯気候帯から亜熱帯気候帯まで広範囲に及んでおり,年平均気温は15℃から23℃までと、かなりの温度差があります。

降水量は地域によって相当の差があり,屋久島の山岳地帯では年間10,000mmを記録することも珍しくありませんが,おおむね2,000mmから3,000mmの降雨地帯にあり,梅雨期から夏にかけて全降水量の約半分が集中しています。

夏秋期には,毎年のように暴風雨を伴う台風に見舞われ,また,夏期には干ばつ害を受けることもしばしばあります。 南国のイメージが強いですが、薩摩半島は東シナ海に面するため、大陸からの寒気の影響を受けやすく、冬は厳しい寒さとなることがあります。冬の季節風の風向き次第では鹿児島市の中心部でも積雪に見舞われることがあります。屋久島山岳部では毎年のように積雪があり、種子島屋久島地方の平野部でもごく稀に降雪があります。

【農業の特徴】

農業は、鹿児島本県の地域経済を支える基幹産業であり,2021(令和3)年における農業産出額は全国第2位でした。特に,豚や肉用牛(黒毛和種)を中心とした畜産は,農業産出額の約67%を占めています。また、鹿児島県の温暖な気候や全国第2位の広大な畑地などを生かした野菜や花き,茶などの生産も盛んです。

同県の耕地面積は、111,800haで、その内訳は、田が34,700haで全国28位、畑が77,100haで全国2位となっており、畑が田の2倍強の面積となっています。

主要な農産物は数多くありますが、特にさつまいも(かんしょ)の作付面積は全国の3割以上を占め、でん粉、焼酎、青果、食品加工等と幅広く利用されています。(収穫量全国1位)茶も生葉の収穫量は全国2位で、全国茶品評会において農林水産大臣賞を受賞するなど質・量ともに全国トップレベルです。さとうきびは、県南西諸島の基幹作物であり、約6割の農家が生産しており収穫量は全国2位です。

2.鹿児島の伝統野菜

鹿児島県では、「かごしまの伝統野菜」として選定し,これまでに23品目が選定されています。選定された伝統野菜は、品目・料理法・入手方法等を県ホームページ等で紹介しています。「かごしまの伝統野菜」の選定基準は、以下の通りです。

1 趣旨
地産地消への関心の高まりなどを背景に,その土地の土壌や気候風土が育てた伝統野菜への関心が高まっている。 このため,消費者等から高い評価が得られる伝統野菜を「かごしまの伝統野菜」として選定し,地域農業が元気になるような取組として推進する。

2 伝統野菜の定義
鹿児島の人や風土とかかわりが強く,郷土の食文化を支えてきた野菜で,古く(おおむね昭和20年以前)から県内で栽培されてきた野菜を「かごしまの伝統野菜」という。

3 選定方法等
「かごしまの伝統野菜」は,県でリストアップした野菜並びに県内の市町村や生産者団体等から申請のあった野菜について,学識経験者や地元市場関係者等からなる「かごしまの伝統野菜等研究会」の意見を参考に県が選定し,その野菜の特徴や産地等について,県ホームページ等で紹介する。

4 その他
ここに定めるもののほか必要な事項は,関係者協議のうえ別に定める。 附則 この要領は,平成20年2月25日から施行する。

「かごしまの伝統野菜選定要領」より

2023年12月27日の時点で、鹿児島県では23品目が選定されていますが、今後、さらに品目が増える可能性があります。ここでは、現時点での「かごしまの伝統野菜」をご紹介します。

有良だいこん(あっただいこん)

【生産地】大島本島北部有良地区

【特徴】晩生種。地上部は大きく地面を這うように葉を広げる。普通サイズが根径10~15㎝、根長45~60㎝の中太り。葉の大きさは葉長55㎝、葉幅15~16㎝、葉数35枚。根身部は白色で紡錘形。根重2~4㎏程度である。過去最大の大きさは根重15㎏の記録があったといわれている。粗剛で耐暑性が強い。草姿、根形とも南薩地方に栽培されている地大根に似ていて、肉質に優れ、ス入りの遅い品種である。

【食味】

【料理】煮物や切り干しだいこん等。主にお正月に食べる塩豚と野菜の煮物料理「ウワンフネ」用に栽培されている。

【来歴】古くから奄美大島本島北部の有良集落にて、各家庭菜園や山手の畑で広く栽培されている。「あったどこね」とも呼ばれている。戦前から作られており、有良集落の地形や土などの特徴もあり、他の集落で栽培しても同じおいしさにはならないという。他の種と交雑しないように代々大切に受け継がれている貴重な大根で、自家採種が中心のため種子が市場に出回ることはない。奄美市内では正月のお歳暮だいこんとして人気がある。

【時期】12月~1月

安納いも(あんのういも)

【生産地】種子島

【特徴】形状は紡鐘形~下膨れ紡鐘形、皮色は褐紅色で肉色は黄。を加えると果肉は鮮やかな濃い黄色になる。

【食味】肉質が粘質でねっとりとした食感。大変甘い。

【料理】焼き芋、蒸し芋。

【来歴】第二次世界大戦後まもなく、スマトラ島北部のセルダンという地域から1人の兵隊さんが持ち帰った甘い芋の苗を安納地区で栽培したのが始まりとされる。種子島は約310年琉球より伝来した「薩摩芋(さつまいも)」を栽培していたが、この芋の甘さが評価され、またたく間に種子島の様々な地域で栽培されるようになった。

時を経て、1989(平成元)年になると鹿児島県農業開発センター熊毛支場で優良品種の選抜育成が進み、1998(平成10)年に品種登録される際に支場が種子島の安納地区にあったことから「安納芋」と名づけられた。後に一般に蜜芋(みついも)として知られている「安納紅芋(あんのうべにいも)」と「安納もみじ(安納こがね)」という2品種が在来種から選抜され登録された。

2013(平成25)年までは登録品種苗として種子島でのみ栽培が認められていて、他の地域での栽培は認められておらず、このことによって、種子島の特産品として広く知れ渡たった。現在でも「安納芋は種子島産でなければ」という人は多い。これは、種子島が太古は海底だったため土壌のミネラルが豊富で、安納芋が本土のものよりも糖度が高く、コクのある味になるためである。

【時期】9月~12月

伊敷長なす(いじきながなす)

【生産地】鹿児島市伊敷地区

【特徴】葉色は濃緑。形状はやや先とがり。果長は30~35cm,太さ5cm程度と細長い。長いものでは50cm以上になることもある。採り遅れても硬くならない。紫の艶とテリが美しいボリューム感のある品種。収穫までに時間がかかる。

【食味】なす本来の甘みが強くて美味しい。

【料理】焼きなすや野菜炒めなど

【来歴】昭和初期に伊敷地区で栽培が見られ、1955(昭和30)年初めには、県農業試験場が県内各地域から「伊敷長なす」を収集し系統選抜試験が行った。1965(昭和40)年代までは、県内各地で栽培されていたが、揃いの良い多収な品種に変わり衰退していった。

今では、見なくなったが、近年、一部の生産者が復活に取り組んでいる。また、鹿児島市内の小学校と鹿児島大学が連携して、地元ゆかりの野菜を育てて地域への理解を深めてもらおうと、児童達と「伊敷長なす」を栽培する活動が行われている。

【時期】7月~9月中旬

親くい芋(おやくいいも)

【生産地】屋久島町

【特徴】里芋の一種。草勢は直立性で草丈は低い。親芋を大きくして食すのが特徴。親子兼用種で、茎色は青茎、芽は淡橙色、形状の良い子芋、孫芋がつきやすい。

【食味】しっとり感のある芋で,泥臭さがなく,淡白。

【料理】正月に出されるお吸い物,煮物など。何の料理にでも合うタイプの里芋

【来歴】屋久島には戦前から栽培されていたとされる。正月に「親くい芋」を親芋丸ごと煮て食べる習慣が残されている。

【時期】11月~3月

開聞岳だいこん(かいもんだけだいこん)

【生産地】指宿市開聞町

【特徴】太めの紡錘形で、最大根径15~20cm、首部8~9cm。根長40~60cm、重さ5~8kgほど。大きいものでは20kgくらいまで成長することもある。

【食味】肉質はやわらか

【料理】生食、煮物、浅漬け、切り干し大根など

【来歴】来歴不詳だが、150年ほど昔から、開聞町(現在の指宿市)の松原田集落を中心に開聞岳山麓で栽培されてきたとされる。地名をとって「松原田だいこん」とも呼ばれる。茎葉が傘をさしたように,大根を覆っていることから「葉かぶり大根」とも呼ばれている。

【時期】12月下旬~1月

かわひこ(かわひこ)

【生産地】屋久島町

【特徴】屋久島の代表的な里芋。草勢は直立性で草丈は低い。芋は親子兼用種で粘質が強い。子芋,孫芋も着生は多く,また子芋,孫芋の萌芽がしやすく1株の萌芽数が非常に多い。 屋久島の南部の温暖な地域に栽培され,冬場も枯れずに春を迎え,春に子芋を植えていく方法で受け継がれてきた。

【食味】ホクホク感のある芋で、煮込むと餅のような食感となる。子芋、孫芋は餅のように粘りがある。

【料理】正月に出されるお吸い物,揚げおろし煮

【来歴】江戸時代以前に屋久島の屋久町栗生に伝来したとされる。当時は地名をとって芋生(いもお)と呼んでいた。独特の香りから由来されたと思われる「かばしこ」という名や、餅のような食感から「餅いも」とも呼ばれる。屋久町郷土誌のなかに、「元旦の吸い物は、里芋が一個入ったもので、これは必ず食べなければならない」と記述されており、一年間の無病息災を願う習わしとして受け継がれている。

【時期】11月~3月中旬

こうき芋(こうきいも)

【生産地】屋久島町

【特徴】さつま芋の一種。皮・中身ともに薄い黄色で、よく育つと芋が長くなる。外観は凹凸があり、形状・揃いが悪く、根のような芋も多い。

【食味】

【料理】焼き芋にすると粘性・糖度が高くなる。

【来歴】屋久町郷土史によると、1921(大正10)年に、栗生(くりゅう)集落の羽生幸吉氏が岡山県より導入し、屋久島内に広がったと記載。当時の品種名は「七福いも」の別名である「アメリカいも(コキガライモ)」とされていた。地元では、導入者の名前「幸吉」にちなんで、「こうき芋」「コーキドンボ」が訛って「こきろんぼ」と呼ばれる。 美味で貯蔵がきくことから戦前は食糧として多く栽培されたが、戦後はデンプン含量の高い芋が主体となり、栽培する農家・生産量とも減少していった。

【時期】8月~11月

国分だいこん(こくぶだいこん)

【生産地】霧島市隼人町浜之市(はまのいち)地区(旧:姶良《あいら》)地区)

【特徴】地上部の生育は旺盛で,葉長が60~70cm,葉幅が20cm程度でやや赤みがかった緑色である。根部は,桜島大根を小型化した形で淡赤紫色を帯びている。根重は2~10kgとバラツキが大きい。表面がピンク色で中身は白色。肉質が緻密で煮崩れしにくい。さらにとう立ちしにくく、害虫がつきにくい。

【食味】辛みが少なく甘みが強い。軟らかいが煮崩れしない。煮物にするとトロッとした食感。漬物にも適し、特有の辛みとカリカリ感に優れる。

【料理】サラダ、煮物、漬物、ガーリックオイル炒めなど

【来歴】同地区で古くから栽培されていた。現在は,ほとんど見ることが無くなったが,近年,地元の農業青年クラブが産地復活に取り組んでいる。園田準二著『鹿児島県園芸史』には,大正時代に栽培されていたことや、根部が地上に露出していたことから「飛び上がり大根」の別名があったとの記述がある。

【時期】12月下旬~1月

【参考資料】
鹿児島県HP「今年も飛翔クラブが国分大根を出荷」
鹿児島県農業・農村振興協会

桜島だいこん(さくらじまだいこん)

【生産地】鹿児島市桜島赤水町

【特徴】通常は10kgほどであるが,大きい物になると20~30kgの物も見られる。胴回り119cm,重さ31.1kgの「桜島だいこん」は、世界一重たい大根としてギネスブックに認定されている。果肉は緻密で雪のように白い。

【食味】苦みや筋がほとんどない。ほのかな甘み。あっさり上品な味。煮るとなめらかな触感になる。

【料理】煮ても煮崩れしにくく,味がしみこみ易い。煮物、おでん,煮しめ,味噌汁,ブリ大根,漬物、乾燥大根(ぐるぐるまき)など。昔は年が明けて寒さが厳しくなると家族で切り干し大根を作って保存していた。

【来歴】1709(宝永5)年に刊行された貝原益軒(かいばらえきけん)著の『大和本草(やまとほんぞう)』に「薩摩大根は常のより大なり」と記録されており,江戸時代には大きな大根として作られていたとみられる。

起源には諸説有り、天和(てんわ:1681~1684年)年間に愛知県から入手した方領(ほうりょう)大根の中から変種を発見した選抜系統説や桜島に自生していた浜大根の中から生まれたという説、現:霧島市(きりしまし)の姶良郡(あいらぐん)隼人町(はやとちょう)で栽培されていた国分(こくぶ)大根を、西桜島で栽培していたときにできたという説等ある。

「桜島だいこん」と呼ぶようになったのは約200年前と推測される。

【時期】12月下旬~2月

さつま大長レイシ(さつまおおながれいし)

【生産地】鹿児島全域

【特徴】苦瓜(にがうり)の一種。長形で果長35~40cmと細長くなる。果皮色は白緑色や鮮緑色である。両端が紡すい状に細くとがる円筒形タイプ。生育旺盛で着果がよく、多収。

【食味】果肉は硬めで歯応えが良い。現在の品種よりもやや苦みが強く感じられる。若い果実に苦味がある。

【料理】主として油炒め料理に使われる。薄切りして湯通する。油炒め、卵とじ等。

【来歴】鹿児島では,瓜を「ゴイ」とか「ウイ」と呼び、苦瓜を「ニガゴイ」と呼んだりする。「レイシ」とも呼ばれる。「苦瓜」は、アジアの熱帯地方原産で、国内でも暑い地域での需要が多く、沖縄、九州、四国などの西南暖地で多く栽培されている。栽培は江戸時代から行われていた。大長レイシ(おおながレイシ)は、昭和初期には既に県内各地で栽培されており、1965(昭和40)年代までは県内各地に多種な系統が見られ、1975(昭和50)年代頃までは各地で栽培されていた。

【時期】7月~9月

白なす(しろなす)

【生産地】鹿児島全域

【特徴】果形は,長なすと丸なすがある。長なすは,長さ20cm,直径5cm,重さ150~200g程度。果皮色は淡緑で、首太りや尻のとがりは小さい。丸なすには縦長の巾着型と米なすに似た系統がある。大きいものは長さ13~16cm,尻部の直径は9~13cm,重さ300~500gになる。

【食味】果皮がやや硬い。種子の充実が遅いので果肉はとても柔らかく口当たりが良く食べやすい。アクが少ないのが特徴。

【料理】焼きなす,煮付け,揚げ物,炒め物,汁の具にあう。漬物にも利用される。

【来歴】鹿児島では、病気に強く栽培が容易なことや味の良さから戦前から淡緑色の在来白なすが広く栽培されている。白なすはアクが少ないため、産後に食べるナスは「白なす」でないといけないと言われていた。トロトロとした食感から「薩摩トロ茄子」として全国に広められている。

【時期】7月~9月中旬

トカラ田いも(とからたいも)

【生産地】鹿児島郡十島村吐噶喇列島(とかられっとう)

【特徴】トカラ列島親芋専用種の田芋。白いも系と赤いも系があり、それぞれの島で水田によって適性があるようで、系統別の栽培適性の確認が必要となっている。水を張った水田で栽培されており、常に冷水のかかる水田での栽培でないと良質な芋はできない。

【食味】ホクホク感とネバリ感のバランスが良い。

【料理】煮しめ、焼き団子、行事食や正月料理にも欠かせない。

【来歴】明治以前から屋久島と奄美大島という二つの世界自然遺産に挟まれたトカラ列島の水田のある島では、伝統食材として各家庭で栽培されていた。以前はいたるところで栽培されていたが、現在はかなり少なくなった。

【時期】10月中旬~3月

トイモガラ(といもがら)

【生産地】姶良町など

【特徴】ハスイモの葉柄(ずいき)のことを鹿児島では「トイモガラ」と呼んでいる。外観は一見、里芋(さといも)のような形をしており、長いもので1.8m位まで伸びるものもあるが、根から葉先まで青々としており、茎に包丁を入れるとスポンジのように空気を含んだ無数の穴が通っているのが特徴である。年によっては花が咲くこともまれにある。日陰でよく育つ。午前中早い時間に収穫する。収穫のタイミングを間違えると苦い。

【食味】野菜が不足する夏には、独特のシャリ感のあるトイモガラは根強い人気がある。味は淡白でクセがなく、食感を楽しむ。

【料理】生食でも煮ても良いが、必ず皮をむく。刺身のつま。キュウリ等を合わせて酢の物。適当に刻んで味噌,醤油汁、煮染め、鶏(かしわ)汁、煮込み汁などさまざま料理に合う。

【来歴】詳細は不明だが,明治時代から継承栽培されている。鹿児島では、見かけだけで心身共にもろい役立たずの人を鹿児島では「いもがらぼくと」と呼んでいた。

【時期】6月

ながうい・いとうい(ながうい・いとうい)

【生産地】鹿児島全域

【特徴】ヘチマ。品種の系統は多種多様で,長さが2mにおよぶ「6尺ヘチマ」,1m程度の「3尺ヘチマ」,30~40cmの「1尺ヘチマ」に大別される。 食用には果肉に繊維が少なく、種子の白皮が発達していない未熟期が食べ頃である。 生食用は開花後7日から14日で食べられる。

【食味】淡白な味。加熱することでやわらかい食感になる。

【料理】みそ炒めやみそ汁の具、酢みそがけなど

【来歴】江戸時代1802(享和2)年に島津重豪(しまづしげひで)が、本草学者の曽槃(そうはん)と白尾国柱(しらおくにはしら)等に命じ,農事・五穀・疎菜・薬草・草木・鳥類などについて編纂させた百科事典「成形図説(せいけいずせつ)」に、「浮皮(うわかわ)は,包丁にて、こさぎさり、豚肉(ぶたしし),炮魚(あぶりいを)などと煮て食ふ。みそ田楽として豆腐あえものとして食ふ」などの記載があり、鹿児島では古くから食用として利用されてきた。

ヘチマを食べるのは、鹿児島、宮崎、沖縄だけで、他県では「たわし」としての認識が高 いようである。

※「こさぎさり」は、方言の「こさぐ=買う」ではなく「こそぐ=削る」の方。

【時期】7月~10月

花岡こしょう(はなおかこしょう)

【生産地】鹿屋市花岡地区

【特徴】鷹の爪群の唐辛子の一種。果実は円錐型で、長さが3センチ程と短く、細い。

【食味】香りが強く,辛みがまろやか。

【料理】調味料

【来歴】九州では唐辛子を「こしょう」と呼んでいた。鹿屋市史によると、明治31年に伊藤民十郎村長が神戸の貿易商から教えられて種子を持ち帰ったのが始まりとされている。

明治から戦後にかけて花岡地区で栽培され、最盛期は120haの作付けがあった。アメリカやイギリスにも輸出され、高い評価を得ていたが、収穫や乾燥に手間がかかるため栽培農家・生産量ともに減少していった。現在は,市販品種と交雑しないように配慮し、農家個々で守り抜いてきた種子を譲りうけた花岡胡椒研究会がかつての栽培農家と協力しながら栽培している。

【時期】9月~11月

隼人瓜(はやとうり)

【生産地】鹿児島全域

【特徴】白色種と緑色種がある。果実は洋梨を思わせる果形であるが、果面に凹凸がある。果実の大きさは縦10~15cm,横7~10cm,重さ0.5~1kg程度。白色種の果実と葉は緑色種よりやや小さい。強健、豊産で加工用に向き、最近はこの緑色種の品種が多く栽培されている。段ボール箱に入れて寒さを防いでおくと翌春まで食べられる。

【食味】白色種は果色が象牙色で、やや硬く感じる。緑色種は果皮・果肉とも淡緑色で、切るとやや青臭さがあるが、水分を多く含み、柔らかく感じる。

【料理】塩漬け,粕漬け,ぬか漬け,味噌漬けなどの利用が多い。炒め物,煮物,和え物。

【来歴】1917(大正6)年、日置郡永吉村(ながよしむら)の矢神隼氏がアメリカから鹿児島に持参し、試作したのが日本で最初の栽培。1920(大正9)年頃から鹿児島県内に広く普及した。「はやとうり」の命名は、当時の鹿児島高等農林学校長(現鹿児島大学農学部)であった玉利喜造氏が、薩摩の武士の美称である「薩摩隼人(さつまはやと)」にちなんで名付けられた。別名「千成(せんなり)」「インドメロン」がある。鹿児島県では瓜のことを「ウイ」と言うため「隼人ウイ(はやとうい)」と呼ぶ。

【時期】10月

ハンダマ(はんだま)

【生産地】奄美市など

【特徴】キク科の多年草。高さ60cm程で群生する。葉の表が緑、裏が鮮やかな赤紫色をしているのが特徴。鉄分・ビタミンA・カルシウム・マグネシウム・ナトリウム等を豊富に含み,葉の赤紫色にはポリフェノールを含み抗酸化作用等の機能性が期待される。

【食味】クセがなくて食べやすく風味がある。茹でるとぬめりが出る。

【料理】おひたし,サラダ,炒め物,天ぷらや漬け物として利用されている。

【来歴】沖縄や奄美で昔からよく食べられてきた。古くから自給野菜として各家庭で栽培され,鉄分が不足しやすい産後の食事として欠かせない食材である。 熱帯アジア原産で、奄美群島やトカラ列島では「ハンダマ」と呼ばれている。名の由来は、葉の色が半分ずつ違う事と、花が咲いた後に球状になる事からその名がついたという説や奄美地方の「ハンダマ」は「ハルタマ」から来たという説がある。 和名は,「水前寺菜(すいぜんじな)」「金時草(きんじそう)」「春玉(はるたま)」など、いくつもの呼び名があり、全国に植生が見られる。

【時期】通年

マイナビ農業「金時草はどんな野菜? 旬や栽培方法、おいしく食べるレシピを解説」【日本伝統野菜推進協会監修】

 

フル(ふる)

【生産地】奄美市

【特徴】葉大蒜(はにんにく)の一種。草姿により立ち性、半立ち性、垂れ葉性等の系統がある。草丈は80~100cm,葉の長さは50~60cm程度で,根部は球肥大が遅く40g程度と小さい。球色は淡紅紫色を帯びており,りん片は10~20片程度である。

【食味】香りがとても良い。

【料理】油ゾーメンや炒め物,鍋物,汁物,みそ和え,焼き肉など多用されている。

【来歴】奄美大島では古くから冬場の重要な野菜として栽培されてきた。旧:名瀬市在住の人によると、戦前から栽培しているとのこと。1850(昭和25)年代の奄美の動植物等についてまとめた「南島雑話(なんとうざつわ)」に記載されている。

【時期】1月~3月

ミガシキ(みがしき)

【生産地】姶良町など

【特徴】鹿児島県で生産されるサトイモの仲間で、主に葉柄を食用にする。

【食味】シャキシャキした食感、ややエグ味がある。

【料理】汁の実や、炒め物、煮物などにする。蒸して酢味噌で食べる。料理するとき皮は剥かずに、そのまま適当にきざみ味噌汁(醤油)に入れる。芋の部分は珍味。秋口にかんぴょうとして乾燥保存が可能。

【来歴】起源は不明だが、同県では明治時代から、継承栽培されており、県内各地で多くの家が栽培してきた。一般には葉柄を食すが,奄美や甑島では葉柄も芋も食すことができる品種もあり、夏の貴重な食料として活躍していた。主に葉柄部を利用するが、トイモガラと違い、皮のまま調理することができる。

【時期】6月

養母すいか(やぼすいか)

【生産地】日置市

【特徴】果実内部は,白黄色。栽培の仕方によっては果重が14~16kgになるものもある。

【食味】糖度は赤すいかより低いが,ベトつくことがなくシャキシャキとした食感が良い。

【料理】生食

【来歴】1935(昭和10)年頃には食されてきた。富山の薬売りが持ってきて広まったと言われる。1965(昭和40)年頃まで旧:東市来町養母地区を中心に栽培されてきたが、時代移り変わりとともに赤すいかにその座を譲り、地種子は姿を消してしまった。

現在の種子は、1965(昭和40)年頃まで農協に勤務されていた船倉氏が、奈良県の種苗会社に研究用として寄贈されたものが保存されており、2004(平成16)年に里帰りしたものである。

【時期】8月上・中旬

山川だいこん(やまがわだいこん)

【生産地】指宿市山川町(やまがわちょう)

【特徴】練馬(ねりま)系の白首大根で、皮が厚く繊維がやや多い。大きさは1本1本異なり、大きい物は太さ10cm以上、長さは1.2~1.3m程にも成長する。土中の障害物をよけて成長するため、タコ足状に成長することもある。

【食味】生は辛みが強い。

【料理】郷土料理の「山川漬(やまがわづけ)」の材料となる。山川漬の伝統的な製造法(泥つき乾燥、海水あらい、杵つき等)に最適で、加工品には独特の味と風味がある。水分が多いため煮物には向かない。

【来歴】江戸時代から1955(昭和30)年代までは、山川地方の農家で盛んに栽培され、農家の最大収入源であった。その後、食文化の変化により、次第に衰退していった。江戸時代から県南部の山川地方で栽培されてきた。

【時期】12月中旬~1月

横川だいこん(よこがわだいこん)

【生産地】霧島市横川地区

【特徴】重さは2kg前後。根は地上に出ている部分が赤紫色、地中に埋まっている部分が白色で、そのコントラストが特徴的。

【食味】瑞々しく、甘味がある。

【料理】生食・煮食のどちらにも適する。地元では、特に「なます」に最適と評判。

【来歴】霧島市横川町に代々伝わり、形状と肉質の良さから県内でも数多く栽培されている。大正時代に,時任(ときとう)氏が、当地で栽培されていた在来大根の中から形状、品質の優れた系統を選抜し、種子の供給をしたのが始まりと言われている。 別名「横川ツバメ」とも呼ばれているが、これは,「播種から収穫までが,飛んでいるツバメのように早いから」や「大根の色合いが,ツバメの羽と腹部のコントラストに似ているから」との説がある。

【時期】11月〜1月

吉野にんじん(よしのにんじん)

【生産地】

【特徴】根が30~40cmと長く,薄い紅色。根色は橙色が多く、芯の色は紅芯と黄芯の系統があった。晩生種。

【食味】肉質がやや硬く感じられる。昔の人参は,甘味はあまりなかったが,香りが強かった気がするとのこと。

【料理】生食にも向く。サラダ、野菜スティック、煮物、炒め物、蒸し物、揚げ物など

【来歴】「唐湊(からみなと)にんじん」は鹿児島市に古くから土着していた人参の品種で、「吉野にんじん」は鹿児島市の唐湊地域に古くから栽培されていた唐湊人参を系統選抜した改良系といわれている。昭和初期には栽培されており、1970(昭和45)年頃に「五寸人参」と替わるまでは盛んに栽培されていた。今では見なくなったが、近年一部の生産者が復活に取り組んでいる。

【時期】11月下旬~1月上旬

3.鹿児島の伝統果樹

鹿児島県は伝統野菜のほかに、在来種の果樹も豊富です。全てを網羅することはできませんが、把握できたものをご紹介します。 特に奄美大島や喜界島などでは、自生の在来品種の柑橘などがみられます。これらには、機能性成分等の含有量が多いなどの特徴があり、今後の活用が期待されています。また、奄美大島には在来種が数多くありますが、穀類・果菜・果樹などを伝統野菜として網羅できなかったので資料を添付しておきます。また、伝統野菜・果樹のほかに在来そばとして「鹿屋(かのや)そば」があります。

カープーチー(かーぷーちー)

【生産地】喜界島

【特徴】在来柑橘の一つ。花良治(けらじ)の一変種。果重は60gほど。果皮が厚く、果面は粗い。果実の大きさに対して果重が小さく、果肉歩合が低い。浮皮になり簡単に皮がむける。収量が少ない。

【食味】酸味は控えめ。素朴な甘さ。瑞々しく果汁が豊富。

【料理】酢みかん、ジュース、ジャム、サワーなど加工品

【来歴】花良治と同一地域に起源があると考えられるが、原産地や来歴は不明。一変種。「カブチー」,「カボチャー」「クリハー」,「シマミカン」と様々な名称で呼ばれる

【時期】10月上旬~11月下旬。糖酸含量を考慮した最適収穫時期は10月中旬~11月上旬

花良治(けらじ)

【生産地】喜界町

【特徴】在来柑橘の一つ。果実は小さく、熟しても外皮は濃い緑色のまま。病気に弱く栽培が難しいため、現在の生産量は非常に少なく、「幻の柑橘」と呼ばれている。ビタミンCを多く含み、喜界島では青切りで食べられている。また、「花良治」には、ガン抑制成分「ポリメトキシフラボノイド」という成分が多量に含まれていることが鹿児島大学と喜界町との共同研究で証明されている。

【食味】香り良く、ほどよい甘味で爽やか。果皮からは調合されたスパイスのような香りを感じる。果肉はオレンジ色で「花良治みかん」と言われる所以である。

【料理】果実を切って料理に添えたり、お酒を割ったりと応用範囲が広いのも魅力。

【来歴】約200年前、ある男が鹿児島から喜界島(きかいじま)東方の一孤島(いちことう)に漂着し、その島で見つけた柑橘(かんきつ)の苗を喜界島の花良治(けらじ)集落に持ち帰ったのが始まりとされる。(木村勝太郎, 谷中登希男著『香酸柑橘 Ⅲ巻 日本の酢みかん』原田印刷出版, 1995年)。

喜界島の「花良治(けらじ)集落」で栽培され、喜界島にしかない「家宝種(かほうしゅ)」として大切に育てられている。島の集落名を冠して和名登録された。

※家宝種(かほうしゅ)・エアルーム種とは、在来種・固有種のことで、「エアルーム」とは、先祖代々伝えられてきたという意味。一般的には50年以上栽培されたものを指し、家庭菜園家や農民が代々採種を繰り返し、世代から世代へと伝えてきた種のこと。

【時期】10月 酸味を活かすために、色づく少し前に収穫する。

九年母(くねんぼ)

【生産地】喜界島

【特徴】ミカン科の常緑小高木。幹(みき)は高さ3~5mになり、蜜柑(みかん)に似てやや大きく、長さ10㎝ほどの楕円形(だえんけい)の葉を互生(ごせい)する。初夏、枝先に芳香のある白色の五弁(ごべん)の花を開く。果実は径6㎝程の球形で、秋に熟して橙色(だいだいいろ)になる。表皮は厚く種子が多いが、甘味があり生食される。

【食味】異国情緒たっぷりな香りと上品で濃厚な味

【料理】生食、加工品など

【来歴】原産地はインドシナ半島で、16世紀の室町時代後半に中国、琉球を経由して日本に渡来したとされる。古名は「阿部橘(あべたちばな)」であり、『万葉集』に「我妹子(わぎもと)に逢(あ)はず久(ひさ)しも うましもの安倍橘(あべたちばな)の苔(こけ)生(む)すまでに 作者不詳巻17-2750」とあるが、この2つの説は時代が合致しない。 また、和名の「阿部橘」の由来も不明である。漢名は「橘(たちばな)」。柚子を意味する「香橙(こうとう)」は誤用。他に、「香橘(こうきつ)」、「くねぶ」、「くねんぶ」、「くねぼ」とも呼ばれる。江戸時代に紀州蜜柑(きしゅうみかん)が登場するまでは「九年母」が蜜柑の主流品種であり、宮廷の貴族や公家などが食し、平塚市などでは江戸時代に将軍家へ献上もされていたようである。

【時期】

【参考資料】
長崎県島原市「幻のみかん“くねんぼ”で地域活性を」
喜界島ナビ

クリハー(くりはー)

【生産地】喜界島

【特徴】在来柑橘の一つ。

【食味】島みかんの中でも、酸味が少なく果汁もたっぷり含まれているため、食用としては一番消費されている。香りはカンキツ類の爽やかさの中にほろ苦さを感じるライムにも似た香り。

【料理】ポン酢、加工品など

【来歴】どの家庭にも植わってると言っていいほど最もポピュラーな品種。「島みかん」というと「クリハー」を指すこともある。

【時期】10月~ 桜島小みかん(さくらじまこみかん) 【生産地】鹿児島市桜島 【特徴】在来の柑橘類。果実の直径は5㎝足らず、重さは1個当たり50g程度で手の平にすっぽり入るサイズである。「世界一小さなみかん」ともいわれている。

【食味】果皮は薄く、果肉は柔らかく、酸味が少なく甘いのが特徴。

【料理】生食、ジャム、加工品

【来歴】江戸時代から既に桜島で栽培されていたといわれる。徳川幕府に献上されていた記録が残っており、「桜島蜜柑」と呼ばれ一級品として珍重されていた。1914(大正3)年1月12 日の大噴火でほとんどの「桜島小みかん」は枯れてしまったが、生き残った木もあり100本近い古木が現在も点在している。最も古い木の樹齢は推定220 年以上で、幹周り(みきまわり)縦12.4 m、横10.2 m、高さ6.2 mもある木が存在しており、なかには1本の木から24,649個、1,065.7㎏収穫されたという記録もある。2009(平成21)年4月に「地域団体商標」を取得、2017(平成29)年11月には「地理的表示保護制度(GI制度)」に登録された。

【時期】12月

【参考資料】
鹿児島県 JA鹿児島みらい 桜島小みかん
地理的表示産品情報発信サイト「桜島小みかん」

シークー(しーくー)

【生産地】喜界島

【特徴】在来柑橘の一つ。名前の似たシークワーサーとは別種。やや晩生で喜界島で 1 月以降に完熟する。果形は小ぶりで直径5㎝程。完熟すると果皮がレモンのような黄色になる。皮より内側の白い中果皮であるアルベドが厚く、種子が多い。実の酸っぱさと、ベルガモットのような香りが特徴的である。鹿児島大学農学部の研究で、香気成分がベルガモットと酷似している事が分かっている。ただし、「シークー」とベルガモットは遺伝的には極めて遠い。

【食味】ベルガモットに似た香りと酸味が強い。

【料理】香酸柑橘、加工品

【来歴】奄美群島に位置する喜界島で栽培されているベルガモット香を備える在来柑橘品種であり、同様の柑橘は奄美群島北部のみに見いだされる。どのような経緯で在来種となったのかは不詳。和名がなく、方言名の「シークー」や「ムニハー」と呼ばれる。

【時期】12~1月

【参考資料】
喜界島(鹿児島県)在来カンキツ‘シークー’(Citrus sp.)の ベルガモット様香気成分の特徴およびその遺伝的背景

フスー(ふすー)

【生産地】喜界島 【特徴】在来柑橘の一つ。

【食味】香りと酸味の強い果汁が特徴的で島内ではドレッシングやポン酢へ加工されている。甘味と酸味のバランスが良い。果皮は柔らかく苦みがほとんどない。

【料理】皮に苦みが少なく甘い、ペクチンが多くジャムやマーマーレードに最適。

【来歴】古くから喜界島に自生する。「フスー」とは、喜界島の方言で、臍(へそ)のこと。ヘタの形状が臍に似ていることからではないかといわれる。

【時期】2月

辺塚だいだい(へつかだいだい)

【生産地】肝付町辺塚地区,南大隅町

【特徴】香酸柑橘。一般的に言われている橙(だいだい)に比べ、小ぶりで皮が薄く酸味が少ないのが特徴。

【食味】カボスのように果汁と香りを楽しむ。独特なキレのある酸味。後を引かず、スッキリ爽やか。

【料理】ポン酢、ジュース、サワーなど

【来歴】大隅半島の東部にある肝付町辺塚集落に古くから自生する。2017年12月、地理的表示(GI)保護制度に登録。2020年10月には、飲料メーカーのキリンビールと共同開発した「KIRIN 氷結®STRONG鹿児島産辺塚だいだい」を限定出荷で全国発売し、その名が全国に広まった。

【時期】8月~10月頃

【参考資料】
地理的表示産品情報サイト「辺塚だいだい」
JA鹿児島きもつき

【参考資料】
かごしまの伝統野菜
かごしまホンモノの食研究会
農林水産省「在来カンキツ」の栽培技術の導入に よる産地育成 手引き
奄美大島の在来作物・果樹データベース

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