日本の伝統野菜-39.高知県

1.地域の特性

【地理】

高知県は日本の主要四島の一つである四国の北西部に位置しています。総面積は7,104㎢で全国18位です。愛媛県に隣接しているのは徳島県、愛媛県の2県です。県の北東部が徳島県、北西部が愛媛県に隣接しています。高知県の最東端には徳島県との県境がある「二子島(ふたごじま)」があります。二子島は無人島ですが、高知県東洋町と徳島県海陽町に属しています。南は太平洋に面しています。

高知県の森林面積は5991.8㎢で、県土の約84%を占める森林率全国1位の森林県です。可住面積は1,163.㎢で県土の約16.3%を占め全国40位です。人口は684,964人(2023年1月1日時点推計人口)で全国45位です。

県域の東西の距離は190 km、南北の距離は166kmで細長い扇形のようなブーメランのような形をしています。

高知県の北は四国山脈を背に、南は東の室戸岬から西の足摺岬にわたる長い海岸線が土佐湾を囲んでいます。

河川は、おおむね北部山岳地帯から南に流れ、太平洋に注いでいます。県内の一級河川は吉野川(よしのがわ)、物部川(ものべがわ)、仁淀川(によどがわ)、四万十川(しまんとがわ)の4水系です。二級河川は97水系、268河川あります。

平野は、物部川、国分川(こくぶがわ)、鏡川(かがみがわ)下流にある140㎢余りの高知平野(こうちへいや)、香長平野(かちょうへいや)と、その他の河川下流または海岸地帯には小さな平野がみられます。この他、南西部の四万十市周辺がやや広い平野となっていますが、県土のほとんどが海の近くまで山が迫る典型的な山国です。県中央部を縦断する仁淀川の河口を境にして、東は浦戸湾(うらとわん)周辺の平野を除くと、ほとんどが隆起海岸(りゅうきかいがん)であり、東部海岸には30~60mの海岸段丘(かいがんだんきゅう)が発達しています。西は浦ノ内湾(うらのうちわん)や須崎湾(すざきわん)をはじめ沈降(ちんこう)による入り江が多く、山と絶壁が海岸線に迫るリアス式海岸が続いています。高知県の海岸線は東西に長く、延長約713㎞あります。南に突き出した東端の室戸岬(むろとみさき)から西端近くの足摺岬(あしずりみさき)辺りまで、海部灘沿岸、土佐湾沿岸、豊後水道東沿岸の3沿岸に区分されます。

高知県は、律令制の頃、土佐国(とさのくに)と呼ばれていました。今も、その名残で「土佐(とさ)」を特産品の名に冠することがあります。

高知県の地方区分は、大きくは、東部・中部・西部の3つに分けられます。行政の地域アクションプランでさらに、安芸(あき)、高知市(こうちし)、嶺北(れいほく)、仁淀川(によどがわ)、物部川(ものべがわ)、高幡(こうばん)、幡多(はた)の7つの地域に区分されています。

<東部>
安芸地域… 室戸市(むろとし)、安芸市(あきし)、東洋町(とうようちょう)、奈半利町(なはりちょう)、田野町(たのちょう)、安田町(やすだちょう)、北川村(きたがわむら)、馬路村(うまじむら)、芸西村(げいせいむら)
<中部>
高知市地域…高知市(こうちし)
嶺北地域…本山町(もとやまちょう)、大豊町(おおとよちょう)、土佐町(とさちょう)、大川村(おおかわむら)
仁淀川地域…土佐市(とさし)、いの町(いのちょう)、仁淀川町(によどがわちょう)、佐川町(さかわちょう)、越知町(おちちょう)、日高村(ひだかむら)
物部川地域…南国市(なんこくし)、香南市(こうなんし)、香美市(かみし)
<西部>
高幡地域… 須崎市(すさきし)、中土佐町(なかとさちょう)、檮(梼)原町(ゆすはらちょう)、津野町(つのちょう)、四万十町(しまんとちょう)
幡多地域… 宿毛市(すくもし)、土佐清水市(とさしみずし)、四万十市(しまんとし)、大月町(おおつきちょう)、三原村(みはらむら)、黒潮町(くろしおちょう)

【気候】

高知県は、北は四国山地によって徳島・愛媛両県に接し、南は太平洋に面しています。東に室戸岬、西に足摺岬が太平洋に突き出し、その内に土佐湾を抱く東西に細長い扇状をしています。気候区分は、温暖な海洋性気候、山間部の内陸性気候、また、多雨気候、低温で雪の降る日本海側の気候、風の強い岬の気候など変化に富んだ気候特性を持っています。室戸岬や足摺岬のように海上に突き出た岬や沖の島では、年間を通じて風が強く吹いています。

寒い冬の季節は、四国山地が高知県の気候に与える影響は大きく、特に北西の季節風が関門海峡(かんもんかいきょう)や中国・九州山地の低地を通り四国山地に吹き付けるため、山間部や豊後水道(ぶんごすいどう)に面した地方は雪が多くなっています。

海岸地方は、季節風が四国山地に遮られるのに加え、黒潮の影響も受けて温暖な気候です。

高知県の中部・東部の平野部・海岸部では晴天が多く、冬季には日照時間の多い地域の一つとなっています。

降水量は、暖かい夏の季節には、黒潮上を渡る南寄りの湿った気流が四国山地に吹きつけるため、山間部では平年の年間降水量が3,000㎜を超える所が多く、東部の魚梁瀬(やなせ)地区は4,000㎜と日本で有数の多雨地帯で、魚梁瀬ダムがあります。

高知県は、水不足に悩まされることはほとんどありませんが、治水は古くからの課題となっており、江戸時代初期の土佐藩奉行:野中兼山(のなかけんざん)による大規模な河川改修が県下の主要河川ほとんどで実施されてきました。現在は全国有数の治水能力を有し、降雨量が多いにもかかわらず、全国的に見ると水害が少ない県です。

年間平均気温は17.7℃と、平野部では冬も暖かく温暖ですが、山間部では冬の寒さは厳しく雪が積もることもあります。

【農業の特徴】

高知県は、年間日照時間、年間降水量とも全国一多く、温暖で日照時間の多い気候を活かし、平野部では水稲の早期栽培や、収益性の高い施設栽培を中心とした園芸農業(野菜・果樹・花きのハウス栽培)が盛んです。一方、山間部では涼しい気象条件の中、特色のある野菜、果樹、茶や肉用牛(土佐褐毛牛)などの生産が行われており、それぞれの地域の特性を活かした農業が展開しています。

園芸の中でもミョウガ、ナス、シシトウ、ショウガ、ニラ、ユズ(果樹)、グロリオサ(花き)などの農産物は全国第1位のシェアを誇り、このほかにもキュウリ、ピーマン、オクラ、小ネギ、アールスメロン、フルーツトマト、ユリ(花き)、文旦(果樹)などは高知県を代表する園芸品目となっています。

これら野菜や果物などの主要な農産物は、主として高知県園芸農業協同組合連合会が一元的に集荷し、東京や大阪などの大消費地に向けて出荷・販売しており、全国的にも野菜や果物などの産地としてのブランドを確立しています。

また、近年は害虫の天敵となる昆虫などを利用した減農薬栽培や有機栽培など、環境に優しい農業に取り組む農業者も増えています。

森林率の高い高知県では、林業も多く、特用林産物では、乾しいたけが同12位、生しいたけが同29位、木炭が同4位となっています。

水産業も盛んで、「かつおの一本釣」や「かつおのたたき」などが全国に知られており、加工品でも、だしに使われる「そうだ節」の生産量が全国一です。

2.高知の伝統野菜

高知県では、高知県農業振興部地域農業推進課が「土佐の伝統作物」とするパンフレットを作成しています。ここに記載されているのは、野菜だけに限らず、穀物も含まれており、伝統作物となっています。

「土佐の伝統作物」の定義は、「ある地域で、世代を越えて、栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定の用途に供されてきた作物」となっています。これに基づき、「経済栽培がされてきた品目」「平成17年度に報告された品目」「平成25、26、27年度に実証展示した品目」および「牧野野菜(まきのやさい)」を加え、25品目を掲載しています。

「牧野野菜」とは、高知県高岡郡佐川町出身の植物学者である牧野富太郎博士に縁(ゆかり)のある野菜です。牧野博士は、「日本の植物学の父」と称され、多数の新種を発見し、命名も行った近代植物分類学の権威です。その牧野博士の教え子であった元:県立幡多農業高校教諭の故・竹田功氏が博士の指示で収集・調査した高知の伝統野菜が「牧野野菜」です。

近年になって、竹田功氏が収集・調査されていた作物の種子が長男の竹田順一氏によって発見され、牧野博士の名にちなんで「牧野野菜」と称されています。

「牧野野菜」は、蕪(かぶ)やいんげん豆、大豆など50種類以上にものぼる数で、これらの伝統作物の復活およびブランド化と農家の所得向上を目指し、2015年に「TeamMakino(チームマキノ)」(代表:熊沢秀治氏)という組織が結成されました。メンバーは、竹田氏から種子を託された高知市の農家が中心となり、県・市の行政機関や民間企業が支援機関として集まっており、事務局は高知農業改良普及所が担っています。

高知県では、伝統作物を特色ある地域資源として捉え、栽培体制を整えたり、地域のブランド野菜としての販売、加工品の原料として活用するなど地域の活性化に向けた取り組みが進められています。

ここでは、「土佐の伝統作物」に掲載されている25品種とその他の在来種・自生種の7品種を加えた32品種を紹介します。

入河内大根(にゅうかわうちだいこん)

【生産地】安芸市入河内

【特徴】首の部分の皮が赤紫色。1本が、青首ダイコンの約3倍の大きさで、平均で4~5kgもある。大きいものでは10㎏を超えるものもある。

【食味】キメが細かく、辛みが少ない。首の赤い部分は梨のように甘い。

【料理】スポンジ状になること、いわゆる「ス」が入りにくく、煮崩れしにくいので煮物や鍋にも最適。天ぷらやサラダでも美味しい。なます等にすると、赤紫色が鮮やかで見た目にも美しい。根も葉も生食にする。ふろふき大根、おでん、ぐる煮、酢の物、漬物、干し大根。

【来歴】来歴は不明。安芸市の入河内地区で昭和30年頃に盛んに栽培されていた。最近では栽培する農家が少なくなり、他の大根と交雑して失われる危機に直面したため、2006(平成18)年、地域の農家を中心に入河内大根の栽培を通じた地域活性化を目的に「入河内大根のこそう会」を結成。入河内大根の伝承のため、栽培や調理方法の研究、レシピの配布などに取り組んでいる。

【時期】12月下旬~2月上旬

 

中追大根(なかおいだいこん)

【生産地】いの町中追大平(なかおいおおひら)

【特徴】首の部分が赤色で、甘く独特の香りがある。

【食味】苦みやくせはなく、生でそのまま食べることができる。

【料理】酢大根、漬け物のほか、煮ても軟らかく、煮汁の味がよくしみこむ。

【来歴】

【時期】11月下旬~2月中旬

 

大道の昔大根(おおどうのむかしだいこん)

【生産地】四万十町十和(とおわ)大道地区

【特徴】上部表面が赤色~赤紫色、内部は白色。通常2㎏、大きいものは3.5㎏程。

【食味】しっかりした肉質。トウ立ちは遅い。

【料理】酢の物、煮物

【来歴】大道地区で古くから栽培されてきた品種。焼畑で作られてきた固定種で赤い色をしている。

【時期】12月~3月

 

弘岡カブ(ひろおかかぶ)

【生産地】高知市春野町弘岡

【特徴】肌は白くなめらかで美しい。きめ細やかな肉質が特徴。普通の蕪より大きく、子どもの頭ほどの大きさになる。腰高の扇円形で、重さ800~1000gに肥大する。

【食味】甘味があり、肉質が軟らかい。霜が降りて甘みの増す12月から2月にかけておいしい。

【食味】漬物、べったら漬けに適する。煮物、蒸し物。

【料理】煮くずれしないために煮物に使われるほか、漬物、酢カブ、寿司にも使われている。

【来歴】元高知県園芸試験場長の金澤氏によると「土佐市高岡より導入されたトラカブが、その後の改良と指導者の努力によって生産が拡大し、生産地であった春野町弘岡下を中心とした販売戦略上の商品名として、弘岡カブの名称が用いられたものと推察される。その商品名がその後一人歩きを始め、品種名として定着し、全国に知られるようになったものであろう」(くらしと農業・第6巻1号)明治年間に土佐市高岡の高橋虎次氏が「トラカブ」と呼ばれる系統を選抜し、この系統が大正初期春野町弘岡に入り、選抜と自家採種が重ねられて今日に至っているとされる。

【時期】11月下旬~2月上旬

こうち農業ネット

 

大道の昔カブ(おおどうのむかしかぶ)

【生産地】四万十町十和(とおわ)大道地区

【特徴】上部表面が赤色~赤紫色、内部は白色。普通の蕪より大きく、子どもの頭ほどの大きさになる。霜が降りて甘味が増す12月から2月にかけて美味しい。

【食味】皮の部分には少しエグミがあるが、肉質が密で煮物にすると甘く食べ応えがある。

【料理】煮崩れしないため煮物に使われるほか、漬物、酢かぶ、寿司にも使われる。

【来歴】焼畑で作られてきた固定種で赤い色をしています。

【時期】12月~3月

 

銀不老(ぎんぶろう)

【生産地】大豊町西豊永(にしとよなが)地区

【特徴】いんげん豆の一種。同地区で栽培されている豆の呼称。独特の黒い外観を持つ。

【食味】黒大豆の旨味と金時豆の甘みを併せ持つ優しい風味。豆の皮は軟らかく、煮付けると味がよく染み込む。

【料理】混ぜご飯、五目寿司、おにぎり。お彼岸の中日には、銀不老を使ったおはぎのような「なべもち」をお供えする。若い莢(さや)は、五目御飯、混ぜご飯などにすると大変に美味。混ぜ寿司の「銀不老寿司」は、昔から祝宴や祭事のときにつくられ、正月の煮豆としても食べられていた。

【来歴】「不老長寿の豆」として古くから大豊町では自家栽培され、そのほとんどが地域内で消費されてきた。1750年ごろに町内の上桃原集落に住むお銀という者が旅人から「フロウ」とよばれる豆の種を譲り受けて栽培したのが始まりだとする説もある。

【時期】9月~11月

高知県豊永町観光ガイド
農林水産省「うちの郷土料理」

 

在来ソバ(ざいらいそば)

【生産地】本山町汗見川(あせみかわ)

【特徴】近年、地域では「汗見川そば」と呼ばれている。

【食味】小粒でそば本来の粘りや味・香りが強い。

【料理】そば

【来歴】本山町の山間部で種継ぎをして大切に守られ栽培されてきた在来品種。

【時期】12月

集落活動センターポータルサイトえいとここうち

 

大平カブ(おおひらかぶ)

【生産地】越知町、中大平、五味、桐見川、野老山、中畑、横畠

【特徴】表面は鮮やかな赤紫色で、内部は白く肉質は軟らかい。

【食味】独特の香りがあり、甘くてジューシー。

【料理】煮物、サラダ、酢漬け、みそ汁の具など。かつては年越しの料理「カブと鯨(くじら)の煮物」に欠かせない野菜であった。

【来歴】越知町の大平カブと、仁淀川町の田村カブは、葉が無いと見分けがつかないほど似ている。大平カブは葉先が丸く、緑色だが、田村カブは葉が紫がかっていてギザギザしている。

【時期】11月~2月

 

田村カブ(たむらかぶ)

【生産地】仁淀川町

【特徴】表面は鮮やかな赤紫色で、内部は白く肉質は軟らかい。根部の形状は扁平~やや扁平。大きなものは2~3㎏にもなる。

【食味】独特の香りがあり、甘くてジューシー。

【料理】煮物、サラダ、酢漬け、味噌汁の具などに利用されている。

【来歴】江戸時代から仁淀川町田村地区を中心に、焼畑などで栽培されてきた赤カブ。

【時期】11月~2月

仁淀ブルー通信「天空の山里に伝わる、赤いかぶ」

 

大道の昔高菜(おおどうのむかしたかな)

【生産地】四万十町十和大道地区

【特徴】葉の中央を縦に通っている太い葉脈の中肋(ちゅうろく)は細い。最大菓長35cm、最大菓幅25cm、菓垂30g程度。順次かき取って春まで利用できる。

【食味】適度な辛みがある。

【料理】漬物、妙め物、白和え等用途は広い。

【来歴】同地区で昔から自家採種で栽培されてきた品種。

【時期】12月~4月

 

人参芋(にんじんいも)

【生産地】高知県西部を中心に県内全域

【特徴】さつま芋の一種。県西部を中心に広く作られてきた。原材料となるさつま芋は、肉色がオレンジ色の「人参芋」と呼ばれる。生芋で販売されることは少なく、干し芋の原材料として利用される事が多い。高知では、干し芋のことを「東山/干菓子山(ひがしやま)」と呼ぶ。人参のように中身は鮮やかなオレンジ色をしている。

【食味】甘みが強くねっとりした食感が特徴。

【料理】干し芋。人参芋を凍えるような寒い季節に天日でじっくり干し、食べる時はストーブなどで炙って食べるのが通。栽培地域では、干し芋では美味しいが、それ以外では美味しくないと言われている。他、焼き菓子など。

【来歴】昔から干し芋の原料としても親しまれてきた地域の希少な作物の一つ。四万十地区では、2021(令和3)年に「四万十の芋プロジェクト協議会」が発足。化学肥料・農薬不使用の「自分達で決める農業」のこだわりを持ちながら、四万十の一次産業を生産者と共に守り繋いでいる。2015(平成27)年頃に、1グループの300kg程から始まった「人参芋」の供給は、生産者が生産者を誘ってその輪を広げ、四万十町、四万十市、黒潮町と3市町村をまたいで、2022(令和4)年には40件にまで拡大している。この年は例年以上に秋口の天気が良く順調に生育。10~11月の収穫期には予想を大きく超える45tの収穫となった。

【時期】11月中旬

 

十市なす(とおちなす)

【生産地】南国市十市、四万十市、津野町、梼原町

【特徴】一口サイズで収穫される小茄子(こなす)の仲間。果実の大きさは25~30gで小さく締まって硬く、卵型。果皮は、光沢が強い濃い黒紫色だがヘタ下は白い。

【食味】果肉がしっかりしており歯ごたえがある。

【料理】主に煮物、天ぷらで食されている。浅漬け、塩もみにも適している。最近では漬物加工用としての需要も伸びている。

【来歴】1935年頃に高知市初月地区の在来種「初月なす」と果皮の色が濃い「真黒(しんぐろ)なす」とが自然交雑して生まれたと考えられている。1935(昭和10)年に南国市十市の山本浅吉氏によって加温促成栽培用品種として育成された。品種の維持は主に自家採種によって行われ、各生産者あるいは生産者グループの中で優良個体が親株として選抜されて種子が採種されている。ハウス栽培と雨よけ及び露地栽培で一年中出荷されている。

【時期】通年

 

紫豆(むらさきまめ)

【生産地】大豊町

【特徴】土佐在来いんげん。熱を加えると紫色から茶色に変色する。

【食味】ほくほくとした食味。

【料理】煮豆、羊羹、蒸しパンなど

【来歴】2014(平成26)年、紫色のインゲンである「紫豆」や、幻の豆といわれていた「タマゴブロウ」(白いインゲン)が、大豊町西峰の一軒の農家によって保存・栽培されていたことが確認された。普及所では大豊町農業センターの協力を得て、紫豆の摘芯(てきしん)による増収効果を調査し、紫豆の摘芯栽培は慣行に比べて約1割の収量増となった。

【時期】11月

次世代定着に向けたれいほく園芸産地の再生P29

 

タマゴブロウ(たまごぶろう)

【生産地】大豊町

【特徴】土佐在来いんげん。

【食味】あっさりした味

【料理】煮豆、スープ、羊羹など

【来歴】約60年以上前から栽培されなくなったと言われていたが、2014(平成26)年、紫色のインゲンである「紫豆」や、幻の豆といわれていた「タマゴブロウ」(白いインゲン)が、大豊町西峰の一軒の農家によって保存・栽培されていたことが確認された。

普及所では大豊町農業センターの協力を得て、「タマゴブロウ」の品種特性を調査した。「タマゴブロウ」は「銀不老」に比べて発芽率が悪い上、側枝の発生が少なく、1株当たりの着莢数が少ない結果であったが、1株当たりの収量では「銀不老」に対して約 15%増でなった。

【時期】11月

次世代定着に向けたれいほく園芸産地の再生 P29

 

潮江菜(うしおえな)

【生産地】高知市

【特徴】アブラナ科の葉野菜。ツケナと呼ばれる非結球のカブの仲間。京菜、水菜の原種とされる。草丈は30cm程度で、水菜と比べ葉の切れ込みが少なく葉柄が太い。緑色の葉柄に切れ込みがあり、軸は白い。牧野野菜の一つ。

【食味】味わいは濃厚で加熱すると旨みと甘味が増すのが特徴。生食も可能。

【料理】雑煮、漬物など

【来歴】かつては、高知市の潮江地区で栽培されており、土佐の伝統的な雑煮の具材であったり、漬物として親しまれていたが、潮江地区では1958(昭和33)年、春野地区では1979(昭和54)年を最後に、栽培が途切れてしまった。ところが近年その種子が発見され、潮江地区で葉菜類を栽培している熊澤秀治氏の下へ届けられました。消滅したかと思われていた潮江菜は、熊澤さんの手により復活。往時を懐かしむお年寄りや、地元の小学校で栽培や調理に取り組む児童たちに愛されている。

【時期】11月~3月

「昭和南海地震から70年を経て土佐の伝統作物が奇跡の復活!-高知県潮江菜を小学生らが東京・伊勢丹でPR」

 

もち菜(もちな)

【生産地】高知市

【特徴】小松菜の原種の一つとさるが、葉色は小松菜より淡い。草丈は30~60cmとやや大型。菜は黄緑色で、切れ込みがない丸葉。葉柄(はがら)は白く、やや太く、軟らかい。小松菜に似ているが、小松菜よりも葉の色が淡く軟らかい。「正月莱」とも呼ばれる。

【食味】軟らかくて甘みがある。生食の食感は、ほど良く軟らかでシャキシャキと美味しい。

【料理】雑煮の際に餅の上に菜を置くと「名を上げる」として縁起が良い料理とされる。漬物にしても美味。和え物、炒め物、汁の実など。牧野野菜。

【来歴】土佐山内家が愛知県尾張地方から持ち込んだとされる。尾張地方には、「餅菜(正月菜)」があり、「あいちの伝統野菜」に認定されている。尾張地方は土佐藩初代藩主・山内一豊の出生地と一致する。もち菜は茎が細くて作業中に折れてしまうことや、葉がすぐに黄色くなり見栄えが悪くなることなどから、農家からも市場からも敬遠され、生産量が減少し、小松菜に代わられている。

【時期】11月~12月

 

南越カブ(みなごしかぶ)

【生産地】高知市、いの町

【特徴】葉は「びわ葉」で、のこぎり歯は浅い。寒さに遭遇すると濃紫色になる。根は、卵を逆さまにしたような倒卵形(とうらんけい)で、直径15~20cm程度。全体が淡い赤色を帯び、根は、抽根部(ちゅうこんぶ:根が地上に出ている部分)は赤紫色で寒さに遭遇すると極濃くなる。内部は白色。

【食味】しっかりとした肉質と柔らかい葉が特徴。

【料理】漬物、煮物、クリーム煮、干しかぶなど

【来歴】四国山間部の焼畑で作られ、各地に残っている赤カブの一つ。葉に切れ込みがないのが特徴。「南越(みなごし)」は、いの町(旧:吾北村ごほくそん)にある地名。

【時期】12月~3月

 

山内家伝来大根(やまうちけでんらいだいこん)

【生産地】高知市土佐山

【特徴】乗は羽状に欠刻し、黄緑色。根はやや短く湾曲した先流れで白色。

【食味】辛みは少なく瑞々しい。繊維が細かく出汁の味がよくしみ込む。煮物にするととろけるような食感。

【料理】煮物、汁物、サラダなど

【来歴】「山内家伝来大根」の山内家とは、関ヶ原合戦後に徳川家康より土佐藩主に任じられた、山内一豊から始まる一族名が由来。土佐へ移り住む際に、ふるさと尾張国の野菜を持ち込んだとされるのが「山内家伝来大根」と言われている。愛知県の伝統野菜「方領(ほうりょう)大根」に似る。2016年に土佐山都網地区で地元農家が協同して栽培が復活。苦労の2年間を乗り越え、2018年頃から順調に収穫量を伸ばし、2022年には年間2000本以上が出荷された。

【時期】12月~2月

 

きゅうり(4種)大正在来、佐川在来、大豊在来、山内家伝来

【生産地】-

【特徴】「大正」「大豊」「山内」は自イボの短大形、「佐川」は黒イボの短形。「大正」「大豊」「山内」は晩生で、「佐川」は中晩生。

【食味】

【料理】

【来歴】

【時期】6月~9月

 

土佐在来西瓜(とさざいらいすいか)

【生産地】-

【特徴】果形は小玉で俵型。果皮は淡緑色で白色の縞模様。果肉は赤色。肉質がしまり、甘い。

【食味】

【料理】

【来歴】

【時期】8月

 

はちまき大豆(はちまきだいず)

【生産地】高知市

【特徴】中粒・扁平。茶褐色に白い筋模様が入ることから‘ハチマキ’と呼ばれる。

【食味】

【料理】

【来歴】香美市物部町で採取したとの記録があり、「陰陽師が京より持ち帰った」と伝わる。

【時期】11月~

 

土佐在来いんげん

【生産地】高知市

【特徴】種皮は白色と紫色の2種類あり、どちらも短卵形。

【食味】

【料理】

【来歴】大豊町の豊楽寺に伝わったとされる。

【時期】11月~

 

朝鮮豆(ちょうせんまめ)

【生産地】高知市

【特徴】種皮は濃紫色で、長卵形。花は濃いピンク色。

【食味】

【料理】

【来歴】江戸時代から栽培されていたと伝わる。

【時期】11月~

 

八升豆(はっしょうまめ)

【生産地】高知市

【特徴】「ムクナ豆」の一種。草勢は旺盛で繁茂する。花は濃紫色で総状。大粒・扁平で、種皮は白地に灰色の斑紋がある。

【食味】

【料理】

【来歴】土佐清水市で採取したとの記録があり、江戸時代末期に絶滅したとされていた。

【時期】11月~

 

下知ねぎ(しもぢねぎ)

【生産地】高知市

【特徴】「九条系」とされるが、伝来時期は不明。冬葱(2系統)と夏葱があるとされる。冬葱の葉は濃緑色でやや太い。夏葱は未確認。

【食味】歯触りは柔らかく、甘みがある。トロッとしたぬめりがあるのが特徴。

【料理】

【来歴】高知市の下知地区や弥衛門地区で盛んに作られたが、宅地化等により衰退。現在はほんの数軒が育てるのみであったが、高知市日の出町の昭和小学校の児童が地域の伝統野菜を復活させる取り組みを行っている。

【時期】12月~3月

 

ぼたなす(ぼたなす)

【生産地】室戸市吉良川町日南地区

【特徴】大型のなすで、大きいものでは500gを超える。

【食味】香り良く甘いのが特徴。軟らかく、ジューシーでトロッとした食感。

【料理】焼きナス、煮物など

【来歴】日南のぼたなすは室戸市吉良川町日南地区に代々伝わる伝統野菜。京都の老舗料亭お墨付きの「幻の食材」とされる。

【時期】7月~10月

集落活動センターポータルサイトえいとここうち

 

焼畑のかぶ(やきはたのかぶ)

【生産地】

【特徴】焼畑のかぶの葉はだいこんに似る。

【食味】

【料理】

【来歴】江戸時代から伝わる「田村かぶ」よりさらに古く、山間部の焼畑で作られてきた。焼畑農業とは、作物を栽培した後に農地を焼き払って地力を回復させる農法。山間地の「焼畑」で栽培されていたカブが地域ごとに交雑や選抜を経て独自の形質を備えて定着したもの。「牧野野菜」には「焼畑のかぶ」「南越かぶ」「田村かぶ」「大道かぶ」の4種類がある。仁淀川町の「田村かぶ」は葉に切れ込みがあり、やや紫色を帯びる。四万十町の「大道(おおどう)かぶ」は葉が杓子型で紫色を帯びる。

【時期】

 

あき豆(あきまめ)

【生産地】土佐市

【特徴】平さやのすじなしいんげん

【食味】さやは柔らかく、味もしみやすいため主に煮物に利用される

【料理】煮物

【来歴】原種は不詳であるが、昭和32年頃より香川県から導入され、さやが柔らかく品質がよいことから「あき豆」として県下に普及し、現在でもハウス加温栽培されている。自家採種。

【時期】11月~5月

 

四方竹(しほうちく)

【生産地】南国市

【特徴】横に切ってみると、断面が四角い形をしているが特徴。この四角の断面から「四方竹」と呼ぶ。春に旬を迎える筍(たけのこ)とは形状が大きく異なり、細長く、キレイな黄緑色をしている。収穫時期はひと月ほどしかない。

【食味】淡白で繊細な味わい。えぐみが少ない。シャキシャキとした食感が良いことから高知では人気の食材です。

【料理】彩りを生かした煮付け、会席料理用として重宝されている。高知での定番料理「ポン切り煮」や四方竹の真ん中にある穴に寿司飯を詰めた田舎寿司。煮物、炒め物、揚げ物、和え物、サラダ、加工品には、キムチ漬け、四方竹羊羹、四方竹パイなど

【来歴】中国南部原産の多年生常緑竹で、高知県に入ってきたのは1877(明治10)年頃に南国市白木谷の人が中国から持ち帰ったのが栽培の始まりだと言われている。

【時期】10月~11月下旬

高知まるごとネット

 

虎杖(いたどり)

【生産地】高知市土佐山地区

【特徴】山あいに自生するタデ科の植物。自生種。

【食味】食感が良く特有の酸っぱさがある。 生でも食べられるが、酸味がやわらぐため、炒め物や漬物にするのが一般的。

【料理】生食、油炒め、漬物など。いたどりの新芽がとれるのは春のみだが、塩漬けや冷凍で保存ができるので、保存食としても重宝され、家庭料理の副菜として年間を通して食卓に上る。穂先の部分は天ぷらにすると香りがよく、軽い食感も楽しめるのでおすすめ。

【来歴】竹のように中心が空洞なことから「すかんぽ」と呼ぶ地方もある。

【時期】3月下旬~5月上旬

農林水産省「うちの郷土料理 いたどりの油炒め」

 

根木谷ねぎ(ねぎだにねぎ)

【生産地】高知市三谷地区、潮江地区

【特徴】長ねぎの一種で土寄せすれば白ねぎになる。葉が軟らかく折れやすいので栽培が難しい。

【食味】葉にんにくの風味があり美味。旨味が豊富で葉部分にとろみがある。

【料理】薬味、すき焼き、焼き物、天ぷらなど

【来歴】かつては高知県春野町根木谷山の南の集落でつくられていたとされる。土佐山内家の御用達とされ、供え物として献上されていたという話もある。牧野野菜唯一のねぎ。根木谷のねぎは生産量が少なく、市場にはほとんど出回ることはない。

【時期】11月~

 

葉にんにく(はにんにく)

【生産地】南国市

【特徴】葉にんにくは、にんにくの成長途中に収穫した若い葉の部分で、一見するとニラに似る。旬は冬頃で、春頃になると養分がにんにく芋の部分にまわる。

【食味】食感はネギより柔らかく、風味はニラより豊か。ほど良いニンニクの香味が食欲をそそる。

【料理】「ぬた」高知の郷土料理酢味噌和え、かつをのたたき、くじらと葉にんにんくの煮物など

【来歴】葉にんにくを食べる文化は朝鮮渡来によるものといわれている。土佐のにんにくのルーツは16世紀末、長宗我部元親が朝鮮の役から帰国する際、連れ帰った朴好仁一族が伝えたと言われる。これまで葉にんにくといえば、主に高知県の在来種である赤玉にんにくの葉を指した。近年、葉の成長が他種に比べて早く、幅広で長い品種が登場して、葉にんにく用として広く栽培されるようになってきた。

【時期】葉にんにくの収穫時期は、秋取り、秋~冬取り、冬取り、春取りがある。一般的な作型は11月上旬~12月末

南国市「葉にんにく」
農林水産省「うちの郷土料理 葉にんにくのぬた」

 

【参考資料】

土佐の伝統作物
地方特産食材図鑑

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