日本の伝統野菜-31.鳥取県
目次
1.地域の特性
【地理】
鳥取県は日本の本州の西に位置する中国地方の北東部に位置しています。総面積は、3,507.13㎢で、全国41位です。(国土地理院全国都道府県市区町村別面積調2023年1月1日現在)東西約120km、南北約20~50kmと、東西にやや細長い県です。隣接県は、兵庫県、島根県、岡山県、広島県の4県と接しています。東は兵庫県に、西は島根県に接しています。北は日本海に面し、鳥取砂丘をはじめとする白砂青松の海岸線が続きます。南には、中国地方の最高峰・大山をはじめ、中国山地の山々が連なっており、この稜線を境に岡山県、広島県と隣接しています。
鳥取県は日本海側に中国山地がせり出した形になっているため、山陽側に比べて、狭小急傾斜で山地が多い地形です。可住面積は900.83 k㎡で全国46位、人口は539,190人(令和5年4月1日)で全国47位と最下位でした。山地が多く平野が少ない地形のため、全面積に占める耕地の割合は9.9%で、全国の11.9%を下回っています。
鳥取県西部には、中国地方最高峰で「伯耆富士(ほうきふじ)」とも称されるの大山(だいせん)、東部には氷ノ山(ひょうのせん)、扇ノ山(おうぎのせん)等の急峻な山岳地帯が広がっています。山地の多い地形で、平野は、三大河川(千代川、天神川、日野川)の流域に形成されていますが、規模は小さく、それぞれ鳥取市、倉吉市、米子市が流域の中心都市として発展しています。鳥取県特有の地形である砂丘は、急傾斜地を流れ出る河川の流砂と日本海の海流、風波によって形成されたものです。海岸線は屈曲に乏しく、その75%は平坦な砂浜海岸となって東西に続いています。沿岸地域は、東中部の砂丘域、中西部の岩石域及び西部の内湾に大別されます。
鳥取県は、かつての因幡国(いなばのくに)、伯耆国(ほうきのくに)に相当する県域で、現在は、大きく東部、中部、西部の3つの地区に分かれます。東部地区は、旧:因幡国の地域で、県庁所在地である鳥取市と岩美郡岩美町(いわみぐんいわみちょう)、八頭郡(やずぐん)(若桜町(わかさちょう)・智頭町(ちづちょう)・八頭町(やずちょう))があります。中部地区は、旧:伯耆国の地域で、白壁土蔵群で知られる倉吉市(くらよしし)を中心に東伯郡三朝町(とうはくぐんみささちょう )・湯梨浜町(ゆりはまちょう)・琴浦町(ことうらちょう)・北栄町(ほくえいちょう)があります。西部地区は、中部と同じく旧:伯耆国の地域で、古くから西隣である島根県の旧:出雲国(いずものくに)である松江市周辺と強い結びつきがあります。米子市(よなごし)、境港市(さかいみなとし)、西伯郡日吉津村(さいはくぐんひえづそん)・大山町(だいせんちょう)・南部町(なんぶちょう)・伯耆町(ほうきちょう)・日野郡日南町(ひのぐんにちなんちょう)・日野町(ひのちょう)・江府町(こうふちょう)を擁しています。
【気候】
鳥取県の気候は、県内ほぼ全域が日本海側気候で、全域が豪雪地帯対策特別措置法に基づく豪雪地帯に指定されています。小気候区で分類すると平野部は山陰型気候区、山間部は中国山地気候区です。気象庁の予報区分は、東部と中・西部とに二分しています。また、それぞれ、日本海沿岸部と中国山地の山間部とに細分できます。
天候は年間を通して比較的穏やかです。春と秋は好天の日が多く、夏は南風によるフェーン現象で猛暑日となることもありますが、平野部でも熱帯夜は少ないのが特徴です。冬は曇りや雨、雪の日が多くなりますが、平野部の冷え込みは厳しくありません。米子市などの西部沿岸部は平年の最深積雪は20センチメートル程度と比較的少ないですが、東へ行くほど降雪・積雪量は多くなります。特に大山周辺の内陸山地は山陰一の豪雪地帯となっており、冷え込みも厳しく−15°C以下にまで下がることもあります。
年降水量は平野部・山間部ともに約 2,000mmですが、一部山間部では 2,500mm を超えるところもあります。梅雨期や台風期の他に冬期も降水量が多くなる傾向があります。梅雨時は西部の降水量が多く、冬期は東部が多くなります。冬期の積雪は平野部より山間部で多く、平野部でも中・西部より東部で多くなります。最深積雪は、12 月は平野部で10cm 前後、山間部で 30cm 前後です。年間日照時間は、平野部では 1,700 時間前後で、東部より中・西部で日照時間が多いのが特徴です。
【農業の特徴】
鳥取県の人口は、543,615人(鳥取県統計課「鳥取県の推計人口令和3年10月~4年9月」)で、全国47位で最も人口の少ない県です。人口減少に伴い、農業従事者も減ってきており、2020(令和2)年の「農林業センサス」によると、鳥取県内の農家数は13,911戸となっています。2023(令和5)年2月28日公表の農林水産省「作物統計調査」によると耕地面積は33,752haで、内、田が22,974ha、畑が10,778haとなっていますが、先の「農林業センサス」の経営耕地面積のうち田は11,925ha、畑は4,339ha、樹園地は903haとなっており、大規模農家は多くないといえます。
鳥取県の経済活動別県内総生産(名目)を見ると、産業の中では、製造業が最も多く、次いで保健衛生・社会事業、不動産業となっており、農林水産業の生産額はそれほど大きくありません。2022年の資料(※2)によると農業産出額は764億円で全国第36位です。内訳は、野菜が28%、米が20%、ブロイラーが11%です。現在、2030(令和12)年度に農業生産1千億円を達成に向けて、各種施策を実行する「鳥取県農業生産1千億円達成プラン」を策定しています。
農業生産は、東部の千代川(ちよがわ)、中部の天神川(てんじんがわ)、西部の日野川(ひのがわ)の三大河川に開けた水田地帯での水稲、県東中部の中山間地帯の傾斜地及び黒ぼく丘陵地帯の梨を中心とした果樹、 黒ボク土の畑および砂丘地帯での野菜、大山山ろく地帯の酪農、山間地域の肉用牛など多様な生産が行われています。
農産物の生産状況は、らっきょうが全国第1位、スイカが4位、日本梨が6位です。らっきょうは、鳥取県の特産品です。スイカについては、同県は西日本を代表する産地で、主に県中部が栽培に適しています。二十世紀梨は生産量、販売数量共に日本一を誇り、全国に知られています。
2.鳥取の伝統野菜
鳥取県における伝統野菜は、明確な定義がありません。
来歴等の由来を含め、確認できたのは4品種でした。山間部などには、まだまだ知られていない在来品種が栽培されている可能性があります。
板井原だいこん(いたいはらだいこん)
【生産地】八頭郡智頭町
【特徴】長さ10〜15cm程度の小さな大根。
【食味】
【料理】郷土料理の板井原ごうこ(たくあん漬け)の材料となる。
【来歴】同町の山間の集落、板井原地区で、昭和35年頃まで盛んに栽培されていた。その後栽培が途絶えたが、近年になり「板井原大根振興会」がつくられ、地域伝統野菜としての復活を目指し栽培している。
【時期】
砂丘らっきょう(さきゅうらっきょう)
【生産地】鳥取市福部町内の鳥取砂丘に隣接した砂丘畑
【特徴】「らくだ種」のらっきょう。色白の外観が大きな特徴
【食味】繊維が細かく歯触りがシャキシャキとした食感
【料理】甘酢漬け、
【来歴】「鳥取砂丘らっきょう」および「ふくべ砂丘らっきょう」の総称。福部のらっきょうの歴史は古く、江戸時代に参勤交代の付け人が持ち帰ったことが始まりと伝えられている。本格的に栽培が始められたのは1914年で、産業組合も設立され、本格的な販売にも取り組み、平成26年に100年を超えるに至る。地理的表示保護制度に登録された。
砂丘らっきょうの植え付けは機械を使わず、手で植える。地表温度が65℃にも達する日もある砂丘畑で7月下旬から9月上旬に行われる。
【時期】6月
三宝甘長とうがらし(さんぽうあまながとうがらし)
【生産地】鳥取市、八頭郡
【特徴】辛みのない大型とうがらし。鳥取県園芸試験場が2014年にDNAを解析したところ、三宝唐辛子は遺伝的に辛みがないことが確認されている。
【食味】果肉が肉厚で甘く、柔らかい
【料理】焼きトウガラシ、天ぷら、サラダ
【来歴】昭和の初期に東南アジアから持ち帰られたものを、鳥取市吉岡村の篤農家が選抜育種したものを「三宝大甘長蕃椒」(さんぽうおおあまながばんしょう)と名付け、栽培が広まったとされる。鳥取県東部のいなば地方(鳥取市、八頭郡)のみで栽培されている地方在来品種。
【時期】7~8月
伯州ねぎ(はくしゅうねぎ)
【生産地】鳥取県西部、米子市
【特徴】軟白部分が太い
【食味】柔らかく、とろけるような食感。甘味も強い。
【料理】すき焼き、焼鳥(ねぎま)、天ぷらほか
【来歴】県西部地区で古くから栽培されていた在来種。風雪に弱いため生産量は減少する一方だったが、おいしさは抜群であることから、この味をもっと知ってほしいと生産者が奮起。少しずつ栽培が増えてきている。現在栽培されているのは在来種の「改良伯州5号」という鳥取県唯一のオリジナル品種。ブランド名は「伯州美人」。甘さと柔らかさを兼ね備えた食味を重視し、糖度8度以上になるよう有機肥料を中心に特別栽培するなど特徴ある白ネギにして産地全体の活性化、地位の向上を目指している。2~3mの積雪もある山間地帯で冬の限定品として栽培されている。
【時期】12月~2月
【参考資料】
鳥取県統計課ホームページ
農林水産省 鳥取県の農林水産業の概要
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