日本の伝統野菜-14. 神奈川県
目次
- 1.地域の特性
- 2.神奈川の伝統野菜
- 三浦大根(みうらだいこん)
- 波多野大根(はたのだいこん)
- 鎌倉大根(かまくらだいこん)
- 寺尾二年子大根(てらおにねごだいこん)
- 相模半白節成(さがみはんじろふしなり)
- 万福寺鮮紅大長人参(まんぷくじせんこうおおながにんじん)
- 小泉冬越五寸(こいずみふゆごえごすん)
- 株ねぎ(かぶねぎ)
- 湘南ねぎ(しょうなんねぎ)
- 晩ねぎ(ばんねぎ)
- 真ねぎ(まねぎ)
- 開成弥一芋(かいせいやいちいも)
- さがみ長寿芋(さがみちょうじゅいも)
- クリマサリ(くりまさり)
- コンニャク芋(こんにゃくいも)
- 鵠沼かぼちゃ(くげぬまかぼちゃ)
- ホの二メロン(ほのにめろん)
- のらぼう菜(のらぼうな)
- 大山菜(おおやまな)
- 大山とうがらし(おおやまどうがらし)
- 相模ウド(さがみうど)
- 足柄の赤シソ(あしがらのあかしそ)
- 岩いわちゃんマメ(いわちゃんまめ)
- 田の畔豆(たのくろまめ)
- 津久井在来大豆(つくいざいらいだいず)
- 城ヶ島ソラマメ(じょうがしまそらまめ)
- 城ヶ島正月菜(じょうがしましょうがつな)
- 城ヶ島草ネギ(じょうがしまくさねぎ)
- 城ヶ島サトイモ(じょうがしまさといも)
1.地域の特性
【地理】
神奈川県は関東平野の南西部に位置し、東京の真南に位置しています。総面積は2,416km²で全国43位ですが、人口密度は東京、大阪に次ぐ第3位です。(2020年4月現在)
神奈川県は、北は首都東京都に接し、西は山梨、静岡の両県の1都2県に隣接しています。東は東京湾、南は相模湾に面しています。
地形は、西部は山地、中央は平野と台地、東部は丘陵と沿岸部に大きく分けられます。
西部の山地は箱根と丹沢山塊があり、1,500m級の山々は「神奈川の屋根」といわれています。
県の中央部を貫流する相模川や西部を流れる酒匂川は重要な水資源として高度利用されています。また、全国の主な湖の中で7番目に高い位置にある芦ノ湖をはじめ、相模湖、津久井湖、丹沢湖、宮ヶ瀬湖など水資源利用のための人造湖があるのが特色です。
南部の相模湾に面した風光明媚な海岸線は扇状に伸び、東の東京湾に面する港湾地域まで全長426kmの海岸線を有しています。地域ごとに変化に富み、東京湾側京浜地帯は高度に発達した港湾となっています。
【気候】
神奈川県の気候は、太平洋側気候(海洋性気候)に属します。
北西部に丹沢や箱根の山地をひかえ、東と南が平野と海に面し、また、太平洋の黒潮の影響を受けているため、基本的に温暖で雨量の多い太平洋側気候で夏季は多雨多湿、冬季は少雨乾燥という気候です。
これは県西部の丹沢や箱根の山々が大きな壁の役目をして冷たい北風を防ぐ一方、太平洋側からは温かい空気が流れ込むためと考えられます。県西部の相模原市のうち旧相模湖町・旧藤野町・旧津久井町地域は中央高地式気候に属します。県東部の三浦半島は、東京湾と相模湾に面しているため、暖流の影響を受け温暖な海洋性の気候の性質を持っています。
【農業の特徴】
神奈川県の経営耕地面積は1万8,800haで、内、田が3,670ha、畑が1万5,100ha(2019年)で全国第45位です(農林水産省「作物統計調査 令和元年」より)。
大都市圏の神奈川県は都市化が進んでおり、農業従事者数も少なく、農家一戸当たりの耕地面積は0.80haと全国平均の2.09haと比べて小さな規模となっています。
しかし、野菜や花きを中心に、高い技術力を生かして農地を高度に利用した土地生産性の高い経営が行われています。野菜は農業生産の中心となっており、平成30年の作付面積は8,607ha(イモ含む)です。また、販売については市場出荷や直売、契約出荷、観光農業(もぎとり)など様々な方法で行われています。
温暖な気候に恵まれていることと大消費地に近い利点を生かし、キャベツ、だいこん、ほうれんそう、ばれいしょ、さといも、小松菜、すいか、ねぎ、かんしょ、枝豆の野菜が栽培されています。特に三浦半島は、キャベツ、だいこん、すいかなどの大産地となっています。また、温室やビニールハウスを利用したトマトやきゅうり、いちごなどの生産も盛んです。
県西・県央・県北の中山間地域の傾斜地を中心に茶も栽培されています。同県で生産されている茶は、各地域で荒茶加工した後、(株)神奈川県農協茶業センターに一元集荷され、仕上げ加工を行い「足柄茶」として販売されています。
2.神奈川の伝統野菜
神奈川県では、県内産品の優位性を保つため、県と生産者団体で「かながわブランド振興協議会」を設立し、統一の生産・出荷基準を守り、一定の品質を確保するなどの要件を満たしている農林水産物や加工品を「かながわブランド」として登録しています。登録品は、67品目115登録品(令和2年3月現在)あります。かながわブランド登録品一覧「かなさんの畑」
しかし、伝統野菜については明確な定義はありません。「鎌倉野菜」「湘南野菜」など地域名を冠した野菜の販売も積極的に行われていますが、「鎌倉野菜」は神奈川県の鎌倉市や藤沢市周辺で栽培している野菜のことで、1998年くらいから用いられ始めた比較的新しい名称で、称される品種は、年間で100種類以上あると言われています。また、「湘南野菜」も湘南野菜出荷推進協議会に加盟している組合や農家の方が生産した全ての野菜を「湘南野菜」と呼んでおり特定の品種を表すわけではありませんが、いずれも使用する農薬を減らして栽培するなど品質にもこだわった野菜です。
伝統野菜については、神奈川県園芸種苗対策協議会が「かながわ ゆかりの野菜」として冊子を制作し、地域の野菜を紹介しています。
また、「万福寺鮮紅大長ニンジン」、「城ヶ島野菜」など在来種や地域野菜の復活プロジェクトも積極的に取り組まれています。
ここでは、神奈川県の在来種野菜29品種を同地区の伝統野菜として紹介します。
三浦大根(みうらだいこん)
【生産地】三浦市、横須賀市
【特徴】首の部分が細くて中太り型の白首大根。長さは60cm程度、重さは3㎏から、大きいものは8㎏にもなる。首まで土の中で育つ中太り型のため、抜き取り作業は重労働。
【食味】肉質は緻密でやわらかく、甘みがあって煮崩れしにくいため煮物、おでんによく合う。また、ポリポリとした歯切れのよさから、なますの材料にも適している。
【来歴】三浦半島では江戸時代(1812年頃)より栽培されており、大正14(1925)年に「三浦大根」と正式に命名された。関東を中心に冬大根として人気があったが、昭和54(1979)年にやってきた大型台風20号により大きな被害を受け、これを機会に、甘くて収穫しやすい青首大根の栽培が盛んになり、三浦大根は衰退していった。
しかし、栽培が減少した今でもその人気は衰えず、年末になると三浦大根を求めて遠方からやってくる人も多いという。現在、大田市場でせりが行われるのは12月中の一日のみで、年末の市場の風物詩となっている。
【時期】12月
波多野大根(はたのだいこん)
【生産地】秦野市
【特徴】長さ約60cm、胴回り約4・5cmの細長い形状をした在来種。文献によると、江戸時代には特産品として領主への献上品にも用いられていたという。しかし1707年(宝永4年)、富士山が大噴火し、降灰によって栽培が困難になりその後絶えたと考えられている。
【食味】-
【来歴】江戸時代に秦野名産として江戸幕府に献上されていたとされる。1707(宝永4)年の富士山噴火による降灰のため、栽培が困難になり、次第に秦野の名産は火山灰土壌でも栽培が可能な葉タバコに移行し、やがて、波多野大根は消失した。しかし、東海大学大学院(2014年当時)の学生が波多野大根の種子が金目川下流域に流され保存されている可能性があるとして、下流域を調査。河口の平塚市内でそれらしき個体を発見し、現在復活、栽培し、形態調査ならびにDNA解析の結果、波多野ダイコンに近い性質のものが発見されている。
「波多野大根」は園芸学の大宗 熊沢三郎によれば、「自生種を古代より利用し、その後、江戸では『はたな大根』、または『細根大根』として知られ、さらに京都、大阪に伝わり、今日の関東における『二年子ダイコン』などの春ダイコンや、関西における『時無ダイコン』などの夏ダイコン成立の基となった。」と述べている。そして、この大根はわが国の大根の進化上、重要な意義をもつと記している。
【時期】-
鎌倉大根(かまくらだいこん)
【生産地】鎌倉市
【特徴】由比ヶ浜や材木座海岸に自生する浜大根
【食味】辛み成分の強く、毒消しの効果があり、疫病の蔓延を防いだとされる。
【来歴】佐助稲荷神社の「大明神縁起」によると1230年(鎌倉時代中期)、異常気象により大飢饉となって、鎌倉でも多数の死者が出た。その危機的な状況を救ったのが鎌倉大根だったとされる。2013年に市民団体「鎌倉だいこん未来研究クラブ」が復活を目指し、種探しを開始。DNAなどを分析した結果、鎌倉大根は由比ヶ浜や材木座海岸に自生する浜大根であることが判明。プロジェクトに賛同する人達とともに海岸で古来種の種を採取し、市内各所で栽培を開始した。
【時期】11月下旬
寺尾二年子大根(てらおにねごだいこん)
【生産地】横浜市鶴見区
【特徴】葉は濃緑色で小葉。根は細長で長さは約 60cm 。直径は太いところで 5 ~ 6cm 。首元から次第に細そまって尖端が尖る。根の色は白、首元がやや淡緑色。
【食味】キメはやや粗く、肉質は柔らかい。
【来歴】鶴見区西部では、明治43(1910)年頃から「寺尾大根(てらおだいこん)」と呼ばれる秋大根の栽培が始まったが、昭和25(1950) 年頃に発生したウイルス病により衰退、代わって「寺尾二年子」による秋まき早春どりの春大根産地として発展した。農家はこれを「寺尾二年子」または「寺尾時ときなし無」と呼んでいる。
寺尾二年子大根は、農家自身の自家採種により固定してきたもので、農家ごとにそれぞれ違った特性をもっていた。農家は、多くの観察、経験をもとに自分の耕地に適応したダイコンを得るために選抜淘汰を繰り返し、さらに様々な実験を行い、その結果を話し合い、互いに研鑽しながら、農民だけの力で技術体系を創り出していったことがこの品種栽培の大きな特徴である。
【時期】3 月下旬~ 4 月上旬
相模半白節成(さがみはんじろふしなり)
【生産地】平塚市城島
【特徴】上半分が緑色、下半分が白っぽい。太く大きいため中心部に「す」が入りやすい。
【食味】果肉が緻密で歯ごたえがある。ほんのりと苦味がある。板摺して塩を振って冷やして食したり、漬物など多様。
【来歴】元々は、華南型といわれる日本で最もふるいタイプの胡瓜で、かつて荏原郡大井村で作られていた「大井胡瓜」を、明治30年から38年頃に馬込の農家が瓜と掛け合わせて品種改良した「馬込半白節成」(色が白っぽく茎の節ごとに実がなることから半白節成)を、昭和4年頃に神奈川県農業試験場二宮園芸部の竹内技師が、当時、季節的に早く出荷されて市場を席巻していた土佐キュウリに対抗するために、出荷時期が早くなるように改良したもの。市場では「河童」とよばれ、昭和30年代後半まで一世を風靡した。平塚市は2011(平成23)年に「平塚キュウリプロジェクト」と称して「相模半白節成」を蘇らせようと試みた。現在、栽培している農園はごく少数。種は一般販売されている。
【時期】2月下旬 ~ 7月上旬 10月上旬 ~ 12月中旬
万福寺鮮紅大長人参(まんぷくじせんこうおおながにんじん)
【生産地】川崎市麻生区・万福寺周辺
【特徴】長さは60~80㎝、長いものは1m近くになる。中心まで朱色。丈夫で収量も見込める品種だが、ゴボウのように長く伸びるので、播種の前に土を深く耕起して柔らかくしておき、収穫の際も深く掘る必要がある。弘法松の高台(現・百合ヶ丘)の深い土層が栽培に適していたとされる。
【食味】強い香りと味の濃さが特徴。煮しめは、分厚く輪切りにし、ひたひたの水で少し煮てからかつお節と醤油で味を整えて煮込む。歯ごたえがあるのに柔らかで甘くおいしく仕上がる。けんちん汁、精進揚げ、紅葉おろし等いろいろな料理に適す。
【来歴】川崎市麻生区万福寺近辺で栽培されていた東洋系にんじん。戦後から昭和30年代に栽培が盛んになり、全国農林産物品評会で5年連続1位を受賞し、有名になったが、宅地開発など急速な都市化や、短いニンジンが消費の中心となり、作付面積が激減。一度は栽培が途絶え、幻の人参となった。しかし、2000(平成12)年に、地元の有志による保存会が中心となり、栽培を復活。現在は保存会が主催する品評会も毎年行われている。
【時期】12月
小泉冬越五寸(こいずみふゆごえごすん)
【生産地】川崎市宮前区野川
【特徴】にんじんの短根種の初期の品種。草丈がコンパクトで根部の肥大も良く、葉軸が細く、密植栽培が可能なため、収量が多い品種。根形は、肩はなで型、尻つまりが良く、芯が赤色。
【食味】味が良く生食に向く。
【来歴】川崎市宮前区野川の小泉一郎が育成した品種で、もともとは横浜市鶴見区獅子ヶ谷で栽培されていた子安三寸系のニンジンを選抜・改良したもの。根長が短いために、収量が少なく、現在はほとんど栽培されていない。2015 年に野川の農家が30年ぶりに復活させた。種はみかど協和(株)で維持・増殖され、現在も販売されている。
【時期】12 月~3月
株ねぎ(かぶねぎ)
【生産地】相模原市
【特徴】ネギの品種。 原種維持を神奈川県農業技術センター北相地区事務所でおこなっている。種子繁殖はほとんど行われておらず、株分けによって増殖させる。
【食味】根深ネギに比べて葉鞘が柔らかく、辛みが弱いため、生食に向く。
【来歴】江戸時代に東北地方から伝わったという説。明治・大正時代にはすでに栽培されていたようで、個々の農家で自家増殖されてきた。 旧津久井郡内と相模原市西部を中心にして多くの農家で栽培されている。販売方法は直売がほとんどで、自給用に消費されるものも多い。
【時期】11 月~4 月
湘南ねぎ(しょうなんねぎ)
【生産地】平塚市周辺
【特徴】軟白部の縦のスジが目立たないが、冬の収穫で葉鞘部の断面はほぼ正円
【食味】柔らかく、とろっとした甘みにあり、鍋物や酢味噌和えに適している。
【来歴】1954(昭和 29)年に神奈川県農業試験場園芸分場 ( 現・神奈川県農業技術センター ) の板木利隆が育種素材として日本各地の在来系統の収集。埼玉県深谷市産の千住ネギの系統から収量が多く、株分れ(株元から茎葉が分かれる性質)が多く、伸長の優れるものを選抜し、これに神奈川県逗子市在来の草勢の強い千住ネギの系統の中から若干株分れする個体を選抜し、混植により交雑を繰り返した。その結果、1959(昭和 34)年に「SA」の仮名で現地試作に移し、翌 1960 年に「湘南」と命名、1962 年に県内で本格的な栽培が開始。以来、平塚市、藤沢市などの湘南地域で栽培され、土ネギまたは泥ネギとして泥付き
のネギを袋入りで出荷されている。に神奈川県種苗協同組合が採種し、種苗会社を通じて種子の販売を行っている。
【時期】年末~ 2 月頃
晩ねぎ(ばんねぎ)
【生産地】横浜市保土ヶ谷区西谷
【特徴】茎の断面が偏円形
【食味】柔らかく香りが良い。
【来歴】1957(昭和32) 年頃に「西谷出荷組合」が旗揚げし、野菜の共同出荷を開始。有利に販売できるネギを探したところ、千葉県松戸市で栽培される晩ネギを見いだした。西谷の土地に合うように改良を続けたもの。現在は、西谷の農家が各自品種保存のため自家採種を行っている。
【時期】収穫は種まきから翌々年の3月下旬~5月上旬頃
真ねぎ(まねぎ)
【生産地】小田原市
【特徴】旬に草丈40~50cmになると収穫。葉色が薄く、葉が折れやすい
【食味】薫りが強く柔らかい
【来歴】戦前から小田原市の足柄、久野地区および南足柄市を中心に栽培され、近くの箱根温泉に薬味用ネギとして市場経由で出荷されていた。昭和 20 年代後半から 30 年の始めにかけて九条系の葉ネギが栽培されるようになると、葉色の薄い「真ネギ」の栽培は徐々に減少した。現在は、久野地区などで数戸の農家が栽培し、一部は直売所で販売されている。
【時期】8 月上旬~11月下旬
開成弥一芋(かいせいやいちいも)
【生産地】開成町
【特徴】開成町特産の里芋。楕円形で実が白く、大きい。
【食味】まろやかな甘み、ねっとりとした食感が特徴。ふかし芋、煮物、カレー、みそ汁など
【来歴】1903(明治36)年に開成町金井島出身の高井(旧姓瀬戸)弥一郎氏が小田原の常念寺の住職から譲り受けた種芋が起源。開成町の土壌で育てると非常に食味の優れた芋になることがわかり、広く栽培されるようになった。戦前には関東一円に広がっていたが、戦後は稲作が盛んとなったことから衰退し、”幻の芋”となってしまった。
近年、地元の農家の方が神奈川県農業技術センターに冷凍保存されていた弥一芋を譲り受けて作付けし、2011年には「開成弥一芋研究会」も発足。この里芋「弥一芋」を復活させてまちの特産品にする取り組みが始った。
現在は作付面積も出荷量も増え続けており、焼酎など加工品の開発も進められている。
2012年には「開成弥一芋」を商標登録。
【時期】9月下旬~12月頃
さがみ長寿芋(さがみちょうじゅいも)
【生産地】相模原市
【特徴】やまといも。火山灰土の乾燥した相模原の土が、粘りの強い良質なやまといもを生産。棒状やイチョウの葉のような形状。
【食味】粘りが強く、もちもちした食感。でんぷんを分解するジアスターゼ(消化酵素のひとつ)を多く含む。とろろ、磯部揚げなど。
【来歴】昭和30年代前半から生産が始まった相模原を代表する農産物。
【時期】11月中旬~12月下旬
クリマサリ(くりまさり)
【生産地】平塚市大野地区
【特徴】さつま芋。は長紡錘形で外皮は紫紅色、肉色は黄白色。
【食味】蒸すると肉質は粉質で繊維が少なく均質である。
【来歴】国で育成された品種を同地区でいち早く試作したことで、地域に普及した。大野地区では、1960(昭和 35)年頃から「クリマサリ」という。水分量が少なくカリッと揚がるため、芋ケンピなどの揚げ菓子に適していることを見いだされ、1963 年頃から菓子メーカーと取引。生産量の大半を出荷している。平塚市でのみ地域特産作物。
【時期】8 月中旬~ 9 月中旬
コンニャク芋(こんにゃくいも)
【生産地】足柄地域、津久井地域
【特徴】山里の厳しい自然の中で、無農薬・自然農法で育てられた在来種のこんにゃく芋。葉の形状は葉全体の面積が大きく、葉色は淡緑色、葉柄の斑絞は小さく散在している。球茎(芋)はやや扁平で皮色は濃い。生子(きご・コンニャク芋の子のこと)はやや長めの球状で、表面に横しわが多く発生する。葉柄の斑紋は在来種と他の品種を区別するのに最も際だった特性。在来種はグルコマンナンの含有率が高いことから荒粉と精粉歩合留まりが高く、品質的に優れている。
【食味】野の香りや弾力のある食感が特徴
【来歴】 農業技術センタ一北相地区事務所が 2006 年度に、県内各地域の在来種を収集。在来種は足柄地域や津久井地域から多くみつかり、桑園や雑木林の中で自家用に栽培されているのを確認した。こんにゃく芋は10世紀頃に中国から伝来したとされる。
【時期】
鵠沼かぼちゃ(くげぬまかぼちゃ)
【生産地】鎌倉市鵠沼・辻堂地区
【特徴】 生産地は県内でも数少ない砂地土壌で、海岸に近いため温暖であり、早期の栽培ができ、水はけが良いことから適度な粘質に仕上がる。
【食味】昔ながらのねっとりした食味。煮物に適す。
【来歴】大正末期に千葉から導入された日本カボチャで、「ちりめん」系品種。鵠沼・辻堂地区で、現在、2 戸の生産者のみ。
【時期】5 月下旬~ 6 月下旬
ホの二メロン(ほのにめろん)
【生産地】神奈川県高座郡寒川町
【特徴】アールス純系品種。外観は丸葉で節間が短い。果実は 1.5kg 前後。果皮は灰緑色で、網目(ネット)はやや細かく、網目の盛り上がりは小さめ。
【食味】食味は、とろけるような肉質で、マスクメロン特有の豊かな甘い香りがある。純系のマスクメロンであるため、収穫後食べ頃までの期間(追熟期間)はやや短く (4~ 5 日 )、すぐに柔らかくなりやすい。
【来歴】、1969(昭和44)年頃、静岡から「ホの二」と「春 3 号」が導入された。1980 年頃に「ホの二」が主流となり、現在は「ホの二」のみ栽培。
【時期】7 月上旬
のらぼう菜(のらぼうな)
【生産地】川崎市多摩区菅地区
【特徴】茹で上がりの鮮やかな緑色と甘味が特徴。
【食味】花蕾と茎葉を茹でて食用する。花蕾、茎葉を茹で、おひたしやマヨネーズをかけてアスパラガス様の味を楽しむことができる。また
天ぷにしても美味。
【来歴】東京都あきるの市(旧・五日市)の子生神社(こやすじんじゃ)には、「のらぼう菜」が 1770(明和 7) 年頃より栽培されていたとの「野良坊之碑」がある。これによる
と、1767(明和 4)年に関東郡代伊奈備前守が名主小中野四郎右ヱ門と網代五郎兵衛に命じて近郷12 村に「のらぼう菜」の種子を配布しており、天明・天保の大飢饉の救荒作物となったことが記されている。
【時期】2 月下旬~ 4 月
大山菜(おおやまな)
【生産地】伊勢原市子易地区
【特徴】長楕円形で、葉がやや硬く、葉に細かい毛がある。
【食味】特有の風味とからし菜としては強い辛みを持つ。塩漬け
【来歴】伊勢原市子易付近で「おおっぱ」や「子易菜」と呼ばれて漬け物用として栽培されてきたカラシナ。「おおっぱ」は江戸時代から漬け物として大山講の先導師旅館で供されてきた。1986(昭和 61)年に伊勢原市が「おおっぱ」を「大山菜」と命名。現在は、耐寒性を増し柔らかな葉にするために「清国青菜」との交配した「大山そだち」を使用。二年に一度、生産者の代表が自家採種を行っている。伊勢原市特産のため、種子は一般には販売していない。
【時期】12 月上旬~ 1 月
大山とうがらし(おおやまどうがらし)
【生産地】伊勢原市子易地区
【特徴】果実は 12cm 程度と長く、下向きに付く、先端が尖っており、細長い果形。生育が旺盛で、収穫期はやや遅い。
【食味】辛みは「日光とうがらし」並に強い。七味とうがらし、薬味。
【来歴】江戸時代中期から同地区で栽培されている在来とうがらし。大山詣りに来た人たちが泊まる宿坊で出される豆腐料理に使われる七味とうがらしの材料として、また参詣の土産物として販売するために導入されたのが始まりとされている。現在は 5 戸ほどが自家採種して栽培している。参道で生産者により加工された「七味とうがらし」等が直売されている。
【時期】10 月
相模ウド(さがみうど)
【生産地】横浜市瀬谷区
【特徴】在日米軍の旧上瀬谷通信施設の地下で、半世紀にわたり作り続けられてきた。
【食味】上瀬谷の軟化ウド。シャキッとした食感と透き通るような白さが特徴
【来歴】1953(昭和 28)年に東京のウド栽培に着目し栽培技術導入。1968( 昭和 43) 年に国、県、市の補助金と地元農家の負担で共同施設が完成。1970 年頃には栽培面積 34㌶、栽培農家 52 戸と全盛期を迎えた。1977 年には産地として確立したが、都市化の進展、生産者の高齢化、消費の低迷などから栽培面積は漸減し、1990 年頃には約 20㌶、栽培農家 24 戸、2015年には面積 1.3ha、栽培農家 13 戸となった。終戦後から国有地を借りる形で農業が続けられてきたが、2015年に在日米軍の施設を含む耕作地のある土地が国に返還されたことによって、これに伴い、国から耕作地の返還を求められている。当面、2017 年まで栽培が延長されたが、地元と横浜市はハウスでの栽培継続を進めている。
【時期】3 ~ 4 月
足柄の赤シソ(あしがらのあかしそ)
【生産地】小田原市下中地域、足柄上郡大井町相和地域、中井町
【特徴】葉の赤色が薄く、裏は青味が強く、人の掌ほどの大きさにまで生長するのが特徴
【食味】-
【来歴】明治時代の後半に、足柄地域のシソ栽培が現在の小田原市下中地域から始まり、足
柄上郡大井町相和地域および中井町に広まった。2003(平成 15)年まで大井町相和地域などで栽培されてきましたが、出荷先の漬物業者の需要が少なくなったため、足柄地域では栽培されなくなり「在来種」は消滅した。現在は、1985 年頃に静岡県から導入した品種(葉が平らで、葉色は表裏とも濃赤色)を栽培し、自家採種を続けている。
【時期】6 月上旬~ 8 月下旬
岩いわちゃんマメ(いわちゃんまめ)
【生産地】川崎市麻生区黒川地区
【特徴】いんげん豆。さやと種実の両方が食べられる白くて真ん丸の珍しい品種。
【食味】さやは柔らかく、茹でて食す。種実は煮るとねっとりとした食感が出る。煮豆、豆きんとん等
【来歴】。50 年ほど前に川端岩蔵が長野県の知人からこの種を譲り受けた。品種名が不明なため、岩蔵の名を取り「岩ちゃんマメ」と呼ばれている。栽培農家は数戸。主に自給用。
【時期】さやいんげんとしては 10 月中旬~下旬、種実用には 12 月中旬頃
田の畔豆(たのくろまめ)
【生産地】横須賀市秋谷、長沢、子安、葉山町、鎌倉市
【特徴】枝豆
【食味】自家製味噌
【来歴】来歴は不明。子安の軽部家では 100 年以上前からあった模様。田植えが終わった
後で、畦畔に撒いたことから、この名が付いた。現在は田の畦畔の栽培はないが、畑に枝豆として栽培されている。栽培面積はきわめて少なく、各戸10㌃程度。販売は「エダマメ」として全て直売で、庭先、宅配およびよこすか葉山農協直売所「すかなごっそ」で提供。種子はすべて自家採種。
【時期】10 月中旬(未熟豆)、11 月上旬(完熟豆)
津久井在来大豆(つくいざいらいだいず)
【生産地】相模原市緑区千木良(ちぎら)地区
【特徴】大粒で見栄えのする豆。
【食味】糖分が多く甘味が強い。煮豆や炒り豆にすると甘さが一層引き立つ。納豆やみそ、きな粉など。甘さを活かした加工品等が増えている。
【来歴】丹沢山地北側の津久井地区で古くから作られてきた大豆。昔はこの地域を津久井(つくい)郡と言ったことから、「津久井在来大豆」という名前になった。第2次世界大戦前には県内の多くの農家が栽培していたが、その後、輸入大豆に押され、栽培面積が減り、「幻の大豆」と呼ばれるまでに生産量が減少。県内各地で「津久井在来大豆」を守ろうとする取組が行われ、2005(平成20)年に「かながわブランド」に認定された。津久井在来大豆(商標ロゴ)は、津久井在来大豆産地標準系統の登録商標。
【時期】10月下旬~11月
城ヶ島ソラマメ(じょうがしまそらまめ)
【生産地】三浦市三崎町城ケ島
【特徴】一般に多く栽培されている「打越一寸」と比べ、草丈はやや低く、葉はやや小型、葉色は淡緑です。花色は紫を帯び、開花数は多い。収穫物(さや)は、小型で2粒さやが多く、種子はやや小さく、熟期はやや早い。小型であるため、収量は少ない。
【食味】土壌に鉄分が多いために食味は濃厚。
【来歴】城ヶ島で栽培継承されている固有のソラマメ
【時期】5月
城ヶ島正月菜(じょうがしましょうがつな)
【生産地】三浦市三崎町城ケ島
【特徴】城ヶ島の正月菜は、洋種のナバナ(たとえば、のらぼう菜)に似ており、小松菜の近縁。愛知県の伝統野菜である正月菜(餅菜)とは異なる。
【食味】元旦の雑煮に葉と若いトウを入れて食す。
【来歴】来歴不明。島民が代々自家採種して受け継いできた在来品種
【時期】12 月下旬~ 1 月
城ヶ島草ネギ(じょうがしまくさねぎ)
【生産地】三浦市三崎町城ケ島
【特徴】分けつ(枝分かれ)の多い葉ネギ。土寄せをしないため葉鞘(葉が茎状になっている部分)の軟白部が短い。草ネギの外観は、埼玉県の伝統品種「岩槻ネギ」に似ている。
【食味】-
【来歴】-
【時期】-
城ヶ島サトイモ(じょうがしまさといも)
【生産地】三浦市三崎町城ケ島
【特徴】 地元では「白芽」と呼んでいますが、関東に多い「土垂」に似ています。独特の粘りがある品種。
【食味】-
【来歴】-
【時期】-
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