バイオ技術活かし幻の野菜をゲノム解析!-官学連携で5年後の商品化目指す滋賀・長浜市「尾上菜」
日本最大の湖である琵琶湖を擁する滋賀県の北東部に位置する長浜市は、かつて羽柴秀吉が築いた長浜城の城下町で湖北地域の中心地として発展しました。
江戸時代になってからは北国街道の宿場町として、また琵琶湖水運の要衝として栄え、現在でも日本最古の駅舎や明治時代の建物などノスタルジックな町並みを見ることができます。
そんな長浜市では伝統野菜「尾上菜(おのえな)」の復活を目指す取組みが進められています。
尾上菜は、キャベツや大根、白菜など多くの野菜が属するアブラナ科に属します。ギザギザした葉が特徴で、地元では漬物や煮物に使われてきました。しかし、市場への出荷はほとんどなく、現在では4軒ほどの農家が自家消費用に栽培するのみ。
その尾上菜の復活に取り組むのは、地域の長浜バイオ大学です。
植物生理学を専門とする同大学の蔡晃植(さいこうしょく)学長が2017年3月に同地区を訪れ、学内で尾上菜を研究したところ、他のアブラナ科植物との交配により雑種化が進んでいたことがわかりました。そこで、6月頃に、地域の農家の方に原種に近いとみられる個体を選んでもらい採種し、原種に近い種子5系統を選抜して、9月には学長をリーダーとする研究プロジェクトチームで学内試験栽培を開始。
同プロジェクトは平成29年度の文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」に採択され、長浜市、長浜バイオ大学、長浜農業高校、滋賀県調理短期大学校、長浜バイオインキュベーションセンターが連携し、5年後の商品化・ブランド化を目指しています。
長浜バイオ大学は、最先端のバイオ解析技術を活かし、「尾上菜」の全ゲノム配列解析と生理活性評価により優良系統を選抜します。県立長浜農業高校(名越町)は栽培技術を活かし、その種子を栽培し、露地栽培でのノウハウを蓄積しマニュアルを作成します。収穫後の「尾上菜」は、県調理短期大学校(分木町)でのレシピ開発や、長浜バイオ大学で優良個体選別の研究に使われる予定。優良系統の交配を重ね、商品化に向けた研究を進めます。
ケール、小松菜などのアブラナ科に属する「尾上菜」には、血糖値を下げる効果があるともいわれており、優良で均一な形質の系統を安定供給できるようになれば、長浜市の特産品になる可能性も大です。
最先端の科学技術による優良系統の選抜は、他の伝統野菜の復活にも活かせる技術です。今後の研究や栽培の発展に大きな期待が寄せられます。
【参考資料】
長浜バイオ大学 プレスリリース
長浜市HP