鹿・猪のジビエと伝統野菜「糸巻大根」「伊勢芋」を組み合わせてブランド化を進める-宮崎県・西米良村の「GBAプロジェクト」
西米良村(にしめらそん)という村の名前をご存知でしょうか?「ムラ」ではなく、「ソン」と読みます。
奥九州と呼ばれる九州中央山地にある熊本県と宮崎県の県境の宮崎県側に位置する山深い谷間にある村で、豊かな自然と独特の山村文化を残すことから「平成の桃源郷」と称されています。
人口は1,155人(平成31年2月1日現在)と、宮崎県内では最も総人口の少ない自治体です。村の面積の96%を山林が占めており、わずかな田で米をつくり、山を開墾した焼き畑で伝統野菜の栽培を行っています。
そんな秘境ともいえる西米良村ですが、「生涯現役元気村」を合言葉に、都市と農村のつなぎ役として、交流人口促進による村の活性化などに活発に取り組んでいます。
そして、2019年度には、伝統野菜とジビエを組み合わせてブランド化する試みをスタートさせることとなりました。このプロジェクトは、西米良村の伝統文化の保護と伝承を目的とした「西米良村GBA(じいちゃんばぁちゃんが守ってきたアグリカルチャー)プロジェクト」の一環として行うものです。
プロジェクトのきっかけは、農作物の害獣被害。近年、農業の担い手が減少するとともに害獣が増えて畑の作物を食い荒らすため、収穫量が激減してしまい村の農業は危機的な状況になってしまいました。
この事態を重くみた西米良村役場が2018年3月にジビエ専用の食肉加工場を村内に竣工。害獣の被害を逆手にとり、ジビエ(狩猟によって食材として捕獲された野生の鳥獣)と、害獣被害で滅びかけていた伝統野菜を組み合わせブランド化する試みを開始するというものです。
今後は、宮崎県の伝統野菜である「糸巻大根」や「伊勢芋」とシカやイノシシのジビエを組み合わせ西米良村ブランドの食材として、イベント販売やふるさと納税への登録などを進めていくとしています。
「伊勢芋」は、九州山地一帯で古くから食べられていたもののようで、西米良村の名物の「煮しめ」の材料にも使われています。また、西米良村では、神楽の夜、神前にイノシシを供える風習があり、正月の雑煮はイノシシで出汁を取ったすまし汁に、イノシシ肉を入れて食べるそうです。
大自然に育まれてきた西米良村には独特の山村文化が今もなお継承されており、夜神楽の奉納や、数多く残る民話の口伝伝承がする活動も盛んに行われています。
森の精霊に出会えそうな西米良村で、ジビエと伝統野菜を楽しんでみてはいかがでしょう?
【参考資料】
西米良GBAプロジェクトニュースリリース
西米良村HP
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