かしこい人はコレを選ぶ! ~愛知・岐阜の伝統野菜「十六ささげ」のすごい栄養価~
「あいちの伝統野菜」と「飛騨・美濃伝統野菜」に認定されている「十六ささげ(じゅうろくささげ)」という野菜があります。高温に強い野菜で、真夏に実を結ぶので、6月から9月中旬頃までが旬の時期です。この時期になると、「さやえんどう」や「さやいんげん」など、同じ旬の野菜と一緒にスーパーや販売所の店頭に並びます。
十六ささげの特徴
「十六ささげ」は、緑色の長い紐(ひも)のような外見で、40㎝から長いものだと50㎝以上あります。それを10本ほどで束にして端をゴムまたは糸で縛った状態や、縛らずに野菜袋に入れて販売されています。
「十六ささげ」の特徴は、莢(さや)の中に、豆が16粒できることから「十六ささげ」と名づけられたといわれます。実際にはもっと多くの豆ができる長い莢で、その長さは40㎝ほど、長いものだと50㎝以上になるものもあります。
莢が若いうちに食べます。形はいんげんに似ていますが、いんげんより柔らかく、あっさりしていて食味が良いのが特徴です。縛ったままの状態で、サッと茹でて、サラダ、ゴマ和え、卵とじ、パスタ、豚肉巻き、煮物など、味が比較的タンパクなので、さまざまな料理に合い、バリエーション豊かに食せます。
「十六ささげのゴマ味噌和え」は、愛知の郷土料理として、農水産省「うちの郷土料理」にも紹介されています。
栽培が始まったのは、大正時代(1912~1926年)からとされますが、本格的に普及したのは1945(昭和20)年以降です。現在の栽培地域は、愛知県北西部(愛西市・稲沢市)や岐阜県南西部(羽島市・本巣市)が中心ですが、福島県、沖縄県などでも栽培されています。
十六ささげのスゴイ栄養価
さて、今回、ご紹介したいのは、愛知・岐阜の伝統野菜である「十六ささげ」の栄養価です。伝統野菜には、栄養価や機能性の高い食材が多くありますが、「十六ささげ」も、栄養価の高い食品と言われています。
どの栄養成分を、どれぐらい含んでいるのか、旬が同じ時期の「さやいんげん」と「さやえんどう」、「十六ささげ」の3つで比較してみたいと思います。
野菜の栄養成分は、今回は比較のため、三品種とも日本食品標準成分表による数値を使いました。実際の成分は、土壌・栽培技術・時期等によって変動することがあります。
必須ミネラル
まず、16種類の必須ミネラル類のうち、7種類の多量ミネラルについては以下の表の通り、突出して多く含まれているものはありませんでした。
可食部100g当たりに含まれる多量ミネラルの比較
さやいんげん | さやえんどう | 十六ささげ | |
ナトリウム | 1mg | 1mg | 1mg |
カリウム | 260mg | 200mg | 200mg |
カルシウム | 50mg | 35mg | 31mg |
マグネシウム | 23mg | 24mg | 36mg |
リン | 41mg | 63mg | 54mg |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より作成
次に、9種類の微量ミネラルについては、鉄以外は、「十六ささげ」が最も多く含有しています。特にモリブデンは多く含まれています。必ずしも含有量が多ければ良いというわけではないですが、モリブデンは、体内に存在するいくつかの酵素1)を活性化させるために必要な構成成分です。推奨量は成人男性30µg/日・女性25µg/日です。上限量は男性600µg/日・女性500µg/日で、過剰摂取してもすぐに尿から排泄されるため、健康な人であれば過剰症になる心配はありません。
可食部100g当たりに含まれる多量ミネラルの比較
さやいんげん | さやえんどう | 十六ささげ | |
鉄 | 0.7mg | 0.9mg | 0.5mg |
亜鉛 | 0.3mg | 0.6mg | 0.7mg |
銅 | 0.06mg | 0.10mg | 0.12mg |
マンガン | 0.33mg | 0.40mg | 0.66mg |
ヨウ素 | Tr | Tr | 1µg |
セレン | 0µg | 0µg | 1µg |
クロム | 0µg | 0µg | Tr |
モリブデン | 18µg | 24µg | 74µg |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より作成
ビタミン類
特筆すべきなのは、ビタミン類の含有量です。3つの野菜のうち、比較対象となる12項目の内、7項目において「十六ささげ」に最も多く含まれていました。なかでも、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、ビオチンは、ほかの2品種の2倍以上の栄養価でした。
可食部100g当たりに含まれるビタミン類の比較
さやいんげん | さやえんどう | 十六ささげ | ||
ビタミンA
2) |
レチノール | (0)µg | (0)µg | (0)µg |
α-カロテン | 140µg | 0µg | 40µg | |
β-カロテン | 520µg | 560µg | 1100µg | |
β-クリプトキサンチン | 0µg | 4µg | 0µg | |
β-カロテン当量 | 49µg | 47µg | 96µg | |
レチノール活性当量 | 520µg | 560µg | 1200µg | |
ビタミンD | (0)µg | (0)µg | (0)µg | |
ビタミン
E |
α-トコフェロール | 0.2mg | 0.7mg | 0.5mg |
β-トコフェロール | 0mg | 0mg | 0mg | |
γ-トコフェロール | 0.4mg | 0.2mg | 1.8mg | |
δ-トコフェロール | 0mg | 0mg | 0.3mg | |
ビタミンK | 60mg | 47mg | 120mg | |
ビタミンB1 | 0.06mg | 0.15mg | 0.06mg | |
ビタミンB2 | 0.11mg | 0.11mg | 0.09mg | |
ナイアシン | 0.6mg | 0.8mg | 1.0mg | |
ナイアシン当量 | 0.9mg | 1.2mg | (1.5)mg | |
ビタミンB6 | 0.07mg | 0.08mg | 0.11mg | |
ビタミンB12 | (0)µg | (0)µg | (0)µg | |
葉酸 | 50µg | 73µg | 150µg | |
パントテン酸 | 0.17mg | 0.56mg | 0.43mg | |
ビオチン | 4.5mg | 5.1mg | 9.7mg | |
ビタミンC | 8mg | 60mg | 25mg |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より作成
食物繊維
可食部100g当たりに含まれる食物繊維の比較
さやいんげん | さやえんどう | 十六ささげ | |
水溶性食物繊維 | 0.3g | 0.3g | 0.3g |
不溶性食物繊維 | 2.1g | 2.7g | 3.9g |
食物繊維総量 | 2.4g | 3.0g | 4.2g |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より作成
抗酸化作用
ほかにも、コレステロール代謝について、一般社団法人ぎふクリーン農業研究センターと岐阜大学との共同研究で、「飛騨・美濃伝統野菜におけるコレステロール代謝改善作用のin vivo評価」および「十六ささげといんげんのコレステロール代謝に対する影響の比較研究」によって、コレステロール代謝改善作用があることを突き止められています。
ということで、「十六ささげ」の栄養価は高いということがわかりました。「さやいんげん」や「さやえんどう」も美味しいですが、「さやえんどう(絹さや)」はハウス栽培で年中食べられるし、「さやいんげん」は半分の長さしかありません(笑)伝統野菜の「十六ささげ」の旬は6月~9月。あっさりした味なので、真夏でも食べやすく、なおかつ栄養たっぷり。夏バテ防止にも最適です!この夏は、ぜひぜひ、味わってみてください。
また、家庭菜園などで「十六ささげ」を栽培する際の種まき時期は、5月上旬前後が適期です。種を購入する場合には、「黒種十六ささげ(つるありインゲン豆」固定種」で探して種苗会社から購入することをお勧めします。
【参考資料】
1)アルデヒドオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼなどの酵素
2)ビタミンAは、レチノール活性当量で表されます。これは、動物性食品に含まれるレチノールの量と、主に植物性食品から摂取されるβ-カロテンなどのカロテノイドなどのプロビタミンAが、体内でビタミンAとして作用をする場合の換算量を合計がレチノール活性当量です。 栄養表示基準では、ビタミンAはレチノールとカロテン(食品によってはβ-クリプトキサンチンも考慮)から計算されます。
レチノール活性当量の計算式
レチノール活性当量(㎍RAE)=レチノール(㎍)+β-カロテン(㎍)×1/12+α-カロテン(㎍)×1/24+β-クリプトキサンチン(㎍)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(㎍)×1/24 |
3)食品の機能性について
食品の機能性には、基本機能として、①栄養機能(一次機能)、②感覚・嗜好機能(二次機能)、生体調節機能(三次機能)の三つに分類されます。
第一次機能の栄養的機能は、食品の栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど)において、ヒトの健康の維持・増進、成長発育に係わるものです。
第二次機能の嗜好的機能は、食品の味や匂い、見た目、歯ごたえといった、ヒトの感覚に対する機能です。食品は薬とは異なり、いくら有効な栄養があっても、味や匂いなどが悪ければ(まずい)受け入れにくいものです。また、「変な味がする」とか「色が変わっている」というように、食品の腐敗や異物の有無などを見分ける上でも、この機能が重要な役割を果たしています。
第三次機能の生体調節機能は、体のいろいろな機能を調節する機能で、大きく6つに整理されています。それは、循環系調節(血圧をコントロールする)、神経系調節(ストレスをやわらげる)、細胞分化調節(成長を促進させる)、免疫・生体防御(免疫細胞を増やしたり、ガン細胞の発現を抑える)、内分泌調節(ホルモンの分泌を助ける)、外分泌調節(消化酵素の分泌調節)というものです。これらは、生活習慣病の予防や回復など、幅広く作用します。例を挙げると、最初に述べた温州ミカン、リンゴやお茶に含まれるポリフェノール類の抗酸化作用(生体防御)などがあります。しかし、あくまでも食品ですので、食べてすぐ効くとか、食べたから必ず治るというものではありません。
岐阜県農政部農産物流通課「岐阜の極み 十六ささげ」
愛知の伝統野菜「十六ささげ」
(社)ぎふクリーン農業センター
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