このマークを付けた農水産物は買い!GI(地理的表示)制度登録の伝統野菜は品質もお墨付き!
今年、2025年3月群馬県の伝統野菜である「高山きゅうり」が、群馬県初の「地理的表示(GI)保護制度」に登録されました。生産者は、GI登録によって、広く知ってもらうきっかけになることを期待しているそうです。
近年、農産物を地域ブランドとして保護する制度として注目されているのが、この「地理的表示(GI)保護制度」です。
この記事では、GI保護制度とは何か、GI制度に登録した産品を購入することには、どのようなメリットがあるのかなどについて解説するとともに、GI登録をしている伝統野菜をご紹介します。
地理的表示(GI)保護制度とは
まず、地理的表示(Geographical Indication: GI)保護制度とは何かを押さえておきたいと思います。
地理的表示保護制度は、特定の地域で長年培われた生産方法や気候・風土、土壌などの特性によって高い品質や評価を獲得している産品について、その「名称」を地域ブランドとして保護する制度です。
同制度は、2015年6月に施行された「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(地理的表示法)に基づいて運用されており、2025年には10周年を迎えます。
農水省では、「その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因・環境の中で長年育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護するもの。外国との相互保護や模倣品対策の充実により、海外においても保護する」としています。1)
簡単に言えば、「○○地方の△△」といった形で、その地域ならではの特色を持つ産品を国が認証し、模倣品から守る仕組みです。商標登録などと似ていますが、GI制度の所管は特許庁ではなく、農林水産省です。
また、「ビジネスにおいては、地域と結びついた産品の品質、製法、評判、ものがたりといった潜在的な魅力や強みを見える化し、国による登録やGIマークと相まって、効果的・効率的なアピール、取引における説明や証明、需要者の信頼の獲得を容易にするツール」ともしています。2)
制度に登録することで、その名称は地理的表示として保護され、GIマーク(地理的表示保護制度のシンボルマーク)を付すことが可能になります。3)これを目印に消費者が安心して本物の地域産品を選ぶことができるようになり、ブランド形成に役立てることを目的としています。

GIマーク
同様の制度は、EUをはじめ、世界100か国以上でも導入されており、制度に登録された産品は日本でも保護の対象となっています。例えば、スペインの「ラス・ペドロニェーラス紫にんにく」やベルギーの「フロランヴィルばれいしょ」、オーストリアの「シュタイリッシャー・クレン西洋わさび」など数多くあります。4)
日本でもGI制度に登録した農水産品は、現時点(2025/4/2)で、161品目となっています。
GIマークは品質も保証
消費者が、GI制度に登録された農産物を購入するメリットは、主に以下の点が挙げられます。
品質と信頼性の保証
GI制度に登録された農産物は、特定の地域に根差した気候や風土、伝統的な生産方法などによって育まれた、高い品質や特性を持つことが国によって認められています。
「GIマーク」が付いていることで、その産品が本物であり、表示された特性や品質が保証されていることを安心して確認できます。模倣品ではない「本物」であることが示されます。
国が不正使用を取り締まるため、表示を信頼して購入することができます。
商品の特性・物語性の理解
GI登録された産品は、その地域ならではの自然条件や歴史、生産者の長年の知恵と工夫が詰まっています。GIマークを通じて、その産品の背景にある「ものがたり」や「こだわり」を知ることができます。
これにより、単なる食材としてではなく、その産品が持つ文化的な価値や地域との結びつきを感じながら、より豊かな食体験を楽しむことができます。
地域経済への貢献
GI制度は、地域の特色ある農産物を保護し、そのブランド価値を高めることで、地域経済の活性化にも貢献します。
消費者がGI登録産品を選ぶことは、その地域の生産者を支援し、伝統的な農業や食文化を守り育てることにつながります。
安全・安心
GI登録には、特定の生産方法や品質基準を満たすことが求められます。これにより、一定の安全・安心な基準を満たした農産物であることが期待できます。
これらのメリットは、GIマークが「どこで、どのように作られたか」という情報を消費者に明確に伝え、信頼できる商品選びをサポートする役割を果たすためにもたらされます。
購入や入手が難しい面も
GI制度に登録された農産物を購入するメリットは多岐にわたりますが、消費者にとっては、入手しにくい面もいくつかあります。
価格が高くなる傾向がある
GI登録された産品は、特定の品質基準や生産方法が定められており、それに伴うコスト(品質管理、生産量制限など)がかかることがあります。
また、ブランド価値が向上することで、一般的に市場価格も高くなる傾向があります。そのため、日常的に気軽に購入するには、少しハードルが高く感じるかもしれません。
入手しにくい場合がある
特定の地域でしか生産されないため、流通量が限られることがあります。
大規模なスーパーマーケットなどでは取り扱いが少なく、専門性の高い店舗やオンラインストア、産地直送などでしか購入できない場合があります。
制度の認知度がまだ低い
GI制度自体の認知度が、消費者全体に十分に浸透しているとは言えません。そのため、GIマークの持つ価値や意味を理解していない消費者にとっては、単に「少し高い農産物」としか認識されない可能性があります。これにより、せっかくの高品質な産品であるにもかかわらず、その良さが十分に伝わらないことも考えられます。
同制度の現状の課題としては、登録産品の生産者の努力や負担に見合うだけのリターンが得られるよう、まずGIマーク自体の認知度を高め、GIマークを付与した産品の価値を高め、ブランドを形成することでしょう。
基準が厳しすぎると感じる場合がある(生産者側の課題が影響)
GI制度の厳格な生産基準や品質管理は、生産者にとっては負担となることがあります。これにより、生産量が減少したり、特定の生産者が登録から外れたりするケースも起こりえます(例:「八丁味噌」をめぐる問題など)。
結果的に、消費者にとっての選択肢が狭まる可能性もゼロではありません。
これらのデメリットは、GI制度が「特定の地域で、特定の基準を満たして生産された高品質なもの」を保護・促進する仕組みであることに起因しています。消費者としては、その価値を理解した上で、自身のニーズや予算に合わせて購入を検討することが重要です。
GI制度に登録している伝統野菜
伝統野菜もGI制度に登録しているものがいくつかあります。以下に一覧を示します。
農水産省の登録情報のリンクを紐づけしてあるので、各品種のより詳細な情報を見ることができます。
旅行先や出張先でGIマークのシールが貼ってある伝統野菜を見つけたら、ぜひ、購入してみてください。その土地ならではの味わいを楽しめます。
都道府県 | 名 称 | 読み方 |
青 森 | 大鰐温泉もやし | おおわにおんせんもやし |
青 森 | 清水森ナンバ | しみずもりなんば |
岩 手 | 二子さといも | ふたごさといも |
秋 田 | 大館とんぶり | おおだてとんぶり |
秋 田 | 松館しぼり大根 | まつだてしぼりだいこん |
山 形 | 小笹うるい | おざさうるい |
福 島 | 阿久津曲がりねぎ | あくつまがりねぎ |
栃 木 | 新里ねぎ | にっさとねぎ |
群 馬 | 高山きゅうり | たかやまきゅうり |
富 山 | 入善ジャンボ西瓜 | にゅうぜんじゃんぼすいか |
福 井 | 吉川なす | よしかわなす |
福 井 | 上庄さといも(大野在来系統) | かみしょうさといも |
滋 賀 | 近江日野産日野菜 | おうみひのさんひのな |
京 都 | 万願寺甘とう | まんがんじあまとう |
京 都 | 京賀茂なす | きょうかもなす |
大 阪 | 富田林の海老芋 | とんだばやしのえびいも |
大 阪 | 泉州水なす | せんしゅうみずなす |
鳥 取 | 鳥取砂丘らっきょう(らくだ種) | とっとりさきゅうらっきょう |
鳥 取 | 伯州美人(伯州ねぎ) | はくしゅうびじん |
岡 山 | 連島ごぼう | つらじまごぼう |
岡 山 | 備前黒皮かぼちゃ | びぜんくろかわかぼちゃ |
広 島 | 福山のくわい(青くわい) | ふくやまのくわい |
山 口 | 美東ごぼう | みとうごぼう |
佐 賀 | 女山大根 | おんなやまだいこん |
鹿児島 | 種子島安納いも | たねがしまあんのういも |
沖 縄 | 中城島にんじん(在来島にんじん) | なかぐすくしまにんじん |
【参考資料】
1)農林水産省「地理的表示保護制度について」
2)農畜産業振興機構「EUにおける野菜の地理的表示(GI)の活用について」
3)農水産省「地理的表示及びGIマークの表示について」
4)日本貿易振興機構「EU における地理的表示(GI) ~生産者・支援団体の取組事例~