日本酒や本格焼酎・泡盛、本みりんなどを造る「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録
歴史ある「伝統的酒造り」が登録
米や麦を発酵させて日本酒や本格焼酎・泡盛、本みりんなどを造る「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。
日本国内では2021年にすでに登録無形文化財に選定しており、2022年にユネスコの無形文化遺産へ登録を申請。2024年12月5日(日本時間)に全会一致で登録が決定しました。1)
酒は、神社に供える御神酒(おみき)をはじめ、お正月のお屠蘇や結納の儀の固めの盃(さかづき)、結婚式の三々九度(さんさんくど)などの行事や儀式、祭礼行事で使われるのものから、現在では一般的な飲食や和食の調味料にいたるまで幅広く使われており、日本の文化にとって無くてはならない存在です。
日本の酒造りの起源
日本における酒の起源は、稲作が伝来した弥生時代(紀元前5~10世紀頃)とされており、当時は米を口に入れて噛み、唾液の酵素で発酵させて造る「口噛み酒」が作られていたと考えられています。口噛み酒は神聖なもので、造るのは巫女のみだったそうです。2)(PSゲーム「天稲のサクナヒメ」にも登場します)
その後、奈良時代になると米麹(こめこうじ)を使った醸造法が普及し、造酒司(みきのつかさ/さけのつかさ/ぞうしゅし)という酒や酢の醸造、節会(せちえ)のお酒を司る役所が設置されました。平安時代には、宮廷内で行事用の酒が造られるようになりました。室町時代になると、京都に小規模な酒屋が数百軒生まれました。
やがて、江戸時代に入り、杜氏(とじ/とうじ)が誕生し、火入れや三段仕込みなど現代に続く酒造りのテクニックが定着しました。明治時代以降は、酒米の品種改良や醸造化学の発達、製造設備の進歩などにより進化を遂げています。3)
「伝統的酒造り」は、こうした長い時間の中で、杜氏(とうじ)らによる手作業の技術で、国内各地の気候風土に応じて発展してきました。
世界的での人気も上昇中
ユネスコの無形文化遺産にこれまで登録された酒類関連は、ジョージアの「古代グルジアの伝統的なクヴェヴリ・ワインの醸造方法(2013)」やベルギーの「ビール文化(2016)」、モンゴルの「革袋に馬乳酒を醗酵させる伝統(2019)」4)、セルビア共和国の「伝統的な梅酒、シュリヴォヴィツァの製造と利用に関する社会的慣習と知識(2022)」、キューバの「ライト・ラム・マスターの知識(2022)」があり、今回の日本の「伝統的酒造り」で6つ目になります。
無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」は、日本の恵まれた気候風土によって育まれた麹菌を使う独特の技術です。日本酒の発酵技術は、麹の酵素によってデンプンがブドウ糖に変化する糖化と、ブドウ糖が出芽酵母(しゅつがこうぼ)の働きによってエタノールに変化する発酵とが、同一容器の液中で並行して複数同時に行われる「並行複発酵」という形態を取り、世界でも東アジアに偏る珍しい製法だそうです。5)
日本人は1000年以上前から蒸した米の上に麹菌を育て、麹菌の働きを使って酒を造る知識と技を発展させてきました。6) 日本の酒の認知度は、「SAKE」として世界的にも高まっており、現在では世界19か国以上で70か所以上に清酒醸造所が操業しているそうです。7)ユネスコの無形文化遺産の登録を機に「伝統的酒造り」のSAKEがさらなる発展を遂げることを祈念いたします。
【参考文献】
1)国税庁 ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」について
2)月桂冠「酒と宴 神事から酒宴へ、日本の自然風土の中で育まれた酒文化」
3)沢の鶴 酒みつき「日本酒を知ろう」
4)国税庁委託 「海外のユネスコ無形文化遺産(酒類関係)」
5)独立行政法人酒類総合研究所 お酒の情報
6)日本酒造中央組合PRTIMEIMES
7)SAKEマーケティングハウス
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