高速バスの空きスペース利用-貨客混載で伝統野菜・地域野菜を都心へ配送「食」と「農」の新たなイノベーション

2018年11月30日

野菜の物流は、トラックや鉄道・船舶によって輸送される方法が中心です。

しかし、トラックによる輸送は、燃油価格の上昇によって輸送コストが増大したり、ドライバー不足でトラックの確保が厳しい状況にあります。その対策として、鉄道や船舶などの輸送手段に転換するモーダルシフトが注目されていますが、モーダルシフトは大量輸送が前提であり、出荷量が少ない小規模な出荷組織は、簡単には利用できません。輸送量が少なければ交渉は不利になってしまい、さらにコスト高になったり、確保ができなかったりします。特に、伝統野菜や地域野菜などの希少野菜は、特に生産量が少ないため、出荷量も少量ずつになるため輸送手段が確保しにくく、遠方への出荷はできていませんでした。

その問題を解決するのが、旅客用高速バスの「貨客混載制度」を活用した輸送方法です。「貨客混載制度」とは、貨物と旅客の輸送、運行を一緒に行う形態のことで、2017年9月に、一定の条件を満たした事業者に対して掲載量上限の規制緩和されました。全国農業協同組合中央会(東京都千代田区、以下「JA全中」)、農林中央金庫(東京都千代田区)、三菱地所(株)(東京都千代田区)、一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会(伊藤滋理事長、以下「エコッツェリア協会」)の4者は、この「貨客混載制度」を活用して農産物供給サービスを2018年8月2日からスタートさせました。

具体的には、バス会社数社と連携し、各地から東京へ向かう旅客用高速バスのトランクスペースに出荷する農産物を載せ、乗客を降車させた後、農産物を納品するという流れで、農産物をその日のうちに納めることができます。納品量は一便最大350kg未満。同サービスは、4者の「大丸有フードイノベーション」の一環で、伝統野菜、希少野菜、朝採れ野菜といった特色ある少量の農産物を、消費者の多い東京・丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町地区)へ定期搬送することが目的。

同エリアは約4300 の事業所と約28 万人の就業者を抱えており、ランチ難民が出ることでも知られています。飲食店や社員食堂、イベント会場などに納品される農産物を、新たな物流サービスで販売し、消費を促すことで、「生産者の所得向上・地域活性化」「運送事業者の収益性向上」「都市生活者のワーク&ライフスタイルの充実」を目指すとしています。

出荷量が少なく、配送ルートの確保が課題となって、県外へ出荷できていなかった農産者に向けた新たな物流の取組み。農産者にとっても、消費者にとってもイノベーションが起こりそうですね。

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