日本の伝統野菜-45.宮崎県
目次
1.地域の特性
【地理】
宮崎県は、日本の主要四島の一つである九州の南東部に位置しています。総面積は7,735㎢(令和2年全国都道府県市区町村別面積調)で全国第14位です。
宮崎県に隣接しているのは熊本県、大分県、鹿児島県の3県です。県域の東西の距離は東西70.2km、南北の距離は約160㎞です。 宮崎県は山岳地帯が多く、森林面積は5,858㎢で、県土の約76%を占め、森林率は全国9位です。可住面積は1,849㎢で県土の約24%を占め全国42位です。人口は1,043,427人(2023年5月時点推計人口)で全国35位です。
宮崎県の地形の構成は、火山地を含む山地と、山麓丘陵(さんろくきゅうりょう)・台地(だいち)・段丘(だんきゅう)・低地などを含む低くて平らな平野や盆地に大別されます。 山地は、北に大分県と宮崎県の県境にある標高1,756mの祖母山(そぼさん)、南に宮崎県と鹿児島県県境付近に広がる火山群の霧島連山(きりしまれんざん)があり、国の自然公園となっています。 宮崎県の地形は、大きく北部と南部に大別されますが、南北で地形の様相が大きく異なります。
鹿児島県湧水町(ゆうすいちょう)から宮崎県えびの市および小林市にかけて広がる東西約15km、南北5kmのカルデラ性盆地である加久藤(かくとう)盆地-小林市市街地を中心として高原町(たかはるちょう)にまたがる直径約10㎞の小林(こばやし)盆地-宮崎市の青島(あおしま)を結ぶ線が、北部と南部の境目になります。 北部には、北東-南西に伸びる九州山地があり、その先には宮崎平野が広がっています。
海岸線は、日向市美々津(みみつ)付近を境として、北は海岸線の出入りが激しい沈水(ちんすい)海岸、南は直線状の砂浜海岸となっています。 南部は北部に比べ、より複雑な地形となっています。加久藤-紙屋(かみや)の間には西北西ー東南東方向の凹地帯(おうちたい)があり、九州山地はこの凹地帯で断ち切られています。
広い平野は宮崎平野(みやざきへいや)と都城盆地(みやこのじょうぼんち)があります。宮崎平野の南西には北北東ー南南西に伸びる南那珂(みなみなか)山地があり、その西には同じ方向の長軸をもつ都城盆地があります。霧島山地は加久藤・小林・都城盆地に囲まれています。 海は総延長405kmもの海岸線を有し、県の東縁は太平洋・日向灘(ひゅうがなだ)に面しています。宮崎市から日向市にかけては、約60kmのほぼ直線の砂浜海岸が続きます。このうち、宮崎港から一ツ瀬川(ひとつせがわ)の間に位置する宮崎海岸は、宮崎平野の延長上に位置する約10kmの砂浜海岸で、海岸と平野の間には高さ10~20m規模の砂丘がいくつか連なっています。中央から南部にかけては日南海岸(にちなんかいがん)の海岸線に沿ってきれいな海が広がり、観光地として有名です。
宮崎県の河川は、一級水系として、大淀川(おおよどがわ)水系、五ヶ瀬川(ごかせがわ)水系、川内川(せんだいがわ)水系、小丸川(おまるがわ)水系があります。 大淀川(おおよどがわ)水系は、都城盆地外延部の鹿児島県曽於市末吉町南之郷にある金御岳(かねみだけ)南麓に発し、都城市を経て東へ向かい、宮崎平野を流れ、宮崎市都心部の南で日向灘に注ぎます。五ヶ瀬川(ごかせがわ)水系は、九州山地の標高1,684mの向坂山(むこうざかやま)東麓に発し、宮崎県五ヶ瀬町西部を北流。いったん熊本県山都町に入った後、五ヶ瀬町との境を成してから再び宮崎県へ戻ります。高千穂町からは南東流に転じ、深い峡谷を形成して蛇行し、岩戸川、日之影川、綱ノ瀬川などと合流します。
延岡平野を東に流れ、延岡市下三輪町の東で大瀬川を分派し、北側に分かれますが、そのまま東行する大瀬川の方が、水量が多くなります。その後は、大瀬川と延岡城下を南北に挟んで併走し、河口間際で祝子川、北川を合わせ、日向灘に注ぎます。 川内川(せんだいがわ)水系は、熊本県の所在となる九州山地の標高1417mの白髪岳(しらがだけ)南麓に発し、南に流れ、ほどなく熊本県から宮崎県に入ります。加久藤盆地を西流して鹿児島県に入り、いったん南流し、湧水町栗野(あわの)で再び西流して大口(おおぐち)盆地を潤します。
伊佐市からは、ほぼ南西に流れ、薩摩川内市西方で東シナ海に注ぎます。小丸川(おまるがわ)水系は、椎葉村、九州山地の標高1,476m三方岳(さんぽうだけ)北麓に発し、大藪谷(おおやぶだに)を東流。美郷町南郷区(みさとちょうなんごうく)、日向市(きゅうがし)東郷町(とうごうちょう)、木城町(きじょうちょう)を通って、宮崎平野北部の高鍋町(たかなべちょう)で日向灘に注ぎます。
【地域区分】
宮崎県は律令制の時代に「日向国(ひゅうがのくに、ひむかのくに)と呼ばれていました。現在も産地名として野菜や果物の名前の頭に付けるものがあります。 現在の宮崎県の地域区分は、9市6郡14町3村(2023年12月現在)があり、県北・県央・県西・県南の4地域に分けられています。宮崎県では、町はすべて「ちょう」、村はすべて「そん」と読みます。
気象庁の区分では、北部山沿い、北部平野部、南部山沿い、南部平野部の4区域に分けられています。自治体の地域区分とほぼ同じですが、ここでは、気候や地理的特徴を考慮し、気象庁の地域区分をご紹介します。
<北部山沿い>
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高千穂地区…西臼杵郡(にしうすきぐん)、高千穂町(たかちほちょう)
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日之影町(ひのかげちょう)、五ヶ瀬町(ごかせちょう)
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椎葉・美郷地区…東臼杵郡(ひがしうすきぐん)、諸塚村(もろつかそん)、椎葉村(しいばそん)
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美郷町(みさとちょう)、児湯郡(こゆぐん)、西米良村(にしめらそん)
<北部平野部>
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延岡・日向地区…延岡市(のべおかし)、東臼杵郡(ひがしうすきぐん)
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門川町(かどがわちょう)、日向市(ひゅうがし) 、西都・高鍋地区…西都市(さいとし)
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児湯郡(こゆぐん)、木城町(きじょうちょう)、都農町(つのちょう)
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川南町(かわみなみちょう)、高鍋町(たかなべちょう)、新富町(しんとみちょう)
<南部山沿い>
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小林・えびの地区…小林市(こばやしし)、えびの市(えびのし)
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西諸県郡(にしもとかたぐん)、高原町(たかはるちょう) 、都城地区…都城市(みやこのじょうし)
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北諸県郡(きたもろかたぐん)、三股町(みまたちょう)
<南部平野部>
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宮崎地区…宮崎市(みやざきし)、東諸県郡(ひがしもろかたぐん)、国富町(くにとみちょう)
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綾町(あやちょう)、 日南・串間地区…日南市(にちなんし)、串間市(くしまし)
【気候】
九州は太平洋側気候に属しますが、宮崎県と鹿児島の東半分の地域が南海型気候に属します。宮崎県は、暖流である日本海流(黒潮)の影響を受け、温暖な気候に恵まれ、高温多雨で、冬季は日本の太平洋沿岸地方に共通の晴れた日が多いことが特徴です。 夏は南高北低の気圧配置となり南寄りの高温で湿った季節風が吹きます。
梅雨と台風の影響も強く受けるため、降水量は全国上位で、特にえびの高原、鰐塚山(わにつかやま)の降水量は日本有数となっています。平野部での降雪・積雪は稀で、宮崎市の気象台では初雪が観測されない年があります。その一方、九州山地では積雪する地域があり、標高1,600mを超える向坂山(むこうざかやま)の北斜面には、日本最南端の天然スキー場である五ヶ瀬ハイランドスキー場があります。
また、南部山沿いの標高1,150 mにあるえびの高原は九州屈指の寒冷地とされます。 宮崎県全体の気温は、夏は季節風の南東風により蒸し暑い状態が続くものの、海風であるためそれほど高温にはならず、むしろ九州山地などを吹き降ろす南西風が多くなる梅雨末期の方が高温になります。冬は乾いた西風が吹き、快晴の日が多くなります。日向市以南の日向灘沿岸には無霜地帯があります。
【農業の特徴】
「日本のひなた宮崎県」に象徴されるように、日照時間や快晴日数は全国トップクラスで平均気温が高く温暖な気候に恵まれています。この温暖で多雨な気候を活かした農業が盛んで、さまざまな農産物が生産されています。
その一方、大消費地から遠隔地にあり地理的には不利な条件です。しかし、東九州自動車道宮崎-北九州間の全線開通や国際化に対応した空港・港湾の整備など交通、物流の基盤整備が進んでいます。また、2022(令和4)年度からは、新造の大型カーフェリー2隻が就航を開始し、農水産品等が大消費地へ安定して輸送されるようになりました。
宮崎県の農業は、畜産や施設園芸といった土地集約型の経営品目が主力で、収益性の高い農業を展開し、農業産出額3,000億円半ばで推移しており、2020(令和2)年度は全国第6位でした。品目別には肉用牛、豚、ブロイラー、きゅうり、ピーマン、スイートピー、マンゴー、きんかん等が全国トップクラスの生産量を誇っています。
2.宮崎の伝統野菜
宮崎県では、県として伝統野菜を定義づけたり、認定制度を設けたりはしていません。古くから地域で自家採種によって栽培されてきた品種が多くみられます。また、品種の継承や地域創生を行うために各自治体や営農法人、地域がそれぞれPR活動を行う品種もあります。九州地方の在来種は、系統の研究や含有栄養素の研究などが比較的多く行われているため、それらの資料を参考に、宮崎県で伝統野菜とされている品種をピックアップしました。
これらの中には、ほとんど市場に出回っていない品種もあり入手が困難なものもありますが、貴重な在来種として継承しようとする取り組みも進んでいます。
糸巻大根(いとまきだいこん)
【生産地】西米良村 【特徴】根に赤紫色の糸を巻き付けたような縞模様が入るところから「糸巻大根」と呼ばれている。地色が白いものと赤いものとがあり、形状は自家採種されているものでは丸~紡錘~長と形も色も多種多様。
【食味】一般的な大根に比べ、糖度が2~度高く、肉質が緻密で柔らかいのが特徴。煮ると蕪(かぶ)のような柔らかさになる。
【料理】サラダ、しゃぶしゃぶ、なます、切り干し、煮物等
【来歴】自家採種中心の在来種。同地区で古くから作り続けられている固有の大根。地元では「米良糸巻大根(めらいとまぎだいこん)」「米良大根(めらだだいこん)」と呼ばれる。歴史は古く、16世紀初頭には栽培されていたと考えられており、500年以上も作り継がれている。西米良村は96%が山林原野であり田畑が非常に少ないため、古くから焼畑(コバ)で栽培される「糸巻大根」は、粟や稗とともに貴重な食糧だった。中でも切り干し大根にしたものは「米1升と切り干し1升が交換できる」ほど高価なものだったと言われる。 今は、普通の畑で作られることが多いが、焼畑で栽培された「糸巻大根」は、特に甘みが強いとされ、まさに山間地帯の西米良村の風土に適した野菜である。
【時期】11月~2月
【参考資料】
みんなの農業広場「米良糸巻大根-山の焼畑(コバ)で育まれた宮崎の伝統野菜」
宮崎県町村会「まち・むら特産品 > 西米良村の特産品 > 西米良村の米良糸巻大根」
いらかぶ(いらかぶ)
【生産地】東臼杵郡美郷町西郷村立石地区
【特徴】漬け菜の一種。「いら」は「とげ」という意味。βカロテンを多く含んでいることが特徴。
【食味】葉がアザミの葉に似ていることから「あざみ菜」とも呼ばれる。高菜に似た辛みのある葉を食す。
【料理】漬物
【来歴】約200年前から同地区で伝統的に栽培されてきたが、生産量は年々減少している。
現在育てている農家は西郷立石地区内の3軒のみで、市場には流通していない。地域では、種の保存を図るとともに、町を代表する作物に成長させ、地方創生に役立てようと、漬物やマスタードに試験的に加工している。
今後は「いからぶ」を市場に流通させることを目指し、魅力のある加工品を開発し、地元に還元できる仕組みをつくっていく予定。
【時期】11月~2月
在来青皮苦瓜(ざいらいあおかわにがうり)
【生産地】-
【特徴】宮崎県北部の都農町(つのちょう)の名前のつく「都農青(つのあお)」は、薄緑の果色で肩部が細る紡錘形で、いぼ状突起もややとがったものであったが、花芽が少なく、現在ではほとんど栽培されていない。
【食味】在来白皮苦瓜よりも苦みが強い。
【料理】-
【来歴】宮崎では以前から白皮種が好まれ、地元消費の大半を占めていた。青皮の「苦瓜」も栽培されていたようであるが由来は不明である。 県内消費は白皮種で良かったが、1975(昭和50)年代に入ると、県外出荷には栄養価や機能性成分の高い緑色果実のイメージが重要な課題となり、「青皮」が求められるようになった。
1979(昭和54)年頃に、当時の川南農協の育苗センターが宮崎県内の青皮種を集めて有望系統の検討を行った。そのうちの花芽の多い系統が「宮崎青長(みやざきあおなが)」で、緑色の果色で肩部が細る長円筒形で、イボ状突起も尖りの少ない品種であった。
現在、この品種は栽培されていないが、総合農業試験場が育種用に系統選抜を繰り返し、「宮崎青長29」として固定した。「宮崎青長」系統は品質が安定し、収量性の高い緑色のF1種「宮崎緑」の種子親として、1991(平成3)年に「宮崎こいみどり」が出現するまでニガウリの県外出荷の一翼を担ってきた。
現在は栽培されていないものの、長い時間をかけ地域に適応した品種である。見かけや収量性のみで見捨てることなく、大切な育種資源として整理し、大切に保存していきたいものだ。
【時期】-
在来白皮苦瓜(ざいらいしろかわにがうり)
【生産地】宮崎市
【特徴】独特の苦みがあり、好き嫌いが大きく分かれる。
【食味】苦みが強く、果実は熟れると着色して裂け、緋紅色の種子を包んでいる種衣は甘い
【料理】薄切りにしてナスとともに油で炒め、味噌と砂糖で味付けした料理
【来歴】宮崎の方言で「ニガゴリ」や「ゴリ」とも呼ばれている。東インドあたりの熱帯アジア原産といわれ、江戸時代に中国から渡来したとされるが、詳細については不明である。戦前には沖縄はもちろん、九州地域でも家庭菜園で栽培されており、宮崎でも古くから、わずかに薄緑を帯びた白皮種と、薄い青緑色の青皮種があった。大半は白皮種だが、由来についての記録はない。
1944(昭和19)年頃、沖縄から宮崎市大字広原極楽寺に疎開してきた池間某氏の庭先の「苦瓜」は、色は変わらないが長く大きいもので、収量性の高い系統であった。それを近隣の年居(としい)地区の菅政義氏が譲り受け、さらに早生系統の採種に努めた。その後、この系統は宮崎の主流品種となり、長い間、特有の苦みを好む地元の需要に応えてきた。
1960(昭和35)年頃になると徐々に「苦瓜」の需要が増し、34戸で露地栽培での出荷が初めて行われたという。
斉藤氏が1966(昭和41)年に初めてハウス栽培を行い、想定外の出荷と収量の増大を確認した。その後、年居地区では1969(昭和44)年から本格的なハウス栽培が行われるようになった。苦みがマイルドな沖縄のゴーヤータイプが栽培の主流となる中で、この品種は現在もわずかであるが栽培が行われている。
【時期】7月~9月初旬
佐土原なす(さどはらなす)
【生産地】宮崎市佐土原町・西都市・新富町
【特徴】長なす。果色が薄い紫色です。夏期には、さらに薄い紫色になる上に形の揃いが悪い。新潟の焼きなす、久保なす、鉛筆なすなどの地方在来種のルーツだとされる。
【食味】焼くととろけるような肉質になる。
【料理】焼きなす、煮びたしなど
【来歴】長なすの代表格として江戸時代から同地区で盛んに栽培されてきたが、色や形など外見重視の消費者ニーズに合わず、1980(昭和55)年頃に一度市場等から姿を消した。
その後、地元の種苗店から委託されて佐土原ナスの種子を保管していた宮崎県総合農業試験場が、宮崎市の農家・外山晴英氏に試験栽培の話を持ちかけ、2002(平成14)年に栽培を開始。しかし、半数は実が太らず出荷できなかったが、残り半分を直売所で販売したところ「美味しい」と評判だった。そこで、外山氏は、地元の農家仲間に声をかけて栽培面積を少しずつ拡大し、2005(平成17)年には「佐土原ナス研究会」を設立し、現在、宮崎市を中心に約1.3haで栽培されている。
【時期】4月~11月
筍芋(たけのこいも)
【生産地】小林市東方、国富町、西都市など
【特徴】親芋を食べるタイプの里芋。普通の里芋とは異なり、形は円筒形で、大きいのが特徴。呼び名は地上に頭を出している姿が筍に似ている事から付いたとされる。親芋の長さを30cm前後に育てて出荷する。皮もむきやすく、煮崩れしない。
【食味】粉質でしまった肉質、煮くずれしないのが特徴。
【料理】煮物、田楽、天ぷら、コロッケ、グラタンなど。調理の前に、塩でもんで水洗いするか、いったん下ゆでするなどして、ぬめりをしっかりとるのがコツ。
【来歴】明治時代に台湾(たいわん)あたりから導入されたと考えられている。戦前から小林市を中心に栽培されており、小林市東方(ひがしかた)地域のものが原種とされている。
「京いも」という名前の由来は、1955(昭和30)年頃に当時の農協、市役所、青果会社が一体となり、関西に売り込みに行った際に、京都に立ち寄って食べた精進料理の中に食味の優れた里芋が使用されていたため、「この京都のおいしい料理にあやかりたい」との思いから付けられた。
今日では、宮崎県特産の「京いも」としてその名は定着し、小林市のほかにも国富町や西都市でも栽培が行われている。「京芋」とも呼ばれることから京都の伝統野菜と間違われることもあるが、正式には「筍芋」という品種。「筍芋(たけのこいも)」や「京芋(きょういも)」以外に、地元では「台湾芋(たいわんいも)」とも呼ばれる。全国各地におでん、 煮物用等として出荷されている。
【時期】9月~2月頃
【参考資料】
農畜産業振興機構 宮崎県小林市(さといも〔京いも〕)
鶴首南瓜(つるくびかぼちゃ)
【生産地】小林市 他
【特徴】日本かぼちゃの一種。晩生の大果種。果形は、細長い瓢箪(ひょうたん)のような形をしており、首の部分は、大半は湾曲(わんきょく)しているが、棒状のものもある。貯蔵性に優れる。
【食味】果肉はオレンジ色。肉質は粉質で甘みがあり、洋種かぼちゃに劣らぬ甘みのある美味しさ。 【料理】種子は下部にしかないため、料理しやすく貯蔵性が高いのが特徴。
【来歴】名は、くびれて湾曲した部分が鶴の首のように見えることからついたとされる。中国からの渡来で、発見されたのは福岡県小郡(おごおり)地方とされる。戦時中に西日本で多く栽培され、甘藷(かんしょ/さつまいも)とともに戦後の食糧難の栄養源として貢献した野菜の一種である。
【時期】7月~8月頃
日向黒皮南瓜(ひゅうがくろかわかぼちゃ)
【生産地】宮崎市生目地区 他
【特徴】日本かぼちゃの一種。果皮は黒緑色で縦溝があり、果面にこぶがあるのが特徴である。この深い溝のあるゴツゴツとした形を菊の花に見立てて、「菊かぼちゃ」とも呼ばれる。
【食味】ホクホクとした食感。甘みの強い西洋かぼちゃとは違い、肉質は粘質でねっとりとしており、煮くずれしにくいのが特徴。完熟したものはきめの細かい粘質がかった味が良い。
【料理】日本料理の煮物に適している。高級料理に用いられる。
【来歴】来歴は、1895(明治28)年頃に、宮崎市で傾斜地利用のキュウリ栽培を行った記録があり、「その当時、わずかながらカボチャが栽培されていた模様である」と記されているが定かではない。
1907(明治40)年に徳島県から移住した人々がキュウリやナス、カボチャの育苗、早出し栽培を行うようになったと言われている。当初、品種は「大ちりめん種」が主体であった。1924(大正13)年に千葉から黒皮種を導入し、現在の日向かぼちゃの基礎をつくる。
1924(昭和2)年には日向名物のカボチャを阪神方面で大宣伝を行い、以後「日向名物のカボチャ」として全国に知られるようになった。昭和初期から黄金時代を築いてきた日向カボチャだが、生産量は年々減少している。
【時期】12月~6月頃
平家かぶ(へいけかぶ)
【生産地】椎葉村
【特徴】もともとは、秋から春にかけて自生する野沢菜によく似た青菜。原始的な特徴を持った白蕪(かぶ)。蕪と言っても根が小さい為、主に葉を食す。
【食味】生での味は苦い。
【料理】塩漬けやお浸し,豆乳に混ぜて固めた菜豆腐
【来歴】同地区には、平家落人伝説が伝わっており「平家かぶ」の名もこの伝説にちなんでつけられたもの。生命力が強く、畑の隅に自生するため、「捨てる」の方言で,勝手に生えてくる蕪という意味で「ふってかぶ」と呼ばれたり、生での味が苦いことから「にがかぶ」と呼ばれたりしている。現在でも自家用に栽培されている。
【時期】
【参考資料】
農林水産省「うちの郷土料理」
平家だいこん(へいけだいこん)
【生産地】椎葉村
【特徴】椎葉村の地大根。元々は焼畑で広く栽培されていたが,現在ではほとんど栽培されていない。西米良村で栽培されている「糸巻きダイコン」と同種のものとされる。根色は白色で紫色の糸を巻き付けたような帯状の線が入るものから,紫色やピンク色など様々であり,花色も紫~ピンク~白色と変異が大きく、多様性が豊かな大根。
【食味】根は辛味が大変強い。ス入りが大変遅い。
【料理】葉には毛茸(もうじ、もうじょう:トライコーム)が多いが、柔らかい。干し菜として食す。果肉は、調理しても煮崩れしにくい。煮しめ,漬物,おろし,切り干し大根などで食す。
【来歴】800年前から種を継がれてきた地大根。
【時期】2月下旬~
宮崎白なす(みやざきしろなす)
【生産地】宮崎市 他
【特徴】種類は、卵型と長ナス型があり、色は白というよりは薄緑色をした物が多い。アントシアニン色素や葉緑素がないため完熟しても果皮が紫色にならない。
【食味】焼き物、煮物、揚げ物など。焼きなす、煮びたし、グラタンなど
【料理】果皮がやや硬めのため、炒め物、揚げ物、田楽に向く。
【来歴】原産地は高原町。江戸時代頃から薩摩藩の領地であった現在の宮崎県高原町・野尻町・都城市などで盛んに栽培されてきた。鹿児島県の「薩摩白なす」が宮崎県に伝来し、南九州地方で広まったと考えられている。全国各地に淡緑色の在来種があり、それを白なすと呼んでいる地域もある。
【時期】7月~10月
夕顔かぼちゃ(ゆうがおかぼちゃ)
【生産地】北方町、西都市 他
【特徴】日本かぼちゃの一種。形状は基本的には曲がりがないヘチマ型。果皮の色は緑色から黒色に近いものまで様々である。晩生種で短日条件にならないと花が着きにくい。放任作りでも秋には収穫できる。草勢はきわめて強く、つるは四方八方に這い回るので、畜舎などの日よけ植物として使われることも多かった。
【食味】粉質から粘質のものまで様々である。
【料理】焼き物、煮物、揚げ物など
【来歴】夕顔カボチャは自家用を中心に地域で栽培されている。ヘチマに似ているところから通称「ヘチマカボチャ」と呼ばれている。最近、直売所や道の駅などで販売されている。種子は自家採種。
【時期】7月~10月
3.宮崎の伝統果樹
寧波金柑(にんぽうきんかん)
【生産地】串間市
【特徴】中晩成柑橘類の金柑。果実は球形~長球形で果梗部がやや細まる。果面は滑らかで、成熟すると燈色になる。発ガン抑制効果があるといわれている「リモニン」が多く含まれている。
【食味】柑橘類の中で最も小さな果実で、皮ごと食べられるのが特徴。甘味や香気に富み、酸味は比較的少ない。品質は金柑の中で最も優れている。「完熟きんかん」については、「糖度16度以上、横径Lサイズ以上、完全着色で外観が優れるもの」と定められている。
【料理】甘露煮、洋菓子、果実酒
【来歴】金柑は、剪定(せんてい)に強いため、古くから観賞用や庭木、盆栽としても親しまれてきた。原産地は中国の長江中流域とされる。長江省の地名に「寧波(ニンポー)」がある。昭和16年から33年まで県の農業試験場が苗木を配布し、その後県内に普及した。現在、宮崎県産完熟きんかん 「たまたま」というブランドで出荷されているのは、この品種。
【時期】温室きんかん:11月~1月 露地きんかん:12月~3月 完熟きんかん:1月~3月
【参考資料】
みやざきブランド推進本部
日向夏(ひゅうがなつ)
【生産地】綾町
【特徴】在来品種。早生。果実は短卵球形、鮮やかな黄色で美麗である。果肉は淡黄色。
【食味】柔らかな芳香がある。果汁が多く、甘さと酸味のバランスが良い。果皮が厚く内果皮(アルベド部分)は、甘味が強いため、果肉と一緒に食すと、他の柑橘にはない独特の風味を味わうことができる。
【料理】ジュース、ぽん酢、ドレッシング、洋菓子
【来歴】文政年間(1818~1829)に宮崎県赤江町(現在の宮崎市)の真方安太郎氏の宅地内で偶然発見され、その原木から高妻仙平氏が苗木を育成し、以後県内に普及した。
【時期】ハウス:12月~3月 露地:3月~5月
【参考資料】
JAグループ「春・冬の旬野菜ヒュウガナツ(日向夏)
平兵衛酢(へべす)
【生産地】日向市
【特徴】雑柑の一種。果形は扁球形で、果面はやや粗く、果頂部は花柱痕を中心に陥没している。成熟した果実は70~80gで、「かぼす」や「ゆず」より小さい。他の香酸柑橘類に比べ、抗がん作用のあるナツダイダインというフラボノイド成分が多く含まれる。また肝がん及び成人T細胞白血病の増殖に高い抑制作用を持つことが明らかになっている。
【食味】独特の香気・風味を持ち、種子が少ない。果汁が多い。皮が薄い。
【料理】ジュース、ぽん酢、ドレッシング、ジャム
【来歴】日向市に自生していたものを、弘化年間(1845年)に長曽我部平兵衛氏が自宅の庭先に移植し、全国でも日向地域のみに広がった。
【時期】ハウス:6月~10月 露地:主に8月~10月
【参考資料】
農研機構「ヘベス果実に含まれるフラボノイド類の含有量と存在部位」
【参考資料】
タキイ種苗 「地方野菜を訪ねて 宮崎県」
石田正彦 他「南九州におけるアブラナ科野菜在来種の収集と調査」〔植探報 Vol. 22 : 37~45,2006〕
百姓隊
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