日本の伝統野菜-26.京都府

1.地域の特性

【地理】

京都府は日本の本州の中央付近、近畿地方に位置しています。面積は約4、612 ㎢で、人口255万6,882人(2021年度人口統計)で全国第13位です。

京都府は福井県、滋賀県、三重県、奈良県、兵庫県、大阪府の6つの府県と隣接しています。京都府は、北部の丹後半島より北西―南東方向に、長さ約140kmの細長い地形をしています。北端部の丹後半島は日本海へ突出しており、丹後半島沿岸のうち、若狭湾西岸域では舞鶴湾や宮津湾などの小湾や入江が複雑に入り組み、リアス式海岸の様になっています。

京都府の面積の80%近くが山地・丘陵地で、北部には丹後山地が低山地帯を展開し、福知山盆地があります。中央部に丹波高地、亀岡盆地、南部に京都盆地がありますが、いずれも標高1、000m以下の低山地帯です。

南部の京都市以南の地域は、三方を山に囲まれた盆地で、高野川と賀茂川が合流した鴨川、丹波山地を源流とする桂川などが東西を縦断し、琵琶湖から流れる宇治川で南部と分断されます。四季の変化に富み、木々の紅葉が景色の美しさを保ち、三紫名水と呼ばれるほど山は日に映えて紫色に見え、川の水は澄んで清らかであり、非常に美しい景色が見られます。

 

【気候】

京都府北部は日本海側気候、宇治市より南は瀬戸内海式気候です。舞鶴・綾部及び丹後は海洋性気候、それ以外は内陸性気候となっています。また、府北部を中心に豪雪地帯が広がります。北部の丹後半島地域は日本海側の特性が顕著で、福知山盆地から丹後山地一帯は内陸性、 舞鶴湾・宮津湾付近一帯は両者の中間の気候です。 南部は亀岡盆地から南山城山間部にかけて内陸性の気候です。

京都市の市街地では、近年、平均気温の上昇といった都市気候化の傾向が認められます。

月平均気温の平年値は16.9℃、年間降水量の平年値は1,408mmで、京都は「酷暑・酷寒」が特徴と言われています。三方を山に囲まれた土地であるため寒暖差の激しい気候となっています。この寒暖差が京都の四季を際立たせ、三紫名水と呼ばれる景色が作られます。

 

【農業】

京都付の経営耕地面積は29、800haで、内、田が23、200ha、畑が6、640ha(2020年)となっており、全国第39位です(農林水産省「作物統計調査 令和2年」より)。

農業産出額は666億円で、全国第37位。農畜産物の生産状況は、みずな、小豆が全国第3位、かぶ、茶(生葉及び荒茶)が5位となっています。

農地の約8割を水田が占め稲作が中心となっていますが、ブランド京野菜の生産に力を入れるなど、収益性の高い農業も展開しています。

名産品の宇治茶は、800年の歴史があり、てん茶(抹茶の原料)、煎茶、玉露などの様々なお茶は高評価を受けています。京都府では宇治茶のユネスコ世界文化遺産の登録に向けた取組を契機に、「お茶の京都」として、宇治茶をテーマにお茶生産の美しい景観維持やお茶産業の振興、お茶文化の発信に取り組んでいます。

 

2、京都の伝統野菜

京都は千有余年の間、都としえ栄え、全国から選りすぐりの品々や人、情報が集まりました。野菜も宮廷や社寺への献上品として全国から優れた産品が集まり、京都の肥沃な土壌と豊かな水源、農家の高い栽培技術により改良され現在に至っています。

京の伝統野菜は以下のように定義されています。(昭和63年3月京都府農林水産部)

(1)明治以前に導入されたもの

(2)京都府内全域が対象

(3)たけのこを含む

(4)キノコ、シダを除く

(5)栽培または保存されているもの及び絶滅した品種を含む

 

また、京都府は優れた京都の農林水産物の中でも、安心・安全と環境に配慮した生産方法に取り組み、品質を厳選したものを「京のブランド産品」として認証しています。

 

「京のブランド産品」とは、「京都こだわり生産認証システム」※により生産された京都産農林水産物の中から品質・規格・生産地を厳選したもので、(公社)京のふるさと産品協会が認証しています。選抜の要件には以下のポイントがあります。

(1)イメージが京都らしい

(2)(1)以外のもので販売拡大を図る必要がある

(3)次の要件を備えている

・出荷単位としての適正な量を確保

・品質・規格を統一

・他産地に対する優位性・独自性の要素がある

 

※京都こだわり生産認証システムの特徴

・農薬・化学肥料の使用を減らした環境にやさしい農法(京都こだわり栽培指針)

・認証検査員による栽培状況と記帳のチェックを実施

・情報の開示により生産者の顔が見える農産物

ここでは「京の伝統野菜」として認証されている野菜のうち現存(種のみも含む)する35品目と、歴史が足りず準伝統野菜の位置づけであった鷹峯どうがらしが新たに加わったので1品目加えた計36品目を紹介します。

現段階で準伝統野菜とされる「万願寺(まんがんじ)とうがらし」と「花菜(はなな)」の2品目は、今回は記載していません。また、絶滅した「郡大根(こおりだいこん)」、「東寺蕪(とうじかぶ)」の2品目は除外しました。

前半13品目までは、伝統野菜の認定に加え「京都ブランド」に認定されている産品です。14品目以降は、消費者向け出荷が少ないためブランド認定されていない23品目です。

 

みず菜(みずな)

【生産地】京都市全域

【特徴】株状によく分けつし(一株で数十本)、葉柄は数百枚になる。葉柄は細く淡緑色すが、葉先は濃緑色で欠刻が深く先端はとがっている。

【食味】食感がとても柔らか。

【料理】サラダ(小束のもの)、おひたし、椀だね、鍋物

【来歴】京都で栽培されてきた野菜の中で古い文献に記載されたもののひとつで、和名抄(935年頃)に「みずな」の名が始めて記載されている。さらに、天和3年(1683)には供物として用いたことが、また、貞享3年(1686)に東寺九条辺で栽培されていた記載がある。京都ブランド産品。

【時期】通年

 

壬生菜(みぶな)

【生産地】京都市全域

【特徴】みず菜と同様ですが、葉に欠刻が無く、円くスプーン状になる。

【食味】独特の香りと辛み

【料理】おひたし、椀だね、鍋物、漬物

【来歴】1800年代にみず菜の一変種が自然交雑によって生まれ、壬生地区に多く栽培されたものとされる。みず菜との区別がはっきりした頃は不明だが、文化元年(1804)の文献に「壬生に産する壬生菜」という明らかな記載がある。京都ブランド産品。

【時期】1月~2月

 

九条ねぎ(くじょうねぎ)

【生産地】京都市全域

【特徴】葉ねぎで、系統は細ねぎ(浅黄種:あさぎだね)と太ねぎ(黒種:くろだね)の二系ある。

【食味】口当たりがやわらかで甘味があり、葉の内部にぬめりがある。

【料理】鴨ねぎ、すき焼、みそ汁の具、ねぎ鍋、麺。

【来歴】和銅4年(771)、稲荷神社が建立されたときに、現在の伏見区深草の地で、浪速(現大阪)由来の原種の栽培が始まったとされており、歴史は非常に古い。平安朝前期承和年代(834~848)にすでに九条で栽培されていたという記録がある。京都ブランド産品。

【時期】通年

 

京たけのこ(きょうたけのこ)

【生産地】京都市西京区、伏見区、長岡京市、向日市

【特徴】孟宗竹の筍で、食用としては最も大きい。特に西山地域で生産されるものは、間引きから施肥、土入れ、収穫までを通して、篤農家の永年の研究による栽培技術に支えられ、全国的に最も品質が優れていると言われている。

【食味】えぐみがなく、色の白さと刺身ができるほどの軟らかさ、加えて独特の風味がある。

【料理】若竹、田楽、木の芽味噌和え、天ぷら、たけのこご飯

【来歴】嵯峨天皇の時代(810~823)に長岡京市の海印寺寂照院の開祖である道雄が、中国から孟宗竹を持ち帰り、関西に広まったという説がありますが、その当時食料として利用したかどうか不明で、その後江戸時代に西山一帯に定着して栽培の対象となったという説が正しいと考えられている。京都ブランド産品。

【時期】3月~5月

 

京山科なす(きょうやましななす)

【生産地】京都市山科区

【特徴】幹は太く枝は直立する。樹勢はやや弱く、葉は広くてやや長円で浅い欠刻がある。果形は長円形又は卵型で、濃紫黒色で光沢がある。果皮薄く、肉質が軟らかいので、日持ちせず、輸送に適さないために栽培が減少した。

【食味】果皮が薄く、緻密な果肉はやわらかく、みずみずしい。

【料理】にしんなす、焼なす、天ぷら、田楽、おひたし

【来歴】現在の山科一帯で古くから栽培されてきたなす。左京区吉田で栽培されていた「もぎなす」を大型に改良したものとされる。京都ブランド産品。

【時期】6月~9月

 

賀茂なす(かもなす)

【生産地】京都市北区上賀茂地区

【特徴】直径15cm、1個300gにもなる大型の丸なすで、ガクの下が真っ白。皮は軟らかく、肉質はよく締まり光沢があり、“がく”(へた)は三角形になる。

【食味】果肉は緻密で固くしまり、歯ごたえの良いのが特長で、加熱調理しても崩れにくく、それでいて食べるとなめらか煮崩れ、味わいは深くコクがあり、まさに「ナスの女王」と称される。

【料理】田楽、揚げだし

【来歴】貞享元年(1684)の文献に記載があり、古くは、左京区吉田田中地区で栽培されていた。今から約100年前に北区上賀茂、西賀茂及びその附近特産の大型なす品種として栽培されるようになったが、起源については明らかではない。京都ブランド産品。

【時期】6月~10月

 

鹿ケ谷かぼちゃ(ししがたにかぼちゃ)

【生産地】京都市左京区鹿ヶ谷

【特徴】形は基本的にひょうたん形で大きさは2~4キロ程で大きく、種は下部の大きいほうにだけある。果面のこぶは大きく、縦溝は不鮮明です。果面のこぶは大きく、縦溝は不鮮明。

【食味】果肉は粘質で、甘さはあまり無く淡白だが、煮崩れしにくく出汁をしっかりと吸い易い。

【料理】煮つけ、天ぷら

【来歴】文化年間(1804~1817)に、現在の東山区粟田口の農家が奥州の津軽からかぼちゃの種子を持ちかえり、現在の左京区鹿ヶ谷の農家に分けて栽培したところ、偏平な菊座形からひょうたん形が生まれ、それを栽培するようになったと言われている。京都ブランド産品。

【時期】7月、8月

 

伏見とうがらし(ふしみとうがらし)

【生産地】京都市伏見区

【特徴】日本のとうがらし類のなかでも最も細長い品種で、長さは、10から15㎝、先端は尖っており、辛みがない。

【食味】独特な風味と甘さがある。

【料理】焼きとうがらし、天ぷら、油いため、煮物

【来歴】江戸時代の書物に山城の国伏見のあたりで作られたものが有名であるという記載がある。京都ブランド産品。

【時期】6月~8月

 

えびいも(えびいも)

【生産地】京田辺市

【特徴】里いもの一種で、小芋はわん曲しており、大型。

【食味】独特のねっとりした食感とうま味。

【料理】煮物、いもぼう、味噌かけ、あんかけ、椀だね

【来歴】安永年間(1772~1781)に当時の青蓮院宮が、九州の長崎から芋の種を持ち帰り、形状から「えびいも」と名付けて、上鳥羽、九条で栽培された。京都ブランド産品。

【時期】11月~2月

 

堀川ごぼう(ほりかわごぼう)

【生産地】京都市左京区

【特徴】斜めに植えつける栽培方法で、長さ50cm前後、直径は6~9cm、重さ1㎏にもなり、表面にヒビ割れ、内部の空洞化など、一般ゴボウと異なる。収穫できるまで2年以上かかり、希少価値が非常に高い食材。

【食味】肉質は軟らかく、独自の芳香があり、味が染み込みやすい。

【料理】月環、つけ焼、きんぴら

【来歴】豊臣秀吉が築いた聚楽第の堀跡へ埋めたゴミの中に、食べ残しのごぼうが捨てられていたものが年越して大きく育ったことから年越ごぼうの栽培が始められたと言われており、この独特の栽培法は約400年の歴史を有することになる。京都ブランド産品。

【時期】11月、12月

 

聖護院かぶ(しょうごいんかぶ)

【生産地】亀岡市篠地区

【特徴】日本最大級のカブで成長すると2 ~ 5kgにもなる。葉はやや広く滑らかで下部には欠刻があり、根部は腰高偏円で葉付部にへこみがある。

【食味】ち密な肉質からくる甘さとみずみずしさがある。

【料理】かぶら蒸し、煮物、ふろふき、鯛かぶら、漬物(千枚漬)

【来歴】享保年間(1716~1736)に現在の左京区聖護院に住む農家が現在の大津市堅田の近江かぶの種子を持ち帰って栽培し、その後改良された。京都ブランド産品。

【時期】10月~2月

 

聖護院だいこん(しょうごいんだいこん)

【生産地】城陽市、久御山町、亀岡市

【特徴】特別に大きく、短系で球形で地表に表れる部分は淡い緑色を呈する。

【食味】肉質は軟らかく、ほんのりとした甘さ。

【料理】ふろふき、おでん、煮物

【来歴】文政年間(1816~1830)に尾張の国から黒谷の金戒光明寺に奉納された大根を栽培。土壌の浅い京都の地に合ったため、聖護院一帯に栽培が広がった。尾張の宮重大根が原種であるといわれている。京都ブランド産品。

【時期】11月~2月

 

くわい(くわい)

【生産地】京都市南区上鳥羽、伏見区竹田

【特徴】縁起の良い食物と評され、煮物にしておせち料理で食べられる習慣があるため、世界でも日本で最も普及している。

【食味】独特のほろ苦さの中にほんのりとした甘みがあり、加熱するとホクホクとした食感になる。

【料理】せんべい、松笠くわい、うま煮

【来歴】天正19年(1591)に豊臣秀吉が京の都を外敵と災害から守るため、周囲に御土居(おどい)を築いた。そのため、いたるところに低地が生じ、肥沃な低湿地で、藍の栽培を行い、その裏作として栽培されたのが始まりだとされる。京都ブランド産品。

【時期】11月~1月

 

青味大根(あおみだいこん)

【生産地】京都市中京区西ノ京

【特徴】尾部が1~2箇所で屈曲する中生系の大根で、茎葉は濃緑色、根身は長さ12~15㎝、直径1~1.5㎝、地表部が濃緑色で青味の多いものが良いとされる。

【食味】

【料理】味噌漬、椀だね、もろみ大根

【来歴】約150年前の文化・文政年間の頃、現在の右京区西京極で栽培されていて今は絶滅した「郡だいこん」の変異種として作出された。

【時期】11月~2月

 

桃山大根(ももやまだいこん)

【生産地】京都市伏見区

【特徴】根部は短くて根首と先端がほぼ同じ大きさで、直径6~8㎝、長さ30cm。

【食味】肉質が非常にしまっている。

【料理】漬物用

【来歴】滋賀県にあった伊吹山大根を桃山の一部(大亀谷地区)に移して栽培したものといわれています。300年前後の歴史を持っている。

【時期】11月~3月

 

茎大根(くきだいこん)

【生産地】京都市左京区松ヶ崎

【特徴】茎葉は繊細な感じで淡緑色であり、葉柄は細く柔軟です。根部は純白色で根の先がやや太く、尻づまりしている。

【食味】風味が良く、葉茎も細かく刻んで食べられる。

【料理】漬物

【来歴】約300年前、市内の各地で栽培されていた。左京区松ヶ崎は、この大根の栽培に適した気候、土質であった。現在も栽培が続けられている。

【時期】11月~2月

 

辛味大根(からみだいこん)

【生産地】京都市北区大北山

【特徴】形状は、根部、茎葉とも一見、小蕪に似ており、非常に小さく、直径は3~5㎝位である。葉柄、中ろくの基部は紫色をしており、根部には強い辛味がある。

【食味】強い辛味が口に広がる。

【料理】薬味

【来歴】京都市北区大北山(原谷)の原産で、元禄、宝永の頃から現在の北区鷹峯で栽培されるようになったとされている。

【時期】11月~2月

 

時無大根(ときなしだいこん)

【生産地】京都府

【特徴】根の太さは6cm〜8cm、長さは45cm前後。普通の青首大根に比べて根が白く、葉の色は濃い。

【食味】肉質は硬く、辛味がある

【料理】おろし大根、煮物や漬物など

【来歴】江戸時代後期の1818(文政元)年頃、都市南区東九条の小山藤七が極晩生種の大根の種子を手に入れ、藤七大根という名で販売したのが始まりという。現在は時無大根の名で広く普及し、端境期の大根として栽培されている。

【時期】4月〜6月

 

佐波賀大根(さばがだいこん)

【生産地】舞鶴市佐波賀地区

【特徴】秋に種を蒔き翌年2~3月に収穫する春大根。根は紡錘形で重さ400g程度。首の色が淡緑と白のふたつの系統がある。根元は太く先が尖った形、葉は濃い緑色でタンポポの葉のように地表に広がる。

【食味】水分が少なく、固めで身が引き締まっていることから、おろしても水っぽくなりにくく、煮込んだとき、煮崩れしにくいという特徴がある。葉も美味しく食べることができる。

【料理】大根おろし、煮物など

【来歴】江戸時代の嘉永年間(1848年〜1854年)または安政年間(1854年〜1860年)には存在したとされ、四月大根、または真壁大根と呼ばれていた。2010年から京都府が保管していた種子を用いて、生産を復活させる取り組みを開始。2012年12月には生産者、株式会社イオンリテール、京都丹の国農業協同組合、京都府と舞鶴市が「京の伝統野菜 佐波賀だいこん食文化振興協議会」を設立し、本格的に生産・販路の拡大、情報発信等に取り組んでいる。

【時期】2月〜5月

 

佐波賀蕪青(さばがかぶ)

【生産地】舞鶴市佐波賀地区

【特徴】切れ込みが深い葉を持つ。青首大根。戦時中は、野菜の少ない2月〜3月に多く出荷された。

【食味】肉質は固く甘みが強い。

【料理】

【来歴】古くは天神かぶの名で呼ばれた。江戸時代後期の1848(嘉永元)年には栽培されていたという。昭和の初期頃から佐波賀かぶと呼ばれるようになった。

【時期】2月〜3月 (現在、生産されていない。種子は京都府が保管している。)

 

鶯菜(うぐいすな)

【生産地】京都市下京区七条

【特徴】早生小かぶに属し、葉は光沢のある壬生菜のような形で、根は純白色のやや偏円形。

【食味】

【料理】椀だね、煮物

【来歴】江戸時代の中期に、現在の中京区神泉苑町の農家が、天王寺かぶの早生種作出のために選抜淘汰してできたとされ、早春の菜としてうぐいすの鳴く頃に収穫されることから呼ばれたとされる。

【時期】1月

 

松ヶ崎浮菜かぶ(まつがさきうきなかぶ)

【生産地】京都市左京区松ヶ崎地区

【特徴】葉は滑らかで欠刻が深く、みず菜の変り品種のようで、地下部が肥大する頃から、かぶの上部から葉茎が増える、葉数の多い特殊な蕪。

【食味】

【料理】煮物、漬物

【来歴】奈良時代に僧がいずれかから伝えたとの説がある。また、近江かぶが京都に導入され栽培される間に、松ヶ崎浮菜かぶになったとも言われている。古くから左京区松ヶ崎に栽培された地域固有のかぶの品種。

【時期】11月~2月

 

大内蕪(おおうちかぶ)

【生産地】南丹市美山町大内地区

【特徴】寒さや乾燥に強く、一般のかぶに比べて糖度が高い。直径10㎝ほどの大きさで固くて煮くずれしない。12月~2月の間に雪の中から掘り起こし収穫される。ひげ根が多く、表面がゴツゴツしており形が悪い。繊維質が多い。

【食味】他の蕪より甘みが強く、味も濃厚で美味しい。抗酸化作用がブルーベリーなみに高いという研究報告もある。

【料理】主に煮食用。味噌で6時間以上煮る「御講汁」は、寺などで振舞われ、古くから地元で愛好されてきた。葉を軽くゆでて味付けしたもの。最近は漬物にするなどし、普及に工夫している。

【来歴】約500年の栽培歴を有する。500年以上前(室町時代の末期、戦国時代に入りつつある頃)にシベリア経由で日本に渡ってきた欧州系の蕪ということがわかっている。形が悪く、調理にも時間がかかることなどから流通が減少し、栽培農家も3~4軒に減少。現在、大内かぶプロジェクトが立ち上げられている。

【時期】12月中旬〜3月上旬

 

舞鶴蕪(まいづるかぶ)

【生産地】舞鶴市四所喜多地域が原産

【特徴】直径15cmほどの大きさのかぶ。地上に出た部分と茎葉が、赤紫色を呈する。

【食味】肉質はやや硬く漬物には不向き

【料理】漬物には向かないが、糖度が高いため煮炊き用に適する。

【来歴】主に舞鶴市で生産されている。舞鶴市の荒川種苗店が宮津市喜多で栽培されていた喜多蕪を、昭和20年代に舞鶴蕪と改称した。

【時期】11月上旬〜12月(現在、生産されていない。種子は京都府が保管している。)

 

酸茎菜(すぐきな)

【生産地】京都市北区上賀茂

【特徴】根は円錐状であり、葉は濃緑色で、葉、根部とも大別して各々三つの系統群がある。

【食味】果肉はやわらかく、かぶ自体にほのかな香りを有する。

【料理】漬物、おひたし、「すぐき漬」は「千枚漬」、「しば漬」とで、「京都三大漬物」。

【来歴】約300年前と推察されている。

【時期】10月~12月

 

京水せり(きょうみずせり)

【生産地】京都市下京区西七条、南区久世

【特徴】葉の形から、とがったものを柳葉、丸みを帯びたものを丸葉と呼んでいますが、さらに色や香り、栽培地域によって京せり、青ぜり、お多福ぜり、山科ぜりに区別されている。

【食味】香りが強く、柔らかい。シャキシャキの食感は高級寿司店や料亭などでも重宝される食材。

【料理】おひたし、ごま和え、椀だね、鍋物のあしらい

【来歴】承和5年(838)の文献にせりの栽培が記載されていることから、ねぎの栽培とともに古く、湧水の多い低湿地の利用として多く栽培されたとみられる。現在のような湧水栽培が行われたのは約300年前と言われている。

【時期】10月~3月

 

京うど(きょううど)

【生産地】京都市伏見区

【特徴】根株をまんじゅう型に土盛りし軟化するため、茎は白く育つが、太短く、室栽培のようにスマートではない。

【食味】さくさくとした歯応えと独特の香り。

【料理】酢の物、きんぴら、造りのあしらい、うま煮

【来歴】江戸時代から伏見区の桃山城下で栽培されている在来種。

【時期】5月

 

ジュンサイ(じゅんさい)

【生産地】京都市北区上賀茂深泥池

【特徴】澄んだ池沼に自生する。葉を水面に浮かべ、夏になると深紅色の花を開き、卵型の実をつける。まだ葉が開かない若菜を摘み、食感を賞味する。若芽はゼリー状の透明な粘膜に覆われていてツルンとした舌ざわり。
京都盆地の北にある天然記念物の深泥池(みぞろがいけ)に自生している。

【食味】味は淡白。粘質物(ゼラチン)のぬるりとした食感を味わう。

【料理】二杯酢、三杯酢、汁の実等に用いたり、わさび醤油、天ぷらなどで食す。

【来歴】古い沼地に大昔から自生していた。日本の原産で、皇極天皇の時代(7世紀の半ば)にすでに利用され始めた。京都府内においても、「雍州府志」(1684)に伏見産や洛北産の記録があることから、非常に古くから利用されているとされる。特に京都山科産は銀と言われ、品質が良かったことがうかがえる記録もある。
通常は自生するものを採集し、人為的に栽培することはほとんどない。近頃は、池沼に水質変化や汚染物質の流入・改廃等により生産が減少し、現在では採集されていない。

【時期】5~9月頃 6~7月上旬が最盛期

 

京みょうが(きょうみょうが)

【生産地】京都市伏見区

【特徴】みょうがの芽の長さ30㎝、太さ1~1.5㎝位の物が出荷されている。茎の色は黄色地に紅を帯びた色。

【食味】香りが良い。

【料理】みょうがごはん、みそ汁の具、造りのあしらい、天ぷら

【来歴】江戸時代の終期、現在の伏見区桃山の農民、平兵衛が地下水の湧き出ている傍らに軟白しているみょうがを見つけ、これをヒントに地元の豊富な湧水を利用して軟化栽培することを考案したのが始まり。

【時期】4月~5月

 

もぎ茄子(もぎなす)

【生産地】京都市左京区一乗寺

【特徴】大きさは20g前後と小粒。極早生系で、草丈低く、横枝が良く張り、結果数も多く、葉は小さくて茎も細く、果実は紫黒色。

【食味】実はしまっていてほろ苦い。

【料理】ごま和え、からし漬け、天ぷら、焼きなす、椀だね

【来歴】慶応、明治初年頃、在来なすの中に、早生で草丈の低い系統が出現、促成栽培用品種として栽培されるようになり、もぎなすが生まれたとされる。

【時期】6月~9月

 

聖護院きゅうり(しょうごいんきゅうり)

【生産地】京都市左京区聖護院地区

【特徴】長さ18cm〜21cmで果色は濃い緑色。細身でイボは細かく、少ない。

【食味】

【料理】

【来歴】江戸時代後期の天保年間(1830年〜1844年)以前から栽培されていたきゅうりをもとに育成されたとされる。明治時代中頃に形状の良い改良系が選抜され、左京区を中心に盛んに栽培されていた。昭和に入ってから他品種との競争に破れ、現在は生産されていない。保存されている種子のみが残っている。

【時期】

 

桂瓜(かつらうり)

【生産地】京都市西京区桂地区

【特徴】長さ50~60cm、直径15~20cmの大果で淡緑色。果皮は緑白色で果肉は厚く、頭部、尻部とも太い。

【食味】肉厚で歯ごたえが良く、甘味と芳香に富む。

【料理】浅漬、奈良漬、ぬか漬

【来歴】越うりの一種で、品質の優れた特に大型のものを選抜して栽培。元和3年(1617)には智仁親王が現在の西京区桂に訪れたと文献にあり、それ以前から栽培されていたと考えられている。

【時期】6月、7月

 

田中トウガラシ(たなかとうがらし)

【生産地】京都市左京区田中地区

【特徴】種が少なく、色は濃緑色で辛味はない。

【食味】辛味がほとんどないのが特徴。

【料理】焼きとうがらし、雑魚煮、天ぷら、佃煮

【来歴】明治初年に左京区田中地区の農家が滋賀県から種子を持ち帰って栽培を始めたと伝えられている。田中地区一帯で栽培されていた。

【時期】6月~9月

 

柊野ささげ(ひらぎのささげ)

【生産地】京都市北区上賀茂柊野

【特徴】他のささげよりさやが長く、長さ80cm〜90cm

【食味】風味があり柔らかい。

【料理】ごま和え、天ぷら、煮つけ

【来歴】江戸時代中期から栽培

【時期】7月~9月

 

畑菜(はたけな)

【生産地】京都市内

【特徴】草姿は菜種に極似するが、葉、柄共に欠刻が大きいことが特徴。

【食味】大根の葉とハクサイの間のような歯ごたえ。

【料理】おひたし、からし和え、煮物

【来歴】菜種油用のものが野菜の少ない早春に若菜として利用され、それが改良されてきたのではないかと言われている。

【時期】12月~2月

 

鷹峯とうがらし(たかがみねとうがらし)

【生産地】京都市北区鷹峯

【特徴】果は大型で、肩の張りは無く、色は濃緑色をしており辛味はない。肉厚で皮が薄いことが特徴。

【食味】辛みがなく、肉厚で大変美味しい

【料理】揚げ物、炒め物、煮物

【来歴】昭和18年頃から栽培されている甘とうがらしの一種。栽培戸数5戸。“京都市特産そ菜保存圃”を設置し,北区鷹峯の農家に委託している。

【時期】6月~8月

 

 

【参考資料】

京都府HP「京の伝統野菜・京のブランド野菜」
京都市情報館「京の伝統野菜について」
舞鶴市HP「佐波賀だいこん」

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