日本の伝統野菜ー05.秋田
目次
- 1.地域の特性
- 2.秋田の伝統野菜
- 秋田さしびろ(あきたさしびろ)
- 秋田霜降りささげ(あきたしもふりささげ)
- 秋田ふき(あきたふき)
- 阿仁ふき(あにふき)
- 新処なす(あらところなす)
- 石橋ごぼう(いしばしごぼう)
- エゴマ(えごま)
- えつり赤にんにく(えつりあかにんにく)
- 大館地大根(おおだてじだいこん)
- 貝沢ふくだち菜(かいさわふくだちな)
- カナカブ(かなかぶ)
- 亀の助ねぎ(かめのすけねぎ)
- からとり芋(からとりいも)
- 小様きゅうり(こざまきゅうり)
- 五葉豆(ごようまめ)
- 山内せり(さんないせり)
- 山内にんじん(さんないにんじん)
- 雫田カブ(しずくだかぶ)
- 地タカナ (じたかな)
- 蓴菜(じゅんさい)
- 関口なす(せきぐちなす)
- 仙北丸なす(せんぼくまるなす)
- 平良カブ(たいらかぶ)
- 田沢地うり(たざわじうり)
- 田沢ながいも(たざわながいも)
- ちょろぎ(ちょろぎ)
- てんこ小豆(てんこあずき)
- 富沢なす(とみざわなす)
- とんぶり(とんぶり)
- 仁井田大根(にいだだいこん)
- 仁井田菜(にいだな)
- 仁賀保秋スイカ(にかほあきすいか)
- 沼山だいこん(ぬまやまだいこん)
- ひろっこ(ひろっこ)
- 松館しぼり大根(まつだてしぼりだいこん)
- 三関せり(みつせきせり)
- 八木にんにく(やぎにんにく)
- 湯沢ぎく(ゆざわぎく)
- 横沢曲がりねぎ(よこさわまがりねぎ)
1.地域の特性
【地理】
東北地方の北西部に位置する秋田県の総面積は、11,638 km2で、全国6位の面積を有しています。
秋田県は、南北に長い長方形の地形で、日本海に面する西側以外は、山地に囲まれています。自然豊かで国立公園、国定公園など数々の自然公園を有しています。
秋田県北西部の青森県との境には、ユネスコ世界遺産に登録され、ジブリ映画「もののけ姫」の舞台にもなったと言われれる白神山地(しらかみさんち)が広がっています。
東側の内陸部には、隣接する岩手県との境に南北に奥羽山脈(おううさんみゃく)が縦走しており、その西側に内陸盆地列(ないりくぼんちれつ)があります。北部の白神山地と奥羽山脈の裾野には花輪盆地(はなわぼんち)、大館盆地(おおだてぼんち)、鷹巣盆地(たかすぼんち)が、南部の岩手県との県境のほぼ中央部にまたがる真昼山地(まひるさんち)の裾野には横手盆地(よこてぼんち)、仙北盆地(せんぼくぼんち)があります。
さらに、その西側には出羽丘陵(でわきゅうりょう)があり、日本海側に行くにつれて、南北方向の帯状に、台地・段丘、海岸平野列、海岸砂丘地と変化していき、出羽丘陵の西側には北から能代平野、八郎潟低地、秋田平野、本庄平野などの低地部が海岸線に沿って発達しています。
また、秋田県西側中央部にある男鹿半島(おがはんとう)は、日本海に約30km突出し、本土との間に八郎潟を抱える形でつながっています。
河川は、主に奥羽山脈を水源として、北から米代川、雄物川、子吉川の3大河川が流れています。火山は、八幡平、駒ヶ岳、栗駒山の諸火山と十和田湖、田沢湖のカルデラ湖を形成しています。
【気候】
秋田県は日本海に面しており、気候区分は日本海側気候に分類されますが、内陸部の一部は、厳しい寒さで、亜寒帯湿潤気候(あかんたいしつじゅんきこう)に分類されます。
冬季の日照時間が全都道府県の中で最も少ないのが特徴です。日照時間が少ないため、鹿角市や仙北市などの内陸部を除き、朝晩の放射冷却現象が起こらず、特に日本海側沿岸部などは北関東よりも朝の気温が高いことも多く、緯度の割には温暖で、日較差が非常に小さくなります。沿岸部は、冬季の降水量はそれほど多くありませんが、日照時間が極端に少ないことが特徴です。内陸部は低温で、雪が多くおよそ90%の地域が特別豪雪地帯に指定されています。また、秋田沖付近に発生する極低気圧からもたらされる暴風雪やゲリラ豪雪が見られます。
一方、夏季は、高温多湿でどんよりとしており梅雨明けのないまま秋を迎えることも珍しくありませんが、太平洋側から吹く季節風が、奥羽山脈の山々に遮られ、フェーン現象を発生させることがあります。太平洋側に冷害をもたらすと言われるオホーツク海から吹く東よりの冷たい風“やませ”も、高温乾燥した風となり、特に県内陸部中央から県内陸南部では気温が上昇し、真夏日や猛暑日になることもあります。この東風は豊作をもたらすとして、秋田民謡生保内節などで「宝風」と唄われています。
やませ=偏東風とは、北日本の太平洋側で春から夏に吹く冷たく湿った東よりの風のこと。 寒流の親潮の上を吹き渡ってくるため冷たく、水稲を中心に農産物の生育と経済活動に大きな影響を与える。やませが続いた場合、太平洋側沿岸地域では最高気温が20℃程度を越えない日が続きます。
【農業の特徴】
秋田県の農業産出額は、1,792億円(2017年)で全国順位20位です。
主要農産物は水稲で、県内の農業産出額の56.2%を占めており、北海道に次いで全国3位。特に、ブランド米「あきたこまち」の栽培が盛んなほか、酒どころ秋田として、酒米の生産振興にも力を注いでいます。
野菜は、枝豆・ネギ・アスパラガス・菌床しいたけ・トマト・キュウリ・メロン・スイカ・キャベツ・じゅんさい・大館とんぶり・三関セリを栽培しています。
果樹は、りんご・和梨・ぶどう・さくらんぼ・桃があります。気候を生かした高品質なトマト、きゅうり、メロン、すいかなどの栽培が盛んです。また、“えだまめ日本一”を達成するなど産地育成に力を入れています。果樹では、りんご、なし、おうとうの生産量が全国上位にあります。近年は、ブルーベリーの栽培も盛んになっており、野菜・果樹とも気候を生かした高品質生産が行われています。
2.秋田の伝統野菜
秋田県の伝統野菜は、秋田県が「あきたの伝統野菜」として認定しているものを紹介します。
「あきたの伝統野菜」は、次の三つの事項を満たす品種としています。
昭和30年代以前から県内で栽培されていたもの
地名、人名がついているなど、秋田県に由来しているもの
現在でも種子や苗があり、生産物が手に入るもの
秋田県では、2005年〈平成17〉に、「秋田の伝統野菜プロジェクト」を開始し、2007(平成19)年度〉までに、「あきたの伝統野菜」の定義を定め、21品目を選定しました。この間、農業試験場での試験栽培や品種改良、栽培方法に関する指導、栽培マニュアルの作成などを実施しています。
2014〈平成26〉年度には、9品目を追加選定し、秋田の伝統野菜に認定された品種は30品目になりました。同年には「伝統野菜全国シンポジウムin秋田」も開催しています。
2019(令和元年)には、さらに9品目を追加選定し、39品目としています。翌年には「2020全国伝統野菜サミットin秋田湯沢」を開催しています。2020(令和2)~2021(令和3)年度にかけて、県単事業(秋田のやさい総合推進事業)で栽培技術の確立支援や遺伝子資源の保護を実施しています。
2024年11月時点では、39品種が認定されています。
秋田さしびろ(あきたさしびろ)
【生産地】秋田市、由利本荘市
【特徴】越冬性の高い九条ネギ系の柔らかい葉ネギ。
【食味】甘みとつるりとした食感を楽しむ。
【料理】鍋もの、汁もの、卵とじ、酢みそ和えなど
【来歴】古くから地域で生産されてきた。
【時期】2月~5月。3月頃からは、地際から刈り取り収穫する。8月下旬~9月上旬に株分けし、植え付ける。雪融け後、トンネルを設置し、生育を促す。
秋田霜降りささげ(あきたしもふりささげ)
【生産地】仙北市、県内各地
【特徴】サヤに黒い筋状のまだらがある。寒さに強い。莢は長さ14cm程度
【食味】軟らかく、甘味に富んでいる。
【料理】茹でると、まだらが消え、鮮やかな緑色になる。乾燥させることで冬場の保存食にもなる。若莢は煮食、おひたし、和え物、天ぷら等。完熟した豆は煮豆にする。
【来歴】寒さに強く、霜が降りる頃まで食べられるため、「霜降りささげ」と呼ばれる。秋田の各地で古くから栽培されている。
【時期】9月~10月
秋田ふき(あきたふき)
【生産地】鹿角市、秋田市 秋田市では仁井田地区に数戸、鹿角市では転作田や家の庭先などに数多く植えられている。秋田のほか北海道、東北で栽培されていた。
【特徴】葉柄が丈2m、葉の直径は1.5m、茎回りが15cmにも達する。別名「秋田大ふき」とも言われる日本一大きなフキ。
【食味】茎を食用とする。大型で肉質は硬いが、空洞が大きいので身は薄い。生の葉柄の食べ頃は初夏。
【料理】漬物、砂糖漬け、フキ羊羹、佃煮、塩漬け、咏噌濆け、キンピラ、天ぷらなど。地元ではアク拔きしたフキの空洞に詰め物した煮物に使い、観光資源としても知られる。フキの若い花序(かじょ)がフキノトウとして食用される。
【来歴】江戸時代から栽培されている。秋田ふきの名が全国広かったのは、享保年間(1716~1736)に遡り、秋田藩主・佐竹義峰が江城に登城したときに、謂大名に紹介したことによるとの説がある。
【時期】6月
阿仁ふき(あにふき)
【生産地】北秋田市阿仁、能代市
【特徴】阿仁ふきは、一般的な水ふきや、山ふきに比べて背丈が高く1mほどになる。色は翡翠色。茎が長く、太さは1.5~2㎝ほどになる。県農業試験場がこのフキにより育成した、葉柄が長く太い品種「こまち笠」が栽培されている。
【食味】葉柄が青々として美しく、繊維や苦みが少ないため食味と食感に優れる京フキ系のフキ。
【料理】水煮、山菜料理
【来歴】フキの原産地は日本で、非常に古くから自生している。
【時期】6月~7月
新処なす(あらところなす)
【生産地】横手市
【特徴】肉質が密で張りがある。
【食味】中程度の大きさで上下を切り落として塩蔵し、キクが出る晩秋に「なすの花すし」に漬け直しをする。
【料理】漬物、なすの花寿司。「なすの花寿司」は、正月料理や祝料理に食される。いぶりがっこと並ぶ郷土の漬物。
【来歴】横手市十文字町新処集落に伝わる巾着型のナス。
【時期】7月~10月
石橋ごぼう(いしばしごぼう)
【生産地】大仙市
【特徴】茎が赤くやや小葉、長根で肉付きが良い。
【食味】白肌、白肉で香りが高く太さがあり、風味の良さが定評ある早生ゴボウ。
【料理】鶏ごぼう、きんぴら。柔らかいので長く煮込む料理は不向き。
【来歴】昭和30年に大仙市の篤農家石橋氏が育成した品種。
【時期】10月~11月。4月下旬頃に播種し、10月頃から収穫。
エゴマ(えごま)
【生産地】大館市、八峰町、由利本荘市、東成瀬村
【特徴】シソ科の植物。白花白実で草丈は80cm程。
【食味】香りと甘みが強く食味が良い。
【料理】油脂。種実を煎ってタレ、秋田の行事には欠かせない唐辛子を使った辛い和え物の「なんばんべっちょ」に使う。葉に肉を包んで食す。
【来歴】奈良時代の秋田城跡からも発掘されている。※奈良時代の秋田城とは、東北地方の日本海側(出羽国)に置かれた大規模な地方官庁で、政治・軍事・文化の中心地。733(天平5)年に秋田村高清水岡に移った。760(天平宝字4)年頃から秋田城と呼ばれる。
秋田では別名「つぶあぶら」「じゅうねん」とも呼ばれる。エゴマは、古くから食用や灯火用として栽培・利用されているが、近年、エゴマ油の成分であるα-リノレン酸が動脈硬化等を防ぐ効果があるといった健康効果が見直され、栽培が拡大している。
【時期】10月~11月
えつり赤にんにく(えつりあかにんにく)
【生産地】大館市
【特徴】保護葉が赤紫色
【食味】生は辛みが強く、にんにくの風味が強い。火を通すと辛みが和らぎ、ホクホク感が出るとともに、香りが引き立つ。
【料理】薬味など
【来歴】江戸時代中期から栽培されている。江戸時代中期に餌釣地区へ移り住んだ際に持ち込まれたとみられ、同地区で代々、栽培されている。
【時期】6月~7月
大館地大根(おおだてじだいこん)
【生産地】大館市、北秋田市
【特徴】赤首、白、など系統によって形も色も異なる。
【食味】硬い肉質で歯触りのよく、保存性の高いたくあんになる。辛みダイコンとしても活用。
【料理】たくあん漬け、薬味
【来歴】大館、北秋田地域に伝わるダイコンで地元では「かたでご」と呼ばれる。
【時期】10月~11月。播種は8月下旬頃。10月中旬頃に収穫期を迎える。
貝沢ふくだち菜(かいさわふくだちな)
【生産地】雄勝郡羽後町貝沢地区
【特徴】白菜を真冬に育て、結球させずに収穫したもの。
【食味】わずかに苦味があり、甘味を強く感じる。
【料理】おひたし、炒め物
【来歴】貝沢集落で古くから受け継がれてきた露地栽培のトウ立ち野菜。名前の由来は、春にトウ立ちした白菜や青菜などのアブラナ科の野菜を「ふくだち」「ふくたち」として食する習慣があったことから。
【時期】4月~5月
貝沢ふくだち菜(秋田県伝統野菜) – 日本野菜テロワール協会
カナカブ(かなかぶ)
【生産地】にかほ市、由利本荘市
【特徴】洋種系の白長の小カブ。焼畑のものと普通畑栽培のものがあり、短太から長形まで様々な形がある。
【食味】サクサクと歯触りと食感が良く、辛みなどの風味がある。主に酢漬けで食べられる。
【料理】カナカブ漬。漬け方は人や地域によって漬け方が異なり、皮剥きや皮付き、麹づけや塩漬けなど多様な漬け方がある。
【来歴】江戸時代から野焼きをして栽培されてきたことから「火野カブ(カノカブ)」とも呼ばれている。秋田県由利地方や山形県庄内地方に伝わる。にかほ市では、焼畑にこだわった栽培が行われているが、栽培面積は、年々、栽減少。現在、にかほ市の農産物直売所「百彩館」の利用者協議会が、栽培とカナカブ漬の継承・普及に取り組み、「百彩館焼畑火野カブ漬」として商品化。地域活性化に貢献している。
【時期】10月~12月。8月に山焼きされた畑に播種。10月から収穫が始まる。
亀の助ねぎ(かめのすけねぎ)
【生産地】大仙市
【特徴】耐寒性が強く、越冬率が高いため雪深い秋田の地に適応した。4~5月のネギとして利用されている。
【食味】春でも薹立ちしにくく、柔らかで甘味が強く、香りが格別の春ネギ。
【料理】焼きねぎ等
【来歴】昭和初期に地元篤農家の石橋氏が砂村系のネギから育成したもの。
【時期】3月~5月。4月上旬に播種、6月下旬に定植。秋鳥も可能であるが、越冬させ、春に収穫する。
からとり芋(からとりいも)
【生産地】由利本荘市、にかほ市
【特徴】サトイモの一種で葉柄(ずいき)と親芋を食する。畑栽培と水を張った苗代栽培のもの、青茎と赤茎がある。
【食味】葉柄はいがらさが少なく食味がよい。芋は独特のとろりとした食感と甘さがある。
【料理】親芋、小芋は煮物、味噌汁。ズイキは生または一端干したものを戻して酢の物、煮物等
【来歴】秋田県内でも由利地域だけで栽培されている。山形県庄内に隣接した地域で食文化を共有することが多く、由利地方は県内でも比較的温暖で種芋の保存がしやすかったためと考えられる。「からとり芋」は山形県の伝統野菜にも認定されているが、山形では「からどり芋」となっている。
【時期】9月~11月
小様きゅうり(こざまきゅうり)
【生産地】北秋田市
【特徴】切り口が三角形になる。
【食味】瑞々しく、張りがありやや苦みを持つ。
【料理】冷やし汁などで食す。
【来歴】北秋田市阿仁小様地域に伝わる地ウリ。阿仁鉱山の労働者の水分補給に利用され市日などで販売されてきた歴史を持つ。一度途絶えたが、平成23年から復活している。
【時期】7月~9月
五葉豆(ごようまめ)
【生産地】県南部
【特徴】五枚葉が特徴で、青、黒、茶色がある味のよい品種。あきた香り五葉の育種に活用された。
【食味】香りと甘みが強い。
【料理】生の豆は流通しておらず、きな粉やジェラートなどの加工品として利用されている。
【来歴】古くから伝わる在来種のエダマメで自家用として栽培されている。
【時期】8月~9月
山内せり(さんないせり)
【生産地】横手市
【特徴】早生せり。やや標高がある山間部での栽培に適する。遮光により、強い日差しを避けるなどの工夫をして栽培されている。
【食味】香りが強い。ミネラル豊富な食味の良いせり。
【料理】お吸い物、鍋物など
【来歴】在来種から選抜したもの。冬期に酒蔵などに働きに出る農家で栽培されてきた。2019年時点でJAふるさとせり部会には18人の生産者。
【時期】8月~11月。9月に収穫最盛期を迎える。
山内にんじん(さんないにんじん)
【生産地】横手市
【特徴】長さが30㎝以上と太くて長い。鮮やかな赤色。肉質がしっかりしている。
【食味】パリッとした食感と強い甘みが特徴。肉質がしまっているため煮崩れしにくく煮物に向く。
【料理】漬け物、サラダ、煮物、揚げ物、きんぴらがおすすめ。
【来歴】昭和20年代に横手市山内地区で選抜された品種。一時栽培者が激減したが、復活している。
【時期】10月~12月
雫田カブ(しずくだかぶ)
【生産地】仙北市
【特徴】現在、雫田カブは地元のそば畑の中や、あぜ道などに自生している。こぼれ種で自生するほど生命力が強い。
【食味】ゴツゴツとした表面は野生的でわさびにも似た風味の刺激がある。歯ごたえと辛みがある。越冬させることで風味、辛みがでる。
【料理】漬物として利用
【来歴】仙北市角館の野田集落と雫田集落周辺で栽培されるカブで200年前から同地域にあるとされている。
【時期】4月・9月~10月。8月末~9月初旬には種子、越冬させ、雪解け後の4月末に収穫。
地タカナ (じたかな)
【生産地】仙北市
【特徴】漬け菜。全国で栽培されている「たかな」とは全く異なる小ぶりな品種。
【食味】葉と根を食す。辛みなどの風味が強い。
【料理】麹漬け、味噌漬けなど
【来歴】仙北地区で古くから栽培されてきた。仙北地域で漬け菜用として栽培されてきた。
【時期】11月
蓴菜(じゅんさい)
【生産地】三種町
【特徴】自然池沼や古い灌漑用ため池、転作田において、水深50~80cm程度の水域に生育している。4月~5月にかけて水底の地下茎から新芽が伸び、夏には蓮の葉のように水面いっぱいに浮葉を広げる。
【食味】地下茎から伸びたヌメリと呼ばれる透明な粘質物のある幼葉や葉柄の部分を食用としている。スイレン科ジュンサイ属の多年草で独特の食感が珍重される。
【料理】鳥鍋、三杯酢、じゅんさいそば等
【来歴】森岳地区の天然沼から、転作田で栽培されるようになり日本一の産地となった。都道府県によっては絶滅危惧種となっている。
【時期】6月~7月
関口なす(せきぐちなす)
【生産地】湯沢市
【特徴】たくさんの実をつけ、色、形、食感が抜群で漬け物に適する。
【食味】皮はやや硬め。果肉は締まっていて、わずかに苦みがある。ヘタの下が真っ白なのが特徴。
【料理】ふかし漬け、だしポン酢浸しなどで食す。
【来歴】江戸時代から湯沢市関口地区を中心に栽培される丸ナス。
【時期】7月~10月
仙北丸なす(せんぼくまるなす)
【生産地】大仙市
【特徴】秋田のなすを代表する鮮やかな紺色をした丸ナス。
【食味】果肉、果皮とも身もしっかりしており、塩蔵しても果肉が水分を含みにくく、長期保存用の漬物に利用される。
【料理】ナスのふかし漬けといわれる玄米と麹で漬ける漬物に使われる。
【来歴】仙北地方で栽培が続けられてきた丸なすの総称。
【時期】7月~10月
平良カブ(たいらかぶ)
【生産地】東成瀬村
【特徴】播種後60日程度で根長15㎝になる。
【食味】緻密な肉質でパリパリとした歯触りがあり風味が強い。
【料理】麹漬けにする。
【来歴】古くから平良地区でのみ栽培されてきた在来種の青首の長カブ。
【時期】11月~12月
田沢地うり(たざわじうり)
【生産地】仙北市
【特徴】田沢地区では秋田杉の山林作業の携行にされ、その元山守によって栽培され続け守られてきた。
【食味】苦みは感じられず、サクサクとした食感。
【料理】生や漬物、キュウリもみ、冷やし汁などに利用されてきた。昔は、沢水で冷やして味噌を付けて食べるなどした。
【来歴】古くから仙北市田沢地域や桧木内地区で自家採種され、栽培されてきた地ウリ。
【時期】7月~9月
田沢ながいも(たざわながいも)
【生産地】仙北市
【特徴】地域の土壌条件ともよく合う品種。
【食味】芋は白くコクがあり、ねばりがほどよい品質のよい長いもになる。
【料理】とろろ芋に最適。
【来歴】仙北市田沢地区に伝わる「田沢ながいも」を県内の育種家が系統選抜した田沢一号が栽培されている。
【時期】10月~11月
ちょろぎ(ちょろぎ)
【生産地】湯沢市
【特徴】シソ科の宿根草で、長老喜、千代呂木などの字があてられる縁起物食材。地下茎の先端部が渦巻き状の形になる。
【食味】サクサクとした歯触り
【料理】食感を活かして梅しそ漬けなどの漬け物にする。正月の黒豆に添えられる。
【来歴】中国が原産で、日本には江戸時代に伝わった。
【時期】10月~11月
てんこ小豆(てんこあずき)
【生産地】県内全域
【特徴】てんこ小豆(天向、天甲など)、県南では、ならじゃ豆とも言われ、赤飯には欠かせないササゲ。色は赤紫でお祝いの赤飯の他、仏事の黒飯に用いられる。赤飯にしたときの色の濃さ、艶のよさが特徴。
【食味】小豆は崩れ易く胴割れすることから、縁起のため黒ささげを使ったと言われている。
【料理】赤飯に使われる。
【来歴】あずきは、古来人が常食とする五種の穀物「五穀」のうちのひとつ。弥生時代には栽培されていたと言われている。秋田では黒ささげを「てんこ小豆」と呼ぶ。
【時期】8月~10月
富沢なす(とみざわなす)
【生産地】横手市
【特徴】果形は卵形で、湯沢市の関口なすと類似しており、系統が近いことが確認されている。
【食味】わずかに苦味があり、漬物用
【料理】主に漬物、特に紋漬け(菊の花ずし)
【来歴】漬物用に栽培されてきた。増田や十文字地域の朝市で販売されてきた。
【時期】7月~10月
とんぶり(とんぶり)
【生産地】大館市
【特徴】大館市が生産量日本一を誇る「畑のキャビア」と呼ばれる独特の野菜。茎は箒の材料として、果実は漢方薬の「地膚子(ジフシ、チフシ)」として利用されていた。
【食味】アカザ科のホウキグサの実が食用部分となる。深い緑色の粒状でプチプチとした食感。魚卵のキャビアに似ていることから「畑のキャビア」と呼ばれている。
【料理】精進料理
【来歴】平安初期に中国から日本へ伝わり、江戸時代には日本各地で栽培されていた。飢饉(ききん)の際に現在の秋田県・比内地方で、なんとか食用にしようと加工されたのが始まりとされる。
江戸時代である1697(元禄10)年に刊行された宮崎安貞の「農業全書」には、ホウキギの栽培に関する記録が残っている。
収穫後干す、煮る、水分を含ませる等の地域に伝わる独特の加工技術により、はじめて食用となる。加工品は通年で流通している。
現在は、大館市の比内地域の沢村や日詰集落の畑で栽培されている。大館市は日本国内唯一のとんぶりの生産地で、2017(平成29)年5月に「地理的表示保護制度(GI)」に登録された。
【時期】9月~11月。4月20日以降に播種され、育苗後に定植される。土寄せや芯止め等の作業を行い9月から収穫が始まる。
マイナビ農業「とんぶりとは? 旬や栽培方法、おいしく食べるレシピを解説【日本伝統野菜推進協会監修】」
仁井田大根(にいだだいこん)
【生産地】秋田市
【特徴】生育が遅く、硬いが、他のだいこんにない歯切れと強い風味がある。
【食味】緻密な肉質、独自の歯切れと強い風味がある。
【料理】漬物、たくあん用に作付けされてきた。秋田県特産の「いぶりがっこ」などの干し大根用として長く用いられてきた。
【来歴】秋田市の台所とも呼ばれた古くからの野菜産地である仁井田地区で栽培されてきたダイコン。生産者の高齢化などによって栽培が激減している。秋田県農業試験場で開発された「秋田いぶりこまち」の親としても用いられている。
【時期】10月~11月
仁井田菜(にいだな)
【生産地】秋田市
【特徴】越冬性の高いツケナの一種。雪の下で蓄えた養分で雪融けと同時に一気に生長する。
【食味】わずかに苦みを持つ味の濃い青菜。
【料理】お浸しや炒め物などに向く。
【来歴】秋田市近郊の仁井田地域で昔から栽培されてきた。
【時期】2月~4月。9月初旬に播種。越冬させ、再度、成長してくる5月以降に収穫。春一番に収穫できる野菜として栽培されている。
仁賀保秋スイカ(にかほあきすいか)
【生産地】にかほ市
【特徴】一般的なスイカに比べ、果皮の色が薄く、縞も薄い。形状は丸いが、ウリのように長く伸びるものもある。
【食味】みずみずしい食感とさっぱりとした糖度が特徴
【料理】生食
【来歴】お盆過ぎから、9月中旬の稲刈りが始まる頃まで収穫される。農作業の合間に喉を潤すのに適するとして好まれ、栽培が継続されてきた。
【時期】8月~9月
沼山だいこん(ぬまやまだいこん)
【生産地】横手市沼山地区
【特徴】細身。通常の大根よりも密度が2倍で肉質が硬く締まっている。青首の部分の緑色の範囲が広く色がとても濃い。
【食味】味が極めて濃厚。おろすと辛味が際立つ。熱を加えるとホクホクとした食感になる。
【料理】薬味、秋田名物「いぶりがっこ」に最適な大根とされる。
【来歴】栽培の手間がかかることで生産者が減り、さらに集落の高齢化もあって2004年に一度は途絶えてしまいました。2018年から3人の生産者が一度途絶えた種の目を覚まし、沼山大根の復活に取り組んでいます。
【時期】10月~11月
ひろっこ(ひろっこ)
【生産地】湯沢市・県内全域
【特徴】アサツキの若芽。色や形状は地域によって異なり、陽に当てて青くしたものもあるが、秋田では、黄白色でより白っぽく、曲がっている細身のものが好まれる。1m以上の雪の下から掘り出される。
【食味】独特の強い辛味がある。加熱すると甘味が出て美味しい。
【料理】和え物、汁物、サラダなど
【来歴】もともとは自生のアサツキ。北海道や東北地方で広く自生し、山形や岩手、福島でも食されている。
古くから食されてきたが、秋田で「ひろっこ」が栽培されるようになったのは、大正時代からとされる。旧:須川村(湯沢市)の田畑集落の佐藤兵吉氏が種球を入手し、自家用に栽培を始めたとされる。やがて、相川地域全体に広がり、湯沢市や秋田市への行商でも販売されるようになり、「湯沢ひろっこ」という特産物になった。(1987年農業秋田より)
1960~1961(昭和35~36)年頃に本格的な出荷が始まり、1975(昭和50)年代には農協を通じた出荷も開始された。品種は、秋田系在来、山形系、福島系などから極早生系、早生系、中生系、晩生系の4つを使い分けて出荷された。
【時期】12月~4月
松館しぼり大根(まつだてしぼりだいこん)
【生産地】鹿角市
【特徴】水分が少なく肉質が密でおろし汁の辛み成分(イソチアシアネート)が多く、日本一辛いダイコンと言われている。辛味に加え、熟成すると甘味も増す。
【食味】しぼり汁として使う。
【料理】おろして絞った白濁の汁を蕎麦や刺身の薬味に用いる。湯豆腐や肉料理の薬味としても食される。一夜漬けで食べることもある。
【来歴】鹿角市松館集落で百年以上前から栽培されてきた地ダイコン。
【時期】11月~3月。9月初旬には種子、10月中旬から収穫。
三関せり(みつせきせり)
【生産地】湯沢市
【特徴】三関地区の在来種から選抜淘汰され、品種名は改良三関。露地栽培と雪よけのためビニールハウス栽培がある。
【食味】葉や茎が太く、根が白く長いのが特徴。
【料理】セリ焼き、きりたんぽ鍋で食される。秋田の鍋には欠かせないものとなっている。
【来歴】年間を通じて清流水に恵まれている湯沢市三関地区で江戸時代から栽培されている。
【時期】9月~3月。ビニールハウスの場合は9月上旬に植え付けし冬期間に収穫する。
八木にんにく(やぎにんにく)
【生産地】横手市
【特徴】とうだちがなく、植付け適期の幅が広く貯蔵中も出芽しにくい。一般に流通するホワイト種よりも大玉で、外皮が赤身がかっているのが特徴。
【食味】辛みが少なく甘みがあり、香りもマイルド
【料理】結球前に収穫する青にんにく(6月のみ)として生食や漬け物で食す。十分に肥大したものは風味付けとして利用にされる。味噌をつけて丸かじりしたり、葉の部分を刻んで炒め物にするなど。
【来歴】横手市増田町の八木集落に伝わるにんにく。
【時期】6月~10月
湯沢ぎく(ゆざわぎく)
【生産地】湯沢市
【特徴】5月初旬に植え付け。7月20日頃から収穫開始。早生で夏キクの特性を持ちながらも霜が降りるまで出荷できる花付きのよい長期出荷のキク。
【食味】鮮やかな色味と香りの良さが特徴。
【料理】おひたし、和え物、漬物の合わせ、ちらし寿司の飾りなど
【来歴】昭和20年代に在来菊の中から食味の良いものを選抜し、食用菊として定着した。
【時期】7月~10月
横沢曲がりねぎ(よこさわまがりねぎ)
【生産地】大仙市太田横沢地区
【特徴】横沢地区に伝わる在来種。2年かけて栽培される。植え替えの時に寝かせて曲げ、風味を出す。6月頃、苗床に播種し、生育させ、そのまま越冬。翌年5月に本畑に1回目の植え替え。8月に2回めの植え替えを行う。その際に根部を曲げて土を寄せる。
【食味】柔らかく香り成分のアリシンが多く、青ネギ、白ネギもともに食べられる。
【料理】味噌汁、 長ねぎの唐揚げ
【来歴】江戸時代に久保田城主佐竹氏から伝授されたと言い伝えがある。
【時期】10月~11月。10月中旬頃から収穫が行われる。
【参考資料】
「あきた伝統野菜について」
【協会関連記事】
日本の伝統野菜-04.宮城
日本の伝統野菜―06.山形