昭和南海地震から70年を経て土佐の伝統作物が奇跡の復活!-高知県潮江菜を小学生らが東京・伊勢丹でPR
高知県高知市潮江(うしおえ)地区は、高知市中心部の南方一帯の地域で、鏡川の河口右岸付近に位置します。
同地区には古くから「潮江菜」という漬け菜が作られていました。「潮江菜」は非結球のカブの仲間で、水菜や京菜の原種とされている品種で、味わいは濃厚で加熱すると旨みと甘味が増し、土佐の雑煮など汁物の具や漬物に使われてきました。
しかし、今から70年以上前の昭和21(1946)年12月21日に発生した昭和南海地震の被害で栽培が途絶えてしまい、昭和33(1958)年頃には絶滅したとされています。
その「潮江菜」を地元農家の熊澤秀治氏が平成26(2014)年に栽培を復活させました。
栽培復活のきっかけとなったのは、熊沢さんがある人物から潮江菜の種を託されたことによります。
ある人物とは、高知出身の世界的植物学者・牧野富太郎博士のお弟子さんの竹田功さんのご長男。竹田さんは、牧野博士から「高知の在来野菜を調査と保存」を命じられ、潮江菜を含む野菜の種を戦後間もない頃から保存し、竹田さん亡き後はご長男がそれらの種の保存を引き継がれていました。
かねてから「潮江菜」を栽培したいと考えながらも、何の手がかりもなかった熊澤さんと、潮江で種を託す人を探していた竹田さん。地元誌で熊澤さんのことを知った竹田さんが、潮江菜をはじめとする約50種類もの種を熊澤さんに託しました。二人の出会いが「潮江菜」を復活させたのです。
現在は、熊澤さんを中心に地元関係者らが「再び食卓にのぼるように」と販路の拡大に取り組むプロジェクトを進めています。
潮江東小学校(高知市)では、3年前から児童たちが、授業で「潮江菜」の歴史や栽培の様子を学んでいます。2019年2月23日には、同校の6年生の児童8人が、東京の伊勢丹新宿店で販売体験を行いました。8人は、自分たちで考案したPRキャラクター「うしおえ~な」のかぶり物を着けて店頭へに立ち、活動報告やレシピをまとめた手作りチラシをお客さんに配布しながら、潮江菜を使ったおにぎりや卵炒めの試食を勧めるなど、宣伝を体験しました。
熊澤さんは、「潮江菜」をはじめとする牧野博士が残した「牧野野菜」を守っていくために、「Team Makino」を結成。メンバーには、栽培農家7名や集落営農3グループなど農業に携わる人以外にも、野菜ソムリエや行政機関、マスコミに携わる人々などが参加しています。活動は、野菜の選抜と採種、更新した種を採集地とされる地域に帰す活動、地域の学校での食育活動、商品開発など多岐わたり、牧野野菜の存続・普及活動に幅広く取り組まれています。
【参考資料】
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