コロナ禍でピンチの守口大根 ~大和屋守口漬総本家が生産農家を支援~
世界一長い!「守口大根」をご存じでしょうか?
あいちの伝統野菜に認定されている守口大根は、とても細長い大根です。
直径は2~3cmですが、長さは平均1m20~30cmほどになり、長いものでは1m80cm以上におよぶものもあります。
2013年11月23日に愛知県扶桑町で行われた「守口大根ギネスワールドレコーズ™ 町おこしin扶桑町」では、育成者である扶桑町守口大根漬物組合の後藤将司次さんが出品した守口大根が191.7cmを記録し、「世界一長いダイコン」としてギネス世界記録に認定されました。
木曽川流域で育つ守口大根
この細長い守口大根を栽培するには地中に深く生育していける土壌が必要で、水はけがよく適度に砂の混じった柔らかい土質の土地が適しています。
起源は大阪の守口地区での栽培とされていますが、現在は木曽川流域河畔の愛知県丹羽郡扶桑町と対岸の岐阜県各務原市が主な産地となっています。
この地域の良質な砂質大地は守口大根の栽培に非常に適した土壌で、扶桑地区での生産量は全国生産の7割のシェアを占めています。
守口大根は漬物の原料に
守口大根は用途が限られており、「守口漬」という漬物のためだけに生産されています。
「守口漬」は長い守口大根を切らずに、塩漬け、酒粕漬など繰り返し、3年余もの長い年月をかけて漬け込んだ味わい深い尾張・名古屋地区の名産品です。
その「守口漬」には欠かせない守口大根の生産農家は、全国の漬物業者と契約栽培を行い、共同出荷しているため、市場で守口大根が販売されることはありません。あいちの伝統野菜である守口大根は守口漬でしか味わえないのです。
そのため、守口大根の生産量は、毎年、漬物業者と農家が作付け量を相談しながら決めていきます。
コロナ禍、「守口漬」を直撃
ところが、今年は新型コロナウィルス感染拡大防止のための外出自粛や移動制限によって、お中元や手土産などの需要が減り、「守口漬」の消費量も激減してしまいました。
守口大根の来期の作付け量も前年の3割ほどに激減しています。
伝統野菜を守るためには、毎年、安定した作付けを継続していくことが必要です。
どの農家にも言えることですが、高齢化が進んでおり、需要減少をきっかけに生産を止めてしまうことにもつながりかねません。これは、ぜひ、避けたいことです。
守口漬セットで生産農家を応援
この状況を重く見た守口漬業者の一社である「大和屋守口漬総本家」(愛知県名古屋市・代表取締役社長 鈴木昌義氏)は、2020年6月11日~7月10日に「生産者応援 守口漬セット」を販売しました。
このプロジェクトには、当協会アドバイザーの高木先生が代表世話人を務める「あいち在来種保存会」や田中稔先生の「ハタケタナカ」も協力。また、名古屋観光ビューローHPや@FMのラジオの一部でご紹介、サカエ経済新聞でも取り上げられました。
その売上金の一部は、少しでも助けになるよう守口大根の生産農家の支援に当て、7月22日には大和屋守口漬総本家にて愛知と岐阜の組合長に支援金を寄贈、7月29日には鈴木社長自ら生産農家に赴き、支援金を寄贈されました。
守口漬もニューノーマル!?
しっかり漬け込んだ守口漬は、今の時代からすると味が濃いと感じられるかもしれませんが、単なるご飯のお供や酒のおつまみでは収まらない無限の可能性を秘めています。
特に、切り方によって触感が変わるため、さまざまな料理に使うことができます。
たとえば、細かく刻んだ守口漬を出汁巻き卵に入れたり(実際に作ってみたところ、家族に大人気で、お弁当の必携おかずになっています)。
卵かけご飯にチラしたり、マヨネーズを加えてタルタルソース風にしたり、ちらし寿司に加えたり、いなり寿司のご飯に混ぜたり、サラダのトッピングにしたりするなどアレンジは豊富。一つ上の料理にグレードアップできます。
また、残りの酒粕は、他の野菜をつけることもできます。
ご家庭でも新しい食べ方を開発して、新しい守口漬のレシピを楽しんでみてはいかがでしょう?
守口漬を楽しんで、守口大根を守ろう!
生産者応援セットを展開して需要を喚起していますが、コロナ禍で進物や手土産、観光土産の需要が激減した守口漬・守口大根は、まだまだ厳しい状況が続いています。
ぜひ、守口漬を食べて、「あいちの伝統野菜」である守口大根を応援してください!
【参考】
愛知県「世界一長い大根に輝いた「守口大根」と「守口漬」をPR!」
【取材協力】
大和屋守口漬総本家
あいち在来種保存会