日本の伝統野菜―福島

1.地域の特性

【地理】

東北地方の南部(南東北)に位置する福島県の面積は、13,783.90km2で、北海道、岩手県に次ぐ全国3位です。

福島県は、東部には阿武隈高地(あぶくまこうち)、中央部は奥羽山脈(おううさんみゃく)が南北に延び、北部から西部には飯豊連峰(いいでれんぽう)・越後山脈(えちごさんみゃく)の山岳地帯が連なっています。これらの山脈や山地によって、地域の地形・気候・交通・歴史などに大きな違いがあり、「会津」「中通り」「浜通り」の三つの地域に分けられています。

「会津」は福島県西部に位置し、越後山脈と奥羽山脈とに挟まれた日本海側内陸の会津盆地を中心とした地域で、県の4割弱の面積を占め、14%あまりの人口を擁します。「中通り」は、奥羽山脈と阿武隈高地とに挟まれた太平洋側内陸にあり、県中央部を南から北へ流れる阿武隈川の地溝帯に連なる盆地群から構成され、4割弱の面積に、6割強の人口を擁します。県東部の沿岸平野部である「浜通り」は、阿武隈高地と太平洋とに挟まれた太平洋側沿岸にあり、2割強の面積に1/4あまりの人口を擁しています。

平成30年(2018)の時点で県の人口は約186万人で、都道府県別の人口は全国で21位です。

 

【気候】

福島県は東西に広く、さらに海岸や山地の地形装飾を受け、標高差も大きいため同じ県内であっても気候差が大きいのが特徴です。

会津地方 は、日本海側気候となり雪の多い地域となっており、全域が豪雪地帯(半数以上が特別豪雪地帯)です。また内陸性の気候でもあり寒さは福島県の中でも厳しく、標高の高い地域は−20°C以下にまで下がることもあり、亜寒帯(冷帯)湿潤気候に属します。会津盆地は東北地方の太平洋沿岸、内陸部に冷害をもたらすやませの影響を受けることが少なく、フェーン現象により高温となることがあります。

浜通り地方 は、太平洋沿岸部は暖流(黒潮)の影響により夏は涼しく、冬は暖かい海洋性気候です。特にいわき市の小名浜周辺は東北で最も温暖な地域であり(南関東平野部の気候に近い)、東北では最も降雪量の少ない地域です。

中通り地方は、内陸性気候の特徴が混じった太平洋側気候ですが、阿武隈川流域の西側は冬型の気圧配置が強まると日本海側気候の影響を受け降雪することが多く、福島市の一部などが豪雪地帯に指定されています。

このほか、阿武隈高地は標高が高い内陸性気候で、日照時間も多いために放射冷却が効きやすく、冬は氷点下 10 °C を下回ることもありますが、太平洋側気候のために積雪は少ないのが特徴です。夏季は冷害を受けることもあるほど冷涼。

 

【農業の特徴】

福島県の主要農産物は、福島盆地のモモ、ナシ、あんぽ柿、いわき市のイチゴ、いわきイチジク、会津身不知柿などの果物、会津盆地や郡山盆地他を中心とした水稲、さやいんげんやきゅうりなどの野菜類です。なかでも福島盆地の桃は、全国有数の生産量を誇りながらも皇室・宮家への献上桃として指定されているなど量・質ともに高レベルなことでも知られています。

また、会津産のコシヒカリは、新潟県魚沼産ブランドと同様の高い評価を得ています。

主要水産物 では、いわき市のカツオ、目光、相馬市のホッキ貝、アサリ、海苔、浪江町、旧鹿島町の鮭、県内各所のニジマス、郡山市の養殖鯉などがあります。主要畜産品は旧都路村、葛尾村、飯舘村の牛肉など。

 

2.福島の伝統野菜

福島県の伝統野菜は、福島県が「主な伝統野菜」として公表している「ふくしまの伝統野菜」2品種、「会津伝統野菜」5品種、「いわき伝統野菜」4品種、「岩代伝統野菜」3品種の計14品種を紹介しますが、この他にも「昔やさい」として各地域で伝承されている地野菜が数多くあります。

【ふくしまの伝統野菜】

❏阿久津曲がりねぎ(あくつまがりねぎ)

❏信夫冬菜(しのぶふゆな)

【会津伝統野菜】

会津地方で古くから親しまれ栽培されてきた会津古来の野菜。厳しい会津の気候、風土、肥よくな大地の恩恵を受けている。

❏会津丸茄子(あいづまるなす)

❏会津小菊南瓜(あいづこぎくかぼちゃ)

❏余蒔胡瓜(よどききゅうり)

❏慶徳玉葱(けいとくたまねぎ)

❏立川牛蒡(たちかわごぼう)

【いわき伝統野菜】

いわき市で昔からつくられてきた野菜。約70種類あるが、継承が困難になっている。昨年度より学校給食でも使用されている。

❏いわきとっくり芋(いわきとっくりいも)

❏おくいも(おくいも)

❏大久じゅうねん(おおひさじゅうねん)

❏小白井きゅうり(おじろいきゅうり)

【岩代伝統野菜】

二本松市岩代地区で50年以上受け継がれてきた野菜。7種類あるが、震災後は栽培農家が幻想している。

❏岩代地南瓜(いわしろじかぼちゃ)

❏岩代五葉黒豆(いわしろごようくろまめ)

❏岩代紅豆(いわしろべにまめ)

 

❏阿久津曲がりねぎ(あくつまがりねぎ)

【生産地】福島県郡山市阿久津地区

【形状】えり首部のしまりはやや粗く、葉が扇状に広がる。越冬中は地上部が枯れるが、「源吾」に比較して枯れ上がりの程度は少ないとされる。

【食味】葉稍部、葉身部ともに柔らかく、食味が優れる。総遊離アミノ酸量が現行の1本ネギと比較して1.5~2倍程度あり、甘味も強い。

【来歴】明治30年頃(約110年前)に同地区の武田鹿太郎氏が富山の薬行商人から譲り受けた種子を栽培したのが始まりと言われ、その後、選抜改良が進められてきた。平成17年度に「阿久津曲がりネギ保存会」を設立し種子の保存に向けた取り組みを行っている。郡山市内の有限会社吉田農園が種子を販売。

【時期】11月~2月

阿久津曲がりねぎ

❏信夫冬菜(しのぶふゆな)

【生産地】福島県福島市渡利地区

【形状】草姿、外観は小松菜、葉形はへら形で葉縁に細かい切れ込み、鋸歯が見られる。葉柄は小松菜に比べ細いが、やや厚みがある。

【食味】苦味や食感がなく、甘くてまろやか

【来歴】福島市渡利地区から岡部地区にかけて秋冬の桑園間作として栽培されてきたものを、昭和初期に当時の郡農会が「信夫菜」として命名したとされる。主に自家用として中通り北部、中部で広く栽培されている。種子は福島市の(有)今川屋種苗店で販売。

【時期】12月中旬~3月

信夫冬菜

❏会津丸茄子(あいづまるなす)

【生産地】福島県会津若松市

【形状】草姿は半開性であり、草丈はあまり高くならない。葉は、倒卵形で鋸歯はあまり発達しないのが大きな特徴。 果実は光沢のあるやや巾着型に近い丸形で、直径8~10cmで収穫される。高温時期に色あせしにくく、ヘタ(蔕)で隠れた果実の表面は全部が白くならならず部分的に着色する。

【食味】果皮はやや硬く煮食、焼食用に適する。

【来歴】福島県農業誌によると、昭和初期頃から会津若松市の神指及び荒井舘の内地区で栽培が定着し、早生の丸ナスとして重用されたとある。会津若松市を中心に主に地元市場への出荷用、自家用として栽培されている。種子は菊地種苗から「会陽丸」の品種名で販売されている。

【時期】7月上旬~9月中旬

会津丸茄子

❏会津小菊南瓜(あいづこぎくかぼちゃ)

【生産地】福島県会津若松市

【形状】未熟果は、暗緑色の地色に明確な虎斑がある。 成熟果の果面は平滑でうすい赤褐色となり表面にロウ質物が多い。 1果重は1以下と小型であり、果実内部は橙紅色で皮に近い部分に若干緑色が残る。縦に10条の溝があり、それぞれに浅い縦溝があり一見すると20条に見える。草勢はやや弱く、葉にやや大きい白斑が現れる。

【食味】肉質は粘質で、西洋カボチャとは食感が異なる。煮物がおすすめ。

【来歴】日本カボチャに属し、350年前から会津若松市の門田町飯寺地区を中心に飯寺(にいでら)カボチャとして栽培されてきたとの記録もある。 品質の優れる極早生品種として一時は県外でも広く作られていたが、西洋カボチャの普及とともにほとんど栽培は無くなった。

【時期】8月中旬~9月上旬

会津小菊南瓜

❏余蒔胡瓜(よどききゅうり)

【生産地】福島県会津若松市

【形状】見た目はトゲトゲしくゴーヤか瓜に似ているが、食部はとても柔らかく濃厚な味が特徴。

【食味】青臭さが少なく、きゅうりとズッキーニの中間のよう。味噌を漬けて丸かじりするのがおすすめ。生のままや炒めたりして食す。

【来歴】1940年代半ばにはすでに栽培が途絶えていたものの、2008年に福島県農業総合センターがジーンバンクから種を取得し、栽培実験を開始。その後スローフード連絡協議会が種を譲り受けて栽培が復活した。現在、10件の農家が栽培を行っている。

【時期】7月中旬~9月中旬

❏慶徳玉葱(けいとくたまねぎ)

【生産地】福島県会津地方

【形状】熟期は中生で、横径に対し縦径がやや大きい中甲高の球型であり、収穫時の皮色は銅黄色である。

【食味】柔らかくて甘味が強いのが特徴

【来歴】喜多方市慶徳地区で採種され、会津地方で主に栽培されてきたタマネギ。福島県農業誌によると、昭和初期頃会津地方で採種されていた雑ぱくな‘泉州黄’から慶徳農協(当時)の山内衛技師らの努力により改良選抜された品種であり、早期抽台性の淘汰と貯蔵性の向上を目標に改良を進めたものである。当時、肉質が締まり貯蔵性に優れ販売用に適した品種であった。最近の品種と比較すると、貯蔵中の萌芽は早い。昭和39年には農林大臣賞を受賞している。

【時期】7月中旬~9月中旬

慶徳玉ねぎ

❏立川牛蒡(たちかわごぼう)

【生産地】福島県会津若松市会津坂下町立川集落及び塩川町周辺

【形状】鋸歯が良く発達しアザミ葉となる。花色は赤(赤紫)で葉柄は赤軸である。根の基部から根先に向かって徐々に細くなる形状であり、外皮は褐色である。

【食味】ス入りが少なく、特有の香りとシャキッとした歯ごたえがあります。

【来歴】日本に残っている唯一のアザミ葉の品種で「アザミゴボウ」とも呼ばれる。来歴は不明だが、明治末には既にかなりの広く栽培され、昭和初期には東京や大阪へ出荷されていたとのこと。現在、アザミ葉の品種はここ以外では栽培されていないため、本種は極めて珍しいものと言える。

栽培は容易で、肉質および香りが良く、ス入りしにくく、収穫が遅れても必要以上に太らないの

で在圃貯蔵性は高いが、他の品種より収量が少なく連作できないため栽培が減少。現在、生産農家は10軒ほど。

【時期】10月上旬~12月中旬

立川牛蒡

❏いわきとっくり芋(いわきとっくりいも)

【生産地】福島県いわき市平下神谷赤沼地区

【形状】とっくり芋の理想的な形は、ふっくらとした丸みを帯びた徳利型

【食味】粘性の弱い長芋と粘性の強い自然薯との中間のほどよい粘りをもっていて、クセやアクも少なく食べやすいのが特徴

【来歴】昭和 30 年代、平下神谷赤沼地区の篤農家の一人が酒徳利のような面白い形の山芋(自然薯)を目にしたのがきっかけ。面白い形を残して量産できないものかと独自に改良を重ね、形も良く栽培もしやすい現在の「赤沼とっくり芋」が誕生した。

【時期】11月~

いわきとっくり芋

❏おくいも(おくいも)

【生産地】福島県いわき市山玉町

【形状】見た目は普通のじゃがいもと同じだが大ぶり。晩生(おくて)のじゃがいもで、手がかからず、病気に強く、収穫後に目が出にくく長期保存に向いているため重宝され長く食べられてきた。

【食味】でんぷん質が多く、煮くずれしにくいのが特徴

【来歴】

【時期】7月下旬~

❏大久じゅうねん(おおひさじゅうねん)

【生産地】福島県いわき市三和町、田人町、大久町大久地区が産地。

【形状】じゅうねんの品種には、一般に白種と黒種があり、黒種は含油量が白種より2〜3割ほど多い。白種も黒種もじゅうねんを煎ってすりつぶし、砂糖、しょう油、味噌などで「じゅうねん味噌」を作り、和え物(よごし)やめん類のつけ汁に利用したり、砂糖としょう油で甘く味付けし、餅とからめた「じゅうねん餅」などにして食す。

【食味】ごま同様、実をすって和え衣にするほか、みそに加えても美味。

【来歴】「じゅうねん」は「エゴマ」の地域愛称名(方言)。福島県内におけるエゴマの栽培量は国内でも有数。収穫した種子は「10年経っても蒔けば芽を出す」といういわれから、「じゅうねん」という愛称で親しまれている。日本では胡麻よりも古くから利用され、白種と黒種と2つの品種があるが、市内での白じゅうねん栽培は明治時代より前からといわれ、現在でも、各農家で代々自家採種して栽培されている。

【時期】11月

大久じゅうねん

❏小白井きゅうり(おじろいきゅうり)

【生産地】福島県いわき市川前町小白井地区

【形状】華南型、黒イボの半白きゅうり。収穫適期を迎えた若い果実の長さは約13cm、太さ3cmほど(一般的な太さ)ある。

【食味】皮がやわらかく、肉質はシャキッとして歯切れがいいのが特徴。香りもよく、サラダなどの生食や、塩水で漬け込む伝統食「どぶ漬け」などに使われる。太く育ったものは皮をむき、タネを除いて、炒め物やみそ汁など、加熱して食す。

【来歴】来歴や品種は明らかではない。隣接町村の川内村、葛尾村、滝根町などでも栽培されていたようで、名称に地名があることから、川前町小白井地区では、明治時代から地元で親しまれてきたものだと考えられている。しかし次第に需要が減り、自家採種をして栽培する農家もわずかとなり、現在では自家消費分のみ栽培されている。

【時期】7月~8月

小白井きゅうり

❏岩代地南瓜(いわしろじかぼちゃ)

【生産地】福島県二本松市岩代地区(旧:岩代町小浜下長新地区)

【形状】一本のツルに色や形の違う実がなる。

【食味】一般の西洋かぼちゃに比べ、ビタミンCやカリウム等を2倍含有。煮崩れせず、甘さ控えめのサラリとした上品な食感。

【来歴】

【時期】10月~

❏岩代五葉黒豆(いわしろごようくろまめ)

【生産地】福島県二本松市岩代地区(旧:岩代町小浜下長新地区)

【形状】一般の黒豆は3枚葉だが、5枚葉であることからその名がついた。

【食味】熟したゆで豆は栗のような食感。

【来歴】

【時期】11月

❏岩代紅豆(いわしろべにまめ)

【生産地】福島県二本松市岩代地区(旧:岩代町小浜下長新地区)

【形状】「赤豆」とも呼ばれる赤い豆

【食味】豆ごはんにするときれいな桜色に炊きあがり、食感も楽しめる。

【来歴】

【時期】11月~

 

引用・参考資料 ふくしまの伝統野菜

 

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