日本の伝統野菜-04.宮城

1.地域の特性

【地理】

東北地方の中部に位置する宮城県の面積は7,282.22km2です。西には奥羽山脈、東には太平洋があり、北上川、嗚瀬川、名取川、阿武隈川などの河川が流れる仙台平野が広がっています。

仙台平野は太平洋側に松島湾、リアス式海岸を有しているため水産物に恵まれています。また、東北地方に位置しているものの海から風を受けるため、それほど寒くなく、積雪が少ないため農産物の栽培に被害が少なく、米や野菜類の栽培に適しています。

仙台平野の東西方向に延びる松島丘陵によって北側を仙北平野、南側を仙南平野とする慣例があり、生活文化や仙台藩以前の歴史も南北に分かれています。

2018年の時点で県の人口は約231万人で、東北でもっとも人口の多い県です。県庁所在地の仙台市で県人口の45%を占めています。

【気候】

宮城県の気候は太平洋側気候に分類されます。全般に夏期は酷暑が少なく、冬期でも降雪量は少なめ比較的温暖な気候で東北地方の中では過ごしやすい地域です。

県北部の太平洋沿岸部は、緯度の割には温暖で太平洋側気候の特徴がよく現れていますが、南部では関東に近い気候です。また、東側は海洋性気候、西部は内陸性気候の特徴を示し、さらに西部山間部(大崎市旧鳴子町は特別豪雪地帯)は冬期に豪雪となり日本海側気候の特徴がみられます。

東北地方の太平洋側で、春から夏にかけて吹く冷たく湿った東よりの風を「やませ」といいます。やませが吹くと沿岸部を中心に気温が下がり、霧が発生しやすくなります。これによって、夏でも気温が低下し、日照時間が減少するので、農林水産物の生育や漁獲に悪影響を及ぼします。

【農業の特徴】

宮城県は、肥沃な沖積平野が広がる米どころで、平野部では「ササニシキ」や「ひとめぼれ」といったブランド米の生産地です。これらに加え,「みやぎ米」のブランド力を強化するために、新品種「だて正夢」や玄米食専用品種「金のいぶき」の生産拡大に取り組んでいます。

南部の沿岸地域では、海洋性気候のため温暖であり、奥羽山脈・阿武隈高地(亘理丘陵)に雪雲が遮られて冬季の晴天率が高いことを利用してイチゴなどのハウス栽培が行われ、松島丘陵(特に利府町)では梨の栽培が盛んです。鳴子町や蔵王町などの高冷地ではブルーベリーの栽培も行われています。また、少量ですが日本で唯一、木綿の栽培が行われています。

仙台市近郊の中田、七北田の野菜類の栽培は、城下町へ出荷するためのもので、現在の仙台はくさい、仙台長なす、せり、れんこん、長きゅうり、ねぎ、だいこんなどは、江戸時代から栽培が続けられてきたものです。地域に受け継がれている在来種の野菜は多く残っており、宮城県はこれらの在来種の野菜を伝統野菜として宮城県の特産物としての事業化を進めています。

 

2.宮城県の伝統野菜

宮城県の伝統野菜は、宮城県としての認定はないものの、「仙台市伝統野菜」「登米市伝統野菜」という形で市町村で認定されていたり、宮城県農政部園芸課の「みやぎの野菜」、みやぎ在来作物研究会による「宮城県の伝統野菜」としてリストアップされています。ここでは、「仙台市伝統野菜」と「登米市伝統野菜」をはじめとする22品種を紹介します。

【仙台市の伝統野菜】

余目ねぎ (あまるめねぎ)   仙台市

仙台長なす(せんだいながなす)仙台市

仙台白菜(せんだいはくさい)仙台市

仙台芭蕉菜(せんだいばしょうな)   仙台市

仙台雪菜(せんだいゆきな)  仙台市

からとり芋(からとりいも)  仙台市

【登米市の伝統野菜】

荒町菜(あらまちな)

石森の垣まめ(いしもりのかきまめ)

一本太ねぎ(いっぽんふとねぎ)絶滅

観音寺せり(かんのんじせり)

黒沼のつぼみ菜・からし菜(くろぬまのつぼみな・からしな)

新道のかき菜(しんどうのかきな)

長下田うり(なげたうり)

長下田の小豆(なげたのあずき)

むかし垣まめ(むかしかきまめ)

もちとみぎ(もちとみぎ)

横山のにら(よこやまのにら)

よめごささげ(よめごささげ)

【その他地域】

鬼頭菜(おにこうべな)(鳴子町鬼頭地区)

上伊場野芋(かみいばのいも)(三本木町上伊場野地区)

小瀬菜大根(こぜなだいこん)(小野田町小瀬地区)

ちょっぺ茄子(ちょっぺなす)(白石市、蔵王町)

余目ねぎ (あまるめねぎ)

【生産地】宮城県仙台市、大崎市

【形状】土のかかった部分は白く、軟白の中ほどから大きく曲がる。

【食味】軟白部は軟らかく、甘味をもつ。

【来歴】明治42年(1909)に、余目の住人の永野一氏がネギの優良品穐の導入と育成、さらに軟白技術の改良を試みている過程で、「立ちネギ」を横倒しにしてネギの上から土をかける「やとい」という技術によって、「曲がりネギ」をつくり出した。「やとい」によって土のかかった部分は白くなる。仙台市岩切の余目地区が発祥の地で、余目で栽培している曲がりネギは「余目(よめ)ねぎ」ともいわれる。

横倒しにして栽培するため、本来は真直ぐに立ちあがろうとする性質があるので、軟白の中ほどから大きく曲がる。このような栽培方法により「曲がりネギ」が誕生した。湾曲した軟自部分の外側にしわができるのが余目ねぎの特徴でもある。余目地区は仙台北部の七北田川流域に位置し、古くからの野菜の産地である。しかし、周辺が水田で地下水位が高く、立ちネギ栽培を行う軟白ネギの栽培が難しかったことから、横倒しの栽培という方法によって「曲がりネギ」が誕生した。

【収穫時期】秋~冬に収穫。4月に直立に仮植を行い、8月の定植までに生体の生長を完成させておく。あまり高くない畝をつくり、水平に近い角度にネギを寝かせて植え、上をかける作業をし、秋から冬にかけて収穫する。

仙台長なす(せんだいながなす)

【生産地】宮城県仙台市、人崎市、名取市

【形状】果実は細長で先が尖っているのが特徴。果皮の色は黒紫色である。へたは小型で、小さな棘がわずかに存在している。へたは着色していない。

【食味】漬物、煮物、天ぷら、田楽などにして食す。仙台長なす漬(当座漬け)は、自家用にもつくるが、食品メーカーと契約栽培して仙台の土産品としても市販されている。一夜漬けには果長8~10cmほどのものを使う。

【来歴】仙台なすの由来は明らかではない。仙台藩主の伊達政宗が、文禄の役(1591)に出陣したとき、藩士の1人が博多から原種をもち帰ったという説がある。「仙台長なす」の名が記録として残されるようになったのは明治中期以降であるといわれている。明治30年代にはすでに、仙台付近では仙台長なすの栽培が行われていたようである。明治40年(1907)に宮城県農業試験場でナスの品質比較試験が行われ、仙台長なすが宮城県の気候風土に適した品種として認められている。

【時期】3月上旬に播種し、5月下旬に定植する。

仙台はくさい(せんだいはくさい)

【生産地】宮城県仙台市

【形状】頭部が浅く、外側の葉は円形で、内側の葉は純白。重さは2.5kgに達する。

【食味】肉厚でやわらかく、甘みが強い。霜が降りる頃になるとさらに甘みが増し、漬物にすると美味。シャキッとした歯ごたえで、生でサラダや和え物にしてもおいしくいただける。その他、煮物、炒め物、鍋の具材にも。

【来歴】日本のハクサイは、日清戦争(明治27~28年)を契機として中国の山東半島から種子を導入したのが始まりであるといわれている。宮城県には明治28乍(1895)に導入され、松島湾内の馬放島で栽培し、品種改良した「松島はくさい」が育成された。その後、この品種をもとに改良され「松島純1号」「松島純2号」などが「仙台はくさい」の名で日本各地に広がった。品種には「黄ごころ90」「松島純2号」がある。

【収穫時期】播種8月下句、収穫11月下旬。最近は、季節や栽培法に対応できる品種も開発されている。

仙台芭蕉菜(せんだいばしょうな)

【生産地】宮城県仙台市

【形状】葉の色はやや淡く、葉の中肋が長く、葉のシワは少ない。葉が大きく、60~80㎝にも育つ漬け菜の仲間。葉の形が芭蕉に似ていることから芭蕉菜の名がある。

【食味】仙台芭蕉菜の漬物には臭みがあるため、現在は漬物用としては自家用に県北部でわずかに栽培されているだけである。熱湯で湯通ししてから漬けるとやわらかく漬かり、その漬物でごはんを巻いたり、炒め物、鍋にも用いる。

【来歴】江戸時代から明治時代にかけては、漬物用の菜として栽培されていた。耐寒性の強い漬け菜類の一種で、葉の形が芭蕉に似ていることからこの名前がついたといわれている。東北から北関東にかけて芭蕉菜とよばれているツケナの種類であり、分類学的にはナタネ類から分化したものと考えられている。福島や岩手などで栽培されている芭蕉菜はタカナの仲間である。ほかの芭蕉菜と区別するために「仙台芭蕉菜」とよんでいる。

【収穫時期】8月下旬に播種し、間引きをしながら冬に収穫する。

仙台雪菜(せんだいゆきな)

【生産地】宮城県仙台市

【形状】葉の肉質は厚く、濃緑、丸型。葉柄は長い。

【食味】雪に数回あたったら収穫すると甘味とほろ苫味のバランスがよく、独特の風味がある。お浸し、煮浸し、みそ汁の具、天ぷら、中華風炒め料理にも。春にとうだちしたつぼみも美味。

【来歴】「雪菜」は、雪の中で育つ軟白ハクサイであることから付けられた名である。

【時期】雪が降り積もった雪の下で雪菜にとう(花茎)が立ってから収穫する。ツケナとして利用される。10月上旬に播種し、12月下旬~翌年1月に収穫する。

からとりいも(からとりいも)

【生産地】宮城県仙台市

【形状】仙台地方の葉柄は赤茎である。葉柄は皮をむいて乾燥させて保存する。

【食味】乾燥させたものがよく用いられているが、生のものをゆでてみそ汁の具や煮物、和え物にしても美味。味噌汁の具、煮物に利用する。また、正月料理や収穫祭に用いられる。

【来歴】サトイモの葉柄(ようへい)は「ずいき」、「あかがら」といわれる。この葉柄をとるためのさといもが「からとりいも」と呼ばれている。他の産地では、葉柄が緑色の青茎が広く栽培されているが、仙台地方では、赤茎のものが栽培され、正月料理や収穫祭などに用いられてきた。

【収穫時期】

荒町菜(あらまちな)

【生産地】宮城県登米市登米町荒町地区

【形状】つぼみ菜に似ている。香りがある。

【食味】甘くてほろ苦い。茎の部分がとくにおいしいとされる。おひたしにして食す。その他、ごま和えや漬物。

【来歴】来歴は不明だが、少なくとも70年以上前からつくられている。登米は宿場町で北上川の水運が栄えていたため、日本のどこからか、登米を行き交う人がこの地に持ってきたと思われる。多い時では十軒で栽培していたようだが、現在は七軒となっている。

【収穫時期】3月下旬~4月

石森の垣まめ(いしもりのかきまめ)

【生産地】宮城県登米市中田町石森桑代

【形状】スナップエンドウに似ている。紫のきれいな花が咲く。

【食味】風味がとても強く、個性的な味。味噌汁に入れて食す。

【来歴】現在は、中田町石森桑代の佐藤家のみで栽培。その年初めて収穫した石森かぎまめは、畑から比較的大きめなジャガイモを採り、あぶらげなどと一緒に炊く変わりご飯を炊きます。佐藤家ではこれを「いもっこごはん」と呼んでおり、一年に一回、最初の収穫時にきまって食べているそう。

【収穫時期】6月

一本太ねぎ(いっぽんふとねぎ)絶滅

【生産地】宮城県登米市南方町戸根屋敷地区

【形状】下仁田ねぎのように太さに加え、長さもあるのが特徴。

【食味】味が濃く、食べると甘みが広がるが、辛みもあった。

【来歴】一本太ねぎのルーツは不明だが、戦前から作られていたと思われる。集落の多くの家で栽培されていた時期もあったとのこと。数年前までは作付していたものの、今はやめてしまい種が途絶えてしまっている。

【収穫時期】現在は栽培されていない。

観音寺せり(かんのんじせり)

【生産地】宮城県登米市迫町北方の観音寺(真言宗海岸山観音寺のあった)地区

【形状】「根ゼリ」は、根っこの部分まで食べることが出来るのが特徴で、正月の雑煮には無くてはならない食材。「葉ゼリ」は60から70㎝もなる長さと太くて柔らかい葉柄が特徴。

【食味】井戸の水で栽培することで独特の香りがあり、しゃきしゃきした食感がうまれる。味噌汁や鍋に入れると、独特の香りにより風味がよく出る。おひたしにしても柔らかい食感と香りのよさが際立ちます。

【来歴】弘法大師が諸国を行脚している途中にこの地に立ち寄った際、井戸が無く水に不便なところであったにもかかわらず、住民が水を飲ませてくれたことに感謝し、お礼として井戸を授け、その弘法水で薬草である「セリ」を栽培するよう話されたことが始まりといわれている。他の地区でこの「セリ」の栽培を試みてもうまく生長せず、弘法水を利用するという神秘的な由来より《幻のセリ》とも言われている。

【収穫時期】5月上旬葉ゼリ、12月下旬根ゼリ

黒沼のつぼみ菜・からし菜(くろぬまのつぼみな・からしな)

【生産地】宮城県登米市中田町宝江黒沼

【形状】大根の葉に似た形のアブラナ科の葉物野菜

【食味】つぼみは柔らかく、こがらいのが特徴。漬物やおひたしにして食す。

【来歴】中田町宝江黒沼の住民が東和町嵯峨立から嫁ぐ際に持参した、つぼみ菜とからし菜の種。65年以上栽培し続けられているが、交雑した可能性もあり、新たなつぼみ菜・からし菜になっている可能性がある。

【収穫時期】3月頃

新道のかき菜(しんどうのかきな)絶滅

【生産地】宮城県登米市石越町新道地区

【形状】アブラナ科の一種で鮮やかな緑色

【食味】苦味のある味が特徴。おひたしにして食す。

【来歴】かつては石越の直売所にも少量ですが出荷していたが、現在は一軒のみの栽培。掻いて摘むので「かき菜」と呼んでいるそう。

【収穫時期】4月~5月中旬 現在は栽培されていない。

長下田うり(なげたうり)

【生産地】宮城県登米市石越町北郷長下田地区

【形状】全国にも珍しい下ふくれの形をした白瓜。長さ22㎝~23㎝ほど、直径は下部の一番太いところで8㎝ほどある。色は淡白でやや緑色を帯びている。

【食味】甘みがなく、生食には向かないが、クセのない味で、漬物に活用されたものと考えられる。

【来歴】岩手県に伝わってきた「なしうり」や「まうり」が自家採種によってこの地に根付いたのではないかと言われている。昭和20年代前半までは地域の数軒で栽培されていたようだが、現在は、一軒のみ栽培。一つの種から10個以上が収穫できるなど驚くほど多収。地這で育成。

【収穫時期】8月中旬

長下田の小豆(なげたのあずき)絶滅

【生産地】宮城県登米市石越町北郷長下田地区

【形状】

【食味】収穫した小豆はあんこの原料となっている

【来歴】

【収穫時期】現在は栽培されていない

むかし垣まめ(むかしかきまめ)

【生産地】宮城県登米市米山町米岡地区

【形状】スナップエンドウに似ているが、紫のきれいな花を咲かせる

【食味】味が濃い。色が黒く、味噌汁に入れると味噌汁自体も黒くなる。煮物などにするときは皮つきで食べる

【来歴】同地区で古くから栽培されてきたようだが、現在は二軒が作付けするのみ。

【収穫時期】4月~5月

もちとみぎ(もちとみぎ)休耕

【生産地】宮城県登米市

【形状】最大の特徴は黒色、紺色をしている実の色

【食味】スイートコーン種と比較すると、甘みの面では格段に劣るが、触感がもちもちとしており、噛みごたえがあり、腹もちがよい。トウモロコシと同様にゆでたり、蒸して食す。

【来歴】昭和50年代あたりまでは、市内だけでなく、県内で広く栽培されており、かつては、このもちとみぎが農家の長屋(納屋)の軒先に干してある景色は農村の一般的な姿だったが、昭和40年代に甘みの強いスイートコーン種が農村に普及したため、徐々に作付が減り、現在では地種によりとうもろこしを栽培する農家はほとんどいなくなった。

【収穫時期】8月頃 現在は栽培されていない 令和元年まで栽培 現在はお休み

横山のにら(よこやまのにら)

【生産地】宮城県登米市津山町横山地区

【形状】一般のニラよりも幅が細いのが特徴

【食味】一般のニラと比べ甘味が強め。おひたしや味噌汁に入れて食すが、普通のニラとは全然違う味わいが楽しめる。

【来歴】由来は不明だが、同地区で古くから栽培されている。

【収穫時期】4月下旬~10月頃

よめごささげ(よめごささげ)

【生産地】宮城県登米市豊里町二ツ屋地区

【形状】赤色の豆

【食味】

【来歴】自家採種で作付している豆。約50年前に分家する際に実家から分けてもらったもので、それ以前からこの地区で生産されていたものと思われる。

【収穫時期】8月末

鬼首菜(おにこうべな)

【生産地】大崎市鳴子町の鬼首地区

【形状】葉の付け根や根、株が赤色に発色する紫茎系(赤茎系)と、アントシアンが発色しない緑茎系(白茎系)がある。

【食味】鬼首の軍沢地区の標高300m~350mの風土が独特の風味をもつ鬼首菜をつくりあげているといわれる。塩漬け、ふすべ漬けなどで、茎・葉・根などすべての部位を利用する。地元では、収穫後すぐに湯通しして塩漬けし、翌朝の朝食の惣菜とする。霜にあたると、よりいっそうの甘味が生じる。

【来歴】自家用として栽培しているツケナの一種で、カブナの仲間である。栽培されるようになったのは大正年代で、山形県最上地方から魚などの行商とともに鬼首菜の種子がもち込まれたと伝えられている。長年の栽培の過程で、周囲に生育していたアブラナ科の植物と交雑して誕生したともいわれている。赤茎系と白茎系の2系統がある。赤色はアントシアン系の色素である。地元では「地菜っこ」とよんでいる。

【時期】秋作に適し、8月下旬~9月上旬に播種し、11月頃に草丈が40cmほどになったら根こそぎ収穫する。

上伊場野芋(かみいばのいも)

【生産地】宮城県大崎市三本木町上伊場野地区

【形状】やや小ぶりで、茎が赤紫色なのが特徴。

【食味】特有の甘みとそれを超える旨みが絶品といわれる里いもで、伊場野以外の土地では栽培しても旨みを引き立てる粘り気が出ずにおいしく作れないという。

【来歴】宮城県大崎市の限られた地区だけに古くより伝わり栽培されている。元々生産量が多くない上に連作が難しい種で、1度栽培した場所は3年休ませなければならないため、収穫されてもそのほぼすべてが自家消費と固定客でなくなってしまい市場に出回ることはまずない。そのため”幻のいも”と呼ばれ珍重されている里いも。

【収穫時期】10月下旬~11月下旬

小瀬菜大根(こぜなだいこん)

【生産地】宮城県加美郡加美町小瀬地区

【形状】一般的な大根とは異なり、根の部分ではなく、葉の部分を食べる珍しい大根。収穫時には葉の長さは80~100cm にもなる。茎は柔かく、粗剛な毛はなく、肌ざわりがよい。根はほとんど肥大しない。

【食味】かつては塩蔵して冬期の漬物用として利用していたが、現在は調味液による仕上げ漬けにしている。漬物は時間が経つとべっこう色になり、青い葉のときとはまた違った味わいが楽しめる。根には辛みがあるので、わさびなどの薬味がわりとしても使用出来る。みそ漬けで、べっこう色になったものを細かく刻んでシソの実と一緒に塩漬けにしたり、野沢菜風にパリパリとした特長を生かして浅漬けにする。漬物のほか、みそ汁の具、煮物などに。根は、そばの薬味にする。

【来歴】明治初期に、巡礼修行者の六部様が通りかかり、川でダイコンを洗っていた人に「このダイコンのタネをまいてみなさい」と言われたのが始まりと語り継がれている。加美町の小瀬地区でしか葉が軟らかくならず、他の地区で栽培しても同じようにはならないといわれている。

【収穫時期】10月中旬~11月中旬

ちょっぺ茄子(ちょっぺなす)

【生産地】宮城県白石市蔵王町

【形状】中長なす、果実の先が尖っている。収穫時の果長19~20cm。果実は濃紫色で黒色に近い。

【食味】皮、肉質とも柔らかく漬物用に適している。

【来歴】名前の由来は果実の先端がちょぺっと(ちょっと)尖ることからと言われる。

【収穫時期】7月~9月

 

【参考資料】

成瀬宇平・堀知佐子『47都道府県・地野菜/伝統野菜百科』(2009)丸善出版株式会社

みやぎ在来作物研究会『みやぎの野菜』(宮城県農政部園芸課、1996年)掲載「宮城県の伝統野菜」より

仙台の伝統野菜‐仙台ウェブ

登米市の伝統野菜

 

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