SDGsのために私たちにできること -エシカル消費とフードロス削減-

持続可能な開発目標SDGs

現在、新型コロナウイルス感染症の問題が大きくのしかかり、各国ともその対応に追われる日々が続いています。しかし、地球上には感染症以外にも環境破壊、地球温暖化、エネルギー資源の枯渇、異常気象などほかにも深刻な問題が山積しています。

これら問題には世界中の人々が協力し合い、持続可能な社会の実現に取り組む必要があります。「持続可能な社会」とは、第3次環境基本計画(2006年)で「健全で恵み豊かな環境が地球規模から身近な地域までにわたって保全されるとともに、それらを通じて国民一人一人が幸せを実感できる生活を享受でき、将来世代にも継承することができる社会」と定義されています。

2015年9月の国連サミットでは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」が採択され、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するための目標が掲げられました。SDGsでは貧困、飢餓、健康・福祉、教育、エネルギー、環境など17の目標が掲げられています。(国際連合広報センターより)

現在、世界の大手企業が目指す経営目標の中にSDGsへの取り組みが盛り込まれています。SDGsの内容は、投資に対する見返りが定量化しにくく、経済成長を目指すのとは別の方向性に感じるかもしれません。しかし、取組企業による成功事例も現れはじめ注目が集まっています。アフターコロナ、ウイズコロナの2020年代は、”持続可能な開発”や”環境貢献”が企業活動を行っていくうえで当たり前の条件になってくるかもしれません。

SDGsとエシカル消費

SDGsの17の目標の一つに、「つくる責任つかう責任」(目標12)があります。この目標の鍵となるのが「エシカル消費(Ethical Consumption)」です。

エシカルは、倫理的・道徳的という意味で、エシカル消費は「人々や地域、社会、そして地球環境に配慮した買い物や、その他のお金を使う行動全般」のことを言います。具体的には環境や人々に良い影響をもたらすと思われる商品やサービスを優先した倫理的消費のことで、欧米を中心に関心が持たれています。

エシカル消費という言葉自体は、1989年にイギリスで創刊された『エシカルコンシューマー(Ethical Consumer)』という専門誌で初めて使われるようになったそうです。この専門誌では、動物の権利や人権、汚染などのさまざまなカテゴリで企業を評価する取り組みが行われ、価格やデザイン、ブランドといった評価軸だけでなく、その他の評価軸で日々の買い物を見直すよう呼びかけています。

たとえば、かつてはファッションステイタスであった毛皮は、エシカル消費の視点では動物を犠牲にするものであるためNGです。実際に、TOMMY HILFIGER(トミーフィルガ-)、CALVIN KLEIN(カルバンクライン)、ARMANI GROUP(アルマーニグループ)、PRADA(プラダ)、GUCCI(グッチ)など、すでに数多くのブランドが動物の毛皮を製品に使用しない「ファーフリー宣言」をしています。もはやリアルファーは時代遅れの感が否めません。代わって台頭してきているのがPeople Tree(ピープルツリー)やPatagonia(パタゴニア)といったエシカルファッションのブランドです。流行に敏感なファッションブランドの動きは他の商品やサービスの未来を暗示しているかもしれません。

毛皮を着た女性

私たちにできるSDGs

私たち消費者が「つかう責任」としてSDGsに貢献できる一つが、このエシカル消費です。

ほかにもエシカル消費の具体例として、寄付つき商品や障がい者支援につながる商品、フェアトレード、地産地消、被災地産品、エコ商品、リサイクル商品、資源保護等に関する認証がある商品の購入があります。

日々、購入しているものの選択をほんの少し変えることが大きな変化につながっていきます。消費者の意識が変化し、問題を発生させる商品を敬遠し、持続可能な社会に近づける商品を選択していけば、企業の姿勢に影響を与えることができます。

しかし、エシカル消費への需要が高まれば、エシカルを見せかける商品・サービスも増える可能性があります。環境に配慮しているように見せかけている商品を「グリーンウォッシュ」、SDGsに取り組んでいるように見せかけるだけの取り組みは「SDGsウォッシュ」と言いますが、消費者に誤解を与えるような商品・サービスかどうかも、しっかりとチェックして購入することが必要になります。

商品の循環

エシカル消費とフードロス削減

エシカル消費の対象はとても幅広く、食品分野でもエシカル消費は進んでいます。農産物の具体的な取組みとして考えられるものは、有機食品の購入、地産地消、スローフード運動などがあげられます。無農薬や有機肥料を使用したオーガニック野菜は、農薬や化学肥料の環境負荷を低減します。地産地消で地元の農産物を購入すれば、輸送コストを減らしてCo2を削減したり、地元の農家や企業にお金を循環したりすることに影響します。ふるさと納税など売上の一部を寄付金や義援金に充て、さらに地域の農産物を購入するものもエシカル消費の一つでしょう。

また、フードロス(食品ロス)の削減に寄与することもエシカル消費につながります。

「フードロス(食品ロス)」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。日本の食品廃棄物等は年間2,550万tで、そのうち、本来食べられるのに捨てられる食品の量は年間612万tもあります。その内訳は、事業系が328万t、家庭系が284万tです。さらに事業系の内訳は、食品製造業121万t、食品卸売業16万t、食品小売業64万t、外食産業127万tとなっています(2017年度確定値)。農林水産省「食品ロスとは」より

この問題を解決しようと、2019年10月には「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行されました。

引用:農林水産省「食品ロスとは」

フードロス削減への取り組み

私たちが日々の生活の中でフードロス削減に取り組めることは、いろいろあります。

たとえば、牛乳など購入する時に、1~2日で消費するなら賞味期限の近いものから購入する、外装にちょっとしたキズや汚れがあっても中身に問題なければ購入する、買い物前に、冷蔵庫や食品庫にある食材をチェックして買い過ぎないようにする、計画的に使う分、食べられる量だけ買うなどがあります。

そして、ここは声を大にして伝えたいところですが、農産物の形の悪いものなどをあまり選り好みしないで欲しいです。自然の中で育つ野菜は、そもそも形や大きさがふぞろいなものです。しかし、市場では厳密な規格が設けられていて、形状・サイズなど一定の基準に沿わないものは規格外となります。そのため、農家から市場に出荷する段階で野菜は厳しく選別されます。規格外の農産物を小売店が扱わないのは、結局は消費者が買わず売れ残ってしまうからというのが理由のようですが、差別化・競争戦略もありそうです。でも、家庭で野菜を切って、煮たり、焼いたりしてしまえば買った時の見た目は関係なくなります。伝統野菜が数を減らしていったのも市場が規格サイズのものを求めたのも一因です。形状・サイズより環境に配慮して育てられたかどうかを優先できるようになるといいですね。

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消費者庁食品ロス削減【公式】Twitterより

キズのある野菜や果物はおいしい!?

日本の工業製品のような精密な規格品に慣れてしまった私たちが農産物にもそのクオリティを求めたくなる気持ちもわからなくもないですが、やはり自然のものは自然のもの。全てが規格通りに栽培できることはありません。伝統野菜は形・サイズどころか味も異なることが少なくありません。でも、それらを調理して食べると奥行きのある味わいになります。

また、規格外のキズのある農産物の方が美味しいという説もあります。

アメリカ公共放送NPRでは、果樹園の経営者が傷や汚れのあるりんごを調べたところ、傷のあるりんごの方は無いりんごに比べ、2〜5%糖分が多く含まれていたことを報告しています。NPR「Beneath An Ugly Outside, Marred Fruit May Pack More Nutrition」より

他にもキズのあるミカンの方が美味しいということが言われます。野菜でもナスは、傷がついたナスの方が、アントシアニンやフェノール化合物が多く含まれるそうです。また、知り合いの農家さんは農産物は「野菜は小ぶりの方が美味しいんだ」と言っていました。(研究者の方、エビデンスないでしょうか?)

野菜や果物を調理して食べるには、規格通りかキズものかによる味の差は大差ないと思います。農家さんの出荷を手伝いに行って、ちょっとした規格外で廃棄される農産物を見ると胸が痛みます。規格外の野菜でも安心・安全であることや地球環境に優しいことを優先して購入したいものです。

規格外の野菜

【参考資料】

環境・循環型社会・生物多様性白書(令和2年版)

消費者庁「エシカル消費普及・啓発活動」

消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」

消費者庁「家庭での食品ロスを減らすために」

農林水産省「食品ロス」

 

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