高木幹夫先生、伝統野菜への思いを語る-「キミ子方式で描いたあいちの伝統野菜 佐藤昌宏氏個展」での特別講演を終えて

2018年12月4日(火)~9日(日)6日間、愛知県の名古屋市民ギャラリー栄にて、あいちの伝統野菜35種を水彩画で描いた佐藤昌宏氏の個展が開催されました。

期間中は多くの方が訪れ、佐藤氏の作品の緻密で美しい絵を鑑賞され、大好評のうちに幕を閉じました。

8日(土)の13:30~には、当協会の顧問である高木幹夫先生の特別講演が開催されました。

会場は、佐藤氏の水彩画から伝統野菜に興味を持たれた方やメディアの方、伝統野菜そのものに関心のある方、通りすがりで興味を持たれた方などであふれていました。

もちろん、当協会のスタッフもかけつけ、後方から背伸びした状態で2時間近くの講演を必死に録画してきました。

今回は、そのご報告をさせていただきます。

当協会の顧問をしていただいている、あいち在来種保存会の代表世話人の高木先生は、元JAの職員で、生産から販売までの業務の担当し、統括部長を務められ、直売所の立ち上げにも携わるなど農と食に関わる経験を幅広く積まれてきました。

現在は、ご自身の伝統野菜展示農場で愛知県が認定した伝統野菜35種ののうち11種を栽培されています。35種全てを栽培された経験をお持ちですが、現在行っている栽培は採種が目的。農作物の収穫はしていません。あくまでも種を取り、保存し、次世代に残していくために活動されています。

今回の講演では、伝統野菜が減った理由と今の日本の農業事情について具体的な事例をもとにユーモアを交えながら、わかりやすくお話いただきました。また、佐藤氏が描かれた水彩画の伝統野菜について、一つずつ特徴を説明していただきました。

伝統野菜が減った理由としては、例えば、ある時、直販所のお客様から「人参が人参くさくて食べられない」とのクレームに驚き、どの野菜か調べたところ地元の伝統野菜の木の山五寸人参だったとか、ファーストトマトは先が尖っているのが特徴ですが、ラップに包むと破れてしまうからなんとかして欲しいといった要望など、笑えるけど笑えない話が次々に出てきました。

流通や消費者のニーズに合わせているうちに次第に作る人が減っていってしまったというお話には、筆者自身も「形や色のキレイさで野菜を選んでいたなぁ」と思い返したりしました。

「伝統野菜は野菜本来の姿をしている。伝統野菜は個性が強いものも多い。甘い野菜は確かに美味しいけれど、野菜本来の土臭さや青臭い野菜の味も知る事も大切だ」と話されます。

日本の農業事情については、ニュースで見かける食料自給率がカロリーベースの総合食料自給率で38%(農林水産省:平成29年度)であるということだけでなく種子の自給率についてもお話されました。種子の自給率は食料自給率よりも、さらに低く国内採種(国内自給率)は約1割しかないと言われます。これには会場からも嘆息が…。

現在、スーパーなどで販売している野菜の大部分は、人の手によって品種改良されたF1品種と言われる掛け合わせの品種です。農産者は毎年その種を買って栽培しています。

「現在流通している種の約9割が外国産。なんらかの理由で種が輸入できなくなったら、日本で野菜は作れなくなってしまう。日本の農業の将来を考えて、種から国産の伝統野菜を守っていきたい」と話されます。

2時間近くにおよんだ講演の内容は、それぞれの伝統野菜の特徴など、ここでは書き切れない興味深いエピソードがいっぱい。優しい語り口調の中にも日本の農業を考え、実直に伝統野菜の種を守り続ける高木先生のお話は考えさせられるものでした。

私たちや次世代の「食」や生物多様性に大きな影響を与えかねない種子の現状についての講演。機会があれば、皆さまにもぜひ聞いていただきたく思います。

2019年2月には、朝日カルチャーセンターと当協会の共催で「滋味あふれるあいちの伝統野菜」と題する講演と調理実習が行われます。この機会にぜひ、あいちの伝統野菜を知って、触れて、味わっていただけたらと思います。

 

朝日カルチャーセンターの「滋味あふれるあいちの伝統野菜」講座については、こちらをご覧ください。

あいちの伝統野菜料理を一緒に作って食べよう!-クッキングサロン講習会で料理研究家田中稔先生から直接調理のコツを学ぶ

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