日本の伝統野菜-28.兵庫県

1.地域の特性

【地理】

兵庫県は近畿地方にあり、大阪と京都の西に位置しています。南北に長い県域を持ち、近畿地方の府県で最大の面積を有しています。北は日本海、南は瀬戸内海の2つの海に接しています。本州で2つの海に接している県は、両端である青森県と山口県を除けば兵庫県のみです。面積は約8,401 ㎢で全国第12位、人口548万4,000人で全国第7位です。

地形は県域のおおよそ8割以上を占める山地と山麓部の丘陵・台地、河川流路に形成される扇状地と河口低地、山間盆地から成ります。山地は、中国山地東縁に属する岡山県境の氷ノ山*2(ひょうのせん 標高1,510m)を最高位として、主として南東方向に向かって標高が低くなり、おおむね穏やかな山容となっていきます。しかし、県北沿岸部や六甲山地等は、断層を伴う地殻変動や沈降、風化浸食により、複雑で険しく、また急勾配であることが特徴です。

低地は、県北の円山川中流域の豊岡盆地と河口付近、県南の加古川・市川・揖保川・千種川の各河口に広がる播磨平野、六甲山地北方の篠山盆地と同東方の武庫低地などに代表されます。また、河川の多くが短い流路、急勾配を特徴としており、山麓谷口を頂点とする扇状地も発達しています。

兵庫県の県域は、旧国の摂津(せっつ)の国、播磨(はりま)の国、丹波(たんば)の国、但馬(たじま)の国、淡路(あわじ)の国、美作(みまさか)の国、備前(びぜん)の国の7国にまたがっており、多種多様な文化が入り混じっています。

その7国が五畿八道の畿内(摂津国)、山陰道(丹波国・但馬国)、山陽道(播磨国・美作国・備前国)、南海道(淡路国)に分かれ、全国最多の4地方にまたがっています。本州を青森県から山口県まで陸路で縦断しようとすると、必ず兵庫県を通ることになります。

広大な県域を有する兵庫県は、大都市から農山村、離島まで、さまざまな地域で構成されており、多様な気候と風土を通して、個性豊かな歴史や産業が醸成していることから、「日本の縮図」といわれています。

 

【気候】

兵庫県の月平均気温の平年値は17.7度、年間降水量の平年値は1,178mmです(2019年)。

兵庫県のほぼ中央を東西に横切る中国山地を境に気候区分が異なります。北部は冬に降水量の多い日本海岸気候区です。南部は乾燥した晴天が続き、雨も少なく温和な気候の瀬戸内気候区に区分されます。

北部は典型的な日本海岸気候区の特徴を示し、冬季に曇や雪の日が多く、年間降水量の約31%が12~2月にかけて降ります。夏季には南からの風にフェーン現象が加わり、ときには最高気温が37℃以上になることも珍しくありません。

南部は年間を通じて温暖・少雨の瀬戸内気候区と、大都市特有の都市気候の特徴がみられます。雨が少なく湿度が低いため乾燥し、海岸に近いため暑さや寒さも比較的しのぎやすくなっています。

淡路島は瀬戸内気候区に属していますが、南部は紀伊水道を通じて太平洋に面しているため、暖候期には太平洋岸気候区の特徴も現れます。

年間を通じて温暖・多照・少雨ですが、梅雨期と台風期は太平洋から直接流入する暖湿気流の影響で大雨が降ることがあります。 春先から梅雨期にかけては霧の発生も多くなります。

 

【農業の特徴】

兵庫県の経営耕地面積は73,000haで、内、田が66,900ha、畑が6,140ha(2020年)で全国第18位です(農林水産省「作物統計調査 令和2年」より)。

神戸・阪神地域では、都市近郊の立地条件を生かした葉物野菜、果樹、花きなどの園芸作物を生産しています。

播磨地域は肥沃な平野部が広がり、水田農業が展開されています。酒米「山田錦」の主産地であるほか、県内の採卵鶏の約8割が飼育されています。

但馬地域は山間部が多く、環境に配慮した米の生産や、高原の冷涼な気候を活かした野菜を生産するほか、但馬牛の産地として有名です。

丹波地域は穏やかな山々に囲まれており、昼夜の寒暖差などの気候条件を活かした特産物(黒大豆、小豆、やまのいも、栗等)の生産で知られています。

淡路地域では温暖な気候を利用し、たまねぎやレタスなどの野菜、果樹、花きのほか酪農や肉用牛(但馬牛)等が生産されており、県内で最も農業が盛んな地域です。

 

兵庫県は、現在3つの地域(兵庫美方、丹波篠山、南あわじ)が日本農業遺産に認定されています。また、都市近郊の立地を活かした農林水産業の基幹産業化と五国の持続的発展をめざし、「ひょうご農林水産ビジョン2030」を策定しています。

 

2.兵庫の伝統野菜

兵庫県は、以下の2つの条件を満たした野菜を、「ひょうごのふるさと野菜」として認定しています。

1.地域の人々が自らの手で種取りから生産のサイクルを続けていること

2.全国流通品種と異なる地域に根ざした個性ある野菜であること

伝統野菜という表現は使用されていませんが、採種から生産までの持続可能な野菜であることや地域に根差した野菜であることが条件となっているため、伝統野菜の枠組みの中でも、より厳密な固定種・在来種の品種が対象になっていると言えます。

ひょうごのふるさと野菜

兵庫県は、北は日本海から南は瀬戸内海(太平洋)に面し、高原、平野、島々など広大で変化に富んだ地形を有しており、多様な自然状況のもとで、多品目の野菜が生産されています。

摂津、播磨、但馬、丹波、淡路という歴史的に形成されてきた特色ある風土、文化を有する本県では、それぞれの地域に適応し、定着した、個性的な野菜が栽培されてきました。

食の安全・安心に対する関心が高まるとともに、身近で生産されたものを身近で消費する地産地消の機運が高まるなか、1.地域の人々が自らの手で種取りから生産のサイクルを続け、2.全国流通品種と異なる地域に根ざした個性ある野菜を、「ひょうごのふるさと野菜」としてご紹介します。(兵庫県HPより引用

 

朝倉山椒(あさくらざんしょう)

【生産地】養父市

【特徴】木にはトゲがなく、雌雄の木のうち、雌木に山椒の実は大粒で、鮮やかなグリーン、山椒特有の渋みが少ない。

【食味】柑橘系のフルーティーな香りでまろやかな味とピリリとした辛味。

【料理】佃煮、魔法のスパイスで様々な料理に。

【来歴】八鹿朝倉村の豪族朝倉氏とその地名から朝倉山椒の名がついた。400年の歴史をもつ。

【時期】5月下旬~6月上旬

 

あざみ菜(あざみな)

【生産地】丹波市

【特徴】トゲの多い葉。

【食味】ピリッとした舌触り、独特な香りと辛さの風味

【料理】漬物

【来歴】あざみのようにトゲの多い葉が特徴であることからこの名がついた。

【時期】10月上旬~3月下旬

 

網干メロン(あぼしめろん)

【生産地】姫路市

【特徴】果重150g前後のだ円形で、果色は緑白色で浅い条溝が10条程ある。

【食味】香気高く、甘味は強い(糖度15~16度)。

【料理】生食

【来歴】木下広治氏が、大正10年頃、網干町の今栄信重氏の店より購入し、栽培したのが始まり

【時期】6月下旬~8月下旬

 

網干水菜(あぼしみずな)

【生産地】姫路市

【特徴】葉が粗く、軸がやや太めで、繊維は残らない。

【食味】

【料理】サラダ

【来歴】明治後期から大正初期には栽培されていた。

【時期】

 

尼いも(あまいも)

【生産地】尼崎市

【特徴】普通のさつまいもより早い。

【食味】

【料理】焼酎の原料

【来歴】江戸時代の寛政年間に新田を開発して栽培が始まり、大州村、大物村、竹谷新田村など現代の阪神尼崎駅南側が産地であった。

【時期】7月~8月

 

岩津ねぎ(いわつねぎ)

【生産地】丹波朝来市

【特徴】葉、軟白部とも食べられる。

【食味】肉質は柔軟で香気高い。

【料理】薬味、汁物

【来歴】生野銀山の役人が京都より九条ネギの種子をもち帰り、現在の朝来市岩津周辺の農家に栽培させていたことが始まりとされている。

【時期】11月下旬~2月下旬

 

海老芋(えびいも)

【生産地】姫路市

【特徴】肉質のキメが細かいのが特徴で、煮込んでも煮崩れを起こすことがない。

【食味】肉質が軟らかく、クリーミーな食感。

【料理】煮物、揚げ物等

【来歴】明治30年代には姫路市兼田地区で栽培されていた。縞模様と曲がり具合が海老にそっくりなことから。

【時期】10月~2月

 

大市茄子(おいちなす)

【生産地】西宮市

【特徴】電球型で皮が厚い。

【食味】

【料理】グラタン、田楽

【来歴】明治16年、武庫郡甲東村下大市(現西宮市)で、油障子利用による苗の早期簡易育苗法が開発されたのが、大市茄子の始まりである。

【時期】7月中旬

 

太市のたけのこ(おおいちたけのこ)

【生産地】姫路市

【特徴】白くて、柔らかく、きめが細かく、アクが少なく、形状がよい。

【食味】「器量の山城(京都)、味の太市」といわれるように京都に引けを取らない。

【料理】生食、煮物、てんぷら

【来歴】嘉永年間(1850年)に太市村中(現姫路市太市中地区)の親竹として『孟宗竹』を移植したのが始まりと記されている。

【時期】3月上旬~5月上旬

 

加古川メロン(かこがわめろん)

【生産地】加古川市

【特徴】果色は緑白色、果肉は淡緑色の比較的大型。

【食味】歯ごたえが良く、成熟するとほのかな香りがあり甘みも高い。

【料理】生食

【来歴】加西市の農家が以前より自家消費用として栽培していたものを加古川市の宮脇種苗店が選抜・販売し、加古川メロンと名付けた。

【時期】

 

三田うど(さんたうど)

【生産地】三田市

【特徴】せんい質が少なく(折れやすい)、色は薄いピンク色で、くずものが少ない。

【食味】上品な香りとシャキっとした心地好い歯ざわり。

【料理】きんぴらや天ぷら、サラダ

【来歴】野生種以外の栽培の歴史は、大正5年に野間三五六氏が持ち帰り、前中大蔵氏に試作を依頼したのが始まりである。

【時期】2月~3月

 

しそう三尺(しそうさんじゃく)

【生産地】宍粟市

【特徴】長型(36~44cm)。

【食味】パリパリパリと歯切れが良い。

【料理】生食、漬物、巻き寿司の材料

【来歴】昭和10年頃、現在の宍粟市山崎町に初めて導入された。

【時期】6月下旬~8月中旬

 

住山ごぼう(すみやまごぼう)

【生産地】篠山市

【特徴】日本特有の食材で、繊維質に富み、色白。

【食味】素朴な香りと歯ごたえ、あくの強さ、火を通すととても軟らかい。

【料理】ごぼうめし、かきあげそば、惣菜

【来歴】戦前は住山地区50戸で栽培。

【時期】8月中旬~3月

 

丹波黒、丹波黒枝豆(たんばくろ、たんばくろえだまめ)

【生産地】篠山市

【特徴】粒が80gと大粒で球状に近い丸さをしている。煮ても軟らかく皮が破れにくく、色も真っ黒に煮上がる。

【食味】うま味、食品の芳香感、もちもち感が絶妙。正月の煮豆用としては最上品で、全国に高い評価を得ている。

【料理】青さやゆで豆、煮豆、黒豆ごはん、黒豆みそ、黒豆入りパウンドケーキ等

【来歴】特産物として徳川幕府や宮中へ献上され、国際農産物展に出品され好評を得たという記録も残っている。

【時期】通年

 

阪神のオランダトマト(はんしんのおらんだとまと)

【生産地】伊丹市

【特徴】大果で桃色、果肉多く粉質で食味良好、日持ちが良く、調理の際、肉くずれしない。

【食味】果肉が多くて種が少なく、食味良好。

【料理】煮物

【来歴】昭和の初期から神戸市東灘区。

【時期】7月

 

姫路のれんこん(ひめじのれんこん)

【生産地】姫路市

【特徴】形が良く、あくが少なく、白くきめ細かい。

【食味】食感はさくさくして歯触りがよい。

【料理】酢れんこん、煮物、てんぷら等

【来歴】約150年前に姫路藩の学者河井惣兵衛氏が市川流域の三角州の干拓地に朝鮮ハスを導入したと記されている。

【時期】通年

 

姫路若菜(ひめじわかな)

【生産地】姫路市

【特徴】寒さに強く、真冬でも葉枯れが少なく、葉はつやのある淡緑色の丸葉で茎は白く柔らかい。

【食味】クセもなく、やわらかく美味しい。

【料理】漬物、おひたし、煮びたし等

【来歴】明治時代には栽培されていたと言われている。

【時期】12月~3月下旬

 

深志野メロン(ふかしのめろん)

【生産地】姫路市

【特徴】果重は、200g前後のだ円形をしており、浅い溝が十条ある。花痕部がやや交出する。

【食味】甘味が強い。

【料理】生食用

【来歴】昭和40年頃、姫路市佐土地区の農家より種子を譲り受け、その種子より優良な系統を選抜し、栽培している。

【時期】

 

平家かぶら(へいけかぶら)

【生産地】但馬香美町香住区

【特徴】葉は、軸の部分が短く、葉柄部分にとげがあり、根の形は丸型ではない。

【食味】主に葉を利用する。

【料理】汁物

【来歴】寿永4年(1185)壇ノ浦の戦に敗れた平教盛とその家来がこの地に上陸した際、このカブを食べたとして『へいけかぶら』と呼んでいる。

【時期】

 

ペッチン瓜(べっちんうり)

【生産地】明石市

【特徴】果重400~800g、緑色が濃く、浅い溝が10条程度ある。果肉は淡黄色で、果肉の厚さは2.5cm程度で歯切れが良い。

【食味】やわらかい歯ごたえと、ほのかな甘み

【料理】浅漬け、ヌカ漬け、なら漬け等

【来歴】完熟した時の色艶が濃緑の別珍(ビロード生地)に似ていること、また果実に爪を立てた時、「ペッチン」という音で収穫期を判断したことから生まれたと言われている。

【時期】7月~9月上旬

 

御津の青うり(みつのあおうり)

【生産地】たつの市

【特徴】淡緑の果皮に縦に白い縞が入っている。形状は、長円筒型。

【食味】

【料理】浅漬け・奈良漬け

【来歴】26年前に愛知県犬山市の「青うり栽培」を視察研修をしたことから導入が始まった。

【時期】6月中旬~9月中旬

 

武庫一寸そらまめ、富松一寸まめ(むこいっすんそらまめ、とまついっすんまめ)

【生産地】尼崎市

【特徴】大粒種に属し、茎葉は大きく、草丈は約1mと高い。花色は紫色や淡紫色である。莢は短大、子実は2~3粒、粒径3.03cm(一寸)一粒重は3~4gである。

【食味】塩茹ですると豆の滋味が「がつん」とくる。

【料理】塩ゆで(未成熟)、煮豆 学校給食にも導入されている。

【来歴】「一寸」の名は、豆の粒が大きく約一寸(3.3cm)程にもなることから付けられた。兵庫県尼崎市(あまがさきし)の北部にある武庫・富松地域では一寸豆に最適な土壌があり、約800年も前から地元の伝統野菜として作られていたとされる。
現在は20軒ほどの栽培農家で、市場には出回らず幻の豆となっている。
年に一度、富松一寸豆を富松神社に奉納し、地域の発展を祈願する『富松一寸豆まつり』5月に行われる。祭当日は富松一寸豆の塩ゆでしたものや福煮(ふくに)が振舞われる。

【時期】5月

 

妻鹿メロン(めがめろん)

【生産地】姫路市

【特徴】果形は、南部金に類似するが熟れても黄色を発色せず、縦溝にひび割れを生ずる。

【食味】甘みが強い。

【料理】生食用

【来歴】1897年頃からペッチンウリと呼び栽培を続け、1930年に命名された。

【時期】

 

山の芋(やまのいも)/篠山市

【生産地】篠山市

【特徴】まるくて黒いごつごつした外皮で、粘り気が強い。1つの種芋から1つしか収穫されない。

【食味】純白で肉質はきめ細やかな粘りがある。

【料理】高級菓子等加工。家庭「とろろめし」「お好み焼き」、いそべ揚げ等

【来歴】江戸時代には篠山藩主に献上したと伝えられている。秋から冬にかけて、「丹波霧」と呼ばれる濃い霧が立ち込め、「霧芋」とも呼ばれる。

【時期】通年

 

山の芋(やまのいも)/丹波市

【生産地】丹波市

【特徴】丹波柏原の気候風土にあった作物

【食味】山の芋特有の粘りが多い。

【料理】とろろ、山かけ、煮物、お好み焼き等

【来歴】柏原では古くから特産としてきた。

【時期】通年

 

 

 

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