日本の伝統野菜―20.長野県

1.地域の特性

【地理】

長野県は本州の中部に位置しており、東西約120km、南北約212kmと南北に長く、全国第4位の広い県土(1万3,562㎢)を有しています。長野県は群馬県・埼玉県・山梨県・静岡県・愛知県・岐阜県・富山県・新潟県と8つの県と隣接しており、隣接都道府県数は、47都道府県中で最多です。

長野県は、令制国名の信濃国にちなみ、「信州」とも呼ばれています。

海に面していない内陸県で、四方を「日本の屋根」と呼ばれる日本アルプスなど2~3千m級の山々に囲まれ、総面積の84%を山地が占めています。

北アメリカプレートとユーラシアプレートとのプレート境界に近い事もあり、善光寺地震を始め、多数の地震を経験しています。活火山も複数存在しており、これらを含めた急峻な山の連なりと、盆地や谷筋という対照的な構造が地形的な特徴です。

山脈は、長野県境や県央(南)を北アルプス(飛騨(ひだ)山脈)、中央アルプス(木曽(きそ)山脈)、南アルプス(赤石(あかいし)山脈)といった日本アルプスの2000~3000m級の山々が縦貫しています。

河川は、大小多数の河川が見られ、それぞれの河川が山々を侵食した地形も多数見られます。長野県に流域を持つ一級河川としては、信濃川水系・天竜川水系・木曽川水系・姫川水系・矢作川水系・富士川水系・関川水系・利根川水系があります。また、県内には太平洋と日本海の分水嶺があります。

長野県の地域区分は、盆地や山々の自然地理、歴史や交通などにより、北信(ほくしん)、中信(ちゅうしん)、東信(とうしん)、南信(なんしん)の4つの地域に区分されており、地域ごとに方言や郷土料理など異なる文化があります。

さらに広域地域区分では、佐久(さく)、上田(うえだ)、諏訪(すわ)、上伊那(かみいな)、南信州(みなみしんしゅう)、木曽(きそ)、松本(まつもと)、北アルプス(きたあるぷす)、長野(ながの)、北信(ほくしん)の8つに分かれます。

気象区分では、北部、中部、南部の3つに分けられます。

長野県には、5つの国立公園、4つの国定公園、そして5つの県立自然公園の計14地域が自然公園として指定されており、その面積は県土の約21%(約28万ha)を占め、全国第3位の広さを有しています。また、群馬県との県境にある人気リゾート地の軽井沢、草津温泉や善光寺、戸隠神社、諏訪湖、日本一の星空と認定された阿智村など魅力的な観光スポットも数多く、豊かな自然と共存している県です。

 

【気候】

長野県は、気温の年較差・日較差が大きい内陸性気候です。日較差(一日のうちで最も高い気温と最も低い気温との差)や、年較差(一年のうちで最も高い月の平均気温と最も低い月の平均気温との差)は大きくなっています。これは、沿岸部に比べ、海(海風)の影響が少ないことや放射冷却が起きやすいことなどによります。長野県の平地の多くは盆地のため、盆地特有の気候が見られ、昼と夜の気温の差が大きくなります。

気温は、おおむね標高によって決まります。標高の高い地域では、山岳地帯特有の気候が見られ、平地に比べて気温、気圧、湿度が低く、太陽からの日射のエネルギ-量も多くなります。風も平地に比べて強くなります。

一年のうちで最も高い月の平均気温と、最も低い月の平均気温との差(年較差)は、長野では25.8℃もあり、これは北海道の内陸部(旭川では28.6℃)に次いで大きな値となっています。

冬季の気候は、北部と中部・南部で違いがはっきりと現れます。北部は季節風の影響で雪の日が多く、中部や南部の平地は季節風が山脈を越えてくるため、空気が乾燥し、晴れの日が続きます。一番寒い時期の2月上旬の平年の最低気温は、標高1,000m以上では-10℃~-14℃と北海道並みの寒さとなります。

降水量は、年間1,500mm以下の雨の少ない地域となっています。特に長野盆地から上田・佐久盆地にかけては、北海道東部についで雨の少ない地域となっています。

内陸は空気が清浄で雲ができにくいため、日照時間は全国的にみても多くなっています。標高の高い地域、例えば、諏訪が2164.8時間、松本が2134.7時間と瀬戸内海と並んでいます。1月~2月は冬型の気圧配置となる日が多く、水分をほとんど雪として降らせるので、中部や南部の平地を冷たい風となって吹き抜けます。そのため、長野県の平地の冬は晴れの日が多く、空気が乾燥します。

 

【農業の特徴】

長野県の経営耕地面積は10万5,300haで、内、田が51,900ha、畑が53,400ha(2020年)で全国第14位です(農林水産省「作物統計調査 令和2年」より)。

地形が複雑で南北に長いため、地域によって、平均気温、降水量、日照時間が大きく異なります。また、耕地の約8割は標高500~1,500mに位置し、水田の約3割は傾斜地(1/20以上)に在ります。

変化に富んだ自然条件や地形と三大都市圏に近い立地条件を活かし、園芸作物、米、きのこ類など多彩な生産が行われています。特に、野菜、果樹、花き等の園芸作物の生産量は、全国上位となっています。また、水稲の10a当たり平年収量が高いのが特徴です。

農業産出額は、2,556億円で全国第12位。内訳は、野菜が818億円、果実が743億円、米が473億円の順です。

農産物の生産状況は、干し柿、カーネーション(切り花類)、アルストロメリア(切り花類)、トルコギキョウ(切り花類)、シクラメン(鉢もの類)、はくさい、レタス、セルリーが全国第1位。

農業者等による生産関連事業は、農家民宿の年間販売金額が10億7,900万円で全国第1位です。長野県では、「日本一就農しやすい長野県」を目指して、就農希望者等が長野県で農業経営の夢を叶えることができるよう、就農前から就農後の経営が安定するまで、それぞれの習熟度に合わせた経営相談や技術支援を体系的に実施しています。

 

2.長野の伝統野菜

長野県は、農産物に対する積極的な取組みを行っている県で、「主要農作物種子法」が廃止された際にも、いち早く、「長野県主要農作物及び伝統野菜等の種子に関する条例」を制定しました。この条例は、高品質な種子の確保と安定供給に取り組むことを本旨としており、これに伝統野菜も含めています。種子法に変わる条例を自治体ごとに制定している県は多々ありますが、伝統野菜の種子を対象にしている自治体は、今のところ長野県と岩手県のみのようです。(群馬県、岐阜県、三重県、千葉県、島根県、沖縄県などでもパブリックコメントに伝統野菜を含むよう要望の声はあがっていますが…)

さらに、長野県は「県内各地に残る貴重な伝統野菜を次代につないでいこう」と、平成18年に「信州伝統野菜認定制度」を創設しました。

選定の基準は、長野県内で栽培している野菜が対象で、「来歴」「食文化」「品種特性」の3項目について一定の基準を満たすと「信州の伝統野菜」として選定されます。さらに、選定された「信州の伝統野菜」のうち、伝承地で継続的に栽培されている伝統野菜および一定の基準を満たした生産者グループ(生産者組織、農協、市町村等)は、「伝承地栽培認定」を受けることができ、「信州の伝統野菜認定証票」(認定マーク)を表示して出荷・販売することができます。

現在、信州伝統野菜認定制度により、79種類の「信州の伝統野菜」が選定され、そのうち51種類について49の生産者グループが伝承地栽培認定を受けています。(令和3年3月31日現在。今後も随時追加予定)

「信州の伝統野菜」選定の基準

来歴 地域の気候風土に育まれ、昭和30年代以前から栽培されている品種
食文化 当該品種に関した信州の食文化を支える行事食・郷土食が伝承されている
品種特性 当該野菜固有の品種特性が明確になっている

 

これらの条件を満たす物のうち、認定委員会の意見を得て長野県が選定したものが「信州の伝統野菜」となります。

長野県では、「信州の伝統野菜」に関するホームページも充実しており、伝統野菜の図鑑形式での紹介や販売店舗の案内まで掲載されています。そのため、長野県の伝統野菜については、リンク先の「信州の伝統野菜」サイトをご参考ください。

長野県ホームページ

「信州の伝統野菜」図鑑

 

【参考資料】

長野県主要農作物及び伝統野菜等の種子に関する条例について

岩手県伝統野菜等の種子の保存に関する要領

 

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